神話の力

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (411ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152035233

作品紹介・あらすじ

神話はわれわれに何を語ろうとしているのか。神話が人間の精神に及ぼす見えない影響を明らかにし、全米に神話学ブームを巻き起こしたベストセラー。

感想・レビュー・書評

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  • 以下引用
    p.184
    モイヤーズ「自然に本来備わっている神性を私たちにわからせてくれるのは、現代においてはだれでしょう。われわれのシャーマンはだれですか。目に見えない物事を説明してくれる人は?」

    キャンベル「それは芸術家の仕事です。ただし、神話のことも、人間のことも、よくわかっている芸術家に限ります。あるプログラムを押しつけてくれるような、ただの社会学者ではだめです。」

    モイヤーズ「その他大勢のふつうの人間はどうなんでしょう。詩人でも画家でもなく、超越的な無我の境地なんかとは無縁な人間は。私たちはどうやったらそういうことを知ることができるんでしょう。」

    キャンベル「とてもいい方法を教えましょう。部屋に座って本を読むーひたすら読む。然るべき人が書いたまともな本ですよ。すると知性がその本当同じ高さまで運ばれあなたはそのあいだずっと、穏やかな、静かに燃える喜びを感じ続けるでしょう。」

  • レヴィ・ストロースより前に神話について語っていた人
    という記述が何かにあったので読んでみた

    ジャーナリストと著者との対談形式を文章におこしたもの

    近代に入る前に神話が人間に対して持っていた意味を世界中の神話を生涯研究してきた比較心理学の大家である著者が、ジャーナリストの質問に答えながら語っていく
    という形になっている

    非常にためになった

    神話は隠喩であり、あなたの中に神は在り私の中にも神が在る
    西洋や東洋、その他もろもろの文化の違いで表現のされ方は違うけれども、表現したいことはどこでも同じである
    だが、表現したいものはそもそも言葉にできないもの言葉を超えたところにある
    それが神、というか神秘、というか根源、というか
    そんなようなものである

    自分なりに要約するとそんな内容だった
    京極堂の「鉄鼠の檻」で言っていた禅の境地に同じなのかなあ
    うーん、知りたいことは尽きない

    関連文献を読んでみようかなあ

  • 神話研究の大家の先生の対談集。
    スターウォーズも神話解釈的にアプローチするなどなかなか面白い。

    現代社会であろうと、我々は神話的なメタファーやストーリーからは切り離して生活できないようだ。

  • 神話学者、ジョーゼフ・キャンベルが、様々な神話に隠された意味を対話形式でわかりやすく語っている。小説や映画に登場するモチーフなどと比較しながら、神話がもっている深い精神性を明らかにする。

    神話が、時代と地域を越えて共通の要素をもっているのはなぜか。人間のこころは、 基本的には世界中どこでも同じだからだ。みんな同じ器官を持ち、同じ本能を持ち、 同じ衝動を持ち、同じ葛藤を経験し、同じ不安や恐怖を抱くのだ。この共通の基盤 からユングいう元型が出現した。これが神話の共通地盤である。 元型は生物学的な根拠をもっているが、フロイトの無意識は個人的な外傷経験を抑圧したものの集合だ。ユングのいう無意識の元型は生物学的であり、自伝的な要素 は二の次である。人類史上のそれぞれの時代に、こういう元型がさまざまな衣装を まとって出現したのである。キャンベルは「神話は公衆の夢であり、夢は個人の神 話です」という。

    神話の共通基盤が、人類の生物学的な条件に基づいているという見解は納得できる。 とくに同じ不安や恐怖を抱くその根底には、人間が死すべき存在だという絶対的な事実がある。だからこそ、もっとも深い根源から共通の元型が生まれてくるのであろう。そこには人間の条件についての人類共通の問いが横たわっており、その問い に対する答えを抽象的な思考によってではなく、物語とイメージによって語るのが 神話なのだ。 神話は、人が生きるということの最深の層に触れているのだ。

    キャンベルが、神話 に関心を寄せる視点は、「生きる」ということに対して私が関心を寄せる視点とぴったりと重なるので、共感し、啓発されながら読んだ。 たとえば情欲と恐怖、この二つの感情が、この世のすべてを支配している。情欲が「えさ」で、死が釣り針だ。そこに神話と宗教がかかわる共通の根がある。それは、物質的な欲望と肉体の恐怖とを、肉体を支える精神性のために犠牲にすることである。

    肉体の奥に秘められた〈大いなるいのち〉を知り、時間の場においてそれを表現することを学ぶ。この限りある生において、人間性を養い育て開花させるもののために自己を捧げる。 悟りとは、万物を貫いている永遠の輝きを認めることだ。時間の幻のなかで善と見 なされるものだけでなく、悪とみなされるものも含めすべてに。

    そこに至るために は、現世の利益を願い、それらを失うことを恐れる心(情欲と恐怖)から完全に脱却しなければならない。 こうした思考が、神話の構造に即して語られることで普遍性を帯び、同時に神話が生まれてくる次元の深さを指し示す。(たとえばガウェイン卿と緑の騎士の物語な ど。)

    神話を通して、これほどに深い真実が語られるとは。 キャンベルは、神話学を「ひとつの偉大な物語」の研究だという。私たちはみな、存在のひとつの基盤から生まれて、時間という場に現れている。時間という場は、 超時間的な基盤の上で演じられる一種の影絵芝居だ。私たちは影の場で芝居を演じる。「ひとつの偉大な物語」とは、そのドラマにおいて自分の位置を見出す努力のことだ。

    誰でも、自分でそう思い込んでいる〈自分〉以上の存在であり、自分についての観念には含まれない次元と自己実現の可能性がある。生は、いま自分で見ているより はるかに深く、はるかに広い。いま生きている生は、それに深さを与えているもののうち、ほんのわずかな影に過ぎない。わたしたちは、その深みのおかげで生きられるのだ。あらゆる宗教は、その深みについて語っている。神話もまたその深みに 触れている。この世界という偉大な交響曲に対して、それと調和し、肉体のハーモ ニーを世界のハーモニーに同調させるためにこそ、神話が生まれたのだ。

    神話の深さと魅力に目を開かれる一冊であった。

  • 大学の授業の教科書でしたが、数少ない読んでいて楽しい教科書でした。文明論楽しかったな。

  • 神話学についての対談集でありながら、ユング心理学の言う普遍的無意識、元型について、より深く知るよすがになる本として参考になる。ひとの意識のフラクタルな部分ともいうべきこの普遍的無意識について考える材料として優れた書物であると思う。

  • 中学1年生に読んだ本。私に普遍的な存在を信じさせてくれた本。

  • キャンベルの詩的な洞察力が好き。ユング派的神話学。
    ものを知りたいと思うのは何のためだったか(それは心豊かに生きるため)を穏やかに力強く思い出させてくれる書物。

  • いわゆるヒーローズ・ジャーニーとか、文化を超えて、神話や物語には、同じようなものが多い。

    という話しの原典は、キャンベルだよね、ということで、とりあえず、読み易そうな本をざっくり読んでみた。

    これはキャンベルの生前最後のインタビューを本にしたもの。

    インタビューなので、結構、読みやすいといえば、読みやすい。

    神話だけでなくて、スターウォーズの話しとか、いろいろなトピックがでてくるし、え〜そうだったんだ!という発見も多い。かなり面白い本だと思う。

    が、この本の一番すばらしいところは、そういうキャンベルの分析のさえではなくて、いろいろなエピソードを通じて、語られる哲学ですね。

    哲学といっても、難しいことをいっているのではなく、「あなたはどんな人生を生きるのですか?」「あなたはどんな愛をいきますか?」「あなたは死をどうとらえますか?」みたいな、根源的な話し。

    神話などの分析を通じて、こうした問いにキャンベルなりの答えを語っています。実に、実生活でどう生きるかというレベルでね。

    キャンベルは、いわゆる神話学みたいな領域だけでなく、それこそ、スターウォーズを始めさまざまなストーリーづくりに影響を与えているし、心理学的な方面でもしばしば言及されているわけだけど、その辺の必然性がよく分かる本でした。

  • たぶん20ページくらい読んだ。
    すっかり出来上がったキャンベル氏をご覧くださいということらしい。

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著者プロフィール

【著者】ジョーゼフ・キャンベル
Joseph Campbell/1904年-1987年。アメリカ生まれの神話学者。比較神話学や比較宗教学で知られる。1934年よりサラ・ローレンス大学教授を務めた。著書に『千の顔をもつ英雄』上下(平田武靖・浅輪幸夫監訳、伊藤治雄・春日恒男・高橋進訳、人文書院)、『宇宙意識 神話的アプローチ』(鈴木晶・入江良平訳、人文書院)、ビル・モイヤーズとの共著『神話の力』(飛田茂雄訳、ハヤカワ文庫)、『ジョーゼフ・キャンベルの神話と女神』(倉田真木訳、原書房)など。

「2023年 『聖杯の神話 アーサー王神話の魔法と謎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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