漱石先生と私たち (中公文庫 こ 63-1)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122074385

作品紹介・あらすじ

その時分の私たちというのが、なんでも先生の真似をして見ようという、随分馬鹿気きっていた時分なのである。――師・夏目漱石をはじめ、寺田寅彦、鈴木三重吉、森田草平から芥川龍之介まで。漱石山房で、ともに文学談義を交わし、酒を呑み、気焔を上げた人々を、第一の弟子が回想する。文庫オリジナル。〈コミックエッセイ〉香日ゆら目次より夏目漱石 休息している漱石/漱石二十三回忌/漱石と恋愛/漱石二題/漱石と読書/漱石と画/漱石と烟草/偽物/注釈/「漱石発狂」の報告者/漱石文庫/漱石半身像/漱石のうちの猫/修善寺日記寺田寅彦と松根東洋城 『漱石・寅彦・三重吉』序/「寅彦全集」/「破門」/『回想の寺田寅彦』序/漱石と寅彦/寅彦と死相/寅彦と俳諧/寅彦と羽子板/「御髭」/松根東洋城のこと鈴木三重吉 三重吉の思い出/鈴木三重吉/三重吉のこと/青春記/写真安倍能成 安倍のこと/眼鏡/アンシュリアム森田草平と内田百閒 森田草平/『実説艸平記』/誤植/誤伝の経路/チョッキのまぼろし/白髪野上豊一郎 野上の死/野上のこと芥川龍之介 芥川龍之介の死/一挿話コミックエッセイ「漱石門下の小宮豊隆」香日ゆら

感想・レビュー・書評

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  •  漱石に接した人間は多く回想の文章を書いているが、本書は一番弟子とも言うべき小宮豊隆の師漱石をはじめ、寅彦、三重吉、松根東洋城、安倍能成、森田草平等についての回想の文章を収めたもの。
     本書を始め弟子たちの文章からは、いろいろ忙しいにもかかわらず面倒見の良い漱石と、それに甘える弟子たちとの子弟関係が良く分かるが、それにしてもこれだけ弟子たちから慕われた漱石の偉大さと言うものを改めて感じた。

     もっとも印象に残ったのは、巻頭の「休息している漱石」の中の文章で、「今から考えると、私たちはどうしてあんなに先生の邪魔計りしていたのかと慚愧に堪えない。」との弁。おっしゃる通りとは思いつつ、それだけの時間を割いてなお漱石があれだけの作品を書いたことに驚くのだが。
    (もっとも、「我々がああして先生の邪魔をしたからこそ、淋しがりやの先生も、いくらかは気が紛れてよかったのだ」と言うのだが。)

     他の人物評からも各人の性格や著作の本質等が自ずと浮き上がってきて、その目の確かさに頷かされるところが多い。

  • 夏目漱石の弟子とか書生というか周囲の人たちの内の1人が書いた漱石回顧録なんだろうなという軽い認識で読み始めたが予想以上に事細かな思い出話が詰まっていて楽しく読んだ。
    「修善寺日記」には入院中の漱石をお世話したり鏡子夫人にも気を配り、毎日見舞いに訪れる前に花を摘んだり分けて貰ったりなど記されているが、文章から感じられる漱石に対する深い敬愛と親愛ぶりに驚いた。
    俳句会での態度について寺田寅彦に窘められたことなど赤裸々に記していて気取ったところのない素直な人柄を感じ、三四郎を読みたくなる(小宮氏がモデルらしい)。
    巻末の香日ゆらさんのコミックエッセイが楽しく、参考になった。

  • 修善寺日記とか、奥さんのと比べるとなかなか面白い。さすがは「漱石神社の神主」と言われただけのことはあるって言うくらい、先生絶対、先生ラブ、みたいな感じが伝わって来る。
    昔の人の日記を見るといつも思うのが、昔の人って開けっぴろげにケンカしてるよなーって言うこと。今の人はそんなにしないと思うんだけど。自分の周りだけなのかな。

  • 岐阜聖徳学園大学図書館OPACへ→
    http://carin.shotoku.ac.jp/scripts/mgwms32.dll?MGWLPN=CARIN&wlapp=CARIN&WEBOPAC=LINK&ID=BB00650817

    寺田寅彦、鈴木三重吉から芥川龍之介まで。木曜の面会日に漱石を囲んで集った門下生たちの文学的青春の日々を第一の弟子が語る。
    (出版社HPより)

  • 漱石の門下生であるところの著者が漱石のこと、そしてその周りにいた人々のことについて書いた文章が集められている。最も印象に残ったのは、修善寺での出来事である。漱石が胃潰瘍のため危篤状態に陥った。そこへ、門下生たちが集まって来る。結婚式を控えた著者もやってくる。漱石はまだ40歳代である。門下生たちは20歳代だろうか。漱石に浣腸をしておまるに座らせたとある。中には本職が医者だったものもいたのだろうが、浣腸か、弟子がそこまでするのか、と思ってしまった。漱石自身がそのころのことを振り返ってどこかで書いていた。枕元で、自分が死んだらどうするこうするという話を誰かがしているのが耳に入って来たと。それを記憶しているわけだ。不用意なことは言えない。漱石と読書についても書かれている。明治や大正の時代にどれくらいの本が出版されていたのだろうか。どれくらい翻訳されていたのだろうか。漱石は英語のままで読んでいたのだろうが、当時の出版事情が気になる。それでも、「読書は、自分が是までに経験した事もないような、特殊な経験を経験させてくれる。」とあるから、そう思えるくらいにはいくつもの読書体験ができたわけだろう。寺田寅彦については少し印象が変わった。著者が俳句をまじめに作らないことに寅彦が腹を立てている様子など興味深かった。また、中谷宇吉郎の名前が出て来るのは当然のこととして、続けて湯川秀樹の名前を見つけたときは何となく嬉しかった。きっとノーベル賞を取る前のことだったのだろうな。

  • 身近に接した人による追憶だけに、生前の漱石の仕草や話しぶりを眼前に見る思い。漱石自身が得ただろう体験や考察を、小説の中の描写や会話を通して眺める洞察は興味深かった。何度も読んだ一節も、それを書いた時の作者の脳裏を追体験する事で、また違った趣きが湧いてくる。本書の構成の半分近くは、弟子仲間の回想に割かれており、その点ややアテが外れた。

  • 夏目漱石の弟子である筆者による、夏目漱石と周りの人々についての話。

    いかに筆者が夏目漱石ラブだったかが伝わってきた。基本全肯定ですから。読んでてこっちも嬉しくなる。夏目漱石の他の弟子についても書かれてて、なんかイメージが具体的になって、ちょっと親しみが湧いてきて、これもよかった。なんか文章も読みやすかった。

  • 寺田寅彦、鈴木三重吉から芥川龍之介まで。木曜の面会日に漱石を囲んで集った門下生たちの文学的青春の日々を第一の弟子が語る。〈コミックエッセイ〉香日ゆら

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