- Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784120056574
作品紹介・あらすじ
名場面があれば小説は勝てる!人気書評家の著者が、小説の名場面を例に、「読む技術」と「書く技術」を指南。
感想・レビュー・書評
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この本は書評家・三宅香帆による「小説指南書」ならぬ「小説要望書」なのだそうだ。
とにかく、面白い小説が読みたい!そう思って読書を続けている方は多いと思う。
でも「面白い小説」とは、どんなものか?
三宅さんはこう結論づけた。
「自分が好きな場面を揚げられること」
そこで、読者、書評家、そしてアマチュア作家(ある漫画の二次創作小説を書いているのだそう)の目線から、「この小説のこのシーンが刺さる!」というところをピックアップ。
何故そのシーンが「刺さる」のか。そこで行われている創作上の作家の技術とはどんなものか、小説の引用も挟み、鮮やかに解説を展開。
小説を読むひと、小説を書く人、小説を批評する人だけならず、就職のエントリーシートなどで、文章を書くのにも参考になる、と書いている。
取り上げられる小説家は高瀬隼子、辻村深月、角田光代、京極夏彦、有川ひろ、などの現役人気作家がほとんど。
並み居る作家たちの「刺さるシーン」が並ぶので、その度こちらグッと来る。
綿矢りさの『蹴りたい背中』の引用も読んでいたら、綿矢さんの文章がとても読みたくなって、ついついネット書店のカートにいくつかほうり込んだ。
三宅さんは名場面に不可欠なふたつの要素があると書き、それは「①予想外の展開 ②盛り上げ演出」と看破する。
小説というのは、テクニックを見破られるか、見破られた上でも(また、見破られたからこそ)読者の心を動かすことができるのか、という、作家と読者の勝負みたいなところもあると思う。
勝っても嬉しいし、負けても気持ちいい、そんな小説に私も出会いたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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<書評>『名場面でわかる 刺さる小説の技術』三宅香帆 著:東京新聞 TOKYO Web
https://www.tokyo-np.co.jp...<書評>『名場面でわかる 刺さる小説の技術』三宅香帆 著:東京新聞 TOKYO Web
https://www.tokyo-np.co.jp/article/2572582023/06/20
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三宅さんの著書、初めて拝読しました。
「こういった切り口があるのか!」と発見させて頂きました。
「名場面のここが刺さる」といった内容ですが、つまりは「読み解き方」の本。
同じ小説を読んでも、人によって受けり方、もの事の見かた、は違うもの。
これは三宅さんなりの「切り口」で、その小説から何を感じ取ったか? その情報量や感性の豊かさをインプットすることができます。
真っ先の感想は「自分もこうなりたい!」と憧れを感じました。
本が好きで、自分の愛読書をここまで深く読み解くことができたら幸せですね。
(というか、著者の三宅さんはこれを職業にまで高めてしまったのが尊敬です)
例えば本の帯にあるコメント一つで「読みたい!」と直感する本との出会いがあります。
そんな素敵な出会いのきっかけを作ってくれる三宅さんが唯一無二の印象です。
「三宅香帆さんの本に出合えて良かった!」
これからの活躍が楽しみな予感がする一冊でした。 -
15分の(ほぼ)ワンシーンのシナリオ執筆に挑戦することになったはいいものの、ワンシーンで何を表現すればいいのかと悩んでいた時に本屋さんでこの本を見つけ、これだ!と購入を即断。
最近は全体の構成ばかり考えていましたが、好きな作品には語りたくなる名場面があるという指摘にそうだよなぁ〜と頷きまくりでした。
様々なシチュエーションについて名場面が紹介されていて勉強になることばかりでした。
本書に弊害があるとすれば、紹介されている作品がどれも面白そうで、執筆よりも読書を優先したいと思わせてしまうところでしょうか。 -
ここぞという面白い場面、忘れられない場面のある小説が、刺さる小説であり、その名場面は予想外の展開と盛り上げ演出によって成り立つと、著者は述べている。今まで、書く側の人が書いた小説指南書はいくつか読んできたが、読む側の人のは初だったので、私も一読者側として、そうそう!そういう小説は面白い!と納得感でいっぱいになった。こうしたら良い小説になると頭でわかっていてもそうできないところに創作の難しさがある。著者の他の類書も読みながら、どうしたら予想外の展開を作れるのか等々、多読して分析を重ねたいと思った。
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面白い小説の共通点は「自分が好きな場面を挙げられること」というコンセプトのもと、小説を書く人の参考となるよう、様々なシチュエーションのいろんな小説の「名場面」を取り上げ、なぜそれが名場面なのかといったことを気鋭の書評家である著者の視点で解説。
自分は小説を書きたいと思っているわけではないが、小説を読むのは好きなので、小説をもっと面白く読むための参考にと本書を読んだのだが、著者の冴えわたる解説自体がとても面白く、「なるほど、小説の名場面というのはこういう構造になっているのか」と納得させられた。未読のものも多い様々なジャンルの小説の名場面をザッピング的に読めたのも楽しかった。
特に、著者の小説を読む楽しみのひとつが「人間に対する解像度の高い物語を読むこと」というのに、これまで漠然としていた自分の小説に期待する思いを代弁してくれた気がして、すごく共感した。著者は、自分のような凡人だとなんとなく良い小説だなと思うところをなぜそれが良い小説なのかをきめ細やかに言語化できていて、まさに著者の小説に対する解像度がきわめて高いと感じた。 -
2023/08/11
やっぱ三宅さん好きや〜!私は行間を読めない人間やからちょっとしたことを気づかずに読んでいるけど、気付けるのいいな〜気付ける人になりたい。
夏目漱石の心の話で卒業証書が私と先生の対比になってるのとか絶対気づけん。
p106分かち合うことそのものが、家族の営みであり、家族の証だ。 -
著者の書評本が好きなので、こちらの本も読みました。
小説の読み方が本当に上手い!
すごく味わって読んでいらっしゃるなあと感じます。
様々な小説の名場面を紹介されているのですが、読んでいるととにかく読みたい・書きたい気持ちになります。
登場人物の関係性に着目して紹介されている章があり、特に二次創作をされている方にここをおすすめしたいかなと思いました。(関係性がメインとも言える創作だと思うので)
著者も二次創作を経験されているとのことで、読んで得るものがあると思います。 -
ほんと~~~~~~~~~に多読でいらっしゃるな…
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作品全体の好みもあるけれど、心に刺さる言葉があるとその作品は心に残る。また、名場面があるとそれはもっと心に揺さぶってくる。
その名場面は世間いっぱいで言われる名場面と同じこともあれば、自分にとっての名場面であることもあるし、同じ場面であっても自分に心に突き刺さる理由は自分だけのものだ。
「ナラタージュ」「キッチン」など好きな作品の評論もあったし、また読みたい本も増えて早速読んで面白かった。