- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163917207
感想・レビュー・書評
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主人公が変わっていく短編集で、視点が変わることでそれまでの話の裏側が見えてくるというのはしばしばあるけれど、今作はそれぞれの短編のジャンルまで違う(探偵小説、青春小説、SFなどなど)というのが面白いところ。
うん、面白いところ、なのだけど、手法が違っても話のテイストが全部似ているんだなぁ…。
なので、全然違う!という驚きはあまりなかった。
その肩透かしを引いても面白かったけども。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
Amazonの紹介より
第30回松本清張賞受賞作
この小説は、選考委員への「挑戦状」だ!
衝撃のデビュー作。
1つの街を舞台に描かれる、5つの世界は、少しずつ重なりあい、影響を与えあい、思わぬ結末を引き起こす。
すべてを目撃するのは、読者であるあなただけ。
推理小説/青春小説/科学小説/幻想小説/恋愛小説
5つの物語は、5度世界を反転させる。
森バジルを読めば「世界が変わる」
一つの街を舞台に、登場人物の視点を変えることによって、ジャンルが異なっていく構成に、異なる世界を読んでいるようで面白かったです。
一つの本の中にジャンルが違うと、どうしても作品同士、似たような空気感がにイメージしてしまうのですが、ジャンルごとに違う「色」が出ていたので、単純に凄いなと思ってしまいました。
個人的に、普段は推理小説や青春小説、恋愛小説を読んでいるので、スーッと世界観に溶け込めたのですが、科学小説や幻想小説は読まないジャンルでしたので、なかなか難しいところがありました。
頭の中のイメージが、SFといったところはわかるのですが、文章から読み解く動作や風景といったものが、わかりづらかったなという印象でした。難しかった分、普段読まないジャンルに挑戦できるので、その辺りは新鮮味がありました。
一応、5つの物語は繋がっているのですが、自分がイメージするガッツリとリンクしているよりは、ちょっとの要素しかリンクされていなかったので、事前の期待値が高かったためか、ちょっと拍子抜け感がありました。
それでも、うまい具合にジャンルごとに別ジャンルでのエッセンスを加えているので、構成としては面白かったです。
ちなみに全てが繋がってることは読者しかわからないので、読者としては神のような立ち位置であり、ちょっとした優越感があって楽しめました。
ジャンルの中で好きだったのは、青春小説でした。Mー1グランプリを目指す高校生の熱き友情、そして裏側で巻き起こる苦悩が、青春を感じさせてくれて面白かったです。初めは女子高生が無理やり男子高校生を勧誘した関係性でしたが、次第に笑いに対する情熱や負けたことによる悔しさ、何がなんでも優勝しやろうとする姿勢に応援したくなるくらい、熱い青春を感じさせてくれました。
他にも、推理小説では探偵と暴力団との会話のやり取りが面白く、ミステリーとしてはそんなに特別といったものはなかったのですが、全体としてどのような布石になっていくのか、展開も含めて楽しめました。
松本清張賞を受賞されたということで、構成が斬新で面白く、それに参加する登場人物達の出来事に対する翻弄される描写が印象的で良かったです。
ただ、ジャンルによっては、わかりづらい部分もあったりしたので、好き嫌いが分かれるかなと思いました。 -
ある街を舞台に描かれる、5つの物語の短編集。ジャンルがそれぞれ異なる物語で構成されている。
ジャンルがバラバラなので読みやすさにもばらつきがあったけれど、普段あまり読まないジャンルの短編を読むことができて面白かった。
読み進めるごとに短編同士の繋がりが見えてきて、物語の奥行きがどんどん広がっていくような感覚で楽しめた。
最後まで読むと一つ一つの短編で他の短編全てとなんらかの関連があることが分かり、どの物語も作品上の世界に必要であったことが感じられる。緻密に考えられた作品だと思った。 -
登場人物が重なりながら、4つの話が掲載されている。
探偵。
漫才師を目指す若者。
未来人がやってくる。
魔界。
漫才師を目指す話は、青春って感じで良き。
未来人の話。あながちそんな未来がわりとすぐにやってくるのかも、と思いワクワク。
ちょっとありきたりじゃない感じが良き。 -
殺人事件、青春、SF、ファンタジー、恋愛が詰め込まれた1冊。
各章に出てくる登場人物が、別の章で関わってきたりして少し嬉しい。
一番好きなキャラクターは誰だろうと考えると、お笑いでM-1を目指してた女子高生かな。お笑いをやりたいという原動力が母親への想いから来てると知ったときは切なかったし、真剣に笑いに取り組む姿勢も素敵だった。
その想いが報われたことは読者しか知らないことであり、女子高生に伝えてあげたくなる。
面白くなかった訳ではないが、読むのにどうにも時間がかかった。ジャンル的にはSFが好きなので、未来人から未来への誘いが来ている女子高生の話は好きな筈。しかし、女子高生の性格があまり好きになれず(別に性格が悪いという訳ではないのに)。
ある理由のため恋愛が長続きしない女性に対してもなぜ最初から理由をパートナーに言わないのか納得がいかなかった。今まで言わなかったことによって失敗してきたという自覚があるのなら、尚更。そこはまだ女性が若いからという意見もあるかもしれないが、30歳ならばもっと考えて行動してくれ… -
衝撃のデビュー作という帯の宣伝文句に釣られて読みました。
推理小説、青春小説、科学小説、幻想小説、恋愛小説という5つのジャンルの連作短編集で、ちょっとずつ登場人物や出来事が重なっています。
第一章の推理小説が私的には釈然としなかったので、期待外れかもと思いましたが、第二章の青春小説から、俄然と面白くなりました!
いきなり超能力SFになる第三章も、とても面白かったです!これって西尾維新さんが別のペンネームで書いているのでは!?と思うくらいの面白さでした。
第四章、第五章で、全体像が見え始め、第一章の話が伏線になるのが見えてきたところで、エピローグが見事でした。
帯の宣伝文句に偽りはなしでした。 -
【これは選考委員への「挑戦状」だ! 話題の松本清張賞受賞作】一つの街を舞台に異なる5つの世界線を生きる人々の切なさ。「人間の輝きが描かれている」と絶賛された、泣ける松本清張賞受賞作。
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5章+エピローグで構成された本書だが、それぞれの章タイトルはジャンル名から始まっている。推理小説→青春小説→科学小説(SF?)→幻想小説(ラノベ的お手軽ファンタジー?)→恋愛小説といった具合だ(括弧内はぼくの主観で読み替えた)。
最初はいろんなジャンルを読めてお得(書けてすごい)程度の認識だったが、読み進むうちに仕掛けがわかった。すべて繋がっているのだ。登場人物もジャンルも異なる短篇なのに、それがまとまると1つの作品として本当の姿を現す。すごいし画期的だけど、面白かったかというと、うーん……。