- Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121026552
作品紹介・あらすじ
藤原道長が栄華を極めていた時代、対馬・壱岐と北九州沿岸が突如、外敵に襲われた。千年前の日本が直面した危機を検証する。
感想・レビュー・書評
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刀伊入寇の戦記にフォーカスしたものを期待しましたが、俯瞰的に刀伊入寇を位置づけた学術的なレポートですね。唐滅亡は東アジアに激震を与え、多くの周辺王朝が交代しています。本事案は、(契丹)遼に追いやられた刀伊(女真)の一部が海賊となって活路を求め襲来したものです。ちょうど、藤原隆家が左遷されていましたが、多くの軍勢を伴って下向しているはずもなく、おそらく太宰府の国衙で地元武装集団を加え編成した軍団が主体となって応戦したのでしょう。九州上陸を辛くも凌いだ戦いです。犠牲も多く、壱岐対馬を中心に死者364人、拉致1289人に及んでいます。武者は、将門の乱以降およそ百年ごとに歴史上に顔を出しますが、鴨長明は本件もその一つに数えています。筆者は、王朝の軍制や軍事システムが見られるといいますが、混成集団であり、見えたとまでは言い切れないのではないでしょうか?
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題名どおり、1019年(寛仁3年)、対馬・壱岐、北九州沿岸が外敵に襲われた「刀伊の入寇」を取り上げた書である。
事件そのものについては史料に基づき具体的に論じられているが、より広い射程の下で、本事件の政治的・軍政史的意義や後世への影響が論じられているので、一般読者にとっては、そうした見方、観点こそ歴史の見通しを与えてくれて、大変ありがたい。
主なところは、次のとおり。
東アジア情勢の変化が我が国に影響を及ぼしてきたこと、9世紀の新羅海賊の侵攻、13世紀の元寇に並び、本件、11世紀の刀伊の入寇が、大きな対外危機として捉えられたこと。
律令制下の徴兵制が機能不全となり、武者、兵(つわもの)と呼ばれる者たちが登場してきたこと、その中から軍事貴族化して武家に発展していったこと。
以上のような歴史の流れを大掴みに理解できたのは良かったが、本書の面白さは、幾つかの史料から本事件の実態を再構成していくところ。都への事件報告書、恩賞の上申書、拉致された者が戻ってからの陳述書などを通して、戦闘の時系列、戦闘場所、敵船やお互いの武器、武具、死傷者や捕虜として連れ去られてしまった人々についてなど、リアルに事件の実相が明らかにされる。
歴史の面白さを教えてくれる、最近の中公新書歴史シリーズとして読み応えのある一冊。 -
対外戦争とまでは行かないが平安期の外国からの侵入にたいしての考察。「武者の世」への視点、東アジアから見た視点など様々な考察が興味深い。
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元寇以前の最大の海外からの武力侵攻である「刀伊の入寇」、日本政府(王朝政治)はどう対応したのか?
当時の東アジアの状況説明から入っている(結論から言うと、都に知らせが届いたときには既に撃退していたのだが)
まあ、朝鮮半島との「ややこしい歴史」の一部というか、当時はもっと深刻にややこしかったんだなとか、律令国家から弛緩したとは言え、太宰府と都の間の文書連絡は維持できていたんだなとか。
そして、刀伊を撃退した「やんごとなき武者」達は、武士として時代の中心に取って代わることになる。
最後に:刀伊とは、(≒東夷)からきてたのねと。
読みにくかった分☆一つ減 -
刀伊の入寇前から事件のあらまし 事件後の影響がよくわかった
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平安時代に海の向こうからの進攻があった。それが「刀伊の入寇」である。九世紀の新羅進攻、十一世紀の刀伊来襲、十三世紀のモンゴル襲来が我が国が迎えた対外危機であった。刀伊は東夷であろうと言われている。高麗が女真族に圧迫を受けていた時代である。高麗から刀伊と言われていた女真族が朝鮮半島を通って日本を襲撃したのだ。当時の東アジア情勢と日本の情勢を説明し、当時の人たちがこの危機にどのように対処したかを明らかにする。モンゴル来襲の前にこんなことがあったのだな。四方を海に囲まれている日本ではいつでも有りうることだったんだ。
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源平のようないわゆる武士が出てくる少し前の時代がどうなっていたのか、が目新しかった。
ところどころ、文章が読みにくいなと思った。