空へ: エヴェレストの悲劇はなぜ起きたか

  • 文藝春秋
4.09
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  • Amazon.co.jp ・本 (396ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163533704

作品紹介・あらすじ

'96年5月、多くの死者を出したエヴェレスト登山隊に参加、九死に一生をえて生還した作家が描くエヴェレスト大量遭難の軌跡。

感想・レビュー・書評

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  • 『エヴェレスト3D』を観たあとに読むとよいかも。

  • エヴェレストに登るのはやめようと思った。

    エヴェレストは登山というより事業のようだ。山の孤独とか自然との一体感とか、きいたふうなロマンティックは風情はどこにもない。登山コースは渋滞が発生して、登山隊が話し合って登頂のスケジュールを調整しなければならないようなありさまらしい。各国の登山隊同士の意地の張り合いやエゴは醜い。大金を払った顧客を登頂させることを目的とする商業登山隊には仲間意識だってろくにない。彼らはなぜ山に登るのだろう? 何が楽しいのだろう? 命と引き換えにするほどの登山の魅力が知りたいと思って読んだのだが、少なくともエヴェレストについては登ったという勲章がほしいだけなのでは? 著者含め、登場人物の誰にも共感できない。

    「エヴェレストの悲劇はなぜ起きたか」という副題がついているが(たぶん邦訳の編集者がつけたんだろうけれど)、エヴェレストは海千山千のクライマーでも天気が悪くなると普通に遭難してしまう山だ。本書にも出てくるが、遺体が道脇にごろごろしているのを横目にみんな登っていくのだそうだ。「なぜ」って言われても。
    いろいろ謎の本。

  • 1996年5月の悲劇

  • 第66回アワヒニビブリオバトル「そら」で紹介された本です。オンライン開催。
    2020.07.05

  • 再読。学生の頃読んだが、今(社会人20年)読んだ方が面白かった。エベレストまで行きたいアマチュア登山家達と、それを顧客とするビジネスの関係が超高度では成り立たなくなる様がジワジワと精緻に描かれている。

  • 過酷な状況がよく伝わってきた。

  • 各国の文化的な背景ゆえか、事故が起きる経緯と、これに対応する当事者に違いが生じる。加えて、後に『デス・ゾーン』の著者のひとりである デウォルトとの確執が起こり、作品を通り越した確執が、この本の理解を難しいものにしている。

  • 「エベレスト3D」を観た後、実話に基づくということで、実際に記事を書くために参加していた著者の本を読んだ。
    想像を絶する状況に、言葉もない。
    判断、決断、生命力、天候という不可抗力など、さまざまな要因により明暗が分かれてしまったのかな…
    デスゾーンでは、誰も無力なのだと。
    過去のエベレスト登頂、クライマーの言葉や本の引用など、読み応えあります。
    【2015.12】

  • 1996年に起きたエベレストでの大量遭難。
    アドベンチャー・コンサルタンツ遠征隊に参加し、その悲劇の只中から奇跡的に生還したジャーナリストのジョン・クラカワー氏による著作。
    自身の記憶と、生き残った当事者たちや各所関係者への膨大な取材とをすり合わせて書かれている。

    導入部分は過去にエベレストにアタックした名だたるクライマーたちの歴史に触れられていて、この山の特別さを読者に印象づける。

    そのあと、氏がカトマンズ入りして遠征隊のほかのメンバーと出会うところから始まる。
    メンバーたちに対する第一印象、村の雰囲気、ベースキャンプでの様子などが氏の感想と客観的な視点から書かれている。
    そして、キャンプ1、キャンプ2と高度が上がるにつれて体調を崩す者が続出し、環境が少しずつ過酷になっていくさまが生々しい。

    結末を知っているこちらとしては、次々と起きるトラブルが大量遭難の要因になることがわかるのだけれど、あのときその場にいた彼らは悲劇への階段を登っていることに気づかない。
    決定的な何かが起きて状況が一変するわけではない。
    たしかに、強烈なブリザードが大きな要因のひとつだけど、不穏な雲が次第に発生して嵐が来る予兆はあったのだから突然襲われたわけではない。

    本書の中で氏が語っているが、あのくらいのブリザードはエベレストでは普通だし、登頂者の4人に1人が死亡するエベレストでこの年は7人に1人と少なかったくらいだと。

    ではなぜ、ベテランガイドが自ら命を落とすような遭難事故になってしまったのか。
    悲劇への糸が複雑に絡み合っていく様子が臨場感たっぷりで、読んでいて息苦しくなる。

    地球のてっぺんであるあの場所は、生きて戻ることのほうが奇跡の、まさにデスゾーンなのだと思い知らされる。

    「クライミングは素晴らしい行為だと、わたしは堅く信じているが、それは、危険を内包するにもかかわらずではなく、まさしくそれゆえに、なのだ。」

  • 1996年のエベレストでの大遭難事故を、遭難の中心にいたツアー登山隊に参加していたジャーナリストが淡々とした筆致で描く。

    本作では著者が参加した登山ツアー隊を中心に、彼が見聞きした事柄が書かれている。
    ツアー参加者の描写に多くが割かれており、それぞれ強烈なキャラクターの彼らに愛着のようなものを感じてしまう。
    また高所登山の現在を知るのには格好のテキストとなるかもしれない。
    商業化の流れ、公式化されつつある高所順応方法、シェルパ達の生活や彼らの価値観など。

    本書を読めば高所登山が通常の登山とは質的に別のものであることがわかる。
    高所登山ではただただ苦痛に耐え続けることが求められる。
    判断力の低下、不眠、吐き気、凍傷、消化能力の低下による身体の衰弱、各種の障害。
    繰り返し描かれる高所特有の症状は、恐らく高所の特異さを印象付けるためではなく、高所ではそれがあまりにありふれている出来事だからだろう。

    遭難の犯人探しは行われていない。
    様々な要素が示唆されているだけである。
    それがかえってこの本の価値を高めているように思う。
    この遭難の結末は本書を読む前から知ってた。
    知っていたからこそ尚更読むのが辛く感じることもあったが、引き込まれるように貪り読んでしまった。

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著者プロフィール

1954年生まれ。ジャーナリスト、作家、登山家。
当事者のひとりとして96年のエベレスト大量遭難事件を描いた『空へ』(1997年/日本語版1997年、文藝春秋、2013年、ヤマケイ文庫)、ショーン・ペン監督により映画化された『荒野へ』(1996年/日本語版1997年、集英社、2007年、集英社文庫。2007年映画化、邦題『イントゥ・ザ・ワイルド』)など、山や過酷な自然環境を舞台に自らの体験を織り交ぜた作品を発表していたが、2003年の『信仰が人を殺すとき』(日本語版2005年、河出書房新社、2014年、河出文庫)以降は、宗教や戦争など幅広いテーマを取り上げている。

「2016年 『ミズーラ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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