昭和16年夏の敗戦 (中公文庫)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122053304

作品紹介・あらすじ

緒戦、奇襲攻撃で勝利するが、国力の差から劣勢となり敗戦に至る…。日米開戦直前の夏、総力戦研究所の若手エリートたちがシミュレーションを重ねて出した戦争の経過は、実際とほぼ同じだった!知られざる実話をもとに日本が"無謀な戦争"に突入したプロセスを描き、意思決定のあるべき姿を示す。

感想・レビュー・書評

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  • 学生時代に読み始めたけど、途中根気負けして頓挫してた本。
    30代になって改めて購入して読みました。

    概要としては、
    日中戦争末期から太平洋戦争開戦までの約2年間に渡って、国内の総力戦研究所で行う開戦シミュレーションや、開戦に至るまでの意思決定会議が描写されている。ただ国家の意思決定に関与する極々限られた範囲の人間の描写なので、当時の日本の庶民感情や生活感がわかるものではありません。(作者もそこを書くつもりはそもそもないと思いますが…)

    感想としては、約80年前の時代感と軍事・官僚用語などが散りばめられているので、現代とのギャップから正直読みにくさがありました。(学生時代の自分は頓挫)
    ただ自分としては、祖父母世代が年齢的に小学生の時に生きた時代であることには違いないので、当時どんな気持ちで世界を見ていたんだろうかと想像しながらなんとか読み進めることができました。

    正直そこまで理解できてはないのですが、
    末尾の石破さんとの対談だけでも読む価値はあるかなと思いました。
    戦争を知らない世代だからこそ、読んで知っておくことは大事だと思います。世代問わず自分がどんな世界のどんな時代に生きているかの意識は大事だと思うので、今後もこのような教養につながる書籍は読んでいきたいと思いました。

    戦争の流れメモ
    ・日中戦争の長期化
    ・満州の南北に拡大する戦線を支える資源が必要だった
    ・ソ連とは中立条約を結んだが、ソ連からすると独ソ関係が悪化しており好都合だった。(東の満州より西のドイツにリソースを割ける)
    ・インドネシアの石油を取りに南進する機運が高まり、現地を植民地として統治しているアメリカ・イギリス・オランダに敵対
    ・日本の南進に対してABCD包囲網が敷かれたが日本は資源獲得のため強硬姿勢を継続
    ・日本は持たざる国なので資源確保が生命線
    ・インドネシアの石油は、本国まで運ばなければ意味がない(補給線リスク)
    ・国力と資源自給率は相関性が高く、日米差は明らか
    ・アメリカイギリスとの戦争を想定していることが政府電報を傍受されアメリカにばれていた
    ・アメリカはじわじわと石油の禁輸を実施し、日本自ら南進させるよう仕向けた
    ・開戦前に、国力差で石油不足から補給線が途絶えるという敗戦シナリオが予測されていたのにも関わらず、軍部のロジックで結果的に開戦を決めてしまった。
    ・開戦、真珠湾で先制、ミッドウェーで大敗、ジリ貧になる、原爆投下、降伏。

  • 3年ぐらい積んどいた後にようやく読了。なんだか身近で起きていることと似ているような…規模は違えど。現実の数字を把握しつつも結論ありきで鉛筆なめなめつじつま合わせ。リスキーシフト。TOPの判断。→敗戦

  • 戦争についていろいろ知らない事いっぱいだな。
    総力戦研究所で、
    あらかじめ敗戦が予測できていたのに、
    結局は声のでかい人の流れに流されて、
    合理的な考えが消し去られてしまう。
    個々人がもっと自分で考えられるようにならないと、
    結局は悪い流れに流されてしまう。
    今終戦後何年だかわかっていな恥ずかしい僕だが、
    過去から学ぶことたくさんありだ。
    戦争について、デリケートな問題もたくさんある。
    戦争責任と天皇陛下、東条英機、
    学校でちゃんとならっていない(学校でも教えていない部分)部分もあるが、知るべきこと多い。

  • 第二次世界大戦時において、日本がアメリカとの戦争を決断するに至るプロセスを、「総力戦研究所」という若手精鋭グループによる日米戦争シミュレーションのプロセスと並走させながら、その実態を暴いた著作。

  • 日米開戦の直前の昭和16年夏。「総力戦研究所」に各省庁、陸海軍、民間から集められた30代の精鋭達が考えた太平洋戦争のシミュレーションは現実の戦争の流れに酷似していた。

    予期できたはずの敗戦への流れを現実の政権・軍部はなぜ防げなかったのか。軍国主義という言葉で思考停止せず、ディテールを積重ねることで著者は明らかにしようとしている。

  • 読み進めていくと意外と面白い。太平洋戦争の開戦をただの軍部の暴走と片づけるのではなく、当時の統帥部や天皇、企画委員との関係性や世論の盛り上がり、そして総力戦研究所に焦点を当て、可能な限り客観的に分析しようとした姿勢が感じ取れた。当時の軍のトップや政界のトップは、執筆当初80代とのことで、きっと戦争前後に辛酸を舐めた経験から、眼光や雰囲気は一般人とは一線を画すものだったと推察するが、そのような大物たちにも臆さず取材に行った当時30代の猪瀬直樹、一体何者や…。

  • R4.10.10~10.30

    (感想)
    非常に興味深く、内容も面白かった。
    ただ、時系列が時々いったりきたりする文体が読みにくかったのがマイナス。

    あと、模擬内閣のデータ分析のすごみというものがはっきり伝わらず、この程度なら当時の政府にスルーされても仕方ないかもと思わせた。
    ただこの当時、政府にこの結果を進言するという行為ができたこと自体が奇跡だったのかもしれない。

  • 太平洋戦争は果たして意味があったのか…
    時代の流れとはいえ、多くの犠牲を出し、日本が地の底に落ちた戦い…

    戦後生まれの僕はそう思う。

    そして、机上訓練でここまで詳細な戦略分析、状況分析ができるものかと思う。

    若き力の限界のない活動を見た気がした。

  • 開戦直前発足した総力戦研究所
    そこで導き出された日本必敗
    空気感や情緒的な判断で為される意思決定

  • 戦争の始まるいきさつを、関わる人間の心理や状況を克明に描きながら書いており、引き込まれた。
    なぜ負けるとわかっているような戦争が始まってしまったのかよくわかる。
    https://longtime1116.hatenablog.com/entry/2021/08/02/000000

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著者プロフィール

猪瀬直樹
一九四六年長野県生まれ。作家。八七年『ミカドの肖像』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。九六年『日本国の研究』で文藝春秋読者賞受賞。東京大学客員教授、東京工業大学特任教授を歴任。二〇〇二年、小泉首相より道路公団民営化委員に任命される。〇七年、東京都副知事に任命される。一二年、東京都知事に就任。一三年、辞任。一五年、大阪府・市特別顧問就任。主な著書に『天皇の影法師』『昭和16年夏の敗戦』『黒船の世紀』『ペルソナ 三島由紀夫伝』『ピカレスク 太宰治伝』のほか、『日本の近代 猪瀬直樹著作集』(全一二巻、電子版全一六巻)がある。近著に『日本国・不安の研究』『昭和23年冬の暗号』など。二〇二二年から参議院議員。

「2023年 『太陽の男 石原慎太郎伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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