ゲーミフィケーション―<ゲーム>がビジネスを変える

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  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140815168

感想・レビュー・書評

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  • 「ゲーミフィケーション」ちらほら聞く言葉なので読んでみた。

    端的にはゲーム的な要素を使うことで、持続したり楽しむことを促すことのようで、
    冒頭では著者の始めた節電ゲームの事例を紹介している。単純に電力メーターを読んでツイートするだけでも、過去との比較やフォロワーとの交流でゲームになるといういい例だ。

    オバマ大統領の選挙活動に使用されたSNSも面白い。オバマ大統領と言えばソーシャルの活用とは聞いていたが、具体的に中身を聞いてみるとなるほどと言ったものである。
    幾つか要点を紹介してみると
    ・支援活動の記録が残る
    ・支援活動を行うことでポイントが貯まり、レベルが上がっていく
    ・レベルに応じた支援活動を促す(無理させない)
    ・時差まで考慮して勧誘対象を指名する
    ・献金記録を使用し、直近に献金した人に頻繁な催促はしない
    というふうに、支援者にも勧誘先にも不快感や負担を与えず、参加・継続しやすい仕組みである。単純にソーシャル・ネットワークの活用等というと、いかに情報をばらまくかという方向に全力を注ぎそうなイメージだったが、このシステムは情報の使い所をきちんと考えられている。
    SNSではあるものの、「ゲーム的」なエッセンスを引き出していたのだ。

    ゲーミフィケーションに必須な要素の一つが「フィードバック」である。
    結果の分からない事を続けてもゲーム足り得ない。
    そしてフィードバックは遅すぎても行けない。人の欲望は時間とともに衰えていく。
    素早く、適切なタイミングでのフィードバックが必要である。
    ゲームシステムやソーシャルといった要素はゲームの持続性を強固にする意味では重要だが、必須というわけではない。

    計測して数値化することで様々な日常からフィードバックを引き出すことができる。例えば歩数計のようなものは江戸時代頃から存在したらしいが、より簡単で安価になったことで身近になり、ポケットピカチュウのようにゲーム機そのものになったこともあるが、今ではNike+のようにあくまでも歩数計を軸にしながら発信や記録により十分楽しめるものになっている。

    また、技術の進歩により機器も安価になり、高速軽量となっている。近年普及しているスマートフォンであれば計測・記録・発信を行うことができ、ソーシャル要素との連携も容易である。

    ゲーム化することで日常をより楽しめる面があるのは確かだが、忘れていはいけないことは
    ・どんなゲームも合わない人間は居る
    ・どんなゲームも飽きる可能性がある
    ・モラルを下げるようなマイナス要素もある
    ・デザインは容易いことではない
    ・作って終わりではなく、運用して調整は必要
    といったところ。
    モチベーションを引き出し、発展と幸福のために役立てて欲しいとは思うものの、ただ導入すればいいという事にはならない。

    孔子の言葉
    ”これを知る者は、これを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず”
    というのは自分も好きな言葉。
    これをゲーミフィケーションと関連付けるのはちょっとやり過ぎな気がするが、
    単なる動機を引き出すだけでなく、楽しむことでよりよい効果を期待する考えはゲーミフィケーションの仕組みを問わず大切である。

  • ソーシャルの10年の次はゲームの10年が来る。スタバのカルマカップの例がゲーミフィケションの何たるかを語るときにいちばん分かりやすいと思った。そういう意味では事例をもっと知りたいと思った。万歩計も、日々のログも、すべてゲーム。ソーシャルゲームは飽きさせないように設計されていたり。仕事や自分の動機づけに活かせる考え方でありながら、ちょっと息苦しさも感じたり。。もう少し深堀したい。

  • 私は昔からゲームが好きだ。
    ドラクエでマドハンドを使って経験値稼ぎをしたり、本来の目的からかけ離れた遊び方をして楽しんでいる。しかし、そんな私でも「セカンドライフ」には馴染めなかった。アンロック、レベルデザイン。やはりゲームとして重要なこれらの要素が欠けていると楽しめないものなのか。
    結局私はゲームの枠組みの中のレベルデザインの微妙な不適合を見つけ出していただけだ。そういったことが本書を読んでわかってきた。
    ネタはどこにでも転がっている。これらをゲーミフィケーションできるか?
    すべてはアイデア勝負。

  • ゲーミフィケーションについてのイントロとしては及第点と思います。
    ただ、途中のアメリカ等の事例のつなげ方など、本としての流れはよくないです。なので、考えながら読むという事が必要になります。

  • 最近何かと話題のゲーミフィケーションですが、まさにこれからウェブ関連も絡んで盛り上がって行くのかなと思うので、また改めて読み返したい

  • ゲーミフィケーションの解説本。
    ゲーミフィケーション関連の本はゆめみ深田さんの
    「ソーシャルゲームはなぜハマるのか」に続いて2冊目。

    ビジネス的な応用についてなら深田さんの本が良いと思うけど、
    そもそもゲーミフィケーションとは何なのかという概念の部分を
    理解するにはこちらの井上先生の本の方が良いと思いました。

    ゲーミフィケーションとはどういうものであって、
    その登場にはどういう背景があってなぜ今出てきたのか、
    そしてこれからどのように使われていくのか。

    ゲーミフィケーションという単語がゲームをイメージするからか、
    ソーシャルゲームと同時期に語られるようになったためか
    ゲームという世界の言葉として捉えられてしまう場面もあるけど、
    人を動機づける仕組みとしてのゲーミフィケーションはとても奥が深くて
    その応用範囲は広い。
    様々な分野の事例を紹介しつつその特徴が解説されていて、非常に分かりやすい。

    また、ゲーミフィケーションが登場した背景もとても納得しやすい。
    第一に、「測るテクノロジー」の進歩。様々なセンサーやライフログの発達。
    第二に、インターネットにおける「時間」のあり方の変化。フィードバックの高速化やモバイル化にソーシャル化よる即時性の進化。
    第三に、ゲームにシンパシーを感じるゲーム世代の成熟。

    井上先生はゲーミフィケーションを単なる流行ではなく、
    社会を変えるさまざまなインフラへ浸透していくだろう、と考えています。

    この点は、同意。
    というかそうあって欲しい。

    もちろん、なんでもかんでもゲームにすりゃあいいということではないけども、
    何をするにしても「楽しい」方がいいですよね。

    どんな場面であっても、みんなを楽しませるにはどうしたら良いんだろう、と
    そういう発想ができる社会になっていくという意味でゲーミフィケーションが
    浸透していくのはけっこう素敵なことだと思います。

  • 2013年のナイキフューエルバンドの日本発売によってゲーミフィケーションという考え方がさらに加速する気がします。「物語」から「ソーシャル」へ、「ソーシャル」から「ゲーム」へ。この流れが着実に進行していることをひしひし感じました。しかし、スーパーマリオやドラクエやポケモンを生んだゲームの大国、日本がこの分野ではアメリカの背中を追い続けることになるのはなぜでしょうか?閉じたゲームと開いたゲームの違いがあるのかもしれません。それはテクノロジーの問題ではなくて社会の問題であるように思われます。ゲーミフィケーションの本質はゲームの方にあるのではなくて個人と社会のコミュニケーションの方にあるのだと感じました。

  • 「いい大人」が思うゲームではなく、広義のゲーム。
    測定できればゲームが生まれる。
    単純な仕組みでもうまくデザインすれば良いのだから、モガベーなんぞに人的資源を浪費させずに奪取したいものである。
    ただ、単語が一人歩きして搾取、監視、アメ無きムチの濫用への口実とならないように気をつけなくてはいけない。いかにもそうなりそうな概念。

  • ゲーミフィケーション。
    ゲームの考え方やデザイン・メカニクスなどの要素をゲーム以外の社会的な活動やサービスに利用するもの。

    例えば、ナイキプラス、フォースクエアなどが挙げられます。
    ゲームの要素を入れることでユーザを惹きつけることができるとこと。
    ゲームってこういうところではわりとネガティブにとらわれがちですが、こういう視点、思考は大事だとおもいました。ユーザに対して魅力的で面白いものを提供する、
    リアルな世界で様々な分野で活用することができるんだと思いました。

  • 本書は、国際大学GLOCOMの助教であり、節電ゲーミフィケーションアプリ「#denkimeter」の作者である著者が「ゲーミフィケーション (Gamification)」について述べた本である。

    Gartnerによれば、「ゲーミフィケーションは、ゲームメカニクスを非ゲーム的な分野に活用すること」であり、2011年、同社のハイプサイクル分析のリストに加えられた注目のキーワード (概念) である。

    本書は大きくCharpter 1と2に分かれる。
    Chap. 1ではゲーミフィケーションとは何か、について米大統領選のオバマを例にあげて説明し、ビジネス・インパクトおよび、今日ゲーミフィケーションが注目を浴びるようになった社会的・技術的背景について説明する。
    Chap. 2ではゲーミフィケーションを実践する際のポイント、それにまつわる問題点について議論し、将来の展望について触れ、本書を締めくくっている。

    本書は豊富な例で、「内発的動機付けを換気すること」「フィードバックの早さが重要」など、ゲーミフィケーションを成功させるための本質が丁寧に説明されている。また、一般書の形をとってはいるが、参考文献は充実しており研究者・技術者にとって非常に有益な情報を含んでいる。

    しかし苦言を呈するとすれば、散文調で書かれていてトピックセンテンスが分かりにくく、一部の節を除いてはまとめのセクションも設けられていないので、「内容は面白いが要点は何かと聞かれると悩む」という現象を引き起こす。本書は職場の同僚から借りたのだが、借りる際に内容を聞いてみると要領を得ない答えが帰ってきた。また、著者のゲーミフィケーションへの熱い想いが伝わってくる反面、ゲーム脳についてなど、冗長な内容も見られた。

    まとめると、内容は非常に有益であるが、要点をつかむのに労力を要する。これは時間の限られた社会人が読む書籍としては大きな欠点であるので、★2つ減点して★3つとする。

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