猫 (中公文庫)

制作 : クラフト・エヴィング商會 
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 444
レビュー : 45
  • Amazon.co.jp ・本 (209ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122052284

感想・レビュー・書評

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  • 1955年出版の『猫』を底本として、クラフト・エヴィング商會の創作とデザインを加え再編集したもの。
    底本の筆者たちははいずれも、明治・大正の生まれ。
    描かれる風景も、縁側のある木造の民家をほうふつとさせる。
    それぞれの時代の、動物とのふれあいや関心が描かれている。

    有馬頼義 『お軽はらきり』
    自分で手術した猫。

    猪熊弦一郎『みつちやん』
    猫を連れて疎開し、農村で問題を起こす。
    猫の世界にも戦争があった。

    井伏鱒二『庭前』
    蝮と猫の攻防。

    大佛次郎
    『「隅の隠居」の話』
    不細工で孤高のおじいさん猫の話。
    『猫騒動』
    どう見ても「うちの猫が外で作った」猫が乱入して大喧嘩!
    そっくりで見分けがつかな~い!

    尾高京子『仔猫の太平洋横断』
    米国滞在から帰国する船待ちの日々、立ち寄ったレコード屋さんの子猫たちに一目ぼれして…

    坂西志保『猫に仕えるの記』『猫族の紳士淑女』
    正直なところ、猫に「飼われて」いる。
    彼女のところに通うにも飼い主に同行させる箱入り君と、ろくに子育てもせず、楽しいことだけして優雅に暮らし、気がつくと、いつの間にか孕んでいる貴婦人猫。

    瀧井孝作『小猫』
    よその子猫をたまに可愛がるくらいがいいかな…

    谷崎潤一郎
    『ねこ』
    犬はジャレつく以外に愛の表現を知らないが、猫は技巧的。
    『猫――マイペット』
    美しいだけの猫はすぐ飽きる。利口なのがよい。
    『客ぎらひ』
    呼ばれて返事をするのが億劫な時、猫は聞こえたという合図に尻尾だけ振ってみせる。
    自分も、客の長話に飽き飽きしてきたとき、返事をせずに尻尾だけ振っているつもりになる。

    壷井栄
    『木かげ』
    優雅な猫をもらって育てたが、近所の身元正しい雄猫たちの求愛を撥ね退けて、庭先に来る汚いどら猫とねんごろに。
    『猫と母性愛』
    一番の出来そこないの末っ子を溺愛した母猫と、いつまでも乳離れできないその子猫。

    寺田寅彦『猫』『子猫』
    貰われてきた三毛のメスは、家の姉妹に愛玩されすぎて、ストレスでやせてしまう。
    あとから貰われてきた猫は、行儀悪く野性的だが、なんとか仕付けた。
    月夜に、二匹並んで庭を眺める後ろ姿を見ると、不思議な気持ちになる。

    柳田國男『どら猫観察記』『猫の島』
    民族学者らしい、猫にまつわる言い伝えなどの蒐集と考察。
    牛馬犬などの家畜と明らかに違い、猫は人に飼われていない。
    人がいなくても生きていける。
    人は人で、そんな猫に、信頼できぬ部分や油断ならぬものを感じて、「化ける」「復讐する」といった言い伝えを残すのだろう。

    クラフト・エヴィング商會『わすれもの、さがしもの』

  • 著者たちと猫の距離感が心地いい。どの時代にも猫に飼われる人間はいるのだなぁ。
    個人的に坂西志保と寺田寅彦がお気に入り。

  • タイトルからして猫好きな人が手に取る本、なのに求めるような内容では決して無いと感じました。飄々とした猫さながらの話もあるんだけど、ちょっとツライ話もあって、なんかそれをここに入れなくてもいいのにって思った。アイコンとしての猫好きならあれなんだけど、猫と共に生きてる人にはわかりすぎてツライ。時代がちがうから猫との距離感が違うんだろうけど、そにかくそう感じました。

  • 犬か猫かと訊かれたら猫派の私。作家の猫愛はとっても伝わってくるのだが、現代の猫好きさんには辛くなるような猫描写もあり。よくぞ集めに集めたり、ってかんじ。

  • 13人からなる「猫」に関するエッセイ(や、物語)。猫好きにはたまりませんが、昔と今では猫に関する考え方や接し方もまた、社会的ありようも変わったなと考えさせられたりもします。

    ●私は猫に対して感ずるような純粋な温かい感情を人間に対して懐く事の出来ないのを残念に思ふ。さういう事が可能になる為には私は人間より一段高い存在になる必要があるかも知れない。それはとても出来さうもないし、仮りにそれが出来たとした時に私は恐らく超人の孤独と悲哀を感じなければなるまい。凡人の私は矢張子猫でも可愛がって、そして人間は人間として尊敬し親しみ恐れ憚り或は憎むより外はないかも知れない。(「子猫」寺田寅彦より)

  • 猫文学史(あるのか)に残る名アンソロジー!
    ほろりとしたり笑ったり、しかし背景にあるのは猫と人間と戦争の話でもある。
    なにげなく猫が隣にいる生活のなんと泰平なことよ。

    「月が冴えて風の静かな此頃の秋の夜に、三毛と玉とは縁側の踏台になつて居る木の切株の上に並んで背中を丸くして行儀よく坐って居る。そしてひっそりと静まりかへつて月光の庭を眺めて居る。それをじつと見て居ると何となしに幽寂といったやうな感じが胸にしみる。そしてふだんの猫とちがって、人間の心で測り知られぬ別の世界から来て居るもののやうな気のする事がある。此のやうな心持は恐らく他の家畜に対しては起こらないのかも知れない」
    寺田寅彦
    「猫」

  • 文学

  • お軽はらきり(有馬頼義)
    みつちゃん(猪熊弦一郎)
    庭前(井伏鱒二)
    「隅の隠居」の話猫騒動(大佛次郎)
    仔猫の太平洋横断(尾高京子)
    猫に仕えるの記猫族の紳士淑女(坂西志保)
    子猫(瀧井孝作)
    ねこ猫―マイペット客ぎらひ(谷崎潤一郎)
    木かげ猫と母性愛(壺井榮)
    猫子猫(寺田寅彦)
    どら猫観察記猫の島(柳田国男)
    忘れもの探しもの(クラフト・エヴィング商會)

    著者:有馬頼義(1918-1980、港区、小説家)、猪熊弦一郎(1902-1993、高松市、洋画家)、井伏鱒二(1898-1993、福山市、小説家)、大佛次郎(1907-1973、横浜市、小説家)、尾高京子(翻訳家)、坂西志保(1896-1976、東京、評論家)、瀧井孝作(1894-1984、高山市、小説家)、谷崎潤一郎(1886-1965、中央区、小説家)、壺井榮(1899-1967、香川県小豆島町、小説家)、寺田寅彦(1878-1935、千代田区、物理学者)、柳田国男(1876-1962、兵庫県福崎町、民俗学者)、クラフト・エヴィング商會(作家)

  • 猫をテーマとした短編集。どれもエッセー。文章が古くて読みにくい。内容も今一。手に取って失敗だったなぁ。

  • なんだかんだ言ってみんな猫が好き。
    あのオジさんもこのオジさんも。
    なんだか微笑ましい。

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著者プロフィール

1897-1973。横浜生まれ。東大法学部卒業。教師、外務省嘱託のかたわら小説を発表し、「鞍馬天狗」のシリーズが好評をはくし、作家専業に。代表作に「赤穂浪士」「乞食大将 後藤又兵衛」「帰郷」「パリ燃ゆ」「天皇の世紀」等多数。芸術院賞、朝日文化賞、文化勲章を受章。実兄は星の学者として名高い野尻抱影。鎌倉の自宅は一般公開され、港の見える丘公園内には、大佛次郎記念館がある。また、74年、朝日新聞社主催で大佛次郎賞が創設された。

「2014年 『猫のいる日々 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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