- Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121023797
感想・レビュー・書評
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東2法経図・6F開架:B1/5/2379/K
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主人公は伊藤博文、山県有朋、西園寺公望の3人。
それにしても、元老と協力しながら郡部を抑えてイギリス型の二大政党制を目指した原敬のすごさと浜口雄幸は尊敬に値する。 -
元老制度を通して、明治〜昭和初期の日本を描く。
制度と書いたけど、元老には法律的に何の根拠もない。にもかかわらず、後継首相を推薦し、国の政策判断に寄与してきた。およそ民主的ではなかった。山県が政党内閣を支持しなかったのは、選挙のために腐敗・汚職がまかり通るからだし、国よりも選挙を優先に考えるからだ。山県が指摘する政党内閣の危険性は、現代もまったく変わらない。でも、もう元老はいないし二度と現れない。政治的には不幸な時代だ。 -
元老について辿るとそのまま日本の近代史になるんだな。元老というものに殊更興味がなかったとしても明治維新後にどのように日本の政治制度が整えられていったのかがよくわかるし、原敬なんかの政治手腕も凄いもんがあるなと改めて勉強になることが多かった。西園寺と昭和天皇と陸軍や右翼との政治的バトルのところは、著者の熱意も伝わってきて、それぞれの想いを考えたときになんだか胸が熱くなってしまった。
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元老が近代日本の外交、内政にどのような役割を果たしたのか、天皇との関係、そもそも元老とはどのような制度で誰が作り変えていったのか、制度の正当性はどのように確保されたのか、そして最後に一人元老となった西園寺死後、誰が首相を決めていったのか、について詳細かつ、わかりやすく解説している。
日本のような後進国がいきなり議会制度を機能させることは難しく、その意味で元老というインフォーマルな制度が日本の民主制度発展にもった積極的な役割をもっと評価すべきであるという主張には大いに首肯できる。
ところで、「あとがき」で慶應義塾大学の八代先生のお名前が登場してきて、ちょっとびっくり。私も2003年の在外研究時にはお世話になったので。著者の伊藤先生も2015年のオックスフォード滞在時にお世話になったのだとか。 -
日本史選択であれば覚えているであろう戦前の「元老」。おそらく、主に一線を退いた政治家が裏で首相選定など重大な政務を牛耳ったというイメージが強いように思われる。(というか僕がそう)しかし、この本は元老の仕事をより広くとらえ、かつ元老の影響を重視することで、イメージの刷新を狙うものである。まず、こう指摘される。
「近年まで、「元老」の用語を、藩閥有力政治家で第一線を退いても政治的影響力を及ぼす人々、と第一線を退くというニュアンスを込めて高校日本史教科書でも説明するのが普通であった。これは、元老とは「黒幕」という現代イメージを、歴史上の慣例的制度に遡らせて理解しようとしたものであり、ようやく修正された。」p71
ここから、一般のイメージより大きな役割を果たした元老の実像が主要な政治史的事件に沿って展開される。そして、こうまとめる。
「元老は、後継首相推薦やその他の重要問題で天皇を補佐することで、日本の国際協調と民主化・近代化を安定して進めていくことに、全体として寄与したと言える。…世界や東アジアの流れに対する長期的なヴィジョンを持った元老が、後継首相推薦などを通して外交・内政の調整と方向づけを行った。」p298
本書は新書にしては珍しい、「他研究者への当てつけ」の側面を持った本である。学会で論争を繰り広げるのではなく、成果を直接一般市民に問うという変化球である。また、豊富に一次資料を引用することで、他説への批判も行う。単なる自説の開陳や事例の解説に止まらないという意味で、日本史学の豊穣な世界を覗かせてくれる、中公新書きっての歴史書になり得る一冊である。 -
明治憲法成立後の1890年代以降、天皇の特別な補佐として、首相選出を始め、内閣の存廃、戦争、条約改正など重要国務を取り仕切った元老。近代日本は、伊藤博文、山県有朋、西園寺公望ら元老8人の指導下にあった。非公式な組織のため、当初は政治の黒幕として批判されたが、昭和初期の軍部台頭下では未成熟な立憲国家を補う存在として期待が高まる。本書は、半世紀にわたり権力中枢にいた元老から描く近代日本の軌跡である。