- Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150104719
感想・レビュー・書評
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最初は肌に合わないかな?と思っていた。「スキャナーに生きがいはない」が序盤はあまりにも情報がなく進んでいくので。でもこれはこの人の作風なのだと思った。少しずつ状況が理解できて、自分の中に経験値として蓄積されていき、世界観が分かってくる。8編どれも良かった。
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「まるで自分が空間にいるような優れた文章、そして卓越したアイデアの物語。特に主人公とネコの愛情が絶品という、ここで説明してもまったくわけのわからん話です。ま、自分で読みなさい。」
(『SFはこれを読め!』谷岡一郎著 より) -
分かりにくいが再読し感動した
表紙 7点木嶋 俊
展開 7点1975年著作
文章 7点
内容 810点
合計 831点 -
センス・オブ・ワンダーとハードなSF設定が詰め込まれた
ペーソスとロマンティシズムに溢れる寓話たち。そして
短編という短い尺であるにもかかわらず、読み始めた時
にはさっぱりわからなかった単語の意味が、読み終わる
頃にはすんなりと理解できているという離れ業(もちろん
物語中で単語の説明のための説明は一切と言っていい
ほど無い)。
SFの短編集を読むという作業自体が実に久しぶりだった
こともあり、大変楽しめた一冊だった。ただ、SFのある
程度の知識が無いと、わからないことがわからないまま
終わってしまうという可能性も大。その点で読む人を
選ぶ本ではある。私は幸いにも選ばれた方(笑)。
まだまだ読まなければいけない本がたくさんあるなぁ。
ワイドスクリーンバロックシリーズ、この一冊だけ
読んで次の作家に行こうと思っていたのだが、とても
面白かったのでコードウェイナー・スミス、しばらく
続きます。 -
宇宙は危険と冒険に満ち溢れて、機械がまだ高度な道具以上のものではなくて、生命の、精神の優位性が揺ぎ無かった時代のSF。だからこそ描かれうる人間のロマンが詰まっている。エンディングはどれも畏れにも似た感動で泣けるレベル。いや、ほんとにさ。こういうのをSFならではの醍醐味というのだろうなと勝手に思っている。/ところで表題作の序文は明らかに不要だよねえ。『パートナー』の正体を知ったときの驚きとにやにやが薄れてしまう。高校生のころにも読んで同じこと思ったような気がする。
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「スキャナーに生きがいはない」
「星の海に魂の帆をかけた女」
「鼠と竜のゲーム」
「燃える脳」
「スズダル中佐の犯罪と栄光」
「黄金の船が――おお! おお! おお!」
「ママ・ヒットンのかわゆいキットンたち」
「アルファ・ラルファ大通り」
傑作しかない。
痺れるようなカッコいい文体とロマンチストのようで冷徹な思考が根底にありそうな文章。
惚れる。 -
奇抜で独創的、ユニークで想像力豊かな作家…
およそSF小説家であれば欲してやまない美辞麗句を我が物にするコードウェイナー・スミスは、長らく正体不明の人物であった。
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアがそうであったように、しかし彼はその命が途絶えるとともに初めて素性が明らかになったのである。
その人物の名は、ポール・マイロン・アンソニー・ラインバーガー博士。ジョンズ・ホプキンス大学の政治学教授であり、アメリカ政府の外交政策顧問─政府の要人その人である。
もうこの肩書の時点で、好奇心が疼いてしまう!
こんな要人がSFの良き理解者だなんて!
そして、我が身を奮い立たせるもうひとつの原因は”人類補完機構”という魔術的な魅力を備えた言葉である。この言葉に武者ぶるいしないSF読みはいないのではないか。
当著は、短編集である。
だがそれらは、まるでレイ・ブラッドベリの「火星年代記」のように、ある一本の未来史に沿って語られる。
まずは、各表題をみてみる。
・スキャナーに生きがいはない
・星の海に魂の帆をかけた少女
・鼠と竜のゲーム
・燃える脳
・スズダル中佐の犯罪と栄光
・黄金の船が…おお! おお! おお!
・ママ・ヒットンのかわゆいキットンたち
・アルファ・ラルファ大通り
なんてセンスフルな表題たち!買いかぶり過ぎか?いや、この表題にまず感嘆したのは、まぎれもない事実だった。
して、その内容は、既に挙げた美辞麗句のとおり。どれも甲乙付けがたいが、「星の海に魂の帆をかけた少女」と「鼠と竜のゲーム」がお気に入り。
前者は夫人ジュヌヴィーヴ・ラインバーガーとの合作だからだろうか、ドラマチックでセンチメンタルに訴える内容であった。
後者は、もう傑作ですよ。
平面航法にて恒星間宇宙に飛び出した人類。そこには新たなる恐怖が待ち構えていた。竜。人々がそう呼ぶ飢えた渦動から乗員を守るため、小型光子核爆弾を命がけで操るピンライターそしてパートナーが居た…
もう設定からぶっ飛んでいて(平面航法で二次元世界に旅立つのだ!)、面白すぎて鼻血が出そうになった。
結局、当著から”人類補完機構”の核心に触れることは叶わなかったが(続編を読んでも恐らく果たされることはないだろう)、彼が描く未来史─恐ろしく壮大で希有に富んだヒストリーの片鱗を味わうことが出来た。
こんな風に、物語の随処では謎を残したままなんだけれど、底流にある根深い世界観を垣間見られる瞬間が途轍もなくワクワクする。
うーん、ところでハヤカワさん。こんなに傑作なのに、なんで絶版なの。 -
感動した。伊藤典夫氏の翻訳も最高。