持統天皇-壬申の乱の「真の勝者」 (中公新書 2563)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121025630

作品紹介・あらすじ

大化改新の年に誕生した少女は、五歳のときに祖父が自害し、母が心痛の余り亡くなるという悲劇を体験する。十三歳で叔父の大海人皇子と結婚。有間皇子の謀反や白村江の戦いの後、二十七歳のとき、古代最大の争乱である壬申の乱を夫と共に起こし、弟である大友皇子に勝利する。その後は中央集権化に邁進し、それまで兄弟継承相続であった天皇位を父子継承に転換させる。古代国家のかたちをつくった女帝の素顔とは。

感想・レビュー・書評

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  • 皇位継承の論理(どういう理屈で誰が選ばれるかの方法)についてはいくつかの説があって、著者の瀧浪氏の考えもこのなかで示されている。
    持統の人生の勝負どころ(壬申の乱、大津皇子の変、珂瑠皇子立太子)が皇位継承にからむもので、本著もそこに割く割合が大きいため、前提となる著者の考えに納得できないとその後の展開も読んでてよくわからなくなる。
    もちろん、全体が理解できなければ無意味なんてことはなく、部分的にでもなるほどと思わされるところはある。

  • 持統天皇の一代記なのですが、この本で書かれている通り持統帝の血統に対するこだわりは通説であると思うものの、「私は」で考えを書くところが多いこともあって筆者の私見を通説に対抗して記述しているように見えるのが残念かなと。先日テレビで筆者の方を見たときは持説に固執するような話し方ではなかったですので、書き方の問題だとは思うのですが……

  • この本読むんしんどかった。あ~ぁ、久しぶりに、はずれ本買うてもうた。というんが、正直な感想。名前の鸕野讃良に関係する土地についてや結婚のいきさつに言及されていない。ところどころ、文末に個人の感想を入れていてシラケる。まぁ、買うた俺が悪いんやけど。

    持統天皇は草壁嫡系の皇統を存続維持させるために国家統治(飛鳥から藤原京、平城京への遷都や律令)や対外政策を根底から覆し、「日本書紀」「万葉集」でイデオロギーの確立など「倭」から「日本」へ変革させたと考えると、常人では想像できない物凄い精神力の持ち主である。また、この時代は明治維新に匹敵するぐらいの社会体制が変わったと考える。
    どうでもええ話やけど、私は若いころから今もそうだが、何か天武天皇にはフワフワしていて実態が伴わない。本当に天智天皇と実の兄弟かって思っている。
    壬申の乱(この乱っていうのも変やけど)は、色々理由付けしているが、「身分の卑しい奴が天皇を名乗るなよ」って感じで奪い取ったものだと思っている。そして草壁嫡系が立ち行かなくなった挙句の果てが、井上内親王廃后に繋がると考える。(7/31)

  • 持統天皇の生涯をたどった最新の新書。壬申の乱における持統天皇(鸕野皇女)の果たした役割を高く評価していますが、鸕野の働き掛けにより大海人が計画的に事を運び、新羅征討のための兵をそっくり自軍として圧倒的有利に戦いを進めたとする倉本一宏氏の説には否定的です。また、7世紀の女帝の役割やその条件については独自の見解を示されており、女帝の実子は立太子できないとの説には「本当にそうなのかなぁ」と思いました。他の文献も読みながら、この本に立ち返りたいと思います。

  • 息子や孫に皇位を継承させる、そのためにはライバルを滅ぼす、冷遇する、取り込む母の執念が印象的でした。
    天武天皇が天皇中心の国家体制を築き、持統天皇が大宝律令を完成させて、万葉集を編纂し天武天皇を神格化し、草壁皇子の系統こそが正統だとうたった。持統天皇の人生はまさに日本建国の物語。

  • 先に読んだ「壬申の乱」との大きな違いは、持統天皇の役割を重視している点だろうか。後の皇位継承問題への影響も大きかったとの評価。万葉集編纂に関する記述など興味深い点も多かった。

  • 皇位継承の前提などは興味深い内容。
    ただし、資料の問題などで推測の部分もそれなりある。

  • 大化改新の年に生まれた皇女は、壬申の乱に勝利し、藤原京遷都、万葉集編纂などを進め古代国家の形を大きく変えた。生涯と事蹟を辿る

  • 持統天皇以前、皇位に「30歳以上、譲位なし」という縛りがあったのは意外。後年当たり前の慣例になっているだけに。これ一事でも、天武持統期において日本のフォーマットに画期的な変革があったのを見て取れる。文化事業である万葉集の編纂にも、天武系の嫡流を顕彰し、権力の正当性の主張を謳う意図があったという指摘は納得。何しろ国造りの最中にあって、わざわざ注力した事業なのだから。豪族の首領としての大王時代の終焉、幼少天皇の擁立≒藤原氏との協力体制、国のあり方の大きな転換の中心に居た持統天皇の存在感は、今後よりクローズアップされるのではと思う。

  •  持統天皇の生涯を新たな視点も交えて書かれている。持統天皇は父、中大兄皇子や母方の蘇我氏が持っていた深謀遠慮、機を見るに敏、競争相手に対する容赦ない仕打ちなどを受け継いだ女性である。壬申の乱に勝ち抜き、自らの血筋を皇位に即けるべく、さまざまな策を弄して権力の座を保持し続けてきたのである。譲位制度や、若年即位、不可解な「不改常典」、吉野行幸など理を通すよりは情で突破したという感がある。ただ天智、天武と通う野望の強い女帝であったことが本書を通してうかがえる。
     女性天皇の是非については今日的問題にもなっている。その際によく持ち出されるのは古代の女帝は男系が途切れそうなときの時間稼ぎであり、実権はさほどなかったという論である。持統もまた文武天皇即位までのつなぎであったことは確かであるが、単なる時代の傍観者ではなく、積極的に政権に携わった持統天皇のような存在がいたということは忘れてはなるまい。

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著者プロフィール

1947年大阪府生まれ。京都女子大学大学院修士課程修了。京都女子大学文学部講師等を経て、1994年同大学教授。現在、京都女子大学名誉教授。文学博士(筑波大学)。専攻は日本古代史(飛鳥・奈良・平安)。主な著著に『平安建都(日本の歴史5)』(集英社)、『日本古代宮廷社会の研究』(思文閣出版)、『最後の女帝 孝謙天皇』『奈良朝の政変と道鏡』(ともに吉川弘文館)、『女性天皇』(集英社新書)、『藤原良房・基経』(ミネルヴァ書房)、『光明皇后―平城京にかけた夢と祈り―』『持統天皇―壬申の乱の「真の勝者」―』(ともに中公新書)がある。

「2022年 『聖武天皇 「天平の皇帝」とその時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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