- Amazon.co.jp ・本 (196ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163265100
感想・レビュー・書評
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再読です。
南木さんの小説・エッセイは芥川賞をとられた時から、ほぼコンプリート。現役の医師ならではのお話、そして、職業ゆえの(とご本人は言っておられます)鬱病患者としてのあれこれを関心を持って読ませてもらってました。
「トラや」は、もちろん、「ノラや」のもじりで、南木さんが病院住宅に住んでいたころのノラ猫たちが家猫になり、鬱病の治療を続けながら勤務する彼や彼の家族との日々のお話です。
私は理系の人は無条件で尊敬するところがあり、また、南木さんの氷の切っ先のような文章が好きだったところから、もちろん、南木さんご自身にも好感を持っていたのだけど、今回読んでみてあれ??と思ったことが。
大変失礼ながら、南木さんって、自分にも他人にも(家族も含む)完璧なものを望む、というか、こうであらねばならぬ、という結構古風な道徳観があって、そのことについて、たぶんご自身が気が付いておられないのでは?と。
自分に対して厳しいものをお持ちで、また、仕事場でもそれゆえに苦しい思いをしたり、また、言い方は悪いけど損をしたり。
そして、南木さんの奥さんは、そんな夫の自死を恐れ、気遣い、へとへとになっているのがよくわかるのだけど、(そんな中で南木さんのお父さんの介護まで!) 彼は・・?? と。 実は、身近に鬱病患者がいるのでそれがどれほど本人にとって辛い状態なのか、肉体的にもダメージが大きくて気持ちはあっても行動としては現わせないことが多い、ということがわかりながらも、いや、わかるだけに、こんな大変な時なのだから家族には、あれやこれやに完全なことを望むのはやめよう、今は一番大事なことだけをやってそれで良しとしよう、という気持ちがあってほしいなぁ、と思ってしまった・・・。
南木さんの目線は、もしかしたら、妻にも息子たちにもトラにも向いてなかったのでは??なんて言ってしまったら言い過ぎだろうか。
老いて具合が悪くなっているトラを前に、「どうするんだよ、トラが寝たきりになったら」と妻に問う南木さん。「とことん面倒を見てやりますよ。トラちゃんのおかげでどれだけ慰められたか分からないんだから」と答える妻の気持ちがとても切なく伝わってきた。
妻や息子たちに「すまない」と言っておられても、トラ亡き後に妻と2人で旅行した際、食事の後に一人でさっさと部屋に戻ってしまうなんていうささいなことが、(彼を追って廊下を走った妻が意識を失って倒れてしまう、というアクシデントがもしなかったとしても)とても気になってしまった。
こんなつもりで再読したのではなかったのだけど…。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
なんか雰囲気がよかった。
途中でいなくなったシロがあっさり触れなくなって、ちょっと寂しかった。 -
自分の環境に重ね合わせて辛くなりつつも読むのを止められなかった。いつかくる別れを覚悟しつつ、今のにゃんことの生活を大切にしようと再確認した
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猫好きは涙なしに読めない。
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随筆かと思ったけれど、小説になっていた。私小説?筆者がお医者さんで、精神的に一時病を抱えていたのは事実らしい。淡々としているが良く考えると怖いものが。ねこ、えらい。
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うつ病に苦しむ主人公とその家族が、軒下で泣いている猫に出会い、
仕方なく家族の一員として迎えたのだが、
意外にも、その猫・トラは、自然と家族になじみ、
病気の主人公の心を癒していくのだった。
机の上の原稿用紙の上に、どさりと座り込むトラ。。。
それを、仕方ないなぁ。。。とながめる主人公。
新築の家には、猫の玄関まで作り、
帰ってこない日は大騒ぎ。。。
足を引きずって帰ってきた時は、
「脳梗塞じゃないか?」とのたまう主人公。
ほのぼのとした日々が流れ、
何気ない猫のしぐさが細かく描かれていて、
そうそう、そんなしぐさ、したっけなぁ。。。などと、
猫好きにはたまらない観察力です。
そして、別れの前日のトラの行動には、思わず涙。。。
この本を読んで、益々、猫が飼いたくなってしまいました。
私の満足度★★★★☆
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h21.01.08 内田百?の「ノラや」を思い出す。氏の文体を辿ると、往時の思いが甦る。妻が犬のジョンの死を泣きながら電話で伝え、ぽっかりと虚空の時を過ごしたこと。半年経たずして、中庭に来た生後まもない痩せ細った迷いネコを家に上げるのに何のためらいもなかったこと。爾来8年、ももは老夫婦の間にあって和やかな生活を演出してくれる。
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うつ病に苦しみ、老父の介護に疲れた「私」のもとへ現れた野良の仔猫。トラや、おまえがいたから、「私」と家族は生き延びられた!
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2008.01.14読了