資本主義という謎 「成長なき時代」をどう生きるか (NHK出版新書)

  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140884003

作品紹介・あらすじ

なぜ西洋で誕生したのか?なぜ支配的なシステムになりえたのか?-経済事象のみならず、私たちの生き方をも規定している資本主義。その本質について、一六世紀からの歴史をふまえ、宗教・国家・個人との関係にいたるまで徹底討論。はたして「成長」がなくとも幸福で活力のある社会を構築することはできるのか。世界経済の潮流を見据え、未来を展望するスリリングな討論。

感想・レビュー・書評

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  • とても(めちゃくちゃ)いい本でした。ラストのほうでは、桐島、部活やめるってよの高校生たちと社会が対応させられていたりして、対談の結論にもぐっときて、泣いてしまいそうでした。「アメリカ、覇権やめるってよ」には噴き出してしまいました(笑)。
    石原千秋さんの『打倒!センター試験国語』で資本主義についてはこちらの本を、とあったので手に取りました。
    人類学、人類史的な視点で資本主義(西洋史における近代)が語られていて、かつ、対談はつねに人間への真摯な思いで満ちていて、非常に救われました。私は資本主義のもたらしたものの大半は嫌いで、どうもこのやり方には救いはないのではないかと、昔から懐疑的で、近年の社会状況ではその思いはどんどん強くなっていました。しかし、その資本主義に深く関わる人たち(大澤さんは社会学者ですが)も、資本主義は終わるとはっきり言われていて、そして逃げずにその先をどうするのかということを専門的に考えてくださっていて、すごく勇気が持てました。経済学者の方、エコノミストの方、ぜひこうしたことを考えて、行動に移すのは難しくとも、ともかく考えていってくださればと思いました。もちろん私達市民の一人ひとりも考え、逃げずにぶつかっていかなければならない問題です。猶予はおそらくあと十年ほどということですので、自分も、この十年で、みんながこの後の世界を生きられるような社会作りの下準備を、少なくとも自分のできる範囲ではきちんと終わらせなければならないと感じました。
    非正規雇用者をこれだけかかえている日本ですが、非正規雇用の労働者がはたしてどれだけの貧困に実際にさらされているのかということは、それぞれの方にそれぞれの事情と状況があると思うので、全体像としてどうなるかということは私はイメージできません。しかし、正規雇用の若い労働者が、体や命を犠牲にして働いているのを非常に多く目にし、非正規雇用でも正規雇用でも、つらい人はつらい目にあっているのだろうという、全体として若い人の労働に対しては暗い気持ちがあります。
    これからの時代(資本主義が終わってから)のシステムは、「自分の命や心を大切にしながら、可能な範囲で一生懸命働く」という生き方を、どうやったら多くの人が実現できるかということに深く関わってくると思います。今の時代は、人々、とくに若い人々が、あまりにも健康を犠牲にして働かされすぎています。
    私自身(27才)は現在、非正規雇用で働いていて、疾病者で、嗜好品などはほとんど購入できない状態ですが、しかし、全く絶望感や不安感とは無縁で、幸せに生きさせて頂いています。一番の理由は、本書でも言及されていた「寂しさ」を感じずにすんでいるからだと思います。そして、周りの非正規雇用者たちを見回しても、絶望を感じて貧困のなかで生きている人がいるか、といえば、少なくとも私の周りではそうではありません。大人たちの、非正規雇用=不幸のような図式は、私達の世代には肌感覚としてはそこまで馴染んでいないかな、という印象も持っています。正社員として一生を過ごしたことがないために、非正規雇用で一生を過ごすとそれに比べてどうなるのか、ということが、まだあまりよくわかっていないからかもしれません(出産や育児など、多額の費用が必要となる人生のイベントを経験するのは、今の収入ではものすごく難しいのかもしれません)。しかしともかく、雇用は保証されていなくとも、職場での信頼関係があり、家族や友人との絆を感じられている限り、人はそこまで「不幸」になることは、できないのではないかと感じます。
    しかし、私自身が今のように幸せな状態で社会に参加することができるようになるまでには、資本主義社会の生んだ様々な構造によって奪われた沢山のものと、それを取り返すためのあまりにも長い戦いの時間がありました。親世代と比べて、自分たちの世代のほうが多くのものを奪われている、という実感はあります。それはほとんどが、人間性や人との繋がりに関わる問題です。資本主義が終わって次のシステムが来たとき、私達若い世代が思うことはおそらく一つだと思います。人と人とがばらばらにならずに、きちんと他人を信頼し、信頼される関係を誰もがもてる社会、その実現が目指されると思います。

  • 「(株)貧困大国アメリカ」を読むと、資本主義は強欲な金融資本主義へと進み、グローバル化し、政府への影響も強めているという。そこで手に取ったのが、タイトルもピッタリな「資本主義という謎」です。金利が2%を割る状態とは、投資すべき“理想”がない状態だそうな。現在、利子率革命が起こっていて、資本主義は大きな転換点にあると指摘します。また、資本主義が内包する「蒐集」という動機は、辺境がなくなった時に果てるといいます。推奨される成長なき安寧秩序の世界では、限りある食料・エネルギーは上手く配分できるのでしょうか?まだまだ、先は見えませんね。

  • 地球規模で拡大する資本主義は一見普遍的な様相を持ちつつも、実は特殊な地域の宗教的・地理的バックボーンの上に成立した概念である。そうした資本主義が持つ不可思議さを歴史的に解きほぐす本。勉強になりました。

  • 「資本主義」の根源的な発生にまで遡って対談する本書の内容には、ちょっと衝撃を覚えた。果たして「資本主義の終焉」が来るのだろうか。
    本書は歴史解釈の本かとも思うが、こう言う視点もあるのかと新鮮に思える。
    「資本主義は限られた割合の人にしか成立し得ない」「15%対85%」とは驚きつつも納得の思いも持つ。確かに世界中のすべての国が先進国に到達する風景は想像し難い。そもそもエネルギーも環境も持たないだろう。
    16世紀のイギリスの歴史から「新興国が先進国に追いつくとデフレが始まる」とは衝撃、これは法則として成立するのだろうか。いろいろと考えさせられた。
    本書は2013年の発行だが、時が過ぎた現在でこそ説得力をもつ内容だと思えた。

  • 資本主義という謎 (NHK出版新書 400)
    (和書)2013年10月14日 00:37
    水野 和夫, 大澤 真幸 NHK出版 2013年2月7日


    格差を絶えず付け続ける運動が資本主義である。

    それに対し格差を解消することを目指す平等と平和の哲学がある。

    資本主義の中から格差を解消する対抗運動が生まれることは考えづらい。それは資本主義自体が格差をつくる永久運動としてしか存在意義がないからである。やはり理念を明確に持つことが不可欠であると思う。

    〈理念)=〈格差の解消としての平等と平和の運動又はシステム〉

    柄谷行人さんの交換様式がカール・ポランニーから来ていることを知った。互酬性、再分配、商品交換である。第四象限は格差の解消を目指すものである。そしてこういった象限による様式はプルードンから来ていることは知っていた。柄谷さんはこういったことを踏まえた上で格差の論理である〈資本主義=国家=ネーション〉に対し明確にそれらのつくる格差を解消しようとする平等であり平和の理念を示している。

    この本の資本主義への対抗運動の論理には物足りなさを感じたがそれを補う意味でノーム・チョムスキーや柄谷行人が有益でした。

  • 資本主義の来歴と、それが現在陥っている問題、そして資本主義の後にやってくる時代の展望について、エコノミストの水野和夫と社会学者の大澤真幸が語っています。

    おおむね大澤がみずからの立場を示しながら水野の考えをたずねるというかたちで議論が進められており、とくに後半ではそうした傾向を強く感じました。ただし資本主義の形成について語りあっているところでは、「蒐集」というキーワードを用いて資本主義の形成から現代の状況までをつらぬく本質を見ようとする水野に対して、大澤が資本主義の形成が世界史において逆説的な性格をもっていることを強調するなど、意見の対立が見られます。ただし、両者ともみずからの立場を提示するにとどまっており、対決にいたることは回避されています。本書の目的が、サブタイトルの示すように「「成長なき時代」をどう生きるか」ということであり、あまりこうした対立点にこだわってもしかたがないという判断なのかもしれませんが、個人的には大澤の世界史のとらえかたを実証的な観点から検証するような試みがあってもよいのではないかという気がします。

    大澤独自の世界史の見方は興味深いものですが、こうして水野の議論と対照させてみると、やはりアクロバティックなもののように見えてしまいます。理論社会学の観点に立つ大澤と、文明論的な視座から資本主義を理解しようとする水野の観点のちがいが闡明に現われているように感じました。

  • 最近、資本主義経済学ではなく、「資本主義体制の社会学」がパワーある
    管理通貨制度で負債の大膨張が経済の基本になってしまった 

    「経済成長なしの資本主義の可能性」環境・資源制約 イノベーションの必要性
    資本主義は「大航海の時代」(1500年)から始まった

    <span style="color:#006633;">「21世紀の利子率革命」</span>(水野和夫)
    2%以下の超低金利が10年以上続くと、既存の経済・社会システムは維持できない
    投資機会がもはや無い アービトラージができない
    「金融の膨張に見合う利子を獲得できない」管理通貨制度の限界
    そもそも利子は禁止されていた 「両替の手数料」(メディチ家の発明)
    ヴェネチアとロンドンの為替レートの違い
    今、為替が鍵となってきているのもアナロジーを感じる
    ⇒「マイナス金利」

    カールシュミット「陸と海と」
    「海の思想」覇権国 自由貿易の保護者 アメリカ イギリス オランダ
    「陸の思想」領土支配へ向かい効率悪い

    覇権国の末路
    実物投資では利潤率が高まらないので、バブルを引き起こす
    実物経済の利益率よりね金融の利益率の方が大きい レバレッジ効果
    国家が資本の後始末リーマン できなくなると破綻 戦争 

    経済学の盲点 「グローバル貨幣論がない」タブーになっている?
    貨幣数量説 MV=P1*Y+P2*A+P3
    「撤退戦」エグジット
    現在のシステムからどうやって脱出するか
    過剰資本の減価償却負担が大きく、雇用者賃金を抑制している
    設備の廃棄か輸出によるスリム化が必要

    新書ながら下手な単行本数冊の内容がある

  • ざざざざーっとみただけだが、やはり対談本でお勉強するのは難しいという印象。ファン向けではないだろうか。

  • 資本主義の定義、歴史、現代での位置付け
    ・長い16世紀
    利子、法人の概念の発展と宗教の役割(キリスト教の抵抗)
    法人の概念により複数世代に渡る永続的な投資が可能に→イギリスの海洋権益拡大
    スペインが陸を支配しようとしたのに対してイギリスは海(貿易)を支配→資本主義的支配
    中国の明も航海を行ったが資本主義がなかったためアフリカ等の支配には至らなかった
    オランダは固定資本で海洋拡大したがイギリスは事業ごとの資本調達→永続性

    ・現代
    現代における資本主義の限界と永続可能性
    ゼロ成長社会が示唆すること、その捉え方
    「桐島部活やめるってよ」が現代社会において意味すること

  • p.21 水野:古代・中世・近代を通じての普遍的原理は蒐集(コレクション)であり、そのうち最も効率的なのが資本主義だと理解している。
    p.38 水野:16世紀イタリアでのジェノヴァで金利2%を下回る時代が11年続いた。利子率革命と言っている。超低金利のもとで投資機会がもはやない。山の上までワイン畑とか、建築物とか。
    p.65 水野:不足する食糧を獲得するための土地を「新大陸」に求めたというのが一番納得のいく説明。
    p.84 大澤:煉獄とは、地獄行きが猶予される待合室。金貸しが死ぬと、煉獄に送られ、その間に遺族が教会に寄付などの善行を積むと、罪が浄化される。安心して利子を取ることができるようになった。

    途中まではおもしろいが、やはり、どう生きるかは中途半端な対談に終わっている。

  • 世界史観から資本主義を読み解く刺激的な一冊。

    『桐島、部活やめるってよ』(映画版)を現在社会の暗喩と解釈し、桐島=アメリカと説いたのには膝を打った曰く『アメリカ、覇権やめるってよ』。桐島が学校に来なくなってうろたえるバレー部が、苛立つ梨紗がいまの日本の姿だ。
    『桐島、』では高校のクラスの中で"勝ち組"も"負け組み"も空しさをもった存在として描かれる。資本主義が行き詰まり「成長なき時代」に入ったいま「強欲」に投資を続けて利益を出し回収するシステムは破綻した。別のシステムに乗り換えるためには現行システムから撤退するのが先決だ。


    本書ではいまを資本主義が成立した「長い16世紀」に準え「長い21世紀」としている。
    1492年に新大陸が発見され新しい空間を得る事によって取引は拡大し、経済も大きくなった。これはニクソン・ショックによって固定相場から変動相場に変り、ネットという「新大陸」を発見し金融・電子取引という広大な市場が現れたことと韻を踏んでいる。

    ★古代・中世・近代に通じる普遍的原理「蒐集(コレクション)」という概念がある。ジョン・エルスナーは『蒐集』に於いて「キリスト教は魂を、資本主義はモノをコレクションする」と説いている。更に「西欧人は社会秩序そのものが本質的に蒐集的(コレクティヴ)だ」という考えを持っているとしている。そして蒐集と言う行動をもっとも効率的に行えるのが資本主義だというわけだ。
    蒐集してあつめたコレクションを永続的に受け継がせるために「会社=法人」というものが生まれた。契約を基本とするユダヤ教、キリスト教社会でこの考えは伝播したが、神以外の建造物は刹那的であるという考えのイスラム教社会には馴染まなかった。

    ★21世紀に入ってからの中国の急速な台頭は資本主義の最後の足掻きである。15世紀まで圧倒的先進国であった中国がこの200年間後塵を拝してしまっているのは何故か。いま巻き返しているように見えるが、それは西洋式の方式を(仕方が無く)取り入れただけであって、嘗ての中国が持っていたような新しいモノは出ていない。

  • 【由来】
    ・「プーチン最後の聖戦」からの「グリーンスパン」からのイギリス関連本からの「グローバリズム掲載」からの水野和夫検索@amazon。

    【期待したもの】


    【要約】


    【ノート】

  • チャーチル『資本主義は最悪のシステムだが、これ以上のものはない』
    限界収益低減の法則、 数を重ねると満足度が下がる。→満足度のシェアをすれば、解決するのでは?パイをどんどん大きくすればよいのでは?

    サモア  最後通帳ゲームは3割を切ると拒否されやすい。 利子率革命 ウェストファリア条約 三十年戦争を終結させた世界最初の大規模講和条約
    →17世紀のドイツを中心として起こった宗教戦争です。
    荒廃するドイツにおいて、争いの渦中にいなかったプロイセンが台頭してきた。
    →家康?

    1618年から1648年まで、三十年間にわたって繰り広げられたため、こう呼ばれています。
     中世ヨーロッパ 利子悪いのは神の時間に利子をつけるから。高利貸し ウスラ 金利はラテン語で「ウスラ(USURA)」と言う。もともとはあらゆる金利を含む概念だったが、中世の教父たちや教会法が「与える以上に受け取ること」と定義したことで、「正当でない」金利という意味を持った

  • 【書きかけ】
    書名と著者名で拒否反応を起こす人も(特に近代経済学を一通り学んだ人には)いると思うし私自身はちょっとしたきっかけで読んでみたが、一度考えてみてもよい問題ではある。博識とイメージで押し切るトンデモな面はあるだろうから気をつけたほうがいいが、そういう面を全く含まずに考えるのは難しい話だと思う。トンデモ本としての価値しかないと思う人は逐一説得的な反論を試みるべき。”正統な”経済学者も百家争鳴のなか大衆感覚では結局のところ長期停滞のままであるのは事実なのだから。

  • 2013年刊。著者水野は埼玉大学大学院経済科学研究科客員教授、大澤はフリーの社会学者。「100年デフレ」刊行時より注目する水野氏の論は個人的に新奇でないが、一貫した論に安心感。一方、主著未読の大澤氏は、水野と専攻は違うが、資本主義黎明期に相当する中世⇒近代への移行期、1970年頃の資本主義の変容期に造詣が深い。2人の論を切り結ばせる本書は、現代と将来の資本主義につき多面的把握を可能にするものと言えるだろう。◇ただ、大澤の、現代を不可能性の時代とする意味内容は本書では舌足らずか。◇日本の再分配機能は不全。
    その意味は、課税の累進性につき所得1億円が負担比率の頂点。以上は比率が下落するらしい。「タックス・ヘイブン」でも同様の指摘あるので多分間違いない。この点は、もっと怒るべきだと思う。◇1000兆円の国家債務を民間の1000兆円弱の資産が担保しているのが日本の信用の源泉。だが、これをもし互いに打ち消し合うような事態になれば、国家による民間資産の収奪ではないか。という意味で脆弱な状況。◇単年度の財政均衡が継続して実現できていないのは、既存システムが経済・社会構造に適合していない証左というのは目から鱗。
    ◇その他諸々の視座・情報を貰えた良書である。◇EUあるいはその域内国の利子率の変遷は見てみたいところ。水野氏が重要視する指標であり、日米はともかく、EUに関してみれば、本書はそのさわりを述べるにとどまるからだ。

  • インデックス投資家として、世界の成長ってのがどこまで続くのかが気になって手に取った一冊。正直なところ半分も理解出来なかったが、資本主義における経済成長ってのは、永遠に続くものではないのかな、という風には理解しました。
    まあ当面は大丈夫かなとも思いますが、「桐島、部活やめるってよ」の引用話のところで、破綻は突如訪れるものというような話もあって、油断はならないのかも知れません。素人にタイミングが判断出来るわけありませんが、、、

  • 水野和夫氏の言説が読みたくて手に取った。後半は完全に大澤真幸氏のペース(「食っちゃった」という感すら)。でも知的刺激に富んだまれに見る好対談と言える。

  • レビュー省略

  • 15/02/20。

  • 資本主義の「終わり」を大きな観点から論じた対談。目先のこまごました事象は気になるが,こうした大局的な見方を自分のものにしておくのは大事。

  • 前のボスが勧めてたので、読んでみた。経済学者の水野和夫と社会学者の大澤真幸の対談。正直よくわからないところも多いのだけど、対談形式なのでわりとすんなり読めた。

  • 水野和夫と大澤真幸の顔合わせは意外だったが、以前より知り合いだったらしい。2人の対談を通じて、経済学的な観点と社会学的な観点から、いまにも崩れそうな資本主義について、歴史的なスパンでとらえ直している。
    近代とともに発展した資本主義は、現代に至ってかつてないレベルでグローバル化した。この帰結として、搾取できるフロンティアは消滅し、「成長」する余地がなくなっている。このことが、さまざまな問題として露呈している。きわめて低い金利の状態が続くというのは、歴史的に見ても経済システムが成長しきった状態で、大きな社会的な変化がなければ解決しない。
    資本主義に代わる最適な経済システムの想定があるわけでもない。
    成長戦略や単なるイノベーションといった、小手先の解決策で通用するというわけでもない。
    例えば、ドラッカーが知識社会と呼んだような、まったく現代と異なった社会が、今後何十年か後に出現しているのかもしれない。
    それらについて、イメージし形成できるのは、最終章でふれられているように、我々とは違った価値観を持つ、今の、これからの若者たちなのかもしれない。

  • 資本主義という社会・経済システムが機能不全に陥るのはもはや時間の問題であり、それに代わる新しいシステムが必要になるという水野氏の考え方を社会学者の大澤氏との対談で整理・説明していく内容の本。

    このまま行けば大きな不幸が待っている。確かにそのように思える。では、どうすればいい?

  • 水野和夫氏の対談本という点では、集英社新書『超マクロ展望 世界経済の真実』(萱野稔人氏との対談)とほぼ同じ内容だが、「不可能性の時代」等の大澤氏の独自概念との絡みや、「桐島、部活やめるってよ」での「桐島=覇権国(アメリカ)」というメタファーには(しっくりこない部分もあったが)新鮮味があった。個人的には、現在の資本主義的な世界経済自体はどこかでソフトランディングさせていく必要性があるんじゃないかと漠然と感じているが、果たしてそれは現実的に可能なのかと言われると・・・(´・ω・`)

  • 西洋史も一緒に学べる。

  •  資本主義の来歴と現状を広範に論じた対談。「知的遊戯」としては抜群に面白いし、新自由主義経済の犯罪的本質への批判も真っ当だが、「資本主義はこのままでは破綻する」という現状認識の域を出ないため、副題の「『成長なき時代』をどう生きるか」という問いに対する具体的・実践的な指針は示されない。歴史学サイドとしては、「長い21世紀」説への世界システム論の恣意的な利用が気になる。

  • 了。

  • 成長戦略とは聞くが人の数に限りがあり、市場も限られている以上「成長し続ける事が可能なのか?」という疑問を持っていた。
    そんな疑問に答えてくれる入門書です。
    最後の章で「成長」の無い時代に、どう未来を切り開いていくかを論じています。

  • 社会学者と経済学者の対談本。とはいっても、水野さんは経済学者と言っても、歴史の造詣に深く、利子率革命からの歴史から見た経済学の著書が多い方なので、歴史の観点から見たら、人、経済システム、国家システムなどを絡めた対談となっている。

    水野氏の主張は一貫しているので、出版された本を読めばよいと思うが、対談なので比較的わかりやすいと思った。しかし、本書を理解するために必要な前提条件となる知識が多いなあと改めて思った。

  • 二人の対談集だが、水野氏については、「終わりなき危機」で非常に詳しく自分の主張を書いているので、主張そのものを知るにはそっちを読んだ方が良い。
    というか、前著を読んでしまうとこの本を読む意義があんまり無い様な気もする。敢えていえば、分かり易くなった入門的な位置づけか。

    資本主義がフロンティアを求める性質のものなので、フロンティアがもはや残っていない現代で行き詰るのは自明の理、という主張の流れには大いに納得。これから考えるべきは、経済成長ありきではない世界のありかたになっていくのだろう。

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著者プロフィール

1953年愛媛県生まれ。埼玉大学大学院経済科学研究科博士課程修了。博士(経済学)。三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミストを経て、内閣府大臣官房審議官(経済財政分析担当)、内閣官房内閣審議官(国家戦略室)を歴任。現在、法政大学法学部教授。専門は、現代日本経済論。著書に『正義の政治経済学』古川元久との共著(朝日新書 2021)、『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』(集英社新書 2017)、『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書 2014)他

「2021年 『談 no.121』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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