宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション 上 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2004年11月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (544ページ) / ISBN・EAN: 9784167106942

感想・レビュー・書評

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  • 古本を紐解いた。先月、朝井まかて「類」を読んでいると、森鴎外の末子の類が昭和26年に母親が箪笥の中に仕舞い込んでいた鴎外の「小倉日記」を発見するくだりがある。その後、松本清張が「或る「小倉日記」伝」で芥川賞を獲ったことを知った時に、類は「どうして私はこのことを小説にしなかったのだろう」と悔やむのである。それで途端にこの清張出世作を再読したくなった。

    改めて、純文学であると思った。後のエンタメ作家としての欲望を克己心で押さえ込み、宮部みゆきも云う様に、誰に認められなくとも「自分自身の拠り所」を明らかにせざるを得なかったおのれを、容貌劣るが賢かった田上耕作に託して描き切っている。正直、類に勝ち目はなかった。

    今回の収穫は幾つかあるが、一つは途中挫折していた「削除の復元」を読み切ったことである。松本清張のもう一つの「或る小倉日記伝」である。出世作から39年後の晩年になって書かれている。内容をほとんど覚えていなかったのは、あまりにも細かいところを調査するの清張の分身たる2人の主人公に辟易したからだと思う。しかし、後半になって本作は俄然面白くなっていたのだ。「果たして小倉時代、森鴎外宅の辞めた女中の元は、鴎外の隠し子を産んでいたのか」ということを、何処から事実なのか不明なぐらい非常な詳細さでもって記している。結論は出していない。ただし、知的サスペンスになっていて、円熟したエンタメ作品だった。のちに機会あれば、研究本を紐解きたいとは思うのだけど、現在の感想を言えば、私もひとつ小説内で語られていること以外で「小倉日記」に疑問がある。森鴎外の妻志げは、おそらくわざと箪笥の奥深く、所在不確かになっていた「小倉日記」を隠したのだと思う。それか、森鴎外自身か?どちらにせよ、日記の存在は知られていたのだから、隠す理由が見つからない。だとすれば、やはり「怪しい想像」をしてしまうのである。

    宮部みゆきがひとつひとつの作品を前口上で解説している。とっても楽しそうだ。好きな作家のアンソロジーを、こんなにも尺を取って編むことは、ファン冥利に尽きるんだろうと思う。私ならばどんな作家の短編アンソロジーを編みたいだろうか。やはり「藤沢周平」だろうな。最近発掘されたデビュー前の短編、句作、そして次第と変わってゆく作風を順番に並べたら楽しいだろうな、などと妄想してしまった。

    • しずくさん
      私も、是非ともこの本を読まねばと思っています。
      私も、是非ともこの本を読まねばと思っています。
      2020/11/21
    • kuma0504さん
      しずくさん、コメントありがとうございます。
      類がもし、これを小説にできたとしたら、箪笥の奥深くしまった経緯を調査して明らかにするか、ある程度...
      しずくさん、コメントありがとうございます。
      類がもし、これを小説にできたとしたら、箪笥の奥深くしまった経緯を調査して明らかにするか、ある程度の見通しがつけれた時だと思います。類に無理な話でした。
      2020/11/21
  • 松本清張ファンである宮部みゆき氏が選んだ清張の短編集である。『一年半待て』『捜査圏外の条件』短編なのに時間の流れがあり面白いなあ。日本の歴史を書いたノンフィクション作品は詳細すぎて読みこなせません。

  • 松本清張には売れっ子作家をはじめ、様々な人がセレクトした作品集が結構あるが、この宮部みゆき責任編集と銘打った文庫三冊は宮部さんの解説もついていてお得感がある。

    もとより私は、清張作品を全作読んでいる訳ではないので、このセレクトが素晴らしいものであるかどうかは自分には判定できないが、この上巻の作品は楽しめるものが多かった。

    気になった作品は「恐喝者」、清張さんはごく初期の頃から崖っぷちが好きだったんですね(みうらじゅん)

    それから「削除の復元」。タイトルだけだったら現代の作品かと思う。デジタルがらみの犯罪物にピッタリの題名。実際はアナログ極まりないお話なのですが笑

    「地方紙を買う女」は傑作だと思う。

    この文庫には「日本の黒い霧」と「昭和史発掘」からも二作品がとられているが、これは流石にさわりだけの紹介なので全部丸ごと読んだほうがいいだろう。

  • 宮部みゆきが選ぶ松本清張短篇集。えらい久しぶりに無性に清張を読みたくなり手にとる。業が深く渦巻く執拗な人間描写、清張すげーわ!とうなされまくり。宮部の傑作『火車』は清張からの影響大だと確信。どれもこれも面白いけれど日本の古美術界の暗闇を暴く「真贋の森」は圧倒的な読み応え。「或る『小倉日記』伝」(芥川賞受賞作)や「削除の復元」の鴎外ものは純文学好きの心をもくすぐる。サスペンス劇場の作家だと高を括るとバチが当たるよ。はぁ~おもしろかった。

  • 宮部さんが選んだ清張傑作短篇なので、間違いはありません。

  • よく音楽CDでは 「ベストセレクト…」を購入する。特にちょっと前の人気だった歌手がたくさん歌っているものは。要するにあまり聴き込んでいないからわからないのだ。だからおまかせ。

    作家の短編集はどうだろうか。たいがいは書き溜めて出版されるのでそれを読む。たまに、作家自身の撰集というのもある。もれなく網羅してある全集もある。あるいは、編集者がいくつか選んでまとめ全集に収録してあるのもある。

    松本清張氏は260篇も短編を書いたそうである。私はその内の100篇足らずしか読んでいない。清張氏の短編が大好きなのにである。これではファンとは言えない。

    と、感想が興った『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短編コレクション』(上)を読了。
    私にとっては、揺り起こしてくれた撰集ということか。

    やはり、芥川賞受賞作品の『或る「小倉日記」伝』に思い入れがある。現在読み返してみると当時(30年位前)とても暗いイメージで胸に迫ったような記憶があったが、人生ってこんなものかもしれないとの感慨、清張氏の筆力に感嘆、驚異であった。ちなみに私はこの短編によって森鴎外の作品に興味を持ち、ほとんど読むことになった。

    儲けものは『恐喝者』。もちろん初読んだが清張氏の犯罪ものの原点らしい。面白いし少しも古くないし安心して読める(構築がしっかりしていて、文章が落ち着いている)、といいことずくめ。認識新ただった。

    *****

    未読は『理外の理』『削除の復元』だった。

    他は『一年半待て』『地方紙を買う女』『捜査圏外の条件』『真贋の森』『昭和史発掘―二・二六事件』『日本の黒い霧 追放とレッドパージ』

    認識新たにした残りの未読160篇はどのようにしていつ読もうか、どうしようかな。

  • 松本清張と言えば、誰もが知っているビッグネームだが、文庫で入手できるものに限ってもあまりに多い著作と、現代ではやや硬めの文体から、ちょっと手を出しにくい存在になっているように思います。
    そんな、「松本清張」って名前は知っているけれど読んだことがない、関心はあるけれど手は出しにくい、って人に、「宮部みゆき」という超流行作家の「責任編集」って冠をつけることで手を出させようという見え見えの意図で編まれた短編集で、自分もそんなあざとさに苦笑しながらも作品の内容が変わるわけではなし、と買ってきて読んでしまいました。

    松本清張については、「点と線」などの有名作品をちょっと読んだだけで、芥川賞受賞作家だったとか、小倉に記念館があるだとか、平成4年没だとか、そんなことは選者の宮部みゆきさんの、気楽なエッセイ風の「前口上」で知りました。書き出しが「没後十二年」ってなってますが、今年は没後二十年になるんですね。

    読後感は…どうでしょう、選者の宮部みゆきさんの中の一定のテーマに沿って作品が収録されているわけで、これを前口上とともに楽しめばいいのですが、自分はその前に、「時代」が気になってしまいました。
    作品が書かれた時代、その世相を反映した登場人物の振る舞いです。登場人物は今では考えられないほどいろいろなところでよく煙草を喫み、世間体や名誉を気にします。まさに「昭和」が濃く反映されているわけです。長編だったら、いったん物語の世界に浸ってしまえば、こんなことはそのまますんなり読めてしまいますが、短編で、しかも合間合間に現代風の軽い語り口で書かれた「前口上」を読みながらの現代と昭和との行ったり来たりでは、なかなかそのあたりが難しく、いちいち、そういう時代の作品なんだから、と自分に言い聞かせながら読む必要があり、ちょっと歯痒い思いをしました。

    でも、これをきっかけに、この巨人の作品を、少しずつでも読んでみようか、という気にさせてもらいました。

  • 当たりハズレもあったけど面白かった

  • 「真贋の森」が秀逸。

  • 本当に全く申し訳ないのですが、面白くなかった。
    松本清張の長編で楽しく読めたものもあります。
    ただ、この本に関してはちょっと。
    内容がどっちつかずで、推理小説なのか、犯罪小説なのか。

  • 突如として訪れた清張ブーム。むかーし読んだことのある葡萄が刺繍されたテーブルクロスが出てくる話を追い求めて、しばらく渉猟します。あえてのまわり道をしながら。んで、さっそく宮部氏セレクトのコレクションを見つけた次第。読むしかないでしょう。わかりやすく分類されてるしね。
    第一章
    二編とも初読。イヤ、もう使われなくなったであろう難しい言葉が頻出で、辞書を片手に読みました。その辞書にすら載ってない言葉もあったし。清張って、芥川賞作家なんですね。社会派推理作家としか把握してませんでした。『或る「小倉日記」伝』、いまだとコンプラ違反でしょうね。そういう偏見とか差別の中で、母子ふたりで追い求めたものが、あっさり価値を失ってしまう。登場人物の必死さと結末の非情さって、清張の他の作品にも共通するように思います。
    第二章
    全部、初読でしたがタイトルだけは聞いたことがあった『理外の理』『地方紙を買う女』。『理外の理』は異色でした。夢十夜に出てくる怪談を想起させます。それでいて、清張っぽい結末のぶった斬られ感は半端なく、好きな短編に挙げる人が多いのもうなづけます。あと、時代性というか、女性の立場が今よりずっと弱かったんだなぁって。昭和30年代の作品ですから、戦争の残り香もプンプンしてます。
    第三章
    『真贋の森』好きです。タイトルもカッコいい。画壇での勢力争いに敗れた男が、業界に復讐するために、贋作家を養成したり画商・骨董屋を巻き込んだ謀略を企むのですが、思わぬところから破綻してしまう。破綻後の主人公がまた、カッコいい。
    第四章
    ギブアップでした。この章だけ途中まで。戦後史に興味が持てるようになったら、再度、挑戦してみたいと思います。

  • この人の話を読んでみると、Gメン75をなぜか思い出すんだよな。自分が生まれた頃の昭和の時代に活躍していた清張さんだけど、今生きていたらといや、生きていてほしいと思う人だったんだろうな。
    宮部みゆきさんが責任編集とあって面白い話がほとんどなのだが、最後の2.26事件とレッドパージを題材にした話はつまらなかった。

  • 松本清張に関しては「点と線」を昔に読んだぐらいであまりなじみがなく、ミステリー作家だとばかり思っていたがこの短編集を読む限りまったくそうではない。簡単に言ってしまえば「社会派」とかになるのかな。
    サスペンス仕立ての作品も硬派でなかなかよい。人物の心理を中心に描いていて、トリックに偏っていないのも良い。
    後半のノンフィクションは読むための基礎知識が不足していて読めなかった。

    ・或る「小倉日記」伝
    失われた鴎外の「小倉日記」を再現するため民俗学的な手法で資料を採集して回ることに取り憑かれた男の話
    ・恐喝者
    ダム工事現場で女と再開し図らずも恐喝者となった男の話
    ・一年半待て
    夫の不貞に耐えかねて殺してしまった、ダム工事現場を回る保険勧誘員の女の話
    ・地方紙を買う女
    旅先で訪れただけの町の地方紙を熱心に読むキャバレーで働く女とその地方紙に小説を連載している作家の話
    ・理外の理
    掲載誌の再編で作品の掲載を止められてしまった流行らない作家の話
    ・削除の復元
    鴎外の「小倉日記」の中で一部上から和紙が貼られて削除された箇所の理由を解き明かそうとする話
    ・操作圏外の条件
    誰に疑われることもなく妹の敵を殺すために、操作圏内から外れることを画策する男の話
    ・真贋の森
    腕は立つが売れていない画家を囲って贋作を作らせる美術評論家の話
    ・昭和史発掘—二・二六事件
    ノンフィクション
    ・追放とレッド・パージ—「日本の黒い霧」より
    ノンフィクション

  • 好きな二人がタッグを組んだ。それだけでワクワクだ。二・二六事件は流石の松本清張だが、ノンフィクションに後日新事実が発生した時誤報の責任の取り方はどうなるのか?出版社の責任は?冤罪に絡んだら?一切読み手の自己責任か?

  • きちんと読んだことが無かったけれど
    宮部みゆき氏による紹介文があり、何よりおすすめ作品ということで読みやすかった。

    沢山あっても、時間的に完読制覇が難しくなってきたので、
    こういった形式が有難い。
    ブクログでも読書メーターのようにマッチ率高い人の本棚をのぞけて、年間ベスト3項目あったりとか、作家さんのおすすめ本棚とかあればなぁ。。

    恐喝者の好きな子をいじめる心理描写がナルホド(嫌だが)
    『そういう彼女をみるたびに心がひるむが、負けたらそれまでだった。彼と彼女を結ぶ紐が切れてしまう。その苦痛の方が絶望的なのだ。』
    その後の職場仲間の狡猾な計画で、彼は若くてある意味純粋だとも思うけれど。

    『歌が聴こえる、絵が見える』
    →確かに年号はとんと記憶にないけれど、その時に流行していた曲は覚えていたりするもので、流石。

    『真贋の森』
    →母親の知り合いの画家さんが美術の世界なんてのは。
    。と言ってたが、主人公の境遇を読んで、ちょっと分かったように思う。。

  • 清張さんは昭和史の研究家でもあったんですね。

  • 「松本清張」作品から「宮部みゆき」が傑作をセレクトした『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈上〉』を読みました。

    「松本清張」作品は、今年の1月に読んだ『昭和史発掘(5) 2.26事件①』以来ですね。

    -----story-------------
    文春文庫30周年記念企画。
    『砂の器』で再び注目を浴びている「松本清張」の傑作短篇を「宮部みゆき」氏がセレクト、すべてに解説を付す。

    「清張」ファンを自認する「宮部みゆき」が巨匠の傑作短篇を選びに選び、全てに解説を付けた。
    上巻はミステリ・デビュー作『恐喝者』の他、「宮部」いち押しの名作『一年半待て』 『地方紙を買う女』 『理外の理』や、『或る『小倉日記』伝』 『削除の復元』の「鴎外」もの、斬新なアイデアで書かれた『捜査圏外の条件』、画壇の裏面を描く『真贋の森』等を収録。
    -----------------------

    先日読了した、「宮部みゆき」選のアンソロジー作品『スペシャル・ブレンド・ミステリー 謎002』が面白かったので、「宮部みゆき」編集の本作を手に取ってみました。


     ■はじめに 宮部みゆき
     ■第一章 巨匠の出発点
      ・前口上 宮部みゆき
      ・或る「小倉日記」伝
      ・恐喝者
     ■第二章 マイ・フェイバリット
      ・前口上 宮部みゆき
      ・一年半待て
      ・地方紙を買う女
      ・理外の理
      ・削除の復元
     ■第三章 歌が聴こえる、絵が見える
      ・前口上 宮部みゆき
      ・捜査圏外の条件
      ・真贋の森
     ■第四章 「日本の黒い霧」は晴れたか
      ・前口上 宮部みゆき
      ・昭和史発掘 二・二六事件
      ・追放とレッド・パージ(原題:黒の追放と赤の烙印) 『日本の黒い霧』より
     ■コーヒーブレイク①担当者の思い出
      ・いまも驚かされる直観力 堤伸輔
      ・自由自在な創作空間 藤井康榮
      ・鰻とワインと清張さん 重金敦之

    宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈上〉

    『或る「小倉日記」伝』は、白痴のような風貌と歩行が不自由な障害を持つが頭脳は明敏で「森鴎外」が小倉に滞在した際の事績調査に執念を燃やす「田上耕作」を描いた物語、、、

    優れた才能を持ちながら世の中から認められず、もがき苦しむ模様や「耕作」支える母「ふじ」の姿を描いた作品です… 薄幸な生涯の悲劇性が前面に押し出された作品です。

    こんな哀しい作品を最初に選ぶかなぁ… って、感じですが、、、

    「松本清張」作品って、認められたいという欲求が満たされず、コンプレックスを感じながら、過激な行動に移ったり、夢を諦めたり… という内容の作品が他にも何篇かあるので、ある意味「松本清張」らしい作品なのかもしれません。

    昨年読了した『或る「小倉日記」伝 傑作短編集〔一〕』に収録されていた作品でした。



    『恐喝者』は、偶然から命を助けた女性を愛してしまい、その女性に会うために女性への恐喝を続けてしまうという矛盾を抱えた男の物語、、、

    大雨で筑後川の堤防が決壊し、近くの刑務所の服役していた「尾村凌太」は、身の危険を感じて脱走… 濁流の中を泳ぎ着いた一軒の家で「凌太」は逃げおくれた若い女性に出会い、「凌太」はその女性を助けるため、一緒に濁流に身を投じる。

    二人は命からがら岸に辿りつくが女性が意識不明に陥っていたことから、「凌太」は女性の衣類を脱がせ人工呼吸を施すが、意識を取り戻した女性は、「凌太」に凌辱されたと誤解してしまう… それから一年後、「凌太」は九州の山奥でダム工事の人夫となっていたが、新しく赴任してきた工事監督の妻は、あの時の女性だった、、、

    「凌太」は彼女に挨拶に行くが、凌辱されたと誤解している女性は「凌太」にお金を渡し、もう来ないで欲しいと訴える… その後、「凌太」は彼女に会うために恐喝を繰り返すが、「凌太」が急に金回りの良くなったことに気付いた同僚の「加治」は、「凌太」が女性を恐喝していることを知り、自らも女性を恐喝し、そのうえ暴行することを計画する。

    いやぁ… 衝撃的な結末、、、

    「凌太」は、結果的に愛する女性を二度に亘って救うことになるのですが、女性にはその気持ちが伝わらぬまま命を落とします… 哀しいなぁ。

    初めて読んだ作品… 面白かったなぁ、、、

    忘れられない作品になりそうです。



    『一年半待て』は、夫殺害の容疑で逮捕された「須村さと子」の判決や真相を巡る物語、、、

    夫殺害の原因が、夫の暴力、飲酒(泥酔)、浮気だったことから、婦人評論家「高森たき子」等が無罪判決とすべきと運動を展開… 結果的には情状酌量により執行猶予となる。

    しかし、その後、「高森たき子」のもとに「須村さと子」の知人と名乗る男が現れ、「須村さと子」の一年半に及ぶ綿密な計画的な行動が明かされる、、、

    怖いけど、面白かった… 特に「1年半待った相手が逃げた」たことが判明する最後の2行が良かったですね。

    昨年読了した『張込み 傑作短編集〔五〕』に収録されていた作品でした。



    『地方紙を買う女』は、連載小説を読むことを目的に地方紙を定期購読した女性「潮田芳子」が、或る日突然、購読を中止したことから、連載小説の作者「杉本隆治」がその行動に疑問を持ち、真相を探る物語、、、

    戦争に招集され、戦後はシベリアに抑留された夫と離れ離れの生活を余儀なくされた女の哀しい物語でしたね… そして、新聞購読を不審に思った作家の推理が見事です。

    もしかしたら作家の推理は誤っていたのかも… と思わせるエンディングが大好き、、、

    何度読んでも面白いと感じることのできる名作です。

    7年前に読了した『顔・白い闇』と昨年読了した『張込み 傑作短編集〔五〕』に収録されていた作品でした。



    『理外の理』は、時代モノを得意としていた文筆家「須貝玄堂」が、娯楽小説誌の編集方針が変更により原稿が採用されなくなったことから生活に困窮し、妻にも逃げられ、自らの作品『縊鬼(いき)』をもとにした復讐を実行する物語、、、

    堆積した怨念の恐ろしさを感じさせる作品… 蔵書を詰めた風呂敷という意外な凶器を使い、非力で小柄(体重40kg)な老人でも工夫しだいでは殺人を犯すことができるということを証明した意外なトリックが使われていましたね。

    昨年読了した『巨人の磯』に収録されていた作品でした。



    『削除の復元』は、「森鴎外」が小倉に滞在した際のことを綴った『小倉日記』の和紙を張って削除された記述を巡り、「鴎外」と女中「木村元(モト)」の関係を推理した物語、、、

    「元」が出産し、姉「木村でん」に扶養してもらっていた子どもの父親は「鴎外」だったのではという推理しますが… 結局、真実はわからず仕舞いという展開でした。

    肉親が書いた伝記や日記って、将来、他人に読まれることを意識して書かれているでしょうから、真実にどこまで忠実かはわかりませんよねぇ… 信憑性という点では疑問がありますよね。

    初めて読んだ作品… 『或る「小倉日記」伝』と同じく「森鴎外」の小倉滞在期をテーマにした作品でした。



    『捜査圏外の条件』は、銀行員の「黒井忠男」の妹「光子」は、墓参りに田舎に行くと家を出たまま失踪、、、

    十日後に妻子のある男性と北陸の温泉滞在中に急死していたことが判明したが、男は「光子」が急死するやいなやその場を遁走していた… 宿帳の筆跡と旅館で聞いた人相から、男が同じ銀行に勤め、近所に住んでいる「笠岡勇市」であると知った「黒井忠男」は「笠岡勇市」を憎悪し、殺害することを決意する。

    自分を容疑の外に、捜査の圏外に置くため、「黒井忠男」は銀行を辞め、東京から山口県の宇部に移り住む… そして7年後に偶然を装って「笠岡勇市」を毒殺するが、、、

    殺害直前に、「笠岡勇市」が、「光子」が好きだった"上海帰りのリル"を口ずさんだことが手掛かりとなり、完全犯罪は崩れてしまいます。

    初めて読んだ作品… なかなか面白かったです。



    『真贋の森』は、若き日、師「本浦奘治」の逆鱗にふれ、学界を追われた美術史研究の異才「宅田伊作」が、人生の裏街道を放浪したすえ、「浦上玉堂」の贋作画の製作に激しい情熱を燃やし、アカデミズムに居直り権威となったかつての同輩「岩野祐之」への復讐を果たそうとする物語、、、

    周到緻密な復讐計画を考え、贋作を真作と鑑定させることで復讐は成功するかに思えたが、その結末は… 贋作を描かせた「酒匂鳳岳(さこうほうがく)」の「ほんの少しはだれかに教えたい」気持ちを抑えることができなかったのが失敗要因となりましたね。

    初めて読んだ作品… これもなかなか面白かった。

    一度、本物の「浦上玉堂」の作品を観てみたくなりました。



    『昭和史発掘 二・二六事件』は、『昭和史発掘』全十三巻のうち七巻から十三巻を占める二・二六事件から抜粋されたノンフィクション作品、、、

    時間はかかるでしょうが… 一度、キチンと読んでみたいですね。



    『追放とレッド・パージ(原題:黒の追放と赤の烙印)』は、第二次世界大戦敗戦後、連合国の占領統治政策の中で行われたレッド・パージ(赤狩り)について描かれたノンフィクション作品、、、

    うーーん、GHQによる占領統治政策については、あまりに知識がないので内容が十分に理解できなかったですね… 共産主義思想や左翼思想を信奉しているという理由で、公職やメディア関係、論壇、文壇、芸術界の多くの人たちが追放され、その後、職に就けず貧窮の生活を強いられたことを初めて知りました。




    印象的な作品は、『恐喝者』、『一年半待て』、『地方紙を買う女』、『捜査圏外の条件』ですね、、、

    「松本清張」作品は、ミステリー、時代小説、現代史、古代史… そして、それらの組み合わせと、本当に幅が広いですけど、やっぱりミステリー作品が好きですね。

  • これはすごかった!(毎回言ってる気がするけど)
    時間かかった。
    久しぶりにどっしり、ずっしり、みっしりした本を読んだ。
    普段ならなかなか手がのびない“松本清張”だけれど、編者が宮部みゆきさんなので読んでみる気になった。


    『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短編コレクション(上)』 (文春文庫)


    松本清張といえば、社会派推理小説のイメージだし、ほとんど長編だと私は勝手に思っていたのだけれど、なんと意外にも短編が260編もあるそうだ。
    本書は、その中から宮部さんがテーマ別に作品を選んだアンソロジーである。
    上・中・下の全三巻。

    この巻に収録されている10作品のうちで、いいなと思ったのは、まず「或る『小倉日記』伝」。
    これは、昭和27年下期の芥川賞受賞作である。
    地味な小説だけれど、「田上耕作」という主人公の真剣な生きざまが心を打つ。

    耕作は障害者である。
    昔は障害者に対する露骨な差別があったし、ずいぶん生きづらかったに違いない。
    彼は、母や友人に支えられながら「小倉時代の森鴎外」を研究することに人生を捧げた。
    そして最後はちょっと悲しい終わり方をする。
    耕作が不幸だったか幸福だったか、その判断を読者に委ねた終わり方が、何とも言えない後味を残す作品である。

    「真贋の森」もよかった。

    真贋の対象は“絵画”。
    清張さんの博識ぶりが堪能できる作品だ。
    日本美術界の大ボスに睨まれてしまったがために出世ができず、それどころか美術界からはじき出され、人生の辛酸を舐めることになってしまった主人公が、その一派に復讐をする話である。
    周到に計画を立て、年月をかけて準備をし、もうすぐ完了というところであっさり失敗してしまう。
    それがまた、些細なことが原因なのだ。
    あーあ、やっちゃった。みたいな。

    「地方紙を買う女」「捜査圏外の条件」も、主人公の策略が失敗する話だ。
    逆に成功するのは、「一年半待て」「理外の理」。

    さて、松本清張といえば、推理小説以外にノンフィクションもあるが、ここでは「昭和史発掘」から「二・二六事件」、「日本の黒い霧」からは「追放とレッド・パージが挙げられている。

    「二・二六事件」は、めちゃくちゃ難しい。

    膨大な資料を基に書かれており、裁判の調書や判決文が多数引用されているが、それが“漢字仮名混じり文”のため、読むのに苦労した。…というか挫折しかけた。
    高校の時覚えさせられた「朕思フニ…」みたいなんだらけである。

    しかしながら、襲撃直前の部分はやはり鬼気迫るものがあり、鳥肌が立った。
    十七名もの死刑者を出した昭和の大事件。
    その行動が良かったのか悪かったのか、正直私にはさっぱり分からない。

    「追放とレッド・パージ」は、戦後ということもあり、二・二六よりは読みやすかった。が、やっぱり途中で挫折しかけた。
    “レッド・パージ”とは、いわゆる“赤狩り”である。

    私は、マッカーサーは戦後の日本を民主主義に導いたすごい人だと思っていたのだが、実はわりと酷いことをしていたことを知った。
    おまけにGHQの上層部は無能だったとか。
    そんな人たちに振り回されていたのだから、当時の日本の脆弱さがよく分かる。

    宮部さんが分かりやすく解説してくれているが、「右を滅ぼすために左に振った針を、今度は左に行き過ぎたと警戒して右に振り返す」、それが「追放」と「レッド・パージ」。
    軍国主義をやめるために左、つまり共産主義を推奨していたけれど、米ソの冷戦によってアメリカの態度が180度変わり、今度は徹底的に左寄りの人間を社会から追い出したのだ。
    ひどい話だな…。

    パージを受けた人々は、働き口もなく、生活に困窮し、子供の代にまで影響を及ぼしたそうだ。
    失意の中、自殺者も多数出たのだという。

    全然知らなかったことがたくさんあった。
    昭和の歴史ってそんなにしっかり学んでいない気がする。
    学校の授業は、縄文式土器がどうしたこうしたより、こういうのに時間をたくさん使ったほうがいいんじゃないかな。

    宮部みゆきさんの分かりやすい解説のおかげで、清張ワールド楽しめました。
    「中」と「下」も、根性があれば (!?) 是非読んでみたい。

  • 松本清張の短編集であるが、作家の宮部みゆき氏が責任編集として作品を選んでいる。本短編集は推理から史実検証と様々な作品を集めていて、読んでいて飽きない。流石宮部氏のセレクトと感嘆の声を上げてしまう。

    松本氏の作品は色々と読んでいたつもりだったが、本当に「つもり」だったことを痛感されられる。260作品も生み出しておられたとは驚きしか感じない。
    しかし、260作品もあると言うことは、まだまだ松本氏の視点を楽しめるということなので嬉しい限りだ。

  • 読みづらかった。

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著者プロフィール

1909年、福岡県生まれ。92年没。印刷工を経て朝日新聞九州支社広告部に入社。52年、「或る『小倉日記』伝」で芥川賞を受賞。以降、社会派推理、昭和史、古代史など様々な分野で旺盛な作家活動を続ける。代表作に「砂の器」「昭和史発掘」など多数。

「2023年 『内海の輪 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

松本清張の作品

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