完璧な病室 (中公文庫 お 51-4)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122044432

感想・レビュー・書評

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  • こんなんでも愚弟が大好きなんで、なんだか読むのが辛うなってしまいました。あんまり覚えておりません。

  • 2014年の53冊目です。
    小川洋子の2004年に出版された短編文庫本です。
    収められている作品は、それ以前に出版されたものです。
    「完璧な病室」(1989年)芥川賞候補
    「揚羽蝶が壊れる時」(1988年)海燕新人文学賞
    「冷めない紅茶」(1990年)芥川賞候補、野間文芸新人賞候補
    「ダイヴィング・プール」(1989年)芥川賞候補
    4つの短編は、デビュー作品の「揚羽蝶が壊れる時」を含め初期の作品で、小川洋子の作風を確立した作品集だと感じます。私なりの書評を書いてみました。
    透明感が強く汚れたものが排除された静謐な空間に対する強い欲求を感じます。
    「完璧な病室」は、不治の病で入院する弟を、姉が看病する話ですが、姉にとって弟の病室で過ごす清潔で汚れの無い時間が掛けがえのないものになっていきます。「揚羽蝶が壊れる時」は、母親が死んで祖母に育てられた私が、老いて壊れてしまった祖母を介護施設に預ける時の私の心を精密にかつ俯瞰しながら表現しています。「冷めない紅茶」は、中学校時代の同級生が、その当時図書室で働いていた司書の女性と結婚していた。その夫婦と自分との関係性の中で司書の女性の奇妙な存在感が気になる作品です。「ダイヴィング・プール」は、孤児院を営む両親と主人公の女子学生と多くの孤児たちの暮らしをベースに書かれています。孤児の一人である純は、飛び込みの選手。主人公の彼女は彼の飛び込みをプールサイドで見つめている時、恍惚感にも似た気持ちに包まれる。その彼女の心には、同時に残虐性がうごめいている。10代の少女の心に垣間見える無垢な残虐性とは異なるもので、恍惚感の増大を抑止するかのように息づいています。

  • 時間を忘れて読み耽るような面白さがあるわけではないのに、いつの間にかこの作者の紡ぎだす世界に引き込まれてしまっている・・・。気持ち悪いくらいに生々しい描写も、静謐で透明な描写も、文章を読んでいる途中には素通りしてしまうのに、後からじわじわと沁みてくる・・・・うまく言葉で表せない不思議な感覚を感じます。

  • 病とか死とか
    リアルよりリアルな描写

    ちょっときもちわるいです

  • 主人公の女性の心の闇が伝わってくるようで、苦しく辛くなった。
    精神を病み、強盗に殺された母、母の異常を恐れ離婚した父、残り僅かな命を静かな病室で全うしようとする愛しい弟、多忙すぎて午前3時にしか会えない夫。
    彼女にとって、病室以外のものは全て汚れた有機質を含むものであり、大きなダストボックスに放り込んでしまいたい衝動に駆られる。
    弟を介してしか関係のない抽象的な人間である一人の男性がなぜ心の拠り所となったのだろう。

  • 小川洋子さんの本は沢山読んでいるのに、この処女作が収められた完璧な病室はまだ読んだことがなかった。
    最初の作品だから、読む前は雰囲気や読みにくさとかあるのかと思ったけど、違った。
    小川さんらしさ、寂しい感じ、残酷な感じ、グロテスクな感じがあり、入りやすかった。
    完璧な病室が1番良かった。なんだかものすごく泣いた。
    ダイヴィング・プールは胸がつまる。

  • 短編集。
    小川さんのお話は、いつも甘美て色っぽい感じがします。
    残酷で登場人物達からは、生活臭みたいなのがしないんだけど、人間的なところがある…上手く言えませんが、そんな雰囲気でした。
    どの短編も素敵です。

  • 言葉で表せない出来事があり、言葉でしか現せない何かがある。
    はっきりと見えているのに触ることができなくて、カタチはあやふやなのに重いとか…世の中には不思議と理屈で捉えられないものがある。

    ひとつも断定的に語られていないせいで、いくつもの可能性を思い描いて奇妙な気持ちになる。
    無関係なはずがとても共鳴してしまう。
    ひやりと怖くて、ファンタジーにも思えるのにやっぱりシュール。
    この世界感にしっとりと沈むのが心地よい。

  • やっぱり喪失がテーマの小川氏。ただ、初期短編集ということで、最近の作品よりはもう少し生臭さがあるように感じられました。もちろんそれは作者の意図するところでしょうけれど、初期には生臭さと表裏にあるどこか透明な感情や不安定さを描いていた人が、最近では生臭さを廃した硬質な透明さ(と喪失)を表現していることが興味深いです。

  • 洋子さんの書く、壊れかけた家族像は好きです。

    静謐で温い、透き通った愛情とか、生々しい生活の彼処にあるもの・音とか。

著者プロフィール

1962年、岡山市生まれ。88年、「揚羽蝶が壊れる時」により海燕新人文学賞、91年、「妊娠カレンダー」により芥川賞を受賞。『博士の愛した数式』で読売文学賞及び本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。その他の小説作品に『猫を抱いて象と泳ぐ』『琥珀のまたたき』『約束された移動』などがある。

「2023年 『川端康成の話をしようじゃないか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小川洋子の作品

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