マシュマロ・テスト:成功する子・しない子

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152095411

感想・レビュー・書評

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  • 4歳か5歳の保育園児がひとりで机の前に座っている。研究者は園児の目の前に大好物のマシュマロを置いて部屋を出ていく。園児はマシュマロを食べたくなったら、いつでもベルを鳴らして研究者を呼び、マシュマロを1個食べて構わない。でも、研究者が部屋に戻ってくるまで我慢して待つことができたら、マシュマロを2個もらえる。こんな状況に置かれた子どもはどのような行動をとるだろう。目の前の報酬を取る事を選ぶか、それを先延ばしにしてより多くの報酬を得ることを選ぶかというのが「マシュマロ・テスト」だ。このテストに参加した園児のその後数十年の追跡調査を行ったところ、驚くことに、園児の時に欲求の先延ばしに成功したか、失敗したか、どれくらいの時間我慢することができたかは、子ども達の将来を予想できるものであった。欲求の先延ばしに成功した子どもは、物事に集中でき、試験の点数も良く、社会的な評価が高かった。大人になってからも肥満指数が低く、自尊心が高く、目標を効果的に追求し、ストレスに上手く対処できた。中年期には欲求の先延ばしに成功した人と失敗した人では、アルコール中毒や肥満と結びつく領域の脳スキャン画像にはっきりとした違いがいが見られた。将来のために今すぐ欲求を満たすのを我慢するというスキルは、より良い人生を歩むために重要なものなのだ。
    私たちがどんな人間になるかは、遺伝子の影響と環境の影響が複雑に相互作用して決まる。という事は、意志の力は生まれ持ったものだから変えられないという考えは間違いなのだ。著者は、自制心を発揮する努力の手助けをする方法をいくつか紹介している。「今」の欲求を遠くに押しやって冷却し、「あとで」得られる結果に意識を集中して加熱する、「もし」自制心が揺らぐような事や物に出会ったら「その時は」どうやって対処するのかを決めておく、自分にとって「最も自制が難しいものは何か」を突き止めておくなど、それぞれ具体的な例を挙げて説明してあり、説得力がある。
    しかし著者は自制心を高めることだけが素晴らしいと言っているわけではない。欲求の充足を先延ばしにして我慢ばかりの人生は、先延ばしが不足している人生と同様に悲しいものになるだろう。全ての人にとって大切なのは、マシュマロを多くもらうために待つべき時と、今すぐマシュマロ楽しむべき時を見極めることなのだ。
    「今これをやっちゃダメだってわかっているけど、ついつい…」という事は誰にでも心当たりがあるだろう。本書で「より良い選択をし、実行する」スキルを身に着ける方法を学び欲求を上手にコントロールすることを覚えれば、後悔の無い人生を送ることができる…かもしれない。

  •  自分をいかにコントロールできるか。「ありのままで」自分の本能に身をゆだねてしまうとどうなるか。今回の本は、マシュマロを使って「自制心」とその後の人生」について書かれた本だ。

     その場で自分のほしいものを手に入れてその場の快楽(この実験では1個のマシュマロ)を手にするか、それとも先延ばしして後に得られるもっといい快楽(ここでは2倍のマシュマロ)を手に入れるか。我慢できた園児たちの人生を追ってみると、「肥満指数が低く、自尊心が強く、目標を効果的に追及し、欲求不満やストレスにうまく対処できた」というように、いい方向の人生を歩んでいる。

     意志の力に関して、生まれ持ったものなので、どうにもならないというのは間違っていると指摘している。むしろ、自制心は、成長過程で磨いていくことが出来るとして
    いる。

     成功の原動力は、「できると思う」ことと述べている。身もふたもないと思ったが、何をやってもどうせダメたと常に自分に言い聞かせている人生を送っていると自己暗示になり、下り坂街道まっしぐらの人生になってしまう。

     人間の脳は本能に赴くままの古い脳と新しい脳があり、どうしても古い脳に左右されてしまい、楽な方向に流れてしまう。そうならないように、手帳にやるべきことを書いてこまめに見返して軌道修正するのが良いということを言う人がいるわけだな。

  • よい本

  • 2016/01/12

  • 「フォーカス」で紹介されていたのでこちらも読んでみた。
    フォーカスと比較してより教育学的、心理学的な内容です。
    教育にぜひ取り入れたい。

  • マシュマロテストで人生の先行きが分かってしまうとは。でも、比較的簡単な指導で忍耐力が付くということなので、救いがある。日本でもこの指導を広めるべき。子育て世代、教育関係者は必見、そうでない人も読む価値大いにあり!

  • 【子育て・教育】マシュマロテスト/ウォルター・ミシェル/20160720(89/515)<342/47987>
    ◆きっかけ
    ・日経広告

    ◆感想
    ★自制心を伸ばし、活用すれば、ホットシステム(情動的、反射的、無意識的)のアクセルに対抗してクールシステム(認知的、内省的で時間と労力がかかる)のブレーキをかけることができる。ただし、自制の効きすぎた人生は、自制の足りない人生と同じで満たされない。肝心なのは両システムのバランス。アリとキリギリスでアリが過労死することもありうる故。目指すはアリギリスというところか。
    ・現代のストレス社会ではホットシステム優位である環境下、如何にバランスを保つかが鍵。それに必要なのが日々の様々な事柄に対する判断なのだろう。これらの判断のためには判断基準、言ってみればその人なりの価値観が必要だし、さらには価値観に基づく目標、それを実行する為のモチベーションが不可欠なのは間違いない。
    ・ホットシステム優位な中、クールシステム稼働のヒントとしては、以下
     -イフ・ゼン実行プランが自制を自動的にする。例)もし酒場が見えたら、そのときには通りの反対をわたる。もし7時に目覚ましがなったら、そのときにはジムに行く。
     -自分のホットスポットを突き止めるには、日記をつけ、自制心を失ってしまった瞬間を継続的に記録すること。
     -頭の中で100からカウントダウンしてりして、自分の気をそらすための冷却戦略を自動的に始動できるように練習する=>anger managemet?
    ・また、両者のバランスも大切だが、それらはトレードオフ的な発想ではなく、両者を上手くミックスさせて使いこなすという考え方もある。例えば、「将来を考慮に入れるには、将来を加熱し、差し迫った、鮮明なものにしなければならない。将来のために計画を立てるには、少なくとも束の間、将来を前もって体験し、実際に起こりうるさまざまな筋書きを、それが今まさに展開しているかのように思い描いてみるといい。そうすれば、ホットに感じることも、クールに考えることも両方が可能になり、自分の選択の結果を予想することができる。」と。つまり、「自分が主導権を握るためには、現在を冷却し、将来を加熱することによって、このプロセスを逆転させればいい」ということ。頭では分かるが・・・
    ・しかし、どのようにホットシステムを制御するかの話ばかりで、どのようにホットシステムを稼働するのか、という話は皆無だった。それがそもそも人生を歩み続ける源泉のような気がするが。これは著者の範疇外なのだろうな。
    ・子育てには以下ヒント
     -幼いころに成功体験や自己効力感を自覚する体験をした人は、その後、根気よく目標を追求し、成功に対する楽観的な見通しを育み、成長の過程で避けられない挫折や失敗や湯誘惑に対処する意欲や能力が高まる。
     ー自分の子供に厳しい自己報酬の基準を採用させたいのなら、この基準を採用するように子供を導くのと同時に、自分の行動でもその基準を手本にするがいい。
     ー子供の自立心と責任感をともに高めるために、自ら決められる選択肢があること、それぞれの選択肢には結果が伴うこと(良い選択=>良い結果、vice versa)を幼いうちに子供が認識するのを、親は手伝う。
     -楽しいけど、難しく、次第に難易度が上がる課題に一緒に取り組む。ピアノ、レゴ、ジャングルジム等々、けっして、課題を引き受けたりせず、自力で取り組ませること。幼いうちに成功体験を積めば、子供は成功や力量に関して、楽観的で現実に基づいた見通しを持つようになり、最後にはおのずと満足できるようになる活動を自力で探す心構えを持つようになる。
     -子供たちのために何をしてやれるのか?という問いに対する最善の答えが、おまえはこう育ってほしいと手本を自ら示すこと。

    ◆引用
    ・人間の脳内で密接に相互作用するシステム:①ホットシステム(情動的、反射的、無意識的)+②クールシステム(認知的、内省的で時間と労力がかかる)。①>②なら誘惑に屈し、①<②なら自制が効く。
    ・先延ばし能力=自制を可能にする。
    ・誘惑のホットな特徴に集中すると、簡単にゴー反応が引き起こされる。強いストレスも、ホットシステムを活性化させる。現代社会の果てしないストレスとは日常的に直面しており、そこではホットシステムが優位に立ち、クールシステムが最も必要なときにそれが使えない状態になる。
    ・誘惑への対処(=ホットシステムから一時的に逃れる)には、他人ならどう行動するかと想像する。=>クールシステムをつかう。例)お利口な子はどちらを選ぶだろうね?NG)君ならどうする?
    ・イフ・ゼン・プラン:自動化されてしまえば、骨の折れるコントロールを楽にしてくれる。ホットシステムをだまして、無意識のうちに反射的にはたからせる。
    ・実行機能とは、思考や衝動、行動、情動に対して、思慮深く意識的なコントロールを行うことを可能にする認知的スキル。人生の初期に実行機能が十分に発達すると、子供は望むとおりの人生を築く可能性が高まる。
    ・自分はできるという子供の自己認識は、成功を助ける自制スキルによって育まれる。
    ・楽観とは、最良の結果を予想する傾向をいう。本人の「できる」というマインドセットと密接に結びついている。
    ・幼いころに成功体験や自己効力感を自覚する体験をした人は、その後、根気よく目標を追求し、成功に対する楽観的な見通しを育み、成長の過程で避けられない挫折や失敗や湯誘惑に対処する意欲や能力が高まる。
    ・誘惑に抵抗するためには、その誘惑を冷却し、自分から遠ざけ、抽象的なものにしなければならない。将来を考慮に入れるには、将来を加熱し、差し迫った、鮮明なものにしなければならない。将来のために計画を立てるには、少なくとも束の間、将来を前もって体験し、実際に起こりうるさまざまな筋書きを、それが今まさに展開しているかのように思い描いてみるといい。そうすれば、ホットに感じることも、クールに考えることも両方が可能になり、自分の選択の結果を予想することができる。あとは最善の結果を望むのみだ。
    ・印象というのは不合理な形で自動的にできあがってしまう。
    ・普段は自制心をうまく働かせている人にとってさえ、ホットシステムによって自動的につくられる結びつきを断つのは難しい。時点1で自制を行うと、時点1の直後の2では自制心が弱まる。
    ・疲労感、努力を要する作業のせいで、消耗したという感覚より、元気になると思えば、意思の疲労は防げる。
    ・私たちはアリでもありキリギリスでもあるから、待ちうけているかもしれない未来 のためにホットな情動システムを失い、クールな認知システムに従って生きてばかりだと、その逆の場合と同じくらい、人生の物語は不満足なものになる。アリの過労死もありうる。
    ・自分の子供に厳しい自己報酬の基準を採用させたいのなら、この基準を採用するように子供を導くのと同時に、自分の行動でもその基準を手本にするがいい。
    ・熱烈に達成を望む目標と、人を奮い立たせてくれる手本とさまざまな支援を与えてくれる社会環境とがあれば、意思の力は事実上無限の発達を遂げられる。
    ・KIP:Knowledge Is Power
    ・ホットシステムには現在志向の強いバイアスがかかっているので、誘惑に逆らうのは難しい。このシステムは、目の前の報酬は十分考慮するが、先延ばしされた報酬は割り引いて考える。将来の報酬を極端に割り引くと、健康管理から退職後のための貯蓄計画まで、あらゆることに悲惨な害を及ぼす。
    ・自分が主導権を握るためには、現在を冷却し、将来を加熱することによって、このプロセスを逆転させればいい。
    ・イフ・ゼン実行プランが自制を自動的にする。例)もし酒場が見えたら、そのときには通りの反対をわたる。もし7時に目覚ましがなったら、そのときにはジムに行く。
    ・自分のホットスポットを突き止めるには、日記をつけ、自制心を失ってしまった瞬間を継続的に記録すること。
    ・頭の中で100からカウントダウンしてりして、自分の気をそらすための冷却戦略を自動的に始動できるように練習する。
    ・自分と距離を置く。ストレス増大=>ホットシステム優勢=>ネガティブな情動=>長期的な苦悩=>憂鬱の深まり=>コントロール喪失=>慢性的なストレス=>心理的・生物的にもさらに有害な結果=>ストレス増大、というサイクル。
    ・子供の自立心と責任感をともに高めるために、自ら決められる選択肢があること、それぞれの選択肢には結果が伴うこと(良い選択=>良い結果、vice versa)を幼いうちに子供が認識するのを、親は手伝う。
    ・楽しいけど、難しく、次第に難易度が上がる課題に一緒に取り組む。ピアノ、レゴ、ジャングルジム等々、けっして、課題を引き受けたりせず、自力で取り組ませること。幼いうちに成功体験を積めば、子供は成功や力量に関して、楽観的で現実に基づいた見通しを持つようになり、最後にはおのずと満足できるようになる活動を自力で探す心構えを持つようになる。
    ・子供たちのために何をしてやれるのか?という問いに対する最善の答えが、おまえはこう育ってほしいと手本を自ら示すこと。
    ・目標を首尾よく追求するには自制スキルが欠かせないが、方向性や動機づけを与えてくれるのは目標そのもの。
    ・我思う故に我あり、心と脳と自制について分かったことに基づけば、我思う、ゆえに我自ら変えうる、へと進むことができる。
    ・自制心を発揮するには、人生の旅を導く目標や価値観を自分のものにしたり、途中で経験する挫折を乗り越えられるだけの強い動機づけを持ったりする必要がある。
    ・自制心を伸ばし、活用すれば、ホットシステムのアクセルに対抗してクールシステムのブレーキをかけることができる。ただし、自制の効きすぎた人生は、自制の足りない人生と同じで満たされない。肝心なのは両システムのバランス。例)アリとキリギリスでアリが過労死。

    ===qte===
    マシュマロ・テスト ウォルター・ミシェル著 人生の成功へ最良の指南書
    2015/6/20付 日本経済新聞 夕刊
     かの有名なマシュマロ・テストを考案した心理学者が書いた本。今すぐ1個のマシュマロを食べるか、しばらく我慢して2個のマシュマロを食べるか、それが問題だ。自制ができて2個のマシュマロを口にした子供は、長じてから、社会的に成功する確率が高いという。
     マシュマロが人生を決定づけるとは驚きだが、本書では、マシュマロ・テストの背後に潜む心理学的・脳科学的な理由が詳しく紹介される。すぐにマシュマロを食べてしまったからと言って必ずしも諦める必要はないし、自制心が強く社会的に成功した有名人でも、いつ「転落」するかわからない。
     自分や子供の人生を成功に導きたい人のための最良の指南書である。
    ★★★★★
    (サイエンス作家 竹内薫)

    [日本経済新聞夕刊2015年6月18日付]
    ===unqte===

  • マシュマロテストの内容は知っていたのでそこまで新しい情報を期待していたわけではなかったが、遺伝と環境の関連性など興味深い話も多かった。

  • マシュマロテストというテストから人間の能力に関して、現時点で分かっていることと、そこから何が生活に適用できるかを示した本です。幼児に席につかせ、何も置かれていない机の上に好きなお菓子を1個与え、また遠くに2個のお菓子を置いておき、検査者が「今から、私は少しいなくなるけど、今すぐにお菓子を食べたいなら、レバーを押してね。そうすれば、すぐに来るから。でももし、私が戻ってくるまで、待っていたら、机の向こうにおいて2個の方を上げるよ。待っててね。」と伝えて席をはずす。そのとき幼児はどおように行動するか?我慢できるのか?を見るのがマシュマロテストで、この検査で成功した幼児は、その後成人になった時に、いい大学に入れ、社会で成功し、ダイエットに成功し、薬物に手を出さず、といった非常に成功した人になるそうで、その予見力が他のいかなる検査よりも高いことが分かっており、そのメカニズムや、その能力が遺伝的に決まっているのか、またはその能力が鍛えられるのかを示した本です。子供の教育だけでなく、成人でも自身を変えたいときに参考になるかもしれません。メッセージの要約は19章にまとまっています。内容は多くの研究に支えられており、信頼できそうです。

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