日本の品種はすごい-うまい植物をめぐる物語 (中公新書 (2572))
- 中央公論新社 (2019年12月17日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121025722
感想・レビュー・書評
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「昔に比べて野菜が不味くなった」とお嘆き
の貴兄は読むべし、です。
多くの食材は品種改良により、より美味しく
よりたくさん、より一年中食べられるように
なっています。
コメの品種改良は多くの媒体で取り上げられ
ているので、ここでは触れられていません。
ジャガイモ、ナシ、林檎、大根、様々な食材
を紹介しています。
ポテトチップの原料であるジャガイモは、国
産であることが良く知られていますが、一方
でマクドナルドのポテトは全て米国産です。
なぜか。
ここに品種というものが密接に関係していま
す。
普段何気なく食べている野菜に対して「品種」
というこだわりに興味を持つきっかけになる
こと間違いなしの一冊です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ジャガイモ、ナシ、リンゴ、ダイズ、カブ、ダイコン、ワサビの七種を「採り上げ」て、うまい品種の歴史をわかりやすくひもとく。トリビアの宝庫で、この七種だけでなく、もっといろんな品種の話を聞いてみたいと思う。
(ジャガイモ)
・マックのポテトがやたら長いのは専用品種「ラセットバーバンク」が巨大だから
・日本のジャガイモ出荷量は年190万トン、このうちカルビーが27万トン。マクドナルドが年間に購入するジャガイモは150万トンで全量輸入。
・コナフブキ、男爵に続く日本年間生産量第3位の「トヨシロ」はポテトチップス用品種、コロッケ用としては男爵が根強いがきたかむいが注目株、ポテトサラダ用にはさやか」が理想的、など使用用途別に品種が別れている
(ナシ)
・栽培種の起源は野生種のニホンヤマナシ。長十郎、二十世紀、幸水が代表品種
・長十郎の欠点は日持ちの悪さ、黒斑病対策された(それでも弱い)二十世紀が天下をとるも、早生品種であり真夏に収穫期を迎える1989年に黒星病に対する弱さにもかかわらず「幸水」が生産量一位に。
(リンゴ)
・「林檎の唄」のリンゴは紅玉、アメリカ名はジョナサン
・「ふじ」の前世代のナンバーワン品種は国光、
戦前戦後にはこれと国光のほぼ2品種
・ふじは国光にデリシャスの花粉をかけたもの、世界ナンバーワン生産品種で一説によると世界シェア30%
・ジョナゴールドは母親が紅玉(ジョナサン)、父親がゴールデンデリシャス。つがるはその逆。
(ダイズ)
・国産大豆の用途は豆腐53%、納豆16%、煮豆総菜10%、味噌醤油10%。大豆の自給率は7%。
・1kgの大豆からとれる豆腐は11丁から13丁
・豆腐には高タンパクで粒が大きいフクユタカ、納豆には小粒の品種が向く
・枝豆は豆ではなく野菜分類
カブ、ダイコン、ワサビには品種についての面白いトピックは少なめで、野菜そのものの雑学が多いがそれはそれでおもしろい。 -
農作物の品種改良の話のどこが面白いのかと思うでしょうが、これがめちゃ面白くて各章を一気読みしてしまう。
江戸時代から今日に至るまで全国各地の育種家たちが馬鈴薯、梨などの身近な作物をどんなに苦労して育てて市場に送り出してきたか(どれだけ優れていても売れてナンボの生き残りをかけた競争)、という数々の物語は興味が尽きない。
馬鈴薯は男爵とメークインだけじゃない。昭和の時代に梨といえば長十郎と二十世紀だったが食したことはありますか? -
知識のマシンガン状態。たった数種類の品目を語っているだけだが、とても吸収しきれない。それだけ品種の奥深さがあるのだなと実感した。
普及の背景、たとえば名品種が最初から優等生だったことではないこと、生産方法の変化によって普及が進んだことなどは、ケーススタディ的に参考になる。