ニルヤの島 (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
  • 早川書房
3.56
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本棚登録 : 358
感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150312428

感想・レビュー・書評

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  • 4つのエピソードがシャッフルされ、終盤に近づくにつれ段々と一つに繋がっていく。

    主体も時系列もバラバラなエピソードの断片を四次元的に組み上げながら世界観を理解するという、能動的読書が楽しめる。

  • SF ×宗教という組み合わせ。
    我々も正直 死後の世界については うっすら信じてるか信じてないかくらいなものだと思うけど、「科学が進歩して死後の世界が完全に否定されたらどうなるのか?」「SF的な観点から見る死者の国とは?何故 人類はそれを必要としたのか?」という感じの作品。
    読み応えある作品でした。時系列が作品の根本設定としても入り乱れてるので読み返し必須。


    “{ミームとは即ち、人間の持つコーデックなんだ。人はあらゆる文化事象をコード化し、自身の脳内にあるミラーニューロンにおいて接続する。接続された文化事象は、個人の行為となってデコードされる}”

  • 前評判に違わず、難解な作品。
    主に4つのパートに分かれており、それぞれ「ECMを訪れたノヴァク」「同じくECMを訪れた模倣子(ミーム)行動学者ヨハンナ」「孤島でゲームに興じる二人」「肉体労働者のタヤと彼を慕う少女」が主人公格として物語の狂言回しになります。この4パートが交互に螺旋構造のように描かれ、さらに時系列が本来の時間軸とは無関係に前後に行ったり来たりする、という大変に複雑な構成。一読しただけでは、正直何だかよく判りません。自分なりに「こういうことかな?」と想像しつつ2度目のチャレンジで「あー、そういうことか!!」と納得しました。この構成はなかなか面白いです。

    ただ、物語世界の前提条件となっている「『死後の世界』が消滅した価値観」というのが、鴨的には最後までしっくり来ず・・・
    死者の記録を自由に呼び出せると言っても、その人が死んでいる事実に変わりはないわけですし、それをもって「死後の世界」がなくなるという発想が飛躍し過ぎな感があって、何だかむずむずしたまま読了いたしました。
    模倣子(ミーム)をメインテーマに据えた、野心的なSFです。最先端の日本SFに触れる醍醐味はありましたが、鴨的には若干消化不良な感じ。まだまだ勉強が必要ですなー。頑張ろう。

  • 何か見えない大きなモノ。
    でもそれは個々の人がもつ小さなモノの集合体。

    (以下抜粋)
    ○喩えるなら、一度読んだことのある本を、あえてバラバラに読み直すようなものだ。ただ違うのは、読んだことがあるという意識があるだけで、実際には次の場面を想像することはできない。(P.12)
    ○つい落ちた夢を見たから筋肉が反応したかのように因果関係を結んでしまうが、実際はまず筋肉の動きがあって、そこから目を覚ますまでの僅か数コンマの間に脳が夢の中で、筋肉が動いた理由を映像として再現するんだ。(P.277)

  • 伊藤計劃感に文化人類学をミックスした感じ?話の並行数と時間のズレで若干頭がこんがらがるけど、収束していくときのカタルシス的なのはよい。

  • 本作で「消えた」と言われている「死後の世界」とは,「自分が死んだらどうなるのか」という問いに対する答えとしてというよりは,「死後に何が起こるか」という一般化された価値観としての概念になるようで,それが定まることにより議論の余地が無くなったというものである.従って死んだあとに意識がどうなるのかという部分などはあまり触れられておらず,死後の世界が云々というよりは,生体コンピュータを介して人間集団が集団意識的なものをはっきり構築していく過程が,本作の中での主たるテーマになっている.
    以上も踏まえて全体に何となく,ハーモニー(伊藤計劃) Mk.II という感じがするし,ミームが人を操作して…という辺りは「虐殺の文法」に近い.
    後ろ1/4くらいで怒涛のごとく種明かしがされるが,それまではとにかく断片的で何が何だか分からない.
    Gift,Transcription,Accumulationの相互のつながりは分かりやすかったが,Checkmateだけは残り3つから浮いていた印象.猿というのも何かのメタファーなんでしょうか.

  • 歯ごたえありすぎ・・・。置き去り感が残る。
    あらすじ(背表紙より)
    人生のすべてを記録し再生できる生体受像の発明により、死後の世界という概念が否定された未来。ミクロネシア経済連合体を訪れた文化人類学者イリアス・ノヴァクは、浜辺で死出の船を作る老人と出会う。この南洋に残る“世界最後の宗教”によれば、人は死ぬと“ニルヤの島”へ行くという―生と死の相克の果てにノヴァクが知る、人類の魂を導く実験とは?新鋭が圧倒的な筆致で叙述する、第2回SFコンテスト大賞受賞作。

  • 2017.05.20
    2回目。時系列を書き出しながら再読。

    死ぬ間際に真の安らぎを得るには、天国を確信すること。
    強く広く伝播することを指向するミームが「ニルヤの島」という死者のための国を新たに「実存」させる。他者への不理解と断絶を乗り越えた海の向こうにこそ永遠があると「確信」することで生死の差異は無効化される。
    航海士の役目は入れ替わった。乗り物としての役割が終わり、進化の終着に辿りつく。ニルヤの島で、きっとすべてはゆるやかに停止する。
    船頭が導いた先で涙を流すのは、不理解も断絶も、愛さない理由にはならないからだろう。

    2016.11.14
    一回目。
    あ、これ二回読んで完成するやつだ。

  • 161103
    死後の世界を失う
    人生のログ化

    に惹かれて購入

    自己とは何ぞや。人生とは。

  • 天国や地獄を信じてるわけではないですが、概念のしての死後の世界は確かにすり込まれている。そういった死後の世界が否定された世界という発想がまず面白い。
    やや概念的な話になることと、章立てが断片化されていて人も時代もころころと入れ替わるので、全体像をつかむのが難しい小説です。読み応えは十分。

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著者プロフィール

SF作家。ペンネームは戦国武将の柴田勝家にちなんだもの。1987年、東京都生まれ。成城大学大学院(文学研究科日本常民文化専攻)在学中にハヤカワSFコンテスト・大賞を受賞し、『ニルヤの島』で2014年にデビュー。このほか著作に、『ワールド・インシュランス』(星海社FICTIONS)、星雲賞日本短編部門を受賞した表題作を収録する『アメリカン・ブッダ』(ハヤカワ文庫JA)などがある。

「2022年 『メイド喫茶探偵黒苺フガシの事件簿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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