新装版 竜馬がゆく (7) (文春文庫) (文春文庫 し 1-73)
- 文藝春秋 (1998年10月9日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (426ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167105730
作品紹介・あらすじ
同盟した薩摩と長州は着々と討幕の態勢を整えてゆく。が、竜馬はこの薩長に土佐等を加えた軍事力を背景に、思い切った奇手を案出した。大政奉還-幕府のもつ政権をおだやかに朝廷に返させようというものである。これによって内乱を避け、外国に侵食する暇を与えず、京で一挙に新政府を樹立する-無血革命方式であった。
感想・レビュー・書評
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いろは丸と 後藤象二郎の巻。
先日、鞆の浦のいろは丸展示館なるところへいってきましたが、その いろは丸。
名前がかわいい。
海援隊としての第一歩、という意味で名付けたようですが、いきなり事故って沈没。
竜馬って、船運ないよな。
目の色を変えて紀州に談判する様子は、まるで中国の政治家のようでちょっと呆れた。
それよりも、竜馬と後藤象二郎。
竜馬からしたら、後藤は半平太らを殺した張本人で、複雑な気持ちのはずなのに。
仇を討つという感情などへんぺんたるもの、捨てねばならぬ。
日本のためなら手を組める。
と、本当に後藤を利用して土佐藩を動かし始めちゃうんだから恐れ入る。
ここまで無私無欲になれるものか。
いろは丸のときはあんなにヒステリックに感情爆発させてたのに。
また、最後に出てきた「大政奉還」。
ネーミングに感嘆。
現代みたいにカタカナが出てこないのが、当たり前だけど いい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
今まで、周りからみれば、じれったく、ともすれば信念がないようにもみえたかもしれない龍馬がいよいよ、時機が来たとばかりに猛烈に動きだした感じ。好きな中岡慎太郎の大活躍、親友仇でもある後藤象二郎との協力(利用?)。先見性抜群の船中八策、大政奉還へ遂に動きだす。クライマックスに向けて、アクセル踏まれた感がワクワク感いっぱいでした。
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▼第6巻に引き続き、第7巻もわくわく山場です。まあつまり、文庫版全8巻で言えば、竜馬さんは5巻までは準備運動だったとも言えます。その5巻までは面白く読ませる「節回し」「語り口」こそが、小説竜馬がゆくの凄みと言えましょう。という訳で、そりゃ面白いに決まっている第7巻。
▼話は「第二次長州征伐で、長州軍(竜馬も参加)に、幕府側は負けてしまった。講和交渉」から始まります。つまり、7巻から、幕府が倒れていく。日本中の大名たちが「えっ…幕府弱くね?こりゃマジで薩長雄藩が天下取っちゃう?幕府の言うこと聞いている意味なくね?」と気づく。この巨大な「ムード」の展開がわくわくします。
▼そして、「いろは丸事件」という、紀州徳川藩の居船と竜馬の船の海上事故の交渉物語を交えながら‥‥。「後藤象二郎登場」→「幕府びいきだとまずいと思った土佐藩が、竜馬に連携をお願いする」→「それに応えて、大政奉還案を竜馬が出す」「船中八策で、倒幕後の国のありかたを示す」というのが中盤~終盤のわくわく。
▼これまでに比べて、竜馬さんが天下の名士になっている。その落差みたいなものも楽しい。ちょっと眩暈がするような、
「思えば遠くに来たもんだ(©中也)感傷」
を味わえるのが、大長編だけが持つ醍醐味。
それにしても中原中也の日本語センスのなんて良いことでしょうねえ。 -
風雲急を告げる幕末。いよいよここにきて竜馬のバイタリティーが爆発します。揺らぐ幕府の土台に、最後にどんな仕上げを加えるのか。最終巻が楽しみでなりません。
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「竜馬がゆく」の第7作目は、討幕へ向けて薩長同盟を実現させた龍馬が次の一手として土佐藩と連携していく様子が記されている。数多の勤王志士達を死へ追いやった土佐藩の上士らと手を取り合おうとする龍馬の行動に初めは違和感を感じた。しかし、そうせざるを得ない程に状況が逼迫していたのも事実である。仲間を思い信念を突き通す事は大事だが、世の中の動きに敏感になり時勢によって信念をも変えてしまうくらいの器の人が新しい時代を作っていくのかなと複雑な気持ちになった。
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いよいよ大詰め。
自分が知る日本になる礎ができる直前。
多くの人の命と思いをかけて。
心を打たれながら本に入り込んでいたら、
日課のPodcastでちょうど紀州藩と海援隊の話があった。
本は竜馬寄りだけど、Podcastは歴史を今の視点で見て語られているから、
より竜馬側は海賊的な悪どいやり方だと語られていた。
情はない。
そして、そもそも実は海援隊も竜馬も航海技術はあまりなかったとのこと。中途半端だったとも。
なるほど。
本に書かれたことが正しい話だと思い込み過ぎていた。
他の角度から見ることも大切。
人が変われば、時代が変われば、見方が違う。
日頃の仕事や考え方にも取り入れなければと思っている視点を、
なるほど、こういうことかと改めて実感。
そして大政奉還は竜馬の素の案ではなく、
3年前の勝海舟の案だったと。
勝海舟の凄さと、やはり物事にはタイミング(時間)という第3軸があるんだと学ぶ。 -
◯「惚れずに物事ができるか」と、龍馬はいった。(391p)
◯「言うぜ」龍馬は長岡に合図し、やがて船窓を見た。(411p)
★後藤象二郎が小気味いい。 -
大政奉還そして船中八策、あまりにも素晴らしい。大詰め近し
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この時代に船中八策をまとめ上げたことは、現代人がいくら時代背景を想像して賞賛しても足りないレベルの偉業だと思う。
あと、山内容堂について今まで漠然と立派な人だという印象を持っていたのですが、本書での書かれっぷりは決して好意的ではない。どういう人だったのか自分なりの見解を持つために、別の立場からの書物を読んでみたくなりました。 -
再読中。幕府の第二次長州征伐が始まるも、長州のトリックスター高杉晋作の活躍で長州側が勝利を得る。その後、将軍家茂が亡くなり、さらに天皇でありながら最大の佐幕家だった孝明天皇の崩御で、時代は勤王派に有利な流れに。
長崎でくすぶっていた竜馬に、土佐藩の後藤象二郎が接近。亀山社中は土佐藩の付属となり海援隊と名を改める。蒸気船「いろは丸」を手に入れて意気揚々と初航海・・・のはずが、紀州藩の船に激突されてあえなく沈没、溺死者こそなかったものの、船と積み荷はお陀仏、まったく悪いと思っていない紀州藩の態度に竜馬ブチギレ、他藩を巻き込んでの騒動に。(余談ですがこのいろは丸、およそ120年後の1988年に海底に沈んでいるのが発見されて色々詳しい調査が進んだ模様。http://www.tomonoura.jp/tomo/irohamaru.html)
竜馬が船のあれこれに追われてる間、政治的なあれこれは中岡慎太郎が奔走中。土佐藩内ではかつて敵対していた乾退助(のちの板垣退助)と仲直りして藩を動かし、一方で朝廷工作のために岩倉具視を引っ張り出す。
大浦お慶の男妾になる陸奥など笑える要素もちらほら。海援隊士はがぜん池内蔵太と陸奥びいきだけれど、中島作太郎も可愛いな。ところで中島作太郎信行といえば、1986年のドラマ『白虎隊』などでも、会津藩家老の西郷頼母一家の女性たちが籠城戦の前に全員自刃したときに、死にきれていなかった16才の娘を発見し、娘(ドラマでは伊藤つかさだった)が「お味方ですか」と尋ねたのに、安心させるために「そうだ」と答えた(娘はその後すぐ息絶える)というエピソードが有名でしたが、現在では中島は会津戦には参加しておらず、よく似た名前の別人説が確定らしい。