宇宙【そら】へ 上 (ハヤカワ文庫SF)

  • 早川書房
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感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150122942

作品紹介・あらすじ

巨大隕石落下により人類は生き残りをかけて宇宙開発に乗り出すことに。星々を目指す女性パイロットを描く改変歴史/宇宙開発SF

感想・レビュー・書評

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  • あいかわらずSFも読みまくっているんですが、もちもちさんに自信をもってお勧めできるような大大大傑作には出会えておりません

    そんな中ヒューゴー賞、ネビュラ賞同時受賞のこやつを読んでみました
    もひとつおまけにローカス賞もとってますからね相当すごいことに違いありませんことよ!

    と、かなり期待して読み始めたんですが
    今のところ「うーん」って感じ
    面白いのよ、面白くなくはないのよ

    ただこの世界設定がどうしても飲み込めない
    時は第二次大戦直後、アメリカ東海岸に巨大隕石が落下し多くの人命とともに首都を含む広大な地が失われる
    しかしこの惨劇はさらなる悲劇の始まりでしかなく、巨大隕石の落下が引きおこす気候変化により地球は人が住めない星になってしまうことが判明
    人類(ほぼアメリカ)は宇宙を目指すというストーリー

    この第二次大戦直後という文化とか社会環境や世界情勢そして科学技術なんかがそのまんまで宇宙開発や宇宙移民ってのがアンマッチすぎてもうちょっとイライラしてきちゃうんです

    それがこの物語の核というか面白味なんだろうけどさ
    どうしてもしっくりこないんです
    物語の根底にある前時代的なものを抱えたま宇宙に行けんのよ、わいは

    下巻で色いろぶち壊してくれることに期待や!

  • 歴史改変もののSF。
    もし1950年代に巨大隕石が地球に落下し、アメリカの東海岸が全滅したら・・・というお話。

    1950年代というと、米ソが宇宙競争をしている状況であるが、本書ではまだアポロ計画にのっとった月への到達がなさ得れていないという状況である。

    本書では、元女性パイロットの天才数学者の女性が主人公であり、コンピューターが未だ発達していない状況で、「計算者」として、それこそ「人間コンピューター」として働く物語である。

    話はSFであるが、1950年代当時のアメリカをリアルに映し出し、黒人差別、女性蔑視等が激しい時代の状況を克明に反映させている。

    巨大隕石による気候変動のため、地球からの脱出を計画する人類。やっとロケット打ち上げは軌道に乗り始めたが・・・。
    下巻が楽しみ。

  • シンプルで素朴なSFだからこそ面白くて、考えさせる事も多い。

    隕石の衝突と人類滅亡という、オールドファッションな題材を、1950年代というオールドファッションドな舞台で語られる。

    科学は未だ素朴であって、大量生産・大量消費というway of life の時代。

    科学はまだ手の届く範囲にあって、最新技術がIBM(パンチカード式計算機)だった時代だ。

    科学者は皆、暗算か筆算で計算するのが主だった。

    軌道計算も手計算がメインで計算機はサブに過ぎない。

    思えば実際の歴史でもよくこんな時代に宇宙開発なんてものに手を出したなぁという驚愕と共に、科学と科学者たちの苦労、アイデアがいまの時代につながっているんだなぁなんて改めて感慨深くもなる。

    使い古された題材に、リアルな記憶が残る時代背景。しかし、この物語は決してノスタルジーものではない。断じて。

    昨今の科学技術は素人というか多くの人にとって距離が離れてしまった。

    便利に使っているスマホの中身など知らないし、ましてやプログラムも高度で複雑だ。

    車のエンジンも家電製品も気密性(機密性)が高まっているからおいそれといじれない。

    技術や科学から人の存在を感じにくく、科学や技術と人との距離がどんどん広がっている気分になる。

    しかし、1950年代はというと、技術や科学は手が届く範囲にあって、テレビや雑誌で科学特集も多かっただろうし、車の調子が悪ければ近所の詳しいおじさんに話せばちゃちゃっとエンジンいじってくれたりもあっただろう。

    この物語の主人公は女性だ。

    当時の米国もというと公民権運動、黒人差別、女性蔑視と必ずしもユートピアではなかった。

    しかし、まだ科学や技術は手の届く範囲で、だからこそこの物語では、ロケットや軌道の説明セリフもシンプルで素朴だ。

    女性蔑視や人種差別という葛藤も、多数派(差別側)も被差別側も描かれ方はわかりやすい。

    さらに、隕石の衝突によって生じる気候変動も、シンプルに劇的で空恐ろしい。

    この物語で描かれている葛藤や問題は現在進行形の問題でもある。しかしそれらは複雑すぎて“手に負えない”という無力感・無関心、諦念を我々に引き起こしているのかもしれない。

    素朴でシンプルな時代が舞台である分、人種差別や女性蔑視、気候変動も未解決のままむしろ今は悪化しているのではないかということに気づかせる。

    これらは米国だけではなくて、日本だって同じなのだ。

    50年代については親さえ生まれてないから実際のことは知らない。

    しかし、少なくともテレビは芸人が叫んでいるバックに笑い声を被せているだけで中身のない番組ばっかりじゃなくて、ジャーナリズムや文化芸術、議論は機能していて、近所の車に詳しいおじさんは実は戦争中に戦車とか戦闘機に乗ってたり整備したり工場に動員されてたりしていたんだろう。

    決して当時はユートピアではない。しかし、少なくとも現在のようなディストピアではなかったのだろう。

    それはそれとして、物語としてこの本は面白い。SFにありがちなオタクっぽさは皆無。

    シンプルで素朴なSFだからこそ面白くて、考えさせる事も多い物語だ。

  • 1952年、巨大隕石の落下により絶滅の危機が迫る人類は、宇宙開発に希望をつなげるが……。歴史改変SF。

    落下してくるものを阻止しようというアルマゲドンやディープ・インパクトとは逆で、最初に隕石が落ちてしまってからの顛末。1952年の設定で、実在の人物も登場するが、歴史は現実とは大きく異なるものとなっていく。

    隕石落下の影響で、人類の存続が危ぶまれるのだが……。
    あれ?序盤のパニック的な危機感はどこへやら。宇宙開発のさなかで、女性の社会進出問題や黒人とかユダヤ人の人権問題、人間関係のあれこれや自身の弱点との戦いで物語は進んでいく。なんだか、肩すかしをくらったような感じを抱きながらも、主人公の心理描写がうまく、複合的な問題が逆に「宇宙飛行士」という目標に収束していく展開に、感情移入してしまう魅力がある。才知も欠点もある女性が奮闘する物語にどこか共感を覚えつつ、多様な要素を含むディティールに感嘆。

  •  映画『ドリーム(Hidden Figures)』を思い出した。こちらは、実話だが、1950年代のアメリカの宇宙開発に貢献した黒人女性達の話。ケビン.コスナーがいい味出してた。あいや、映画の感想ではなく、時代背景、人種差別、女性蔑視、さまざまな困難を乗り越えて、NASAの数学者としての地位を確立して行く主人公が、この本の主人公と重なって見えたのだ。
     次巻も楽しみ。

  • 米国2018年7月刊のThe caluculating starsを翻訳して、2020年8月ハヤカワSF文庫刊。Lady Astronautシリーズ1作目。長編の上巻。1952年3月隕石落下によりワシントンが壊滅した世界を現実感たっぷりに描く歴史改変もの。戦時中航空機パイロットであり、物理学者であり、現在は、NASAに務める女性が主人公。彼女自身が宇宙を目指すというストーリー。人、家族、仲間への想いと困難への対応が面白く、胸が踊ります。NASAの女性達を描いた映画「ドリーム」と一部重なるようなところもあり、とても楽しめました。

  • 帯に色々章を取ったと書かれていたので購入。面白かった!隕石ってミーティアライトっていうのか~ 知らなかったな。
    1950年代(だったかな)に隕石が落ちたという設定も面白い。第二次世界大戦が終わって、アポロが月に降りる前辺りのNASAが盛り上がっていた頃に、人類が宇宙に進出する必要性がある、と持ってくるのは上手いなぁと思いました。

    今でこそ男女対等などと言われていますが(今も言われているということは実際対等ではないという事の証左だと思いますけど)50年代のアメリカでも女性の扱いというのはこんな感じだったのかな~と思いながら読みました。日本は今でも医大の入試に男子学生にゲタ履かせるなんてやってるんだからなぁ…昔はもっと悲惨な状況だったんだろうな。

  • 導入部から目が離せない❗️

  • 舞台は1950年代のアメリカ。地球に大型隕石が衝突したことにより将来的に大幅な気候変動が起こることが分かり、第二次大戦に従軍した元パイロットであり天才的な数学者でもある女性・エルマとその夫であるナサニエルは人類の生き残りをかけた宇宙開発に奮闘する…という歴史改変SF。

    性差別や人種差別が顕著だった時代背景、強さと弱さを併せ持つ主人公など、一筋縄ではいかないストーリー展開はページを繰る手を止めさせない。SFを読み慣れてない人でもサクサクと読めるはず。

  • 宇宙飛行士を目指し奮闘を続けるエルマ。
    初の女性宇宙飛行士の苦悩や葛藤が丁寧に描かれている。個人的にはちょっと長いかな、と思った。
    宇宙開発チームの計算手なる人たちの存在を初めて知った!なるほど、こういう人達が沢山いて宇宙開発を支えていたんだ。
    表紙イラストの加藤直之氏の装丁は最高です。

    • 青格子さん
      ジャケ買いをしました。加藤直之さんの絵はいい!
      映画『ドリーム』お勧めします。黒人女性の計算手の実話をもとにしたものです。『宇宙へ』の背景が...
      ジャケ買いをしました。加藤直之さんの絵はいい!
      映画『ドリーム』お勧めします。黒人女性の計算手の実話をもとにしたものです。『宇宙へ』の背景が良く分かるかも。
      2022/10/21
    • kazさん
      情報ありがとうございます!
      映画「ドリーム」ですね。まだ観ていない映画でした。今度時間を見つけてチェックしてみます。楽しみです。
      情報ありがとうございます!
      映画「ドリーム」ですね。まだ観ていない映画でした。今度時間を見つけてチェックしてみます。楽しみです。
      2022/10/21
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