- Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152101945
感想・レビュー・書評
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面白い、面白すぎるぞ「三体」シリーズ!
今作は「球電」という不思議な自然現象の謎に挑んだ主人公が辿る数奇な運命と、驚愕の"真実"の物語。前日譚だがこれまた読み応え十分。科学の理論から生まれる果てのない想像力の世界に心が躍るようだった。
三体シリーズの"エピソード0"となる本作にはおなじみのキャラも登場し読者を楽しませてくれる。
理論に理論を積み重ね、その度に失敗を繰り返しながら少しずつ"真実"に辿り着こうとするストーリーは、科学に対する基本姿勢そのものだ。冴えわたる演出と、科学への深い憧憬を心の底から味わえた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
<脱>
一翻訳者の大森望くんが ”あとがき” でこの本の表紙を描いたイラストレーターに「お礼」を言っている。まるで本書は大森くんが創った本の様な言いざまだ。誰もそんな事は認めていない。毎度いつもの事ながらとても鼻につく大森くん発言だ。
本書の内容にはほとんど期待していなかったが存外に面白い。がしかし気になるところも少しあった。まあ全体の面白さにはあまり関係ないので揶揄はしないがちょっと書き出しておく。
のっけの登場人物紹介のところで中華語の読みと共に日本語での読みもキッチリ書いてあるところが笑えた。そうそう中華語の読みを案内してくれても どのみち僕達日本人は日本語漢字読みするのだから。まあこうすると読者の読み方が勝手きままでバラバラにならない様に統一出来るのかな。笑う。
誤字脱字も少しある。128ページ右端列下段 脱字文「ありとらゆる」正解文「ありと(あ)らゆる」。あ抜き言葉 ってあったのか。笑う。そして330ページ 「港にには五十隻の漁船が」こっちは「に」が一つ多いw。
これらはこの本に出版社はあまり気合を入れてはいない,という証拠になっているのだろう。
それに自称SF大御所大森くんを含めて三人もの翻訳者が居るのに こんなおそまつな脱字は在ってはいけないだろう。まるで本全部が京大文学部英米文学科卒の大森君の仕事の様な体にになってしまっているからな。他の人たちは別に面白くも無いし何でもいいんだろう。 笑う。
ちょっと意外だったのは存外読みやすい事。ビックリするほど奇抜な物語ではないものの,話の展開が容易に頭に入って来る。なぜだかなー,と考えてみると,こりゃ翻訳が上手いのだと思った。キョーダイ卒なのに物書き風情の大森くんをいつも揶揄しているがなかなかどうして本書の出来はいいじゃないか。1mmくらいは見直したよ。笑う。
『球電』について興味が沸いたので少し調べてみた。確かに球電は ”現実に存在する” みたいなのだが,なにやらここ最近はあまり話題になっていない様子。また目撃談はそれこそ山ほど有るのだが,それを撮った映像は極端に少ない。一昔前ならいざしらず今の様に誰もがスマホを持っている状況では,それこそ沢山の画像があってしかるべきなのになあ。
どうやら最近はあまり目撃されていないのかな,と思った。まあ球電とは一時期のブームの様な事象だったのだろう。この本も読みやすくて面白いのだが,例えば物語の中に出て来るパソコン。OSのWindowsはなんとXP:ペケピーなのだ!これは言わば時代遅れの遺物(本書は劉ジビンが2000年に書いた作品。なんと24年前!なんでいまさら出版したのか。やはり大森くんの我がままか!?)なのだろう。
なので『三体0』などという恥題をつけてなんとか注目を引こうとしたのだろう。やれやれ。まあ面白いので読んでみて損は無いとぼくは思ったが。まあ後は鼻に付く大森くんの存在をなんとかすればもう少しいい気分で読めるのに。あ,すまぬ。 -
中国SFベストセラー"三体"シリーズの前日譚という位置づけの本作。
完全に三体とリンクしておらず、本作の登場人物が三体にも登場する。
もともと2000年に本作が長編として執筆されたあとに三体が書かれたという。
世界各地で目撃される球電現象。
陳は幼い頃、この球電現象によって両親を亡くしている。
同じく球電で妻を亡くした張教授は、陳の球電の研究に反対しつつも支援していた。
球電の研究に目をつけた新兵器開発に携わる女性将官、林は陳と共に球電について解き明かしていく。
多くの犠牲を払いながらも、実験により球電の生成、さらにはマクロ電子の捕獲に成功。
さらには球電の兵器化にこぎつけた林だったが、初の実戦での敵の思わぬ防御装置と、敵の新兵器により球電兵器構想は崩れ去る。
目に見えない世界を量子世界と位置づける本作、絶対にありえない現象は量子世界の干渉とする。
それは死生観にもつながっている。
本作では、すべての物質は空間のひずみにより生じているとしている。
量子雲の観測者としての人間は、老いるにつれてその観測力が弱まり、死んで無くなるという。
つまりは、人が死んで量子的観測で死んだ状態が確定されるが、観測されなければ死んでいる状態と生きている状態が量子雲の中に存在している。
それは、目には見えないものだが量子世界では存在している、としている。
球電現象という未解明の現象から、量子世界へと広がるストーリー展開の妙がある。
この前日譚から、どうやって三体艦隊へのテクノロジーの飛躍があったかを埋める物語を読みたい。 -
量子力学をマクロ的に観るなんて想像が膨らみすぎる。
量子力学において、粒子と波動の二重性という特性を球電というものから考えさせられるのが楽しい。
観測(知ること)が影響を与えるっていう特性。これを後の三体を仄めかすのにうまく使われているあたり見事。
球電っぽいものは本当に観測事実があるものなのか。
三体2とかも、本来この話を前提に書かれたものもあって改変されていたとは。
物理や兵器、過去に取り憑かれた人たちの離れてまた戻ってきての人間模様もいい感じ。 -
三体の第三部を読んだときに、この小説は終わってるってしっかり感想で書いたはずなのに、すっかりその時のことを忘れて前日譚という触れ込みに騙されて借りてしまった。
球電というまた意味不明なものを持ち出して、さあ!とどんな第一部へのつながりが書かれているのだろうと読み進めるも、延々と意味不明な実験の繰り返しでこれまた作者の独りよがり物理化学ショーが披露され、今月もう一冊読みたかったのにこれで終わったなぁと思いながら遅遅として進まないページを苦悶を懲らしながら読み切った。
で?
どこが三体なの?
スーパー観察者の存在?それだけで前日譚と言い切るにはちょっと詐欺過ぎない?
三体として読むんではなく新しい物語と読んだら星2くらいはつけようかなと思ったが、感想を書きながら前日譚に騙されたという被害妄想から星1で決着した。
あーやっと解放! -
私が信頼をよせる人たちが相次いで『三体シリーズ』がおもしろいと言っていて気になっていたところ、図書館のお勧めコーナーに本書があったのでさっそく読んでみました。
物理学の記述に関しては、ちんぷんかんぷんですが、なにか途轍もないスケールの物語が展開しているのだという非常にざっくりした認識でも、充分楽しめました。
これから本格的に三体の世界に没入します。ワクワク -
2023-02-07
大きな嘘を、山ほどの小さな真実の提示で描ききる、なかなかクラシカルな奇想SF。そして意外なほどロマンチック。
三体に直接繋がる訳では無いけれど、手触りは一緒。スケールが段違いに小さい(地球から出ない)からある意味安心して読める。
衝撃的と言うより思わず笑っちゃう展開にワクワクしました。 -
量子ファンタジーの傑作
量子力学をこれほど美しい物語に仕上げた作品を他に知らない。ヒーローもヒロインも像が薄いし、ところどころに繋がりが切れ気味なところを感じるけど、それも量子力学かな。
物語のスケールサイズ、あちこちの伏線回収、とてもきれいなエンディング。一流作品だと思う。
なにより、マクロ電子という発想そのものに感動したな。ここだけで、三体の名を冠するに値する。楽しかった!
追記
SFとしてのスケールに、もちろん驚きかつ感動して楽しめたわけで、その前提がないと読み進めなかったと思うんだが、本作はラブストーリーだなぁ。
母の思い出&父との確執の中で生きるヒロインの軍人。
マドンナを射止めるけど、ふんわりした三角関係の理科系ヒーロー。
後発の三体で活躍する内面が読めないままの準ヒーローの天才学者。
それぞれハッピーエンディングなんだが、ヒロインが一番。居場所を見つけた感じ。
他にも早逝した天才女性学者、苦悩する軍人たちなど、少し薄っぺらいものの、映画になればとても良い物語になりそうなストーリーだった。人物像は三体より良いと思う。
ラブストーリーが苦手な私も本作は良い物語だと思う。量子力学というかシュレディンガーの猫の物語。猫たちは幸せに暮らしているのだろうか? -
読み終わるのに4ヶ月ぐらいかかってしまいました。この本は三体3部作の前日譚ということで、三体星人はもちろん、ほとんどの登場人物は出てきません。しかし劉慈欣ならではの想像力で結構大きい話になっています。自分は三体3部作に比べて専門用語が多くて難しい印象だったんですけど、人によっては全然苦じゃないとは思います。まあ、三体読んでめちゃめちゃ面白かった人は読んでもいいかなぐらいの感じです。
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ハードな前半中盤ときて最後の最後であんなロマンチックになるなんて…いやマクロ電子とかマクロ原子の発想の時点でもう充分ロマンかぁ。
シュレディンガーの猫を手がかりに死者とは?まで描く著者の思いの軌跡がとても好き。
また[三体]が読みたくなった。