アクロイド殺し (ハヤカワ文庫 クリスティー文庫 3)

  • 早川書房
3.93
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本棚登録 : 7876
感想 : 716
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  • Amazon.co.jp ・本 (445ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151300035

作品紹介・あらすじ

深夜の電話に駆けつけたシェパード医師が見たのは、村の名士アクロイド氏の変わり果てた姿。容疑者である氏の甥が行方をくらませ、事件は早くも迷宮入りの様相を呈し始めた。だが、村に越してきた変人が名探偵ポアロと判明し、局面は新たな展開を…驚愕の真相でミステリ界に大きな波紋を投じた名作が新訳で登場。

感想・レビュー・書評

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  • 果たしてこの物語の肝を知っている中で、楽しめるのか?
    非常にドキドキしながら読み始めた。
    話の中身自体は全くもって忘れていたことも功を奏し、おつりが出るくらい楽しめた。

    やっぱりうまいなクリスティ。
    物語に引き込み、様々な「?それがどんな意味を持つのだろう」という怪しいポイントを散りばめつつ、容疑をあちらへ向けたと思えばこちらへ向ける。
    空振りのようで空振りでない事実を重ねながら、気付けば物語全体の絵姿が出来上がっている。

    物語はキングズ・アボット村のジェームズ・シェパード医師の手記という形で展開される。
    この村で起きた、フェラーズ夫人の自殺とそれに次ぐ村きっての富豪ロジャー・アクロイドが殺された事件をめぐり、隣人エルキュール・ポアロの活躍ぶりを描く。

    ヘイスティングス不在の中、手記の記録手ジェームズはポアロから助手のお墨付きまでをも拝命。
    だが、この生真面目な医師では、あのぽんこつヘイスティングスの代わりが務まるわけもなく(褒めてます)、今作のいい味出している賞はジェームズの姉キャロライン。
    スモールコミュニティでの情報収集に余念がなく、各地に諜報部員を配し、一足飛びの際どい意見をずばずば繰り広げる。
    こういうすっとぼけた人がいると、めりはりが出て俄然面白くなる。

    いやー、それにしても分かってはいたのに、最重要場面を素通りさせられていたことや、最後まで事件がどのように起きていたのかがわからなかったことが、さすがクリスティ。
    モナミやエ・ビヤンなど注釈付き台詞がこれでもかと飛び交うのも乙。

    次は『ビッグ4』。
    攻略本では0.5点だ。。。

    • なおなおさん
      こんばんは!
      この本、ブックオフで買い、手にしたら安心してしまって積読中なんです。
      有名な本(…ですよね)だし、皆さんの評価が高いだけに、勿...
      こんばんは!
      この本、ブックオフで買い、手にしたら安心してしまって積読中なんです。
      有名な本(…ですよね)だし、皆さんの評価が高いだけに、勿体無いですよね…(-_-;)

      PSブクログスマホ画面(iPhone)が微妙に変わり、ちょっと戸惑っている…ってことをこちらで呟かせてください^^;
      2024/04/20
    • fukayanegiさん
      なおなおさん

      えー、絶対読んだ方がいいですよー!
      と言いつつ自分も買ってから1年くらい寝かせてしまいましたが。

      慣れの問題かもしれません...
      なおなおさん

      えー、絶対読んだ方がいいですよー!
      と言いつつ自分も買ってから1年くらい寝かせてしまいましたが。

      慣れの問題かもしれませんが、ブクログアプリの一新されたデザイン、ビミョーですよね!
      なんか広告とかも目に付くようになった気がするし、よく言えばスタイリッシュになった気もするけど、前のシンプルな感じのほうが好きだった。。
      2024/04/20
    • なおなおさん
      fukayanegiさん、やはり勿体無いですよね。
      分かりました。読みます!…という誓いを色んなブク友さんにしております^^;

      ブクログア...
      fukayanegiさん、やはり勿体無いですよね。
      分かりました。読みます!…という誓いを色んなブク友さんにしております^^;

      ブクログアプリの新デザインは、うまく説明できないのですが、各機能ボタン(文字や枠)が大きくなったような。
      前はどうだったか説明できないので、こうして忘れて新しいデザインに慣れていくのでしょうね。
      2024/04/20
  • ポアロの頭の中は常に明瞭なんですが、私の頭の中は五里霧中で…
    先が気になるけど、読み進めるのがもったいない…を繰り返してなんとか読了。
    最後まで読んで全ての真相が分かってから、もう一度最初から読むのが面白くて、面白くて。
    アガサ・クリスティー作品、まだまだたくさんあるので、これから読むのが楽しみです!

  • 本名エルキュール・ポアロ。イギリスの私立探偵。元ベルギー警察の捜査員。卵形の顔とぴんとたった口髭が特徴の小柄なベルギー人で、「灰色の脳細胞
    」を駆使し、難事件に挑む。

    読んだことは無くても名前だけは昔から知っている超有名な、名探偵ポアロ。
    いきなりシリーズ第3弾からの読み始め。
    さすが有名探偵だけあって、以前から知ってる探偵のようにすらすら物語に入れた。

    「エルキュール・ポアロに隠し事をするのは、たやすいことではありません。探りだすコツを身につけてますからね」
    「探偵は誰とも知り合いではないし、誰にも特別な感情を抱いていないーー彼にとっては、全員が見知らぬ人間であり、ひとしく疑わしいのです」

    一見、飄々としていて掴みどころがない。一旦話し出すと紳士的で人当たりも良く、誰にでも親しみやすい印象を持たせるポアロ。
    けれど一方で抜け目なく周囲を観察していて、突拍子もなく思える行動一つ一つにちゃんとした意味がある。
    ポアロの言動に読んでいるこちらも翻弄され、次から次へと謎が謎を呼び、物語に惹き込まれほぼ一気読み。

    村の名士アクロイドを殺害した犯人は誰なのか?
    ポアロと村の医師シェパードが事件の真相に迫る物語。
    関係者全員に疑いをかけながら、ラストに向けて真相へ導く流れが見事だった。

    大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の最終話について、脚本家の三谷幸喜氏がアガサ・クリスティーの作品を参考にした、とありクリスティーファンが予想をたてた一作品が今作だった、ということで読了。
    しかし…これがあのドラマに結びつくだろうか。。
    ちょっと前に読了した『そして誰もいなくなった』の方が近いのかな〜。

  • アガサさん、そして誰もいなくなった、オリエント急行からの三作目。なるほど〜!現在だと見かける手法だが、先駆けなのだろう。中盤で犯人ちょっと怪しんで当たってて一人でテンション上がる(^^)v嬉しいんだこれが。だからミステリーやめられない。フェアかアンフェアか議論になったらしいが、フェアでしょう!
    最後は、えっ…ってなった。日本の探偵ものだと探偵が阻止しそうな結末。

  • 地主アクロイドの死をめぐり、名探偵ポアロが真相を暴く。語り手がなぜ彼なのか、、と終始疑問に思いながら読み進めていたが、そういうことだったのか。解説を読んではじめて、この小説の精巧な作りがわかった。ただ、犯人は薄々気づいていたので、そこまで驚きはなかったなぁ。

  • 考えてみたら書籍では、人生初のアガサクリスティ。

    (『恐るべき太陽』の為に、このレビューをネタバレ扱いとする)


    何故本書を読んだかというと、『恐るべき太陽』(ミシェル・ビュッシ著)を読む前に本書『アクロイド殺し』と『そして誰もいなくなった』を読んでおいた方がいいという情報をブクログレビューで目にしたからだったはず。

    「はず」というのは、今、本書読了後に『恐るべき太陽』のレビューで私がいいね!を既に押させてもらっているレビューを改めて拝見したところ、『そして誰もいなくなった』の文字は有るが『アクロイド殺し』の文字は無かったからだ。

    あれ?
    『恐るべき太陽』を読む前に『アクロイド殺し』と『そして誰もいなくなった』を読んでおいた方がいいという情報を、一体私はどこから拾ってきたのだろうか…

    ブクログからAmazonに飛んでレビューを見たら、そこにあった。
    ただし、『アクロイド殺し』と『そして誰もいなくなった』を事前に読めということではなく、『恐るべき太陽』の文中にかなりこの2作のネタバレっぽいことが書いてあるのはいかがなものか?というようなことであった。
    私がそれを拝見して、「だったら先にこの2作を読んでおかなくちゃ」と勝手に判断したのだ。
    そのレビューを書いた方にも申し訳ない。
    自分の解釈も記憶力もヤバい。

    まあ、いいや。
    とにかく本書を読み終わった。
    新訳のお陰か、約100年前の作品とは思えないくらい、すんなり普通に読めた。
    (よっぽど『点と線』や『ゼロの焦点』の方が舞台が現代と違い過ぎて、頭がついていけなかった。
    松本清張氏のせいではなく、時代の古さのせいで)
    本書はその昭和30年代よりもずっと昔に書かれたにもかかわらず、あまり近代文明の発達とは関係のない舞台で話がちまちま進んでいるからすんなり読めたのだと思う。

    初アガサクリスティだが、早い段階で犯人はこの人だろうと思い、その観点からずっとポワロの言動を読んでいた。
    正解だったのだが、巻末の解説を読んでみて思ったのは、いくらアガサクリスティは初読みだと言っても、おそらくこの100年の間にバンバン出版されてきた推理小説の多くに似たような手法が踏襲されていて、私も知らず知らずその形式の推理小説を沢山読んできて単に耐性ができでいたからに過ぎないということだ。
    だから全く「ずるい」とは思わなかった。
    当時は賛否両論で大騒ぎだったらしいが、この100年の間に間接的に浸透し、受け入れられてきたのだから、恐るべしアガサクリスティ『アクロイド殺し』

    全く怪しくないキャロラインという登場人物。
    噂好き、詮索好き、度を越した知りたがり。
    キャロラインの友達も、村全体もそんな感じ。
    こういうキャロラインみたいな人を私は大嫌いなのだが、でも、このキャロライン、たぶん優しい人ではある。
    (色々と真髄に迫ってもいるが、一番の真相にだけは到達できておらず、哀れであり、可哀想である)

    さて、どうやら間違って借りてしまった『アクロイド殺し』ではあったのだが、面白かったので良し。

    そして『恐るべき太陽』は図書館に早くから予約を入れていたので、図書館新規購入の1番で借りることができて、今もう手元にある。
    そして肝心の『そして誰もいなくなった』(児童書)は予約を入れて待っているところだが、貸出中でまだまわってきていない。

    この状態で『恐るべき太陽』へ。
    読みにくいとおっしゃっているレビューも見受けられるので、なんとなく私にとっても苦手かもしれない…

  • アガサクリスティーのアクロイド殺しは、1926年に発表されたらしい。今からおよそ100年前の昭和元年頃ということになる。古さは感じず、新鮮な気持ちで読むことができました。この結末は当時かなりセンセーショナルだったのではないか。

    最近では、アンソニー・ホロヴィッツをよく読んでいたこともあり、ストーリーやトリックなどそこかしこにオマージュがあって、確かに彼がアガサクリスティーをリスペクトしてることがよく分かった気がする。

    主人公?の医師の姉キャロラインが面白い。
    さて、次は何にしようか。

  • 作家の代表作と言われるこの作品は、はじめから直感的に犯人が分かりました。なので評価は4にさせていただきました。次回に期待します。

  • 昔読んだことがある、のにスッカリ展開を忘れていて、再び新鮮に騙されました。忘れっぽい記憶力に乾杯。

    「振り返って、やり残したことがないだろうかと考えた」
    この一文にひっかかりを覚える読者がどれだけいるのでしょうか?大胆な仕組みかつ巧妙な文章……まったく、素晴らしいという他ありません。
    それにしても、今作の犯人のなんて自信家で図太いことでしょう!
    確実に真実に迫ってくるポアロの側にいながら、じっと逃げずに描写し続けたのだから大したものです。
    何はともあれ、未読の方にはあれこれ検索する前にぜひ、本書をお手にとっていただくことをおすすめしたいですね。

  • The Murder of Roger Ackroyd(1926年、英)。
    ポアロ・シリーズ。アクロバティックなトリックが有名な作品で、この作品によってクリスティは推理作家としての地位を確立したと言われる。

    医師のシェパードは、村の名士アクロイド氏から相談を持ちかけられた。今朝シェパードが死亡診断した女性の本当の死因について話したい事があると言う。しかし、全てを語り終える前にアクロイドは何者かに刺殺されてしまう。そんな折、シェパードの隣に越してきた人物が探偵ポアロであることが判明し…。

    発表当時は、このトリックのフェアネスについて物議が醸されたらしい。否定的な見解もあったようだが、現在では叙述トリックの名作として認められている。いずれにせよ少なくとも小細工ではない(小細工というには、あまりに大仕掛けなので)。

  • これがかの有名なアガサ・クリスティの「アクロイド殺し」かあ˚✧₊⁎⁎⁺˳✧༚
    「そして誰もいなくなった」に続き2作目、ポアロシリーズは初!です
    100年前の作品だと思えない、面白かった〰!(^O^)
    後悔しない様に、一文一文ちゃんと読んだ
    フランス窓とか編み上げ靴とかわからない言葉も検索しながら読んだ
    ポアロがそんな近くにいたとはねー
    姉のキャロラインのキャラが面白い
    犯人が選択する最後は切ないです

  • シリーズ3作目。
    この手法はわからんよ!
    犯人は語り手で、物語は実際に起こったことではなく、彼の手記という形で進んでいく。
    なので犯人に都合好く進んでいるため罪までは書かれていない。
    それをポアロが謎解きしていくスタイル。
    これは出版された当時としては珍しい手法だったのではないだろうか。
    先入観。
    小さな村では噂話がどんどん広がり誇張されていく住みにくい世界なんだなと。
    みんな自分が可愛くて嘘つき。
    金持ちの周りは大変。

  •  ポアロ長編三作目。昔一度読んではいて、超ピンポイントの断片部分は覚えていたが、肝心要のところは忘れていたので、ほぼ初読。ネタバレ踏んでしまう前に読むことができて幸運だった。世界よありがとう。さすがの私も念のため「ネタバレ」チェック入れておくわ…。未読の方はご注意を。私はこれで、越前敏弥『名作ミステリで学ぶ英文読解』の本作ネタバレパートが読める!

     本編そして解説まで読み、ミステリー史を語るうえでは欠かせない問題作だったということはよくわかった。何年か前に、野村萬斎と大泉洋で三谷幸喜がドラマ化していたはず(未視聴)だが、機会があれば見てみようかな。
     ポアロシリーズを続けて読んでみて、犯人ではない誰かが、何か勘違いに基づいて(ここ、三谷コメディ向きだな)誰かをかばおうとしたり、保身に走ったり、失敗を取り戻そうとしたりしてとった行動が、事態を複雑化しているというパターンが多い気がする。でもそれって本当にありそうなことだ。犯人だけが嘘をつき、隠し事をし、他の人たちはのんきに真実(と思っていること)だけを証言する、なんてことはありえないのだろう。探偵は、殺人という犯罪行為を計画し実行した“犯人”という特殊な立場の人物との知恵比べだけしていればいいわけではなく、巻き込まれて容疑者になってしまった一般人たちの心理や行動も見抜かないといけないんだな…。ということを思った。
     ネタバレにしたから書くけど、キャロラインさんが気の毒。

    • 111108さん
      akikobbさん♪
      なんてラッキー!覚えてないってまた楽しめていいですよね♡
      akikobbさん♪
      なんてラッキー!覚えてないってまた楽しめていいですよね♡
      2024/04/29
    • akikobbさん
      111108さん
      ほんと、よく忘れてました。
      いかに大胆なトリックであるか、若い私にはわからなかったのでしょうね。
      111108さん
      ほんと、よく忘れてました。
      いかに大胆なトリックであるか、若い私にはわからなかったのでしょうね。
      2024/04/29
    • akikobbさん
      111108さん
      ほんと、よく忘れてました。
      いかに大胆なトリックであるか、若い私にはわからなかったのでしょうね。
      111108さん
      ほんと、よく忘れてました。
      いかに大胆なトリックであるか、若い私にはわからなかったのでしょうね。
      2024/04/29
  • 読む前に犯人を知っていたからそこまでの衝撃はなかったけど、一般的なスタイルの小説しか読んだことの無い当時の人からしたら凄い衝撃だっただろうなと、、、

    5分間で人殺してトリック設置して靴履き替えてってのは現実的にどうなんだろう?とは思ったけど、なかなか面白かった

  • ポワロシリーズの中では
    『オリエント急行殺人事件』や
    『ABC殺人事件』と並ぶ有名な作品。

    シャーロック・ホームズシリーズと違うのは
    語り手が必ずワトソン役のヘイスティングス
    とはならないということ。
    今回の語り手=ワトソン役は
    シェパード医師という初登場キャラです。

    全員が全員嘘をついており、それを次々と
    明かしていくポワロはさすがです。

    今ではミステリージャンルの
    ひとつとなっている【叙述トリック】。
    約100年も前に書かれたとは驚きです。
    当時、物議を醸したというのも納得。
    これはホームズでは出来ない…。

    ラストは悲しかったです。
    他の選択肢はなかったのか…
    ポワロはこういうラストが多いですね。

    何度読んでも面白い作品。

  • あまりにも有名なクリスティーの、ポアロ(ヘイスティングスのいない)が登場するミステリー。
    普段猟奇的殺人だとか、複雑な伏線のミステリーだとかを好んで読むせいか、
    殺人事件が起こっているにも関わらず、なんだか平和で優雅な、のんびりした雰囲気がそこここに感じられた。
    アガサ・クリスティーの作品の多くがしばしばドラマ化、映画化されるのが理解できる。
    変な表現だけど読んでいてとても安心なミステリー。

  •  クリスティの傑作、良作はとても多く、数作品手に取れば少なくとも一冊以上は驚くべき犯人と予想だにしないトリックによって僕達を楽しませてくれる。
     僕のクリスティ作品のスタートは「エンドハウスの怪事件」と「青列車の秘密」で、この二作からクリスティの魅力に興味を持ち、数々の作品を手に取る様になっていった。
     今作、アクロイド殺しは、クリスティを読み始めてから数作品、十作未満で出会った記憶げあり、当時は過去の評判なども知らず、軽い気持ちで読んだ結果、余りにも衝撃的なトリックにより、益々クリスティにのめり込むきっかけになった作品だ。
     当時、今作の様な思考の作品は既出のイメージがあった為、衝撃的だったがアンフェアだとは思わなかった。僕が今作の発売時にリアルタイムで「アクロイド殺し」に触れていたのならば全く違った印象であったのだろう。
     ポアロは引退して畑仕事をしてみるが上手くいかず、結局は探偵業に邁進する。今作の語り手を務めるシェパード医師は人柄もよく、愛情溢れる姉と暮らしている。アクロイドはクリスティ作品至上もっとも有名な被害者だと言われているが納得だ。殺人擬装のトリックも時計を使ったもので当時では最先端の技術を使った事件だったのだろう。
     結果、シェパード医師の姉はどれだけ悲しい思いを持っているのだろうと慮り、彼女の後悔が感じられる様な気がする。いずれにせよ、今作によっていよいよ僕のクリスティ評は決定づけられ、僕が古本屋巡りをするきっかけになった。

  • この本を読む前に、三谷幸喜さんの黒井戸殺しを先にテレビで観てしまいました。その時は、そんなのあり⁉︎と思わずにいられませんでした。
    なので、今回は結末を知っている上で原作を読みましたが、できれば先に小説で出会っておきたかったと後悔しました…
    ポアロが決断をシェパード医師に委ねるところはとても良かったと思います。
    キャロラインのその後を思うと悲しくなります。

  • 村の名士・アクロイドが殺され、容疑者である義子が行方不明に。様々な嘘で隠された事件の謎を暴くため、医師シェパードとともに名探偵ポアロが動き出す。

    ぼくが初めて触れたポアロ作品。この挑戦的な内容が1926年に発表されているというのがやっぱり素晴らしいよね。登場人物の心理を巧みに利用した展開が実に上手い。事件に揺れて巻き起こる疑心暗鬼。どのキャラもあやしく見えてきて最後まで犯人がわからなかった。嘘を少しずつ真実へと塗り替え、事件の闇が照らされていく中で「これはもしや…!」となりながら真相に立ち会った時の興奮がすごかった。ラストも皮肉が効いてて好き。

    まさにテーマは嘘。みんなが少しずつ嘘をついていて、それがパズルのように謎を散りばめている。語られる言葉は真実なのか嘘なのか。そして現実と同じように、語られるものだけが真実とは限らない。沈黙に真実が宿ることもある。透かし彫りのように立体的に描かれた事件と人間心理が見事な作品だった。

  • ある程度ミステリーを読み慣れた読者であれば、シェパード(語り手)が犯人であることは予想できると思う。
    実際私も何度か疑いの目を向けたが、そうではない材料や別の疑わしい人物が挙がってくるので、怪しいと思うまでで断定はできなかった。
    手記と明かされてからも、ポアロが言う容疑者候補にシェパードが入っていなかったので、レイモンドかなと思った。笑
    あと最終章の直前の章も、お前犯人だろと言われてから書いているわけで、最終章こそやさぐれてたけど、シェパードは作家としてのの才能があると思う。笑
    最後のやさぐれも超ブラックなユーモアな訳だし。
    ポアロシリーズを順番に読み進めている身としては、新たな相棒なのかなと思ったけれど、全然違った。笑

    これまでのポアロシリーズと違い、この作品が1926年に発表された作品というのが信じられない一方で、よくよく考えると『そして誰もいなくなった』で受けた衝撃からすれば、これぐらい簡単にやってのけるのがアガサ・クリスティなのだと改めて納得させられた。
    ポアロシリーズの続きが楽しみになった一作。

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