私の消滅

著者 :
  • 文藝春秋
3.32
  • (60)
  • (173)
  • (206)
  • (79)
  • (21)
本棚登録 : 2041
感想 : 218
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (166ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163904719

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 友達が、「すっごく怖かった」と勧めており、表紙もおどろおどろしい(良く見てないのでなんのモチーフかは不明)かんじだし、またタイトルも怖そうなので期待して読んだ。作者のことはインタビューなどで読んだことはあるが、著作は今回が初めて。
    始まり方はいい感じ、最初の3割を読み進めながら次にいつゾクゾクするようなのが出てくるかと思って待っていたのだが、ついぞその高揚への期待が満足させられることはなかった。
    精神科医が語る、「僕」という自分は一体どうやって「僕」になるのか、というかなり深いテーマを扱っているのだが、登場人物全てにリアリティが欠けているせいか、せっかくいいテーマなのに、残念な読後感。
    本の中に出てきたユングと女性患者たちの恋愛的肉体関係に関する箇所が気になり、ネットで調べてみたら、こっちの方が断然面白そうだった(例えば、「ザビーナ・シュピールラインの悲劇-ユングとフロイト、スターリンとヒトラーのはざまで」、「秘密のシンメトリー」など)。また、冒頭の方で引用されている死刑になった宮﨑勤の本の引用箇所は大変興味深かった。宮﨑勤のニュースは私も著者と同世代なのでよく覚えている。眼鏡をかけた大人しそうな青年が犯した猟奇的な幼女殺人事件は、恐ろしさとともにとても惹きつけられたことを覚えている。自分が被害者になったら怖いだろうな、とか(当時は中学生だったのだが)、暗い森にそういう人がいるのだろうか、とか、そういうモチーフとして心に残っている。何かビジュアル的に怖かったのかもしれない。
    それから、本の中に出てきた洗脳テクニックの話も、興味深かった。できれば洗脳に関する本は一度読んでみたいと思う。
    著者は自分が読んだ本で得た知識などを駆使して小説を作りたかったのかなと思った。でも、それは物語ではないんだね。小説ではあるけれど、物語として降臨してないので、読後に残るものは、そこで引用されたり語られた言葉と誰かの業績のみに限られるのかもしれない。文章も上手だし、せっかくのいい題材なのに、勿体ないことだ。でも一応他の著作も読んでみようと思う。

  • 私の消滅


  • 洗脳のお話。
    本当にこんなやり方の洗脳がこの世に存在するのか、とても怖くなった。
    だんだん読むにつれ、誰が誰なのか、どれが本物でどれが入り込んだ記憶なのか分からなくなっていった。
    犯罪者の心理はやはり理解し難いものだなと感じた。

  • 読んでいないと思って図書館から借りたら、読んでた。でも結末とかすっかり忘れていて、そんな自分に驚いた。ブクログに「読みたい」で登録したのが11ヶ月前らしい…。

  • 冒頭から一気に引き込まれる。途中、誰が誰だか分からなくなってしまう。

  • 短いのに短くないなあ、、勿論良い意味で。

    全てが分かるまでは、誰が誰なんや、、と頭の中でいくつもの考えが、ぐるぐるぐるぐるします。ただ、その混乱に嫌な感覚がない、不思議な感覚。だから混乱っていう感覚があまりしない、、混乱なのだけれど、それとはまた違う何か、、がこの本を読んでいての頭の中でのぐるぐるなんですよね(笑)

    誰かが中村さんは「心に強く残るわけではないのに読後感が印象的で、分かりやすいのに謎だらけ」と言っていたのですが、正にそれでした。

  • 今んところ2018年に読んだ本ではベストかもしれんな。
    途中で誰の話かわからなくなることもあるけどそれすら心地よい混乱。
    人間の記憶って白紙にして新しく作ることもできる。これまでの人生で消したい記憶を持つ人は、消したい記憶だけを消すことは、難しく、全てが白紙になってしまう。そこにどんな記憶を書き込むか。自分で書き込むのか、他人が作ったストーリーを書き込むのか。
    連続的な記憶だと思いんで無いだろうか?そう思ってしまう。

    ゆかりと和久井と小塚の、3人の幸せな暮らしを見てみたかった。

  • 出だしの1ページ目から引き込まれたが、途中から
    誰が誰だかわからなくなって来た。
    よく読まないとダメな小説。

  • ずっと使ってなかったブクログを突然思い出したので
    久々にレビュー書いてみる

    中村文則は割りと好きだ
    これもよかった
    この前に読んだ中村文則の本が
    「去年の冬、きみと別れ」だったんだが
    どっちも誰が誰でしょう?って書き方されてて
    去年の~のときは衝撃を受けたけど
    こっちでは、あーまたそれやるのかーと感じた
    そんなことしなくてもすごいの書けるのに

    結構、こわいお話だけど
    ラストでちょっと悲しくなって涙でた
    でもほんとにちょっとだけ

  • 図書館で借りた本。幼少時代の序盤から引き込まれる心の闇。大人になってそれは具現化してしまうが、きっかけは…という話。そして最後は復讐劇になっていく。精神病んでしまった美女の恋人を助けたかっただけなのに。宮崎勤の事例も登場する。幼少時の家庭環境による精神状態の偏移と洗脳による感情の消滅の対比。精神疾患の患者、精神科医の話でもあるがミステリーにも近い。
    薄い本なので、すぐ読了できる。

全218件中 61 - 70件を表示

著者プロフィール

一九七七年愛知県生まれ。福島大学卒。二〇〇二年『銃』で新潮新人賞を受賞しデビュー。〇四年『遮光』で野間文芸新人賞、〇五年『土の中の子供』で芥川賞、一〇年『掏ス摸リ』で大江健三郎賞受賞など。作品は各国で翻訳され、一四年に米文学賞デイビッド・グディス賞を受賞。他の著書に『去年の冬、きみと別れ』『教団X』などがある。

「2022年 『逃亡者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

中村文則の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×