比ぶ者なき (中公文庫 は 61-3)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 207
感想 : 24
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  • Amazon.co.jp ・本 (592ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122068575

作品紹介・あらすじ

時は七世紀末。先の大王から疎まれ、不遇の時を過ごした藤原不比等。彼の胸には、畏しき野望が秘められていた。それは、「日本書紀」という名の神話を創り上げ、天皇を神にすること。そして自らも神となることで、藤原家に永遠の繁栄をもたらすことであった。万世一系、天孫降臨、聖徳太子――すべてはこの男がつくり出した。古代史に隠された闇を抉り出す、著者初の歴史小説にして会心作!

感想・レビュー・書評

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  • 馳星周『比ぶ者なき』中公文庫。

    馳星周の初の歴史小説。馳星周よ、ついにお前までもかという怒りを感じた。歴史小説家には失礼かも知れないが、自分はかなり以前から、現代小説から歴史小説に転向する作家は創作のアイディアが枯渇したために過去の事実に脚色を加えた小説世界に走るのだと考えている。

    藤原不比等を主人公に、天皇を神格化するために日本書紀という神話を創り上げる歴史の闇を描いた作品である。7世紀末の日本には日本人は天皇家とその取り巻きの30人しか居なかったのかというくらい余りにも狭い世界観。歴史読本を読むかのような人物造形の薄っぺらさ。新たな分野に挑んだ勇気は認めるが、馳星周が手を出すべき小説のジャンルではないと思う。馳星周ならまだまだ現代を舞台にしたピカレスク小説が書けるはずだ。勿体無い。

    本体価格860円
    ★★

  • 歴史小説。歴史が、物凄く苦手な私ですが、小説だと読みやすく感じるので、たまに読みます。鸕野讚良皇女(持統天皇)が、孫の軽皇子を玉座に座らせるために、藤原不比等と手を組む。藤原不比等は、自らの野心を叶えるために利用する。聖徳太子が、不比等により作られた人物だとは、驚きでした。不比等の自身の野心を叶えるために、先々を見て政をする執念は、凄いと思った。あらゆる全てのことを見通す力が半端ない。この後どうなっていくのか、続編も楽しみ

  • 馳さんの本は初めて読みました。歴史の教科書などで名前だけは知っていた藤原不比等。その人物像を興味深く読ませてもらいました。ぜひ続きを読みたいです。

  • 藤原不比等…飛鳥の世にもこんな人が。世の中権力者の都合ばかり、自分の一族の繁栄の為に利用できるものはなんでも利用する。しかも騙しのスケールは国家レベル

  • 最初、文庫本で600ページ弱という分厚さに戦いたが、読み進むうちに、政の中での権謀術数の凄さに、全くページ数の多さを感じることはなかった。と言っても、休み休み読んで、3日かかったけど。続編の「四神の旗」を先に読んでしまっていたので、少しワクワク感がなかったのが、やや残念ではある。

  • ホントに馳さんの本⁈ってなるけど、面白い。
    人の名前が難しくって誰が誰か分からなくなるのは自分の頭のせいなのでしょうがない。
    不比等はホントに、名前をもらったとしたら他人がそう思ってしまうほど、自分でつけたのだったらそれだけ、怖い人だったんだろうなぁ

    「政とはなにかを成すためになにかを譲る。その繰り返しなのでございます」

  • 強烈なリーダーシップで大和朝廷を動かしていった藤原不比等の権謀術策を、見事に描いた一冊。
    まるで囲碁将棋のように詰めていく恐ろしさは、一周回って見事と感じさせる。
    政治家の見本のような人物。

  • 日本史の勉強

  • 歴史小説だけれど、難しい説明文はあまりなく、ストーリーがほぼ会話で進んでいくのでとても読みやすかった。これがハードボイルドの印象の強い馳星周の作品だなんて!この本に出会えて良かった。続編もあるようなのでそちらも楽しみ。

  • 場面は、主人公の藤原不比等が、自らも信頼を受け、玉座にと思い極めていた草壁皇子の死に立ち会うところからはじまる。持統天皇、文武天皇、元明天皇、元正天皇と、時に協力しあい、信頼を受け、政治に腕をふるい、かけひきをし、皇族や並み居る臣下たちを説得し味方につけ、あるいは蹴散らして、権力を振るう。底には、「父上は満ち足りていたであろう。吾は餓えているのだ」「この国の根幹を変えようとしているとは露ほども悟られてはならぬ。天皇の力を奪おうとしていると見抜かれてはならぬ。未来永劫に続く力を求めていると知られてはならぬ」という思いを抱きつつ。古からのしきたりをねじ曲げ、天皇を神にまつりあげ、本来なら資格のない者を皇位に就けようとする、と謗られても堪えず。政とは、なにかを手に入れるためになにかを差し出す、を地でいき、ひとつひとつ積み重ねていき。最後は、長屋王のなかに、若き日の自らとおなじ野心を感じながらも、死につく、と。「古事記」も天皇を頂点とした国家のありようもみな、藤原不比等が自らの力をふるい、藤原家を未来永劫繁栄させるためにこしらえたもの、という見方から描かれた歴史絵巻。そこまでするのか、そこまで先回りして読み切るのか、といった思いを目の当たりにする圧巻。高島正人「藤原不比等」(吉川弘文館)とあわせて読むと、また味わいが増します。

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著者プロフィール

1965年北海道生まれ。横浜市立大学卒業。出版社勤務を経てフリーライターになる。96年『不夜城』で小説家としてデビュー。翌年に同作品で第18回吉川英治文学新人賞、98年に『鎮魂歌(レクイエム)不夜城2』で第51回日本推理作家協会賞、99年に『漂流街』で第1回大藪春彦賞を受賞。2020年、『少年と犬』で第163回直木賞受賞した。著者多数。

「2022年 『煉獄の使徒 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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