- Amazon.co.jp ・本 (213ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122024137
感想・レビュー・書評
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日本家屋や女性観など、日本の古きよきものを愛しく語りながら
しかし決して諸手をあげて日本賛美をするでない姿勢が、まず一線を画しているなと。
羊羹のくだりは痺れました…ああいう抑えのきいたぞくぞくする文章を書ける、本物がいた時代があったんですね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
だがその羊羹の色合いも、あれを塗り物の菓子器に入れて、肌の色が辛うじて見分けられる暗がりへ沈めると、ひとしお瞑想的になる。
ひとはあの冷たく滑かなものを口中にふくむ時、あたかも室内の暗黒が一箇の甘い塊になって舌の先で融けるのを感じ、ほんとうはそう旨くない羊羹でも、味に異様な深みが添わるように思う。 -
「美は物体にあるのではなく 、物体と物体との作り出す陰翳のあや 、明暗にあると考える 。」という物の見方は大変参考になった。
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西洋の美と本質的に違う日本の美について語る谷崎の名エッセイ。陰や隈の内側、つまり陰影に日本の美の本質を見つけた谷崎の文章は流麗で読みやすい。灯りのない江戸時代の街の夜のように、葛飾応為の絵のような、怪談噺が描写する月明かりとその陰。陰に潜むもの。現代人には想像しにくい世界をエッセイで作り出している。現代作家の日記のような薄っぺらいエッセイと違う骨太の文学作品。
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「いんえいらいさん」、と読みます。念のため。
この字面が好きです。美しい。
受験生のときに「現代文で最もたくさん出題されてる文章」って聞いたような気がするんだけど本当かな、自信ない。
確かに当時模試か問題集で一度お目にかかったと思うけど。
懐かしくなって読んでみました…が。
…こんなだったっけ?
どうしよう年寄りの懐古趣味にしかみえない。
あとトイレへのこだわりすごいな!
でも私は畳敷きで木製のトイレなんて絶対、嫌です。特に掃除が。
中国のトイレにも文句つけてて、旅行で出かけた先で、トイレに入ってみたものの汚過ぎて慌てて出てきたって書いてあって、日本の誇る文豪も同じことしてるんだーと、ここだけは共感しました。
とにかく、全体的に取り上げた対象に対するねっとり感がすっごいです。
しかも若干偏執的。
暗がりの中のほの白く浮かび上がる女性の顔、手の美しさをじっとりねっとり書き連ねる感じがね、もう…。
ぞわっと!する!
それでもこの文章が人気なのは(私の記憶が合ってるなら、ですが)、文豪の書く日本文化論、て感じだからかな?
でも今の感覚と違い過ぎて、実感というか共感というか想像できなさそう。
あとものすごく羊羹食べたくなります。
”羊羹の色あいも、あれを塗り物の菓子器に入れて、肌の色が辛うじて見分けられる暗がりへ沈めると、ひとしお瞑想的になる。人はあの冷たく滑かなものを口中にふくむ時、あたかも室内の暗黒が一箇の甘い塊になって舌の先で融けるのを感じ、ほんとうはそう旨くない羊羹でも、味に異様な深みが添わるように思う。”
…文豪ともなると、こんなこと考えながら羊羹食べるらしいですよ! -
日本文化の良さを再確認。
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大好きな谷崎潤一郎の随筆集です。
障子の和紙を通したあかりの繊細さ、蒔絵の無限のきらめき。
当時の世相を反映した(迎合した?)日本万歳だけではない、文章の美しい手触りを満喫できます。
この本を読むたび、羊羹を食べたくてしかたなくなります。 -
教養といえばコレ。と紹介してもらったので読んでみました。
なんか良い。何が良いのか上手に言語化できないけど、「雰囲気の良い読み心地」といった感覚ですかね。旅先で一人静かに読みたいです。外国に行った時に読んで日本に思いを馳せるのも良いですね。書いてあることは「最近の日本の照明は明る過ぎ(・ε・`*)」っていう谷崎潤一郎のボヤきなんですけど。
最近部屋の照明が明るすぎて、昼白色から電球色の電球に変えてみました。ちょっと暗すぎて他の間接照明で補完しているけど、とても落ち着いて夜の時間のひとときがが気持ちよくなりました。暗いほうが静かな空間も心地いいし、音楽をかけても気分が上がるんですよね。ご飯もゆっくり食べたくなります。暗さが空間を引き立てることを実感しました。 -
最高。
もっと世の中のいろいろなことに意見を持ちたい。 -
女遊びの経験値が高いから書けるのかな?東西比較のエッセイ