偶然の科学 (ハヤカワ文庫 NF 400 〈数理を愉しむ〉シリーズ)

制作 : Duncan Watts 
  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (406ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150504007

感想・レビュー・書評

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  • 選択の科学とはまた違った角度だが、社会学が物理学のような華麗な発展を遂げられていない中、近年、インターネット、ソーシャルネットワークの普及により、徐々に実験環境を有効化できそうで有る事がわかる。偶然を科学するには、人的要素における社会学を追求する必要がある。社会学を学ぶのは、面白いかもしれない。

  • 本書「偶然の科学」を、数ある「常識を疑え系」の一冊として読むことは当然可能だ。そう読んだとしても本書の元は確かにとれる。

    オビより
    アップルの復活劇は、ジョブズが偉大だったこととは必ずしも関係がない。
    VHS対ベータ戦争で敗れたのも、MDの失敗も、ソニーの戦略ミスではない。
    給料を上げても、社員の生産性はかならずしも上がらない。
    JFK暗殺も9・11も、可能性が多すぎて、事前の予測は不可能。
    歴史は繰り返さない。したがって歴史から教訓を得ることはできない。
    フェイスブックやツイッターの大流行は、人々のプライバシー観が変わったからではない。
    ヒット商品に不可欠とされる「インフルエンサー」は、偶然に決まるため特定できないし、実のところ彼らの影響力も未知数である。
    売れ行き予測を立てないアパレルブランド、ZARA。その成功の秘訣とは?
    偶然による過失をめぐる倫理的難問。司法はどう裁くべきか?
    しかしそれでは本書を読んだことにはならない。それでは著者は読者に詫びなければならないことになる。それはあまりにも忍びない。

    まえがき
    社会学者の考え方を学ぶのは、物事の仕組みについてのおのれの直感そのものを疑い、場合によってはそれらを完全に捨ててしまうことを学ぶに等しい。だから、この本を読んでも、皆さんが世界についてもう知っていることを再確認する役にしか経たなかったのなら。お詫びする。わたしは自分のつとめを果たせなかったのだから。
    本書の原題は"Everything is Obvious* Once You Know the Answer" 「全ては自明--あらかじめ答えを知っているなら」というのは、対偶をとれば "Till you know the answer, nothing is obvious" 、「答えが分からぬうちは、自明なものなどなにもない」となる。

    それでは自明ならざるものとはなにか。

    人間、つまり社会である。

    それを明らかにしていこと、つまり"Science"は、"Social Science"、「社会科学」と呼ぶほかない。

    著者はその状況を、まずまえがきで詫びている。

    まえがき - ある社会学者の謝罪
    社会科学の有用性に疑いの目を向けている人は、少なくない。私も物理学者から社会学者に転身してからというもの、聡明な人物が頭を働かせても解明できなかった世界の問題について社会学は何を語ってくれるのかと、好奇心あふれる部外者から何度も尋ねられた。
    しかし、すごいのはここからだ。

    だが悲しむべきことに、われわれは経済を運営したりふたつの企業を合併させたり本の売れ行きを予測してたりするよりも、惑星間ロケットの航路を計画するほうがはるかにうまい。それならどうして、ロケット科学はむずかしすぎるように見え、それよりずっとむずかしいと言ってもいい、人間にかかわる問題は単なる常識の問題であるかのように見えるのか。
    著者は行間で檄を飛ばしているのである。

    「自然科学者達よ、おまえらこそ自分たちにどうにか解ける問題だけ選んで解いているだけの、真に解くべき問題から目を背ける常識の虜囚ではないか」、と。

    オビにあるのは、その例題にすぎない。

    「社会科学を科学(笑)から本物の科学」にしてみせるという、「社会学党宣言」こそ、本書のコアなのだ。

    「はじめに」にあるように、著者は物理学者から社会学に入った。著者を「科学者のなりそこない」ということはこの点で出来ない。そして著者は物理学的に社会を観測することによって、スモールワールド現象を解明した。でもそれはほんのはじまりにすぎない。社会科学が自然科学と同等の科学として常識されるには。

    しかしそのためには、社会科学が自然科学と同等に役に立つところを見せなければならない。それが著者を突き動かす力。どうしてニュートン力学で乗物を設計するように、社会という乗物を我々は設計できないのか。

    しかしニュートンは社会も何もないところから登場したわけではない。そこに至る前にティコ・ブラーエがいて、コペルニクスがいて、ケプラーがいたのだ。

    そう。観測。社会科学に決定的に欠けていたのは、自然科学における最初の一歩だった。だから「たまたま」その学者が目にした現象を「たまたま」その学者が持っている「常識と偏見で料理したもの」が「学説」として流通する。そんな連中をソーカルのように揶揄するのは安価で愉快なことだけど、そろそろそんなことより観測-仮説-立証サイクルを回そうぜ、インターネットのおかげで観測が可能になったのだから。著者はそうシャウトしつつ本書を〆ている。

    あとがき
     なぜ都市部の貧困や経済発展や公教育といった社会問題の理解に必要な科学が、注目に値しないことになるのか。もっと注目に値するはずだ。必要なツールがないと言い張ることももうできない。望遠鏡の発明が天空の研究に革命をもたらしたように、携帯電話やウェブやインターネットを介したコミュニケーションなどの技術革命も、測定不能なものを測定可能にすることで、われわれの自分自身についての理解や交流の仕方革命をもたらす力がある。
     マートンのことばは正しい。社会科学はいまだに自分たちのケプラーを見いだしていない。しかし、アレグザンダー・ポープが人間の適切な研究課題は天上ではなくわれわれの中にあると説いてから三〇〇年後、われわれはようやく自分たちの望遠鏡を手に入れたのである。
    「さあ、革命をはじめるとしよう…」。革命家ならぬ一読書家として、せめて本書をおすすめする次第。

  • 2018.8.24 amazon ¥421-

  • 経営戦略全史より

  • 『未来は予測不能で、過去の実績は未来の成功を保証しない』

    響きました。

  • 人々の行動について思ったより多くが偶然によると説明する本
    行動経済学的な感じがある。それよりちょっと説明が多く、実験の話が少ない。なんか読みにくい
    現状の結果はかなり偶然に左右されているので、それを見越した行動が大事

    常識は偏る、意味付けは得意だが理解は苦手、悩むことから開放、もっともらしい物語によるごまかし
    常識の物語が歪められる、デフォルト、プライミング、アンカリング、確認バイアス、
    常識も合理的理論と同じく人々の行動に理由をつける、情報があれば前もってわかったのにとあとづけする
    成功の理由は成功したからという循環論法。

    似たような集団も少しの偶然で大きく違う行動を取る、そして違う理由の説明は簡単に行われる。
    大きなインフルエンサーより、小さなインフルエンサー多数のほうが買い得である
    現実になったものは当然として扱われる。単純なシステム:値を予測可能、複雑なシステム:発生確率を予測可能
    予測するべきものを予測するのが難しい

    できることの限界近くまでは簡単、情報の収穫逓減
    効率的な集団は大失敗か大成功かになる、戦略的不確実性、予測から対応へ
    未来に役立つものを予測するより、現在役立っているものを知る能力の向上
    「予測とコントロール」から「測定と対応」
    ブライトスポットアプローチ、成功例に学ぶ
    ハロー効果とマタイ効果と偶然の影響

  • 私は元々、物事はほぼ外部要因で決まると考えるたちである。この本は、物事は偶然で決まると書いている。外部要因と偶然、似たようなものではないかと思った一方、私が外部要因で決まると考えるとき、外部要因で「必然的に」決まると考えがちなことに気づく。

    ーーー以下、引用ーーー
    こうした新しい力が社会科学を導く先はわからない。だが、たぶんコントやパーソンズなどの社会理論家が夢見たような純然たる普遍法則ではないだろうし、そうなるはずもない。理由は簡単で、実社会はそのような法則におそらく支配されていないからだ。 いつでもどこでも同じように働く重力とは異なり、同類志向原理は心理的選好から生じる部分と構造的制約から生じる部分がある。明白に定義される質量や加速度と異なり、影響は集中したり分散したりするし、成功は個人の選択と社会の制約と偶然が複雑に混ざり合ったものから生まれる。全体としての作用を整然と計算できる物理学の力と異なり、仕事ぶりは外的なインセンティブと内的な動機の複雑な相互作用によって決まる。p322

  • ネットワーク理論、スモールワールド、複雑系の権威として知られるダンカン・ワッツさん。2000年代にネットワーク理論関連の本がたくさん出たが2005年あたりからパタリと出版がなくなった。ブクログを始める前なので本棚に並べてないが、当時は随分読み漁った。ダンカン・ワッツさんは「偶然を科学する」という方面に向かってたんだ。「システム思考の極み」みたいな分野で通常「偶然にしか見えない事象を科学する」なんて人智を超える領域にしか思えない。

  • 東2法経図・6F開架:301.6A/W49g//K

  • おもしろい

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