愛が挟み撃ち

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (187ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163908045

作品紹介・あらすじ

愛とは何か? 愛は存在するのだろうか。愛が信じられない男をめぐる三角関係36歳の京子と、もうすぐ40歳の俊介。結婚して6年目の夫婦の悩みは、子どもができないことだ。愛なんてこの世にないかもしれない。でも、京子に子どもが生まれたならば。諦めきれない俊介が提案したのは、驚くべき解決策だった。男二人と女一人。過去が思いがけない形で未来へと接続される、危うい心理劇。第158回芥川賞候補作。

感想・レビュー・書評

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  • 第158回芥川賞候補作。36歳の京子ともうすぐ40歳になる俊介夫婦は、子供ができない。俊介、俊介の友・水口、京子の三人の出会いより始まり、その関係が語られる。そして、俊介が提案した解決策は…。三角関係でしたね。それぞれがその人なりの愛を持っていた。三人は個性的なでもありがちな風で。それぞれの恋、愛の狭間で「愛」が生まれた。「愛」は大丈夫かなあと私は思うのだけれど。最後は特に喜劇風。三人の性格、思い、うまいように書き上げたけれど、好き嫌い別れる作品ですかね。

  • 途中挫折。
    理解できない…

  • 愛なんてこの世にないのかもしれない、なんてちっとも感じなかった。
    歪んでいて、醜くて、今にも消えそうで、でもここにあるのは確かに愛なんだと思った。

    子供ができない夫婦。子供はできない。でも欲しい。あきらめる?どうしたらいい?そこに夫の提案を受けて、場面は溶けるように20年前の回想につながっていく。
    京子と、俊介と、水口と。演劇を通じて出会ったこの3人の関係性がたまらなかった。
    胸がぎゅうっとなる苦しさを久しぶりに味わった気がします。訪れるべくして訪れた破綻。破綻からの真実。どこかホッとしたけれど、よけいに苦しくなった。
    みんな二十年分の歳をとり、そうしてもたらされたものに、どうにかなるはずも無いことに、「こんなの、馬鹿じゃないの」とそりゃ叫んでしまうだろう。叫ばずにはいられない。
    でもそれこそが愛で。
    だから、ふざけてるのかと思うぐらい滑稽で喜劇的なラストの展開にも、むしょうに悲しくなってしまった。

    夫婦が、洗濯物を干しながら口論するシーンは見事だなぁと思いました。深刻なことを話し合いながらも、実際どこまでも日常の生活が営まれている。「何そのパンツ?」「特に意味は無い。良いでしょ?」「良いけど」みたいな唐突で不要なやりとりも然り。それらすべて安らぎだと思った。結婚してるってこういうことだ。

    ストーリー、文体、世界観、まるっと好きな小説でした。

    • 1103103さん
      いちきさんの感想を読むと、いつもその本を読みたくなります。
      本のチョイスも感想のセンスも好きです。
      いちきさんの感想を読むと、いつもその本を読みたくなります。
      本のチョイスも感想のセンスも好きです。
      2018/02/14
    • つづきさん
      本当ですか!!いつも支離滅裂で個人的な内容のレビューばかり書いていますが、そう言っていただけてとても嬉しくなりました。ありがとうございます。
      本当ですか!!いつも支離滅裂で個人的な内容のレビューばかり書いていますが、そう言っていただけてとても嬉しくなりました。ありがとうございます。
      2018/02/14
  • タイトルがとても好みで、装丁もインパクトがあったので、つい手に取ってしまいましたが、これはもう、読んでよかったです
    BF*GFという台湾映画の主人公たちの関係性と似ていると思いました、どちらもすきです

    みんな情に薄いような感じがしましたが、最後まで読んで、子どもは愛の結晶、なるほどね、となりました
    いびつでも、それは3人の愛だったと思います
    もう、かなり挟み撃ちにされました
    ところどころ劇作家さんならではかな?というト書きのような文章もあって、頭の中で映像として浮かびやすくてよかったです

  • ラストの展開が特に演劇的だった。
    どれも全て愛である、それがどんな形であっても。

  • なんて残酷な男なんだ俊介…。


    表現、描き方が面白い作品。純文学。

  • まあ絶対共感はできないけど結構面白かったな〜最後に怒涛のオチ。

  • 学生時代の話が、長いし青いし、ちょっとおっさんには辛いな痛いなあ、なんて感じながら、タイトルの意味がなんだろうと思い、3分の2までは頑張って読んだ感じ。残りで一気にパーンと謎解きしてくれて、個人的には不快感があるけれど、これが今時の文学だよね、と思った。

  • 2019.11.22

    タイトルは最後まで読むとぞっとする言葉
    表紙の写真の意図がよくわからない。
    不妊の夫婦が昔の友人の精子で妊娠する計画を(夫が独断で)する。
    酷く狂っている男。普通なはずがない
    結局道具みたいな扱いでできた子供2名付ける名前も名前でひどい
    ひどい暴力暴走の末路を見た
    三角関係の、「過去、現在、未来」それぞれに復讐を施しているようであった。
    なんとも後味の悪い小説か…。

  • 舞台のシナリオも書いている(そちらが本業?)前田司郎による、芥川賞候補作。

    子供を欲しがる中年夫婦。不妊症の夫が持ち出した解決策は、親友に精子提供してもらうこと。学生映画、演劇を背景に、かつての夫、親友、妻の関係性が徐々に浮き彫りになる。その描き方にしびれた。表現もみずみずしく、読んでいて飽きない。

    親友が同性愛者であることが、終盤に明かされるが、読み進めるとなんとなくそんな気もしていて、はっきりとはやはり明言されないので、分かった時点でもう一度初めから読み直したい、と思ったほど。それほど、展開を楽しめた。

    最後の解決方法は気味が悪く、他の口コミでもレイプを思わせられたと書かれていた。だからこそ、愛とは、という主題がより鮮明に感じられたようにも思う。良書。

    読了後、3日ほど空けて再読してみた。登場人物3人の些細な仕草や物事の見方が、結末を知っているからこそ、より明確に、そういうことかと理解できた。

    振り向かせたい人は振り向かず、愛情を与えたい人に与えられない。どうあっても切ない。

  • 不妊の原因は夫の俊介にあることがわかったけれど、俊介は子どもを諦められないでいた。

    俊介が考えたのは、学生時代の友人だった水口と妻の京子で、子どもを作るということだった。

    よみがえる学生時代の水口との思い出。
    行きつけだった喫茶店でバイトしていた京子との出逢い。

    演劇の才能はあるのにくすぶっている水口。
    そんな水口に惹かれている京子と、京子のことが好きな俊介。

    俊介の京子への自分の思いを、水口は知っていながらも邪魔をするような態度を取っていた理由。
    愛しているんだ、と言った水口。

    愛の形って、なんだろう。
    とんでもない三角関係で、人間くさくて、喜劇みたいで、面白かった。

    水口と京子が俊介に内緒で会っていることを知った俊介の家で、京子のあとについて裸足でペタペタ歩きながら言い募る様子がおもしろい。

    昔のように3人で過ごした夜。
    3人の思いがつまった3人の子ども。

  • 似た設定?の、江國香織「きらきらひかる」と秋里和国「BBB」の両作のラストが不満だったので、このオチのつけ方はアリかな、と。
    BLかガチのゲイ向け官能小説なら水口ハッピーエンドになりそう。それがどういう形かは分からんけど。

  • 面白いんですが…
    私は無理です。

  • 先が気になって最後まで一気に読んじゃいましたけれども…まあ、著者の文章力のおかげなのか分かりませんけれども面白く読めたには読めましたけれども、果たしてこの話を受け入れられるか?? と問われれば答えは微妙ですねぇ…。

    なんか予めプロット?を作って書いたお話のように思いましたねぇ…さようなら。

    ヽ(・ω・)/ズコー

  • ログインできずにほったらかしだったー。
    やっと、再登録できたので、改めて、スタート♪
    実に、5年ぶり!!

  • 種無しと言われた夫婦の妊活。種は同窓生に頼むことに。

    気味悪のような、根源的な、普通な、どう思えばいいのか

  • ★3.5
    不妊に悩む夫婦の話かと思いきや、あまりにも突飛な計画に思わず唖然。そして、その計画を粛々と実行する、三角関係な男と男と女。過去のパートだけを見ると俊介の気持ちに同調してしまうけれど、実のところ、誰よりも自分本位で誰よりも罪深い。中でも、水口に対する仕打ちがあまりに酷い。まだ京子には水口への想いがあるのに対して、水口の想いは全く別の方向を向いている。それを知った上での俊介の言動は、小賢しいとしか言えない。都度の行為の結果となる妊娠の有無、最後の行為から祝福までの文章の簡潔さに、軽く恐怖を覚える。

  • 『かっこよく見えた。自分も何か、葛藤を抱えたかった。俊介の人生には挫折と呼べる出来事も、人生を呪うような悲劇もなかった。』

    『では俺はどうすれば愛と呼べるのだろうか? 愛するには相手を知らないといけない。どうやって知るんだ? 沢山話して? でも、会話によって相手の内面を把握しうると思うのもまた、容姿だけで人を愛するのと同じほど軽薄ではないか。』

    「見た目がちょっと良いからってあんな芝居、気持ち悪いよ」
    「気持ち悪いかどうかはあなたの主観じゃないですか?」
    「俺の主観はあなたにとっての客観だから」

    『水口は時々笑顔を交えながら、それは、自分が真剣になり過ぎていることへの言い訳のように見えて、余計に真剣さが伝わるような言い方だった。』

    『水口は断らない。
    この時間は、自分に言い訳するために必要な時間だ。悩んだ末、押し切られたという体裁が欲しいだけだ。』

    『水口は今でも俊介を愛している。囚われ、視界を狭められ、ただそれを信じ続けることで、それの存在を証明しようとする試みを愛というのなら。』

    『水口は嬉しそうだった。「懐かしいな」と三回くらい言った。俊介も「懐かしいな」と二回くらい言い、京子は一回だけ「懐かしいね」と言った。』

  • 愛には様々な形があるなあ。
    ラストあたりは、驚きました。
    前田司郎さん、はじめて読みましたが情景が目に浮かんでくるような文体、好きです。

  • 前田司郎作品は一通り読んできたけれど、この人がこんな作品も書くのか、と、素直に驚いた。
    まさに「到達点」。

    親子愛、夫婦愛、性愛、友愛、愛にもいろいろあるけれど、どれが最も尊いのだろう?
    ということがこの小説の主題ではないのだろうけれど、「愛」に関する問いやエゴ論というモチーフに、夏目漱石の『こころ』を髣髴した。
    学生時代のエピソードにある憧憬と焦燥感は『三四郎』のそれみたいで、親友との三角関係だとか、親友の愛する人を奪う展開だとか、『それから』を思い浮かべたりもした。

  •  現代パートと学生時代の回想パートがあり、現代は奥さん、回想パートは旦那さんに語り手が分かれている。回想場面を読んでいると、想定している表現を数段上回ってくる凄い感じがあって、ハラハラする。特に演劇をディスる場面が火が出るようだった。ところが現代パートは、特に不妊治療に首をかしげる表現があって、飲み込みづらさを感じた。結末がバタバタと店じまいするような急展開だった。タイトルもふざけているような、半笑いのすかしている感じがした。全面的に絶賛はできないけれどとても面白かった。

  • 愛という形のない物が、いろいろな現実の出来事の中で表現されている気がしました。「愛を信じられない男」は、誰よりも愛を信じていたのではないかと思います。
    過去の若さからくる自信が年月を経て変化し、それぞれの人生と重なったからこそ、全員が愛を感じて満足いく結果が待っていたんじゃないかと思いました。
    読後感もよく、さらさらと読める物語なのに、さらさらと読んだ後、3人の関係や出来事の意味などずーっと考え続けてしまう深さがありました。読書の楽しさを感じた一冊でした。

  • 生活の中の何気ないかっこ悪い瞬間、一瞬のダサいポーズとか変な癖とか、身内にだけ見せられるっていう瞬間がバッチリ描かれてて愛おしくなる前田司郎のそれ。
    三人の過去の話では自分の感情も過去に連れてかれたような感覚がして失った何かの存在を思い出す。
    最後は怒涛の奇妙な滑稽さ。

    他者から愛を注ぎ込まれ、愛の実感をもらった二人。
    独りよがりな男のバカさ加減とか
    誰かの愛による疎外感の痛みとか
    生活感とか、いろいろ。もぐもぐ。

  • 【愛が信じられない男をめぐる三角関係】不妊に悩む結婚6年目の夫婦。諦められない夫の提案は、驚くべき解決策だった。男二人と女一人の、愛をめぐる危うい心理劇。

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著者プロフィール

1977年生まれ。劇作家、演出家、俳優、小説家。和光大学人文学部文学科在学中に劇団「五反田団」を旗揚げ。2005年『愛でもない青春でもない旅立たない』(講談社)で小説家デビュー。同作が野間文芸新人賞候補となる。2006年、『恋愛の解体と北区の滅亡』(講談社)が野間文芸新人賞、三島由紀夫賞候補、2007年、『グレート生活アドベンチャー』(新潮社)が芥川賞候補に。2008年には、戯曲「生きてるものはいないのか」で岸田國士戯曲賞受賞。同年、『誰かが手を、握っているような気がしてならない』(講談社)で三島由紀夫賞候補。『夏の水の半魚人』(扶桑社)で第22回三島賞。その他の著書に、『逆に14歳』(新潮社)などがある。

「2011年 『小説家の饒舌 12のトーク・セッション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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