播磨国妖綺譚

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163914350

感想・レビュー・書評

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  • 薬草園に住む蘆屋道満の子孫の兄弟の法師陰陽師。兄は漢方薬学に詳しく、弟は怪異が目に見える。いろいろな怪異を二人は協力して解決していく。怪異自体はひどく恐ろしいものではなく、情も感じられるもの。優しい話かな。

  • 足利義教が将軍だった室町時代中期時代の播磨国。薬師の律秀、修行僧の呂秀の兄弟が、薬草園を営み、住民に医術を施していた。また、法師陰陽師として物の怪を退ける祈祷をも行っていた。弟の呂秀には、物の怪の姿が見え、声が聞こえる、不思議な力が備わっている。兄弟の祖先でありかつて播磨国随一の法師陰陽師だった蘆屋道満に仕えた式神(鬼)、あきつ鬼と出会った呂秀は、請われてあきつ鬼の新たな主となった。この法師陰陽師兄弟が、物の怪に纏わる相談事に次々応じていくシリーズ。

    各話はインパクトに欠けるが、こういった物の怪譚、好きだな。恒川光太郎っぽい。

  • 優しい陰陽師の世界の一冊。

    時は室町時代、舞台は播磨国。
    かの有名な蘆屋道満の血を遠く引く兄弟、律秀と呂秀。
    薬師と僧というそれぞれの得意分野を駆使して病と妖しに向き合う陰陽師ストーリー。

    これはどストライクで好きな世界。なんといっても読みやすく、スルスルと心に沁み込むのが良い。

    そしてその根底に静かに流れるのは優しさ。
    これがなんとも心地よく、じんわりと目と心に温かさが巡る感覚が最高だった。

    あきつ鬼の存在も魅力的。彼の胸の内に心を添わせる呂秀との関係がまたじんわり魅せてくれる。
    これは続編が読みたくなる。

  • 別の本でこの話の冒頭部分を見て気になっていたので続きがあるとのことで読んでみました。
    あやかしと題名にあり、式神も恐ろしげな見た目の赤鬼な割に、おどろおどろしい話はなくホッコリする話が多くて新年早々癒されました。
    複数の短編から成る連作長編なので隙間時間に読みやすかったです。個人的には最後の梨の木のお話が可愛らしかったです。
    さらに続きがあるらしいので、こちらも読みたいと思います。今年もたくさん本が読みたいです。

  • オール讀物2019年2月号井戸と,一つ火、8月号二人静、2020年6月号都人、12月号白狗山彦、2021年2月号八島の亡霊、5月号光るもの、の6つの連作短編を2021年9月文藝春秋から刊行。室町時代、播磨国の蘆屋道満に連なる家系の律秀、呂秀兄弟の妖し話。鬼、怨霊、神、精霊の問題を兄弟の力で解決して行く。陰陽師ものとしては、優しい広がりのある世界観で新鮮さを感じる。兄弟と式神も魅力的で、登場する怨霊でさえも面白みがある。優しく厳しくもある楽しい世界が魅力的で続刊が気になります。

  • 室町時代の播磨国。
    薬草園で働く律秀と呂秀は、蘆屋道満を父祖に持つ法師陰陽師の兄弟。
    兄の律秀は薬師としてこの地に暮らす人々の病を癒やし、さまざまな相談事に応じている。

    ある日、『吉凶を映す井戸』という奇妙な噂の出所を突き止めようとしていたところ、弟の呂秀は井戸の水面に己の顔ではなく、鬼の顔を見た。
    実は呂秀は幼い頃から物の怪を見、その声を聞く力を持っており、その力を見込んだ鬼が自らを式神として使わないかと語りかけてきたのだった。


    上田早夕里の描く陰陽師兄弟!
    表紙は、呂秀の式神となった「あきつ鬼」と兄弟を描いているが、語られる物語はのびやかな優しさにあふれていて、ホラー的なおどろおどろしさはない。
    蘆屋道満といえば安倍晴明の敵としてひどい悪者イメージがついてしまっているけれど、この作中では全く違う顔を見せている。
    陰陽師が登場するからといって、ホラーアクションスペクタクルではない。
    これはシリーズ化前提でしょう。楽しみ。

    上田早夕里さんは、もちろん重厚なSFや歴史ものも面白いが、こういう軽やかなものもいい。

    小野不由美さんの「営繕かるかや」シリーズが好きな方ならきっと楽しめるのでは。

  • 初期のSFのイメージが強い作家さんだったので、こんな話も書くのかと新鮮だった。世間では大人気と思われる安倍晴明ではなく、敵役ポジションである蘆屋道満の血筋の兄弟を主役に据えた物語は全部で6話。内容は怪奇ものだというのに恐ろしくはなく、むしろ妙に穏やかで昔話風に感じるのは、鄙びた土地で生きる兄弟が醸し出すのどかな雰囲気ゆえか。生者だけでなく人ならざる者たちと向き合う彼らの姿勢が好ましく、ゆったりとした気持ちで読書時間を味わうことができた。

  • 【収録作品】 井戸と、一つ火/二人静/都人/白狗山彦/八島の亡霊/光るもの
     室町時代の播磨国。兄で薬師の律秀と弟で薬草園を管理する僧の呂秀は、蘆屋道満ゆかりの陰陽師でもあった。異形の者が見える呂秀と見えないが優秀な陰陽師の律秀は、協力して人々の病を治し、村で起こる怪異を解決していく。
     
     呂秀の式神ゲット(押し売り?)から始まる連作で、肩が凝らない読み物。式神絡みの因縁が詳しくは語られていないので、続編もある、かな。

  • 室町時代の播磨国。薬草園を管理する律秀・呂秀の兄弟。
    兄の律秀は近隣の民の病を診て、薬を方じ、祈祷によって物の怪を退ける法師陰陽師だが、弟の呂秀は実際に物の怪が見える僧侶だった。
    ある晩、呂秀のもとに赤い禍々しい鬼が現れる。鬼は、かつて蘆屋道満に仕えた式神で、三百年以上も新たな主を求めていた。

    と、書くと物々しい物語のようだけど、穏やかでほんわかとしたお話で、心地よい。
    道満って悪役のイメージが強いけれど、地元では好意的?なのか、道満の血筋である兄弟が、近隣で起きる妖しい出来事を解き明かしていく。
    猿楽座の舞手たちの背後に現れる猩々を纏った霊の想いとは
    都から来た陰陽師と播磨山
    冬の朝に薬草園を訪れた山神の依頼
    海の沖に現れる亡霊
    薬草園の梨と桜の木とひかるもの

  • 表紙の鬼に惹かれて。キャラで読ませようとする昔ばなしかな。期待より鬼が静かだったので続刊に期待、かなー。人間はいたってふつう。

    「八島の亡霊」を読み、いちどは平家物語を履修せねばと思った。

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著者プロフィール

兵庫県生まれ。2003年『火星ダーク・バラード』で第4回小松左京賞を受賞し、デビュー。11年『華竜の宮』で第32回日本SF大賞を受賞。18年『破滅の王』で第159回直木賞の候補となる。SF以外のジャンルも執筆し、幅広い創作活動を行っている。『魚舟・獣舟』『リリエンタールの末裔』『深紅の碑文』『薫香のカナピウム』『夢みる葦笛』『ヘーゼルの密書』『播磨国妖綺譚』など著書多数。

「2022年 『リラと戦禍の風』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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