マシュマロ・テスト:成功する子・しない子

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152095411

感想・レビュー・書評

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  • 有名なマシュマロをいまひとつとるか、後で2つ取るかの選択で我慢できた未就学児の将来(年収、学歴)はできなかった子よりはるかに良いというその後引用され続けるテストを行った研究者による書。
    有名なこのくだりを超えて、どのように衝動を先延ばしにするか、ホットシステムとクールシステムに分けて解説するところは、カーネマンのファストアンドスローと同様。ホットシステムの処理をうまくコントロールしてクールシステムに渡せる技術を学ぶことが将来を変えることだとしている。

  • 自分が子育てしてして、実感として感じることが、理論的に裏付けられていて、納得感がある。
    子どもをどうこうする前に、自分をどうにかする方が先だけど…
    少し訳文がこなれてなくて読みにくい部分はあるが、読む価値は高いと思う

  • 「マシュマロテスト」とは、小さな子供の前にマシュマロをひとつ置いて、「戻ってきていいというまで待てればそのときにふたつあげる」、と言って部屋で一人にする実験のことだ。そのテストの成否の結果が、その子が成人したときのSAT試験の点数や社会的成功、肥満指数との間に強い相関があったという。また、中毒や肥満と結びついた領域の脳スキャン画像でも明確な違いが見られたという。この有名な結果は、心理学の分野を超えて、様々な分野で影響を持つこととなった。この本の著者はそのマシュマロテストを1960年代にスタンフォード大学で始めた当の本人である。ちなみに「マシュマロテスト」という呼び名で有名だが、実際にはマシュマロを使うことは少なかったということがこの本にも書かれている。

    上記の結果は、いわゆる「氏か育ちか」の問題にもつながる。子どものときの試験の結果が、遺伝子によって定まる生得的なものであるなら、自制心といった将来の能力も生得的に決まったものであるとされてしまう危険性がある。「危険性」と書いてしまうように、その結果はいわゆる政治的に正しくなく、不都合なものとなる可能性があった。

    著者は、これに対して自制心を発揮する能力は、訓練や教育によって後天的にコントロール可能だということを説明する。前頭新皮質などの脳科学まで持ち出し、「ホット」と「クール」という概念を用いて、今を「クールダウン」して、あとを「ホット」にすることができる能力を後に身に付けることができるという。つまり、自制心を働かせる「意志の力」は訓練により向上可能なひとつの能力であり、生得的な得手不得手があるのかもしれないが、後天的に獲得可能な他の能力と変わらないというのだ(著者は、マシュマロテストの結果を、信頼できる大人の存在の有無という家庭環境の差にも求めていた)。そして、そのためには自制心を働かせる動機づけが非常に大切だというのが、この本での主張のひとつの肝となる点でもある。KIPPなどの公共の教育プランや具体的な「イフ・ゼン」の実行プランなどがその例だ。

    かつてマシュマロテストは、自制心の有無が生得的なもので社会的成功は就学前に決まっているといった(誤った)観念を産んだ。自分もそういう印象を持っていた。本書は、そうではなくて、自制心はひとつの能力であり、適切にトレーニングすることで克服可能なものであるということを自ら説明するものである。そして、動機づけの観点からそのための環境の重要性を主張するものである。それが、著者が今になってこのような本を世に出す動機であったのだと想像する。

    自制心・欲望の先延ばしの問題は、ジョージ・エインズリーの『誘惑される意志』が双曲割引の理論を紹介して非常に面白い(読みにくいが)。また、ダニエル・カーネマンの名著『ファースト & スロー』なども関係する本に数えることができる。社会心理学的観点からも面白い分野である。

    『誘惑される意志』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4757160119

    『ファースト & スロー』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4152093382
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4152093390

  • 短期的、長期的な思考を持つかどうかで人生の大半が決まるらしいが、思考を変える事ができる点が救いだと思う。この研究を知っている前提で、自分の子供が我慢できない子だった時、育児方法を変える事ができると
    思う。我慢しすぎも良くないが、犯罪を犯さず社会に適応できる程度のレベルにするには親も長期的な思考を持つ必要があると思う。
    と思う。

  • 著者は長年子どもの行動から自制能力の発達について研究されていた方で、タイトルはその研究で使われたテスト方法からきています。
    子どもの育て方の参考になればと思い読みましたが、自分自身にとって参考になることが多く、特に「今を冷却して将来を加熱する」という自制の方法は使ってみようと思いました。

  • マシュマロテストの話はポール・タフの本で知ったが、じゃあ、そのテストで待てない子は?という話もちゃんと書いてあった。アンガーマネジメントとかレジリエンスとも共通項があるとわかった。もう少し柔らかい訳でも良い気もする…。

  • 就学前に先延ばしにする、つまり自制能力が高かった子供は、よりよい人生を送れる。自制の仕組みを知ることで、自制能力を伸ばせる。

    マシュマロテストは有名ですが、深く知ると、そんなに単純なものでもないとわかる。

  • 小さな子どもの時から、
    人は自制する事ができる子と出来ない子がいて、
    その結果、人生にどのように影響があるかを書いた本。

    考えされられた。

    我慢することは、大人でも難しいことである。

    それを幼少のころに身につけていれば、成功する確率はあがるだろう。
    本書はその事を半世紀の調査で実証したといえる。


    内容(「BOOK」データベースより)
    『マシュマロをすぐ1個もらう?それとも我慢して、あとで2個もらう?』これは、行動科学で最も有名なテストのひとつマシュマロ・テストである。このテストの考案者である本書の著者ウォルター・ミシェルは、マシュマロを食べるのをがまんできた子・できなかった子のその後を半世紀にわたって追跡調査し、自制心と「成功」との関連を調べた。人生で成功する子は、初めから決まっているのか?それとも、そうではないのか?長年の追跡調査でわかってきた、人間の振る舞いの不思議を、マシュマロ・テストの生みの親自身が綴る待望の一冊。

  • 「今マシュマロを一つもらうか、しばらく待って二つもらうか」

    我々の意思決定には辺縁系を中心としたホットなシステムと前頭前野を中心とした認知的なクールなシステムがある(という二律背反構造をモデル化したものはセイラー以来、多数あるが、やはり代表的なのはカーネマンか)。
    未就学児童に対するマシュマロ・テストで、クールなシステムを働かせて待つことができる能力とその後の人生の成功との間には強い相関がある

    ただし、この能力は持って生まれたものではあるが、その後のトレーニングによって強めることもできるし、場合によっては(自制心があるはずのクリントンがモニカ・ルインスキーとの事件を起こしたように)ホットなシステムに屈する場面もある。

    と、いうことで、マシュマロ・テストの呪縛はあまり強いものではない(教育などによって乗り越えられる)、という内容になっており、メッセージとしては少し弱いが巻末文献などもしっかりしており読み応えはある。

    ・ホットシステムの介入を減少させるために脱感作の手法を用いる

    ・40年後にこの時の被験者を集め、go/no-go課題でのfMRIをやったところ、待てる子は前頭葉が活動しており、待てない子ではventral striatumが活動していた

    ・意志の力というのは有限のものなのか。学生を被験者に、チョコチップクッキーを食べたいのを我慢させた場合、その直後に数学の問題(解けないように設定されている)に取り組むと早く諦めることが分かった。動機付けや環境調整が必要

    ・前頭皮質により、ホットな反応を冷却することができる

  • 報酬遅延の実験をはじめとした自己制御の話から,ミシェルらしいパーソナリティの話もちょこっと。
    ガチガチに実証研究の知見が紹介されまくってるはずなのに,専門外の人がもとめがちな(そして専門家があまり書きたがらない)「how to」的なこともちゃんと書かれている(書けている)ように見えるのってなんでなんだろう。テーマが自己制御だから?

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