作品紹介・あらすじ
国内新鋭作家の短篇集未収録や未書籍化の傑作を、伴名練が先取りセレクト&解説する。この1冊で、SF小説をもっと好きになれる!
感想・レビュー・書評
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ほぼ一ヶ月かけて読了
どの話も面白く、毎回別次元を覗き込むような気持ちで楽しみました。
真面目にふざける方向に全倒ししてるモノもあれば(様式美がある)ハード方向に進めてる作品など、並ぶことで個性が際立って
どの話も面白かったです。
分厚い本なのだが、とても良いサブテーマの解説があるためSF入門書として読み。自分の好きなテーマを見つけられる造りとなっている。
コレまで読んできたSFがどのテーマに属してるのかも知ることができた。
SF作家以外の作品についても名前が挙げられていて唸った。
・AI
・愛
・想像力
・実験小説
・動物
・超能力
・宇宙
・ポストコロナ
・異星生物
・言語
・バイオテクノロジー
・環境激変
・AR/VR
・改変歴史
サブテーマの解説…これまた別世界(他作)を読みたくなるなる…でも絶版とか入手困難なモノが混じってるのが辛い…読みたいんですけど…
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【収録作品】「Final Anchors」 八島游舷 【AI】/「回樹」 斜線堂有紀 【愛】/「点対」 murashit 【実験小説】/「もしもぼくらが生まれていたら」 宮西建礼 【宇宙】/「あなたの空が見たくて」 高橋文樹 【異星生物】/「冬眠世代」 蜂本みさ 【動物】/「九月某日の誓い」 芦沢央 【超能力】/「大江戸しんぐらりてい」 夜来風音 【改変歴史】/「くすんだ言語」 黒石迩守 【言語】/「ショッピング・エクスプロージョン」 天沢時生 【環境激変】/「青い瞳がきこえるうちは」 佐伯真洋 【VR/AR】/「それはいきなり繋がった」 麦原遼 【ポストコロナ】/「無脊椎動物の想像力と創造性について」 坂永雄一 【バイオテクノロジー】/「夜警」 琴柱遥 【想像力】
新世代作家たちによる書籍化前の傑作14篇とのこと。
SFとの相性の悪さをつくづくと感じてしまった。ついていけたのは芦沢央さんの作品くらい。
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文庫本の800ページ…。久しぶりに一冊で3日目突入してしまいました。SF好きな人や、これから読んだり書いたりしたい人には、同じ系統の過去作品のこれでもか!っていう量の解説ついてるので、超おすすめなんだけど、ちょっと読みにくい作品の方が多かったように感じます。
◆作品として好きだったのは、
・斜線堂有紀「回樹」
百合とファンタジーの融合。人体吸収する樹。
これは、SFっていうより、拗れ愛小説。
・芹沢央「九月某日の誓い」
超能力のある世界で、科学者である父の自殺により奉公することになり、その家のお嬢様の能力、そして意外な結末。
・琴柱遥「夜警」
夜に空から降る星の話。子どもが願うと叶うのだが、それには秘密があり…。少し宮沢賢治っぽい雰囲気が良かった。
◆作品ネタとしては面白かったけど、イマイチ入り込めなかったのは
・八島游舷「Final Anchors」
自家用車に搭載されたAI同士の一秒に満たない時間での会話や思考
・宮西建礼「もしもぼくらが生まれていたら」
小惑星が日本に落ちることが分かったことと、高校生の衛星構想コンテストと核のない未来
・夜来風音「大江戸しんぐらりてい」
実在の数学や天文の天才達を登場させ(安井算哲、関孝和など)柿本人麻呂の歌が実は数式だったというロジックで大演算機構が作られる江戸時代。
・佐伯真洋「青い瞳がきこえるうちは」
VR技術で仮想スポーツ大会が出来るような未来。卓球に才能のある兄弟の感情。一人は盲目、一人は寝てしまう病。
・坂永雄一「無脊椎動物の想像力と創造性について」
科学者飼育による蜘蛛生態改変で、蜘蛛に京都を乗っ取られる世界を描いている。この話は凄く面白くなりそうなのに、とても入り辛くてもったいない!と思った。
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800Pは長い!読了まで1ヶ月かかってしまいましたが、それに見合う面白さだったと思います。
特に心に残った短編は下記のとおり。いずれの作品も素晴らしかったので、機会があれば他の作品も読んでみたいと思います。(というかそろそろ伴名練さん自身の作品集をぜひ)
「回樹」斜線堂有紀
斜線堂有紀さんの作品ははじめて読みましたが、読みやすいし、題材もとても好み!律の出す結論が怖くて結末を見るのに勇気が必要だったけど、とても綺麗な終わり方でした。それは確かに愛だよ。
※ハーモニーしかり、百合とSFの相性の良さはなんなんでしょうか笑
「大江戸しんぐらりてぃ」夜来風音
劉慈欣の円や三体など、人力コンピュータSFという題材に馴染みはありますが、それが次第に暴走し、人間を超越した存在となっていくというのは新鮮な面白さがありました。見事な改変歴史SFですね。
「夜警」琴柱遥
題材自体に真新しさはないかもしれないが、文章が綺麗でグッと引き込まれました。結末も印象的で素敵な短編でした。
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SF入門14本、と打たれているけれどちょっととっつきにくいのはページ数だけが理由ではない…
しかし、これからのSFというジャンルを読んでいこう、って思ったとき、きっと何度も繰り返しこの作家たちに帰ってくることになるのは確かだと思う。
「Final Anchors」 八島游舷
進化した自動運転AIを題材に、事故までの0.488秒の間を描く。法廷劇チックに書かれているのが面白く、テンポも良い。
人間同士では解決しきれない問題を解決するためのAIが、より人間らしくなることで合理的解決から遠ざかる。様々なアプローチが出来るテーマだろうけれど、今作は情感のあるSFとしてグッド。
ところでこの作品の状況と似たような自動車保険のCMを海外で見た気がする。
「回樹」 斜線堂有紀
ふむ? と思ったけれど流れに乗ってみればいかにもな斜線堂作品。ひとつのSF的装置を置くことでテーマを掘り下げる形は、その周辺の現代が既にSFと紙一重になっているということなのかしら。或いはずっとそうだったのかな?
そしてやはり百合とSFの親和性の高さよ。詰まるところ、それが愛ではないと論理的に説明出来ないわけだよね。
「点対」 murashit
うーむ。実験小説…これくらいだと単純に読みにくいだけのような。奇を衒い過ぎ?
「もしもぼくらが生まれていたら」 宮西建礼
これは再読。初見よりもしっくり読めたのは成長かしら。それでも、技術的な部分の緻密さとテーマの安直さとのアンバランスがやっぱり気になってしまうかなぁ。それも青春SF的ではあるけれど。
「あなたの空がみたくて」 高橋文樹
スペオペ感もあってグッド。そして、SFでありながら科学的に上位な存在、或いは科学よりも上位な存在が見え隠れすると突然ホラー要素が増してスパイシィになりますね。
「冬眠時代」 蜂本みさ
やっぱりSFと云えば猫だよな、と思いつつ。
動物、をテーマにしたSFの面白さは、その動物の持つ習性を如何にSFと連結するか。この場合熊の冬眠とその間に見る夢をSFチックに設定していて、そのあたりそのままコールドスリープ的な話に繋がりそうでもあるのだけれど、本篇自体はどこか牧歌的なSF。
「九月某日の誓い」 芦沢央
戦争と超能力と百合、って組み上げはこんなにポロポロあるのか?! 確かにどうしたって面白いけれど。
悲壮感と戦争。それが、決して結ばれないけれど結ばれずには居られない少女同士の関係と絶妙にマッチしている。これは良作。
「大江戸しんぐらりてい」 夜来風音
歴史改変系SFはどれだけ緻密な構成で馬鹿をやるかというところが大事だと思ってるのだけれど、これは…すごい…
“徳川光圀の命を受けた学者たちが和歌コンピュータを発明する”ってあらすじからしてもう、ねぇ? 演算もの、としても面白いのだけれど、そこから更に古代文明の遺産やらそれを奪い合うエンタメ要素もばっちり。
「くすんだ言語」 黒石迩守
アイデア的には伊藤計劃トリビュートということで良いし、言語SFとしてディティールもしっかりしている。はっきり筋はとおっているのだけれどなんだか、小説としては面白くないなぁ。説明に終始しているような。
「ショッピングエクスプロージョン」 天沢時生
こういうのよ…こういうのなのよ…!
環境激変、というタグがついているけれど、良質なサイバーパンク冒険譚でもある。それでもやはり環境激変SFとしての要素が強いのは、いまの我々にも馴染みのある世界構造のほんの一部に集中してSF的想像力を注ぎ込むことで世界そのものを大きく書き換えていて、そのことが物語自体の中核になっているからだろう。具体的にはド○キだが。
着想ももちろんだけれど、タッチがとても好みで引き込まれました。いい意味で雑な、これくらいでいいだろう? って態度の用語設定だとかルビだとか、シェイキィな会話だとか。小説はこうでなくちゃね、って感じ。
「青い瞳がきこえるうちは」 佐伯真洋
SFには希望が詰まっている。
技術力も想像力も、本当に、それを使う人間の想いに大きく左右される。全体的に悲壮感のあるストーリィなのだけれど、技術をよすがにして出来ないことを出来るようにしようとする、わかりあえないものを少しでも、ほんの少しでもわかりあえるようにしようとする、その前向きさが、静かでけれどしっかりとした歩みのような文体と非常にマッチしていて佳い。
「それはいきなり繋がった」 麦原遼
ポストコロナSFというジャンルも、悲しいかな軌道に乗ってしまった感があるけれど、その中でも特殊な一編。パラレルワールドものでもあるのだけれど、その対となる世界と積極的に繋がろうとする理由のひとつが感染症の蔓延でもあるという部分に面白さを感じた。マイナスの要素に、しかし背中を押されることだってもちろんある。
「無脊椎動物の想像力と創造性について」 坂永雄一
一流のSF作家は一流の研究者である…と思いがちだけれど、或いは研究者としては異端になりやすくもあるのだろう。なんとなく陰謀歴史論とかトンデモ中世史、とかを語っている歴史家と紙一重のようにも思える。
それでもこの作品はやっぱりSFとして本物だなぁと思うのは、簡単に笑い飛ばせない恐怖、畏怖がしっかりあるからでしょう。ある程度の近未来SFには共通して、有り得べきみたい、という恐ろしさが付き纏う。
そんな中で、その未来それも絶望的な未来に対面して希望ばかりを描く主人公の姿に、SFの面白さ楽しさを存分に感じた。
名作であるのはもちろん、このアンソロジーのテーマをいちばん表しているように感じました。
「夜警」 琴柱遥
“物語だけが光の速度を超える” まったく至言である。
ここまで読んできて最後にこの、云わば純文学系SFを配する編者にはさすがのひと言。SFに込められた希望も絶望も、可能性も恐怖も、物語の推進力無くしてどこにも届くことはない。
ほんとうに。
生きるために、読んでいる。
どっと疲れた。けれど本当に、有難く得難いアンソロジーだと思います。
何度も手に取って、また世界が変わったときには戻ってこよう。
☆4.7
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これからのSF界をになっていくであろう14人を編者が選出してテーマを別々に短編を集めたもの。まったく知らない作家のものばかりで、とても楽しめた。それぞれの作品のあとにテーマにかんしての解説があるのがありがたい。
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ショッピング・エクスプロージョンはとても読みやすい…
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1この本がテーマとしている問題提起は何か? どんな問題を提示し、 どんな解決方法を提案しているのか?
.比較的新しいSF作家の作品集、そのために著者が厳選した14種類の作品を掲載している
2この本はどのように始まり、どのように終わったか?
.今あなたが目にしているのは未来からのアンソロジーであるから始まって、それではくるべきSF夏の時代に、またお目にかかりましょうで終わる
3 あなたはこの本から何を学びたいか?
.最近のSF作品を楽しみ方
4この本が同じジャンルの他の本と似ている部分、 違う部分はどこだろう?
.にている部分は過去に扱われたAIやポストコロナ、バイオテクノロジーなどの14のテーマを扱っている作品であるところ、違うところは比較的最新の作品で書かれていてAIの審判などのユニークな話が多いところ
5 この本はなぜ重要なのか?
.2022年での最新のSF作家の作品をまとめているところ
6この本のタイトルは内容と合っているだろうか? あなたが本のタイトルを付け直すとしたら?
.合っていると思う、書き換えるなら、2022のSF
7この本のキーポイントやコンセプトは何だろう?
.著者の選定した14のテーマに合わせた新進気鋭のSF作家の作品をまとめること
8本の書き出だしをチェックして、作者は読者を引き込むために どんなトピックを展開しているか?
.未来から来たアンソロジーであるから著者がここ5年に発表されたSF短編から傑作を集めたというところから展開している
9 本で扱われているビジュアル・・・チャートラベル グラフ 写真図解から何を学んだか? それらの要素からどんな種類の情報を得ることができたか?
.AI審判の図から未来の自動運転はこんな感じの構想あるのかと思った
10著者は読者に対してどう考えてほしいと思っているのだろうか?
.日本SFにもっと注目を集めたい
11人に勧めるとき、どの章どんな情報を1番に取り上げるか?
.回樹
12 作者はこの本をおもしろくするために どのような工夫をしているだろうか?
.作品のおわりにその作品が取り扱ったテーマについてのSFにおいての扱われ方をまとめている
13作者の主張のどこに賛成できるか?その理由は何か?
.もっと日本のSFに注目が集まってほしいというのはこの本にも魅力的な作品が多くありこんなSFがもっと広まってくれるのは嬉しいので賛成する
14 テーマを説明するために作者がどのような事例を 出しているのか? 興味深かった例は?
.例えばVRのテーマを解説する時には過去のヴィーナスシティのようなものからソードアートオンラインのような作品まであげながらSFの全体の流れが解説されているのが興味深かった
15 この本を読んでいるときにどんな感覚になったか?
.色々なテーマのSFに触れる楽しさを味わった
16 この本で最も重要な一文はどれか?その理由
.三体の次に読むSFはこれだよ
17本の内容を振り返って、自分にとって 一番さった箇所はどこか?
.愛し続けようっていう気持ちは、もう愛と呼んで差し支えないんじゃないかって。
著者プロフィール
1984年東京都生まれ。千葉大学文学部卒業。出版社勤務を経て、2012年『罪の余白』で、第3回「野性時代フロンティア文学賞」を受賞し、デビュー。16年刊行の『許されようとは思いません』が、「吉川英治文学新人賞」候補作に選出。18年『火のないところに煙は』で、「静岡書店大賞」を受賞、第16回「本屋大賞」にノミネートされる。20年刊行の『汚れた手をそこで拭かない』が、第164回「直木賞」、第42回「吉川英治文学新人賞」候補に選出された。その他著書に、『悪いものが、来ませんように』『今だけのあの子』『いつかの人質』『貘の耳たぶ』『僕の神さま』等がある。
芦沢央の作品