奥泉光著「石の来歴」2015.8.3読了
読了後、しみじみと考えさせられた作品。主人公真名瀬剛の戦争中出兵していた過去と戦後家庭を築きながらも石にのめり込む姿を描いている。主人公がつげ義春の「無能の人」と重なって仕方なかった。
吉目木晴彦著「寂寥郊野」2015.8.6読了
芥川賞受賞作でアメリカを舞台とした作品を読んだのは初めて。しかも、国際結婚をした日本人女性を妻に持つアメリカ人男性が主人公である。さらに認知症をテーマにした作品で、最後のほう妻は日本語しか話さなくなってしまう。遠い異国の地で最期を迎えるのはどんなものだろうと考えてしまった。
多和田葉子「犬婿入り」2015.8.7読了
一文が長い。しかし、読みにくい文章ではなく、さらさら読ませられた。作者の力量を思い知る。民話をもとにした勝手に住み着いた犬の話だが、視点や着地点がとてもよい。
多和田作品は難解と聞くが、読みやすかった。今後も追っていきたい作家の一人になった。
藤原智美著「運転士」2015.8.9読了
この作品の主人公運転士は人間ではないだろう、と突っ込まずにはいられなかった。しかし、電車オタクであれば唾涎ものではないだろうか。
鞄に入った女性の夢と運転士という業務をベースとして、人間くささを表現していた。
もしやユーモア小説なのだろうか。
松村栄子著「至高聖所」2015.8.10読了
至高聖所と書いて「アバトーン」と読む。女子大生青山沙月を主人公に同じ学部の友人やルームメイト渡辺真穂との交流から自分の内面を見つめ直す。最も芥川賞受賞作で多いタイプの作風だが、この作品は家族のあり方を考えされられる。家族個々の役割分担ってなんだろうか、と思った。