ネアンデルタール人は私たちと交配した

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163902043

作品紹介・あらすじ

◆2015年7月5日放送予定のNHKスペシャル『生命大躍進』第3集「ついに“知性”が生まれた」に著者登場!!現生人類にもっとも近いヒト族だったが、数万年前に絶滅し、その遺伝子は絶えたと思われていたネアンデルタール人。しかし、ひとりの科学者が数十年に及ぶ苦闘の末に、化石骨からネアンデルタール人のDNAを復元した。そして、そのDNAが現生人類の中に数%残っているという驚愕の事実を明らかにしたのだ。本書はその男、スヴァンテ・ペーボ博士が自ら記した回想記。ペーボは学生時代にミイラのDNA復元に挑んだのを皮切りに、古代DNAを取り出し、増幅して復元するという研究ジャンルそのものを創始したといえる。しかしその道のりは苦難の連続だった。何万年も埋まっていたDNAには現代の微生物や人間のDNAが混入し、正確に増幅するのは非常に難しい。ペーボが精密な復元方法の確立に腐心する一方で、他の研究者たちは、次々と何万年どころか何千万年も昔の化石からDNAを取りだしたと称する、『ジュラシック・パーク』まがいの無責任な研究を華々しく発表する。不遇の時期を耐えたペーボに訪れた転機が、ネアンデルタール人を目標としたことと、DNA増幅の新技術「次世代シーケンサー」の登場だった。「ヒトゲノム計画」を完成させ、生物学全体を革新して新たな遺伝子工学を可能にしたほどの威力を持つ次世代シーケンサーを使って、ペーボは4万年前のネアンデルタール人ゲノム解読という乾坤一擲の大レースに勝利する。誠実な方法の研究を貫いたことが、最後には大逆転をもたらしたのだ。そして、現生人類とネアンデルタール人のDNAの比較は、驚くべき事実をも明らかにした。日本人を含む「非アフリカ人」はすべて、数%のネアンデルタール人DNAを持つのに対して、アフリカ人は持たない。これは、5万年ほど前にアフリカを出た現生人類が中東でネアンデルタール人と交配して世界中に広まった、という説の強い証拠だ。ネアンデルタール人と現生人類に接触はあったのか、あったのならば両者はセックスしたのか? これまで化石と遺物からは永遠にわからないと思われていた疑問に、ペーボは鮮やかに具体的な証拠をもって答えたのである。この成果によって、いまや、彼らと現生人類を分けたものが何だったのか、彼らの遺伝子が私たちの中でどんな働きをしているのか、ということさえも、具体的に研究する道が開けつつあるのだ。最先端の技術革新で古代の遺物を研究するギャップ、スリリングなネアンデルタール解読レースに手に汗握り、淡々としながらもときにあけすけなユーモアを発揮する著者の筆致にクスリとさせられながら、科学という営みの面白さを満喫できるポピュラー・サイエンス。【目次】第1章 よみがえるネアンデルタール人1996年のある晩、わたしの研究室からの電話が鳴った。長年の努力の末、絶滅し、失われたはずのネアンデルタール人のDNAを骨から復元できたのだ第2章 ミイラのDNAからすべてがはじまった1981年、医学生だったわたしは昔からの憧れのエジプト学と分子生物学の合体を思いつく。ミイラのDNA抽出を実験し、当代一の学者の目に留まった第3章 古代の遺伝子に人生を賭ける1987年、古代ゲノム研究の道を選んだわたしの人生は転換点を迎える。「PCR法」で古代動物DNAを増幅する実験を重ね、正教授のオファーが来た第4章 「恐竜のDNA」なんてありえない!1990年、ドイツに移ったわたしは現代のDNA混入への対処に苦闘する。一方、学界では何千万年も前のDNA復元と称するいい加減な研究がはびこる第5章 そうだ、ネアンデルタール人を調べよう1993年、古代人「アイスマン」を解読したが、現代人との区別は難しかった。もっと古く、かつ、ある程度DNAが残るのは……ネアンデルタール人だ第6章 2番目の解読で先を越される1章で述べた「ミトコンドリアDNA」復元に続く第二のネアンデルタール人解読をめざし1997年に骨を入手したが、他の研究者に先を越されてしまう第7章 最高の新天地1997年、思わぬ機会を得て、マックス・プランク協会の進化人類学研究所を創立できることに。すばらしい施設を立ち上げ、私生活も大きく変わった第8章 アフリカ発祥か、多地域進化か1997年の論文で現生人類の出アフリカ説を採用したわたしは多地域進化論者の批判を受ける。それには答えたが、真の結論には「核DNA」調査が必要だ第9章 立ちはだかる困難「核DNA」1999年、1万4000年前の永久凍土のマンモスから核DNAの抽出に成功する。だが冷凍保存でないネアンデルタール核DNA復元は不可能に思えた第10章 救世主、現れる2000年にわたしが顧問となったDNA増幅の新技術「次世代シーケンサー」は生物学全体を変えるほど強力だ。ネアンデルタール人復元も現実味を帯びる第11章 500万ドルを手に入れろ2006年、わたしは2年以内のネアンデルタール・ゲノム解読を宣言した。しかし次世代シーケンサーの500万ドルもの費用を始め、次々と難題が襲う第12章 骨が足りない!ゲノム解読にはとにかく骨が必要だ。2006年、新たなネアンデルタール人の骨試料をもらいにザグレブに向かった。だが、不可解な力が骨の入手を阻む第13章 忍び込んでくる「現代」との戦いシーケンスの進歩を待つだけではダメだ。2007年はDNA精製の効率化の徹底を図った。だが必ず混入する現代のDNAを検査する方法が見つからない第14章 ゲノムの姿を組み立てなおす増幅したバラバラのDNAの全容を知るには、それを組み立てなおさなくてはならない。新しい方法を試すたびに難題が起こったが、少しずつ前進していく第15章 間一髪で大舞台へ約束の2年が近づき、発表は2009年2月に決まる。シーケンス担当を新会社に交代させ、発表6日前、間一髪でゲノム解読に必要な配列データが届いた第16章 衝撃的な分析わたしが2006年から集めていた凄腕科学者のチームは、交配の問題に取り組んでいた。2009年のゲノム配列の発表直前、彼らから衝撃的な報告が第17章 交配は本当に起こっていたのか?ゲノム解読には成功したものの、彼らと現生人類が交配したらしいという分析は、慎重に検証する必要がある。しかしライバルの存在にわたしは焦っていた第18章 ネアンデルタール人は私たちの中に生きている2009年5月から現代人のゲノムとの比較をはじめた。そして、25年夢見てきた結果が出た。現代人の中にネアンデルタール人のDNAは生きているのだ第19章 そのDNAはどこで取り込まれたのか5万年前、アフリカの外に足場を築いた現生人類は、急速に世界に拡散した。彼らはどこでネアンデルタール人のDNAを取り込み、今に伝えたのだろうか第20章 運命を分けた遺伝子を探るヒトとネアンデルタール人を分けたのは何なのか。ゲノム情報は将来その答えを示すだろう。ヒト特有の変異のうち5つだけでも興味深い事実ばかりなのだ第21章 革命的な論文を発表2010年5月、ついに『サイエンス』に論文を発表し、彼らと現生人類の交配の事実を世に問うた。大反響があり、年間最優秀論文に。格別の喜びだった第22章 「デニソワ人」を発見する2009年、デニソワ洞窟の小さな骨がわたしに届いた。さして重要とも思わなかったが、一応DNAを調べると、なんと未知の絶滅した人類だったのだ第23章 30年の苦闘は報われた2010年、デニソワ人の核DNAも解読し、『ネイチャー』に論文を発表した。30年前の夢は夢をはるかに超える成功をもたらし、わたしは深く満足したあとがき 古代ゲノムに隠された謎の探究は続く解説 「ズル」をしないで大逆転した男の一代記 更科功訳者あとがき 野中香方子

感想・レビュー・書評

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  • 2016.9.10忠生図書館 9.13了2016.9.14返却

  • 個人的に難しすぎる本だった。
    ベーポがバイ・セクシャルだったぐらいしか覚えてない

  • ノーベル賞も受賞されたスワンテぺーボ博士の自伝である。
    古代DNAの解析に取り組み、進化のミステリーに挑み続けた歴史がわかる。
    最新のDNAシーケンスの技術は常に取り入れているものの、科学的に難しいアプローチはほとんどなく、ただひたすらに内在性のピュアなDNAを抽出しシーケンスし、私たちの祖先とネアンデルタール人との関係を紐解く情熱には心打たれる。
    真摯さ、謙虚さ、大胆さ、ユニークさ、超一流の科学者の心の動きや思考力などを垣間見える素晴らしい一冊だった。

  • ネアンデルタールが現世人類と交配した。少し前なら、ジュラシックパークなみの眉唾ものでした。
    この本は、読みやすく分かりやすかったです。訳文もこなれて良いです。面白かったです。

  • ネアンデルタール人の遺伝子は、現生人類の中に生きていた! 長年の試行錯誤の末に、新技術「次世代シーケンサー」で約4万年前のネアンデルタール人のDNAの増幅に成功した科学者が、30年以上の苦闘のすべてを明かす。【「TRC MARC」の商品解説】

    関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40233068

  • 分子遺伝学、古人類学。
    2022年にノーベル生理学・医学賞を受賞したSvante Paaboの著作。

    現生人類の遺伝子の中にはネアンデルタール人由来の領域が含まれていることを発見した。
    極めて緻密な実験設計、衛生管理により実現。
    バイセクシャルらしい。
    なんとも興味深い本だった。

  • なかなか専門的な内容が多く、難しいところもありましたが
    面白いと思いました。科学者という人の思考パターンや
    気質がよくわかった感じがします。

    そういえば、日本の恐竜学において、恐竜のDNAを
    抽出(有機物?)できるかもといった
    記事を見たことを覚えているのですが(多分NHKかな)
    あれは、結局どうなったんだろうと思いました。

  • ノーベル生理学・医学賞を受賞されたということで拝読しました。

    そこまでDNAに詳しいわけではありませんが、高校生物に毛が生えた程度の知識でもとても楽しく読み進めることができました。DNA分析のカギを握るPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)はここ最近よく聞いた言葉の一つではないかなと思います。
    興味深かったのは、ペーポ博士が元々はエジプトのミイラの研究をしたいと思っていた点です。同じく研究していた医学とそれを組み合わせたことから、このDNAをめぐる大きな研究が始まったともいえます。
    多分野に興味を持つと、往々にして「どれか一つにしておきなさい」と言われることがあります(本文中のペーボ博士もそうです)。けれど、この本を読んで好きなものはいくつあってもいいのかなと思いました。

    好きなものはいくつあってもいい。
    いつかそれらは複雑に絡み合って、あなたを見たことも想像したことさえもないところへ連れて行ってくれる。

    研究についての内容もとても興味深かったですが、時々差し込まれるプライベートな出来事(恋人がヨーロッパに居るからヨーロッパの研究所のポストを探すとか、友達の研究者とうっかり三角関係?になるとか)も面白かった。立派な博士と自分たちの間に地続きの人間味を感じるエピソードでした。

    この分野はこれからも物凄いスピードで発展していく分野だと思うので、今後の発見にも期待です。

  • DNA解析の歴史でもある。
    むずかしいことははぶいてある。
    一気によんだ。

    日本の考古学が他の学問、大学同様、権威主義で、さらに捏造事件で地に落ちたことと対象的に、科学的に進められている。

    科学、医学、工学を目指す中学生に読んで貰いたい。

  • 生物をバックグラウンドに持っていないと難しいかもしれない。生物基礎レベルがあれば読めるが、実験レベルの知識はないと結構読むのむずいかも。

    PCR黎明期なだけあってそっち方面の苦しみが多く描かれている。PCRは簡単じゃねえんだよワイドショー!

    そしてさり気なく作者に暗い影を落とす東西冷戦。スウェーデンは第三世界にあったおかげでなんとかなっているけど、これ作者が西側出身なら絶対できず諦めるしかなかった内容だよなあ。

    ネアンデルタール人と現代人の差の研究は面白い。ミトコンドリアが母系遺伝である以上、ミトコンドリアイブのものを受け継いでいるはずだが、当時(20年前程度)の技術は現代と比べると未熟なのでなかなかPCRとかうまく行かない。本文数行で結果のみ書かれている実験にどれだけの苦労が詰まっていたかを想像してめまいがする。

    ネアンデルタール人のゲノム計画、500万ドルを電話で相談したところ、2日で500万ユーロ揃えるマックス・プランク研究所かっこよすぎ。

    一番面白い点が、科学者が七転八倒する様子が一応描かれている点だ。他の科学の本だと、「こう考えて仮設を立て、実験をこうして結果はこうだった」とかんたんに述べていることが多いと思うが、実際には基礎検討とか地味な部分がクッッソ辛い。そこを、実験にかけた時間の形で述べているのは非常に好感が持てた。

    シーケンスサービスはイルミナじゃないのかって思ってたら、454社がロシュに買収されたからイルミナに変えてて「やはりか」と。

    ネアンデルタール人と人間、類人猿と人間を分ける仕組み! なぜネアンデルタール人や類人猿には人間のような豊富なコミュニケーション能力や真似する力がないのか。ネアンデルタール人とホモ・サピエンスが別れてからのゲノムの変異で考える!面白そうだけども、類人猿と人間のゲノムがほぼ変わらん以上、多分エピゲノムレベルなんじゃないかなあ? 

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