- Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122055537
作品紹介・あらすじ
愛と孤独について、言葉について、存在の意味について-本の音に耳を澄まし、本の中から世界を望む。小説、エッセイ、評論など、積みあげられた書物の山から見いだされた84冊。本への静かな愛にみちた書評集。
感想・レビュー・書評
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堀江作品らしい、すっきりとした装丁が素敵で、手に取りました。タイトルの響きも素敵。
堀江さんの書評では、取り上げられている本が完全アウェーなことも多いもので(笑)、「『子午線を求めて』のように、読んでいて微妙に苦しくなるのでは?」と思って、こわごわ開きました。ですが、目次を開くと、比較的ポピュラーな本が取り上げられており、その中でも自分が読んだことがあるものがそこそこあるからか、緊張感なく本編に進むことができました。
自分が読んだ本を、こんなにも言葉を尽くして、優美で的確な文章で紹介できるのか!と感じ入らずにいられない書評のかずかず。本好きに加え、知見の広さがあるから、1冊の本の紹介したいポイントをだらだら書いて広げていくんじゃなくて、自分のフィールドに引っぱりこんで、奥行きのある文章で表すことができるというのが、ありありとわかります。ああ、自分がこんな文しか書けないことが本当に嫌になる(笑)。
複数の雑誌に掲載された書評の原稿がまとめられているので、掲載誌によって要求された字数の多少はあるとは思いますが、仏文関連の評が、やはり語彙が豊かで雄弁に書かれているように思います。ちょっとついていくのに焦る点もあるかも(苦笑)。どこから読んでも、堀江さんの体温の低い、でも冷たさを感じない穏やかな筆致が素敵なのですが、「堀江さんの書評と相性がいいな」と思って読んだのは、川上弘美と小川洋子とジュンパ・ラヒリ。起伏の少なく見える物語を紹介するのは、相当の技量が必要なんだろうな…とつくづく思います。
実はこの本に掲載された文章中、私のベストは、「あとがき(単行本刊行時の)」。いろいろ書いたあげくにこれを選ぶのはちゃぶ台返しっぽいんですけど…書き出しの数行のさりげなさと的確さには、もうまいっちまうよ!
-----[2011.10.25 未読リストアップ時のコメント]------
タイトルは、ダブルミーニングなのかしら?詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
須賀敦子さんの本でも思ったのですが、書評エッセイを1冊まるまる通読するのは、かなり厳しいものがあります。
なので、自分の読了作品を中心に拾い読み。
トゥーサンが懐かしかった。
最近の国内作品では小川洋子さんと川上弘美さん。堀江さんの読書の嗜好傾向がわかる1冊でした。 -
小説や評論、エッセイなど多岐に渡る、堀江氏の書評を纏めた一冊。
本を読んだ時に感じる、ある種の旋律。気の利いたタイトルや扇情的な宣伝文句では決して伝えることのできないその音色を言葉に換え、テーマ別に分けて綴じてある。(カバーの袖部分引用)
ほぼ読んだこともタイトルさえも知らない本ばかりだったけれど、堀江氏の静謐な筆致に必死にしがみついて読みました。興味を惹かれた本、数冊見つけました。
流れる文章が作り出す空気に惹かれるのって気持ちがいい。 -
端正な書評。
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『郊外へ』が良かったので他の著書も読みたくなったので買ってみた。
タイトル通り、短文の書評集。
小説とフランス文学についての文章が多いように思う。
最後、小川洋子『まぶた』評は一読の価値あり。
エッセイは非常に好みだが、小説はどうだろうか……。 -
300 みちくさ
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書評でありながら文化論。書籍の中に埋め込まれたエッセンス、良質性が堀江さんの視線を通して丹念に浮き彫りにされる。ため息が出るほど端正な文章で。文学、歴史、建築、写真…縦横無尽に堀江さんの感性が駆け巡る。
取り上げられているのは馴染みのない作者、分野の書籍が大半だったが、未知の世界に対する知的好奇心をそそられる。 -
うますぎる。語彙が豊富なのに流れが滞ることのない豊かな文章で書かれた、フランス文学、写真集、日本の小説など様々なジャンルの書評が納められている。川上弘美の「神様」の書評を読めば堀江敏幸さんの文章力や視点がいかに卓越しているかわかりやすいと思う。
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ブックガイド、として読んでも面白い。著者の感想文集ととらえてもよいし、書評集と考えてもよいかも。この中で読んだことがある本もあるし、これから読んでみようと思う本もある。著者がどんな本を読んできたのかということにも興味があるけれど、やっぱりちょっと偏っているというかマニアックかなあとも思うな。