資本主義という謎 「成長なき時代」をどう生きるか (NHK出版新書)

  • NHK出版 (2013年2月7日発売)
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資本主義の来歴と、それが現在陥っている問題、そして資本主義の後にやってくる時代の展望について、エコノミストの水野和夫と社会学者の大澤真幸が語っています。

おおむね大澤がみずからの立場を示しながら水野の考えをたずねるというかたちで議論が進められており、とくに後半ではそうした傾向を強く感じました。ただし資本主義の形成について語りあっているところでは、「蒐集」というキーワードを用いて資本主義の形成から現代の状況までをつらぬく本質を見ようとする水野に対して、大澤が資本主義の形成が世界史において逆説的な性格をもっていることを強調するなど、意見の対立が見られます。ただし、両者ともみずからの立場を提示するにとどまっており、対決にいたることは回避されています。本書の目的が、サブタイトルの示すように「「成長なき時代」をどう生きるか」ということであり、あまりこうした対立点にこだわってもしかたがないという判断なのかもしれませんが、個人的には大澤の世界史のとらえかたを実証的な観点から検証するような試みがあってもよいのではないかという気がします。

大澤独自の世界史の見方は興味深いものですが、こうして水野の議論と対照させてみると、やはりアクロバティックなもののように見えてしまいます。理論社会学の観点に立つ大澤と、文明論的な視座から資本主義を理解しようとする水野の観点のちがいが闡明に現われているように感じました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 政治・経済・社会
感想投稿日 : 2020年1月5日
読了日 : -
本棚登録日 : 2020年1月5日

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