- Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122052833
感想・レビュー・書評
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一言結論:料理の構造を解き明かした画期的な本。ここから何を学ぶかが問われると思います。
感想:世界中の色々な料理を実際に食べ、かつ知識を有しているからこそ辿り着く発想でしょう。料理のレシピとしての研究ではなく、料理という行為そのものの本質・構造を扱った本はなかなかないのではと思います。前フリはだいぶ長いですが結論の衝撃たるや!やられた感がすごいです。
復刻版にあたり著者のメモには「料理人からは否定的な意見も多かった」と書かれているように、この本が言いたいことを読者自身が考えなければただの戯言で終わってしまいます。ここから何を学びどう思考や行動に転換させていくのかが大事ではないでしょうか。料理に限らず、様々な分野はある基本法則・原理に基づいて成り立っており、それを理解しようと努めることがひいてはその分野そのものを理解することに役立ちます。物理学は良い例だと思いますが、物理学でなくても日常のあらゆる現象には大小の差こそあれ全て本質があるわけですから、それを構造化しようと努めるべきと個人的には思います。それは生活全体、人生そのものも然りです。
ですから、料理という一見基本原理など見えそうもないものが1枚の図で表されていることは衝撃的なことであり、私たちは自分の人生ひいては他の人の人生を良いものにしていくためにそれぞれの四面体を読み解いていくことを諦めてはいけません。この本は真理を突く点で大切なことを教えてくれています。必読です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
世界中のありとあらゆる料理は基本的に原理は同じであり、(1)火という中心要素の営みを受けてそれに対応する(2)空気(3)水(4)油という三要素を合わせた四要素から、食材や調理器具などの差異こそあれども、成り立つ調理法の組み合わせだと論じている本書。この抽象的で聞いただけでは理解しがたい概念を、著者が出会ってきた様々な料理の丁寧な説明と共に読み進めていくうち、結論ではっきりとその教えの理解に驚きと共に至ることとなる。料理に於ける哲学書のような一冊。しかもこの原理は過去に存在したであろう料理やこれから未だかつて誕生したことのない料理にも通用するから、魅力的である。必携の名著。
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そこで分類するのかーという驚きはあった。
しばらく読んでいて、そもそも料理に対してそんなに興味がないことに気がついた。
自分で料理をするようになってから再読しようと思う。
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世界各地の料理を比較して、共通の構造で表現しようとした本。加熱の媒体を「空気(干す、燻る、炙る、焼く)」「水(煮る、蒸す)」「油(炒める、揚げる)」の三つに集約する観点がポイント。非加熱の味付け(漬ける)を工程の前後に添える段取りとする観点も興味深かった。
これに味付けの種類に関する洞察が加わっていれば、完全体だったかもしれない(全部、塩の仲間ってくくってるので残念)。 -
噂に違わぬ名著(名エッセイ)だった。
在野の研究者(ではないが…)が、野性的な感で発見した調理原則の因数分解。因数分解に到るプロセスの文体や解説手法がなんとも笑えるんだけど、これがすごい良いところをついてて笑いとともにうなずきを導く。
時代を感じさせない軽妙洒脱加減、文化人類学的な好奇心が掴み取る事の本質。今ならEXITのお笑いや、twitter界隈に「期せず本質を剥き出しにしてしまう人」はいっぱいいるけど、この本が書かれた時代ではこの書は異端で傑出していたのだろう、と想像できる。
サブカルチャーとメインストリームはやっぱりお隣さんどうしだし、対象の違いでしか無い。カブトムシかゴキブリか。どちらが価値が高いかなんて、他者から強要されるものじゃ無い。
京都大学の齋藤 嘉臣准教授の『ジャズ・アンバサダーズー「アメリカ」の音楽外交史』(講談社メチエ、 2017年)もこんな印象を受ける一冊だった。
▼料理の構造の四面体モデル
・ナマモノが底面⇔火が頂点
・焼きものライン(空気の介在)
・揚げ物ライン(炒め物…油の介在)
・煮物ライン(水の介在)
▼できたものをさらに四面体のどこに位置づけるか?を考えるとバリエーションが増える。
また、料理の作り方の初めからおしまいまでを順に辿って要素分解してみるのはレパートリーを増やすためのトレーニングにもなる。
追記:
Popeye 2020年6月号で、「レヴィ・ストロースの世界」を知った。
コレのパロディだったんだな…何重に伏線が貼られていてますますこの本が好きになった。大瀧詠一のポップス再構築の手法と同じだ。
両者の比較ともいえない、単に羅列しただけの丸パクリの論文も見つけた。なんだこれは…
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience/44/1/44_97/_pdf -
料理の根源にある基本原理を示した一冊。骨しゃぶり氏のブログで紹介されていたので読んでみた。
料理とは火を頂点とした、水、空気、油の3要素、合計4点からなる四面体で構成される。
この原理を筆者のこれまでの様々な料理経験、国内外での食事経験等をふまえて見出すまでの流れが示されている。
ここ数年、料理は科学である、とぼんやりと考えていたが、本書を読んでそれが確信にかわった。料理する上でなんとなく考えていた事柄を本書が明確に、かつ自分よりも高い解像度で示してくれた。料理人ではないからこそ出てきた視点だとも思う。
あくまでも著者の提唱する一概念であり、体系的に研究されているものではない。しかし本書の概念を基礎として、料理学が研究されていけばより面白く、また料理をするにあたってさらに実用的な結論が導き出されると思う(不勉強だが、すでに学問としてあるのだろうか?)。 -
世界中の料理を鮮やかに描きながら、調理プロセスに基づいて体系化を試みる。情感たっぷりに記された文章、料理名のイメージを揺るがす旅……もさることながら、時折混じる「不真面目さ」に思わず笑ってしまう。肩の力を抜いて味わいたい。
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タイトルの意味も分からず、入口部分では著者のいわんとしていることが全く分からず。
しかし、読み進めていくうちに、なるほど料理ってそういうものだったのか!と気付いた。
そして、最終的に四面体の意味が分かり著者の発想の素晴らしさに感心した。
料理について見事に体系化されている。
前半は少しだけ退屈だったけれど、最後まで読んで本当に良かった。
途中で投げ出してはもったいない一冊。
他にも著書が多くあるようなので、そちらも是非読んでみたい。
とてもユニークな思考回路を持った著者の書いた本がつまらないはずはないだろう。 -
古今東西、あらゆる料理の構造を論理的に分解し演繹的に再分類しようという動機がまず面白い。
そして実際「なるほど確かに」という論理展開ではあるが、個人的には「ふむ、おもしろいな」の範疇を越えた得るものはなかった。