高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)

  • 早川書房
3.42
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本棚登録 : 3004
感想 : 205
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150105686

感想・レビュー・書評

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  • 『アンドロイド〜』に続き、ディック作品三作目。読み始めてから終わりまで、大分時間が掛かってしまった…。訳がが悪く、全然世界観に入っていけず——。あらすじは面白そうだったんだけどなぁ…残念。もうこの翻訳家の作品は読まない方がいいかも知れない・・

  • SF内SFが物語の重要な要素となっている。
    映画内映画にしろその作品自体が位置しているジャンルへの言及はメタにならない程度にしつこくならない程度のものであれば作家への信頼に繋がるよなぁと思う。

  • アマゾンプライムでドラマ化される前から本自体は持っていたのに、ずっと積本してあった。ドラマの初めの方だけ見て、今さらながら読んでみようと思ったのがきっかけ。
    日本とドイツがアメリカを支配している世界で、その中でもドイツと日本が負けた世界の本が出ており、ドイツ領内では発禁扱いになっている。その本がどうやって書かれたのかも最後には明らかになるが、正直そんなことはそれほど重要ではなく、ドイツと日本が制している世界の中で、日本人やアメリカ人、ユダヤ人などのうまく言い表せない世間の流れに対する気持ちや状勢を読んでいくべきなのかな。ただ、日本人が易を使っているというのはいかがなものかとは思った。そんなものを知っている日本人には出会ったことがない。

  • ★3.5
    舞台となるのはドイツと日本が第二次世界大戦に勝利した世界で、その世界の中で“ドイツと日本が敗れていたなら”を想定した小説が書かれているのが面白い。そして、登場する人物がやたらと「易経」を行い、様々な判断を「卦」に委ねているのが奇妙ながらも楽しい。が、田上やチルダン、バイネスの立場や信念は分かるものの、ジュリアナだけは最後の最後までよく分からないまま。タイトルに冠されている「高い城の男」の登場もほんの少しで、彼が作中で綴る作品ほどの印象は残らなかった。それでも、個々のエピソード自体は楽しめる。

  • 第二次世界大戦で枢軸国側が勝利した結果、ナチと日本が世界を二分し、易経が流行し、連合国側が勝ったという内容のSF小説が売られる世界でアクセサリー職人や美術商、ドイツのスパイや日本の役人が陰謀に巻き込まれたりする様を描いた歴史改変SF。
    話がスペクタクルに展開するわけではなく、個々の登場人物の心理や駆け引きを丁寧に積んでく感じなので、物語が動くまでは追っていくのが大変だったけど、後半は一気読みした。硬派な歴史物かと思うとオチがあれで、訳者後書きで更にあれなのがあれでしたね。

  •  社会での駆け引きが、詳細・緻密に描かれていると思います。作者が、作中によく登場させる特殊者(「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」での「ピンボケ」、ユービックでの「プレコグ」、「テレパス」)が、この作品では登場しません。その代わりに?「易経」という占い?がこの作品では重要な事物として登場します。

     日本人の性癖を上手く洞察していると思います。特に後半の、エリートの日本人のポールと、商人のチルダンとのやり取り・駆け引きに、日本人の性癖が上手く描かれていると思います。また、お偉方の田上が、同じくドイツのお偉方のバイネスに会った時に、ミッキーマウスウォッチ(この作品では、こういった商品が骨董物と思われている)を贈り物として授けた時は、僕は、作者がお偉方の見当違い・頭の固さを揶揄している様に感じました。このシーンは、この作品では一番笑いました。

     お偉方だけではなく、商人、労働者、魅力的な女性を作品に登場させています。そして、それぞれの人物の描き方が、丁寧だと思います。作品の最後、人間としてまともな行動をとった田上とバイネスが、田上はパラノイドになりかけ持病?の心臓発作を起こし、バイネスは着陸したドイツの空港で警察に逮捕されていました。これは社会では定石ですが、作者は、この後の事は、描いていませんでした。

  • ドイツと日本が勝利した第二次世界大戦後のアメリカは、陰と陽の一面を返したようで、権力者の影が影絵のように揺らめく様相は、現実においてのアメリカ合衆国が落とす影と一対になっているかのよう。
    この世界であっても日本は渦の中心にあって中庸の立場をとらざるをえなくなるというのはいかにも皮肉だ。
    そのような世界での官僚、反骨心をくすぶらせる職人、素性を隠すユダヤ人青年などに引き起こされた出来事に対しても、生き抜くための手段を講じる日常にすぎず、世界の大局に影響する力も持たない。
    作中作として登場する小説はアメリカが戦勝国となった世界を描いており、またディック自身が傾倒していた「易経」がこの背中合わせの世界を立体的に描写する役割を担っている。
    今の世の中も物事の一面に過ぎないということを薄暮の雲のような淡彩の向こう側に描いたような独特の世界観を感じた。

  • パラレルワールドもののSF。第二次世界大戦で日独が勝利した世界。分割統治されるアメリカ本土を舞台に、迫害されるユダヤ人や、日本人に媚びを売ることに屈辱を覚えている米国人などにスポットライトを当てて描いた群像劇。作中で「連合軍が勝利した世界」を描いたSF小説が大ヒットし、ドイツ支配地域では発禁になるという、合わせ鏡的な構造になっている。ドイツでは政変が起きて情勢が複雑化しており、各国をまきこむ陰謀が駆け巡って、第三次世界大戦を予感させる描写もある。出版された1962年は、まだ第三次大戦の可能性というのは生々しかったんじゃないのかな。
    「ここはわれわれが望んでいるような、理想の世界ではない。理想の世界なら、認識もたやすく、したがって道徳的行為もたやすい。そんな世界なら、理非曲直がはっきり見分けられて、何の苦もなく正しい行動がとれるだろうに。」印象深い文章やシーンがいくつもあって、面白かったのだけど、もっとちゃんと戦後史に詳しい人だったら、この小説のifの部分をもっと正しく楽しめたというか、この小説を深く理解するためにはもうちょっと当時の世界情勢が頭に入っていないといけなかった気がする……ということで、自分の教養の不足からやや敗北感を伴う読了。
    易(当たるも八卦当たらぬも八卦、の易)が重要なモチーフとして出てきて、登場人物がやたらと(日本人が持ち込んだ文化としての)易を立てるのだけど、ディックの日本観がリアルな日本とちょっと違うのがかえって面白い。……とかいって、もしかして戦後の易経ブームってわたしが想像するのよりももっと熱烈だったのかな? とかも思ったけど、たぶんそこまでじゃないよね……?

  • WW2で枢軸側が勝った場合の架空の世界。
    複数の人の視点からの群像劇で成り立つ、ドイツ対日本の政治の裏の世界とか。
    連合国側が勝った場合の小説をめぐる話とか。
    易に支配されて未来を決める人々。
    ディストピアなのかそうでないのかも悩ましくて哲学的な難しい話なのに一気に読ませてくれるあたりが面白いと判断できる。

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