追憶のハルマゲドン

  • 早川書房
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152089472

感想・レビュー・書評

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  • フリとオチがある短編集を期待して読み始めた。前半しか読んでないけど、カートが戦争に行ってて、ドイツのドレスデン空襲の時ドレスデンにいて爆撃の激しさを体験してたこととか、ドレスデンで捕虜として酷い労働環境で労働させられてたこととかが、そういう戦争のことが印象に残ってる。

    アメリカの爆撃で死んだドイツの一般市民を大量に火葬したという体験もしたらしい。地下壕の死体を集めて、火炎放射器で火葬する。想像したけど嫌だね。

    そういうのがエッセイとして書かれててて、でも途中やっと待望の短編ゾーンに入った。最初の短編は203?年が舞台で、そこでは既に世界が統一されてて戦争が過去のものとなっている。で、なんやかんやタイムマシンで1918年の第一次世界大戦の戦場に足を踏み入れる。そこで戦争の悲惨さが描かれてた。オチとかはあったかなあ。どんでん返し的なオチはないけど、主人公がどういうことになったかというオチはあった。元の世界に戻れなくなり、未来から来た人として1918年以降を生きていくというオチ。あだ名が「審判の日」というものになった、というオチ。

    ●バターより銃
     二つの目の短編最高。こういう後味の良い作品がたまにある。舞台は戦争中のドイツで、アメリカ人捕虜3人と彼らを働かせる役目を負ってるドイツ人兵士の物語。捕虜たちは戦争が終わったら何食うかで議論し合ってメモ帳にまとめてるけど、ドイツ人兵士はそんなもの聴きたくないって憤慨する。でも最終的には、ドイツ人兵士も食べ物の話に加わる。

  • ヴォネガットの没後一周年を記念して刊行された作品集の全訳。ほとんどが戦争モノ。ところどころにヴォネガットの文字やスケッチがある。どの作品もストレートに平和の願いがこめられていて胸を打つ。とにかく大切なのは、とびきりの親切心とユーモアだな…

  •  ヴォネガットって短編よりも長編の方がずば抜けて面白い、そう思っていたから、この本の面白さにしばらくは面食らってしまった。
     彼の死後に編纂された作品で、10の短編以外にもドレスデンに関するエッセーやらスピーチやら、彼の息子による序文やらが掲載されている。
     そしてその10の短編がどれも面白かった。
     殆どが戦争に関するもので、痛ましい話や、人間の残虐性を語った話、皮肉な結末、意外性のあるショート・ショート風の話など、短くもきっちりとまとまった作品が並んでいる。
    「略奪品」なんて、本当に胸が張り裂けそうになるし、「サミー、おまえとおれだけだ」の運命の皮肉ないたずらに関しては、どう対処していいのか路頭に迷ってしまう。
    「ハッピーバースディ、一九五一年」もまた違ったアングルから撮られた戦争の悲劇なのだろう。
     解せなかった点が2点だけあった。
     まず、本の帯に記されている爆笑問題の太田光氏による「ヴォネガットを読むと必ず思う。戦争はコメディだ」という文章。
     どう解釈すればいいのか、いまだに判らない。
     それと短編「一角獣の罠」に対する翻訳者浅倉久志氏による解説「心温まる物語」という一言。
    「心温まる物語だって?」これが僕の感想。
     お二人の文章を読む限り、僕はトンチンカンな読み方をしてしまっているようだ。
     全く気にしてないけどね。

  • 戦争に関わった人たちの様々な立場や人間性が上手に描かれている。
    登場人物はみんな魅力的だけど、戦争には行きたくないと思わせる凄みを感じる。

  • 久しぶりのヴォネガット。

     ヴォネガットの死後編纂された短編集だ。冒頭の息子マークの父を語る部分が泣かせる。短編そのものはいつものウィットに富む内容なんだけれど、戦争がテーマになっている部分が多くて、少し乗り切れない。

     ヴォネガット作品は大好きなんだけれど、「ローズウォーター・・・」そして「タイタン・・・」がやはり私の中では最高傑作だなぁ。

     前にも書いたように、実質上の最終作品と思われる「時震」を読み直したいなぁ。

  • 邦題「追憶のハルマゲドン」。カート・ヴォネガットの作品を読むのは実はこれが初めてで、こんなに面白かったんだ、と目から鱗だった。これは未発表作品集。そのほとんどが戦争にまつわる話。独特の皮肉さ加減がたまらなくいい。他のも読んでみたくなった。(08/11/17)

  • 初ヴォネガット。息子による序文と、本人のスピーチ原稿がおもしろかった。戦争が題材の短編に、ユーモアがあっておもしろかった。著者の手によるという挿絵とスケッチがかわいい。

  • 悪魔退治を科学的に行なおうとする天才科学者ターベル博士の奮闘をユーモラスに描く表題作はじめ、第二次大戦中に体験したドレスデン大空襲を語るエッセイ、死の直前に書き上げたスピーチ原稿、手紙、短篇などの未発表作を著者自筆イラストとともに収録する、最後の作品集

  • 原題は「Armageddon in Retrospect
    And Other New And Unpublished writings on War and Peace」。

    ヴォネガット没後一周年を記念して出版された
    未発表短編集を中心に編まれた本。
    序文は長男のマーク・ヴォネガットによるもので、
    これがすこぶるよい文章で、ほんとに泣ける。
    身内だから書ける追悼文だと思った。
    ヴォネガットのすばらしさを再認識できた。

    収録されている短編集の大半は、
    第二次世界大戦をモチーフにしたものである。
    ヴォネガットのエッセイで戦争について語られている本を
    読んでいたせいか、ちょっと身構えていたが、
    収録されている作品はユーモアにあふれ、爽やかさすら感じられた。
    人を描くことに力を注いだヴォネガットならではの着眼点だと思った。

    中には、ヴォネガットにしては珍しくミステリタッチの作品がある。
    「サミー、おまえとおれだけだ」がそれで、
    これまで発表されたヴォネガットの小説の中で
    かなり珍しいタッチだと思う。言ってみれば倒叙法か。
    最初に結末を描くことを信条としたヴォネガットらしい。

    唯一、戦争に関係のない作品が表題作であるが、
    これがどうして未発表だったかと驚いた。
    というのは、実を言うと、短編ではなかなかヴォネガットらしさを
    味わうことが難しいのだが、この短いお話の中にはそれがある。
    読後感はまさにヴォネガット。
    なぜこれを表題作にもってきたのか、判ったような気がする。

    それから、これだけは言っておかなくては。
    やはりヴォネガットは浅倉久志訳でなくては。
    今回、つくづく思った。
    優しさとアイロニーが表裏一体になっているこの語り口こそ、
    わたしが知っているヴォネガットだから。

    お帰りなさい、ヴォネガット。また会えて嬉しいかったです。
    ほんとうに、ありがとう。R.I.P.

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著者プロフィール

1922-2007年。インディアナ州インディアナポリス生まれ。現代アメリカ文学を代表する作家。代表作に『タイタンの妖女』『母なる夜』『猫のゆりかご』『スローターハウス5』『チャンピオンたちの朝食』他。

「2018年 『人みな眠りて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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