- Amazon.co.jp ・本 (428ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167110116
感想・レビュー・書評
-
やっぱり法に反することはしてはいけないなと思える本でした。
加害者本人だけでなく、加害者家族も被害者家族もみんな報われない人生を歩むことになると、
分からせてくれた本でした。
自分が刑に服するだけで済む話ではなく、
加害者家族の人生を狂わせ、差別されることを余儀なくされる今後の人生を歩ませる苦しみ、
被害者家族の心に闇を落とし恨んでいく苦しみ。
その苦しみを全て理解してこその「刑に服する」だと思いました。
犯罪の抑止力や見せしめの為にも、
加害者家族への差別はなくならない。
だけど加害者家族の辛さや世間の理不尽さもよく理解できる。
答えの出ない難しい問いですが、
こういった社会問題を考えることで
大切な人を守る為にどうすべきか、自分の判断は間違っていないのかを決める指標になると思えました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
重罪による加害者の家族の辛さや苦しみや、実際に身近で同様の事件が起こった場合、差別・逆差別含めこの様な現実になるのではないかと、考えさせられる深い内容でした。
日常でも人を殺める報道がありますが、加害者の残された家族の事をここまで深く考える事がなかった為、改めて犯罪の重みを知らされました。
また由美子さんの人間性の素晴らしさには涙腺が緩くなりました。 -
最後たくさん泣いた。
-
犯罪者の家族の生き様を様々な視点から体感させられる。なにかしらの差別をしているであろう現代人にはハッとさせられる内容だった。途中に出てくる社長は一般論で諭してくるが、合理的に生きられない主人公の選択は共感できるものだった。
-
う~ん。現在読みうるに堪えない小説である、というのが正直な感想。
まず、差別者達の行動に妥当性がない。犯罪者の身内というだけでここまで差別されることは今では無いだろう。会社の身辺調査は思想や信条、身内について深掘りすることを禁止されたし、ご近所付き合いもここまでの排他性は無くなっている。
この小説の出版は2003年であり、当時は個と組織を分ける思想が根付いていなかったということもあっての描写だと思うが、現代の感覚で読むにはだいぶ辛いものがある。といっても、2003年当時もここまでひどい差別は無かったと思うが。
そもそも舞台設定をミスっている気がしてならない。明確な時代設定を設けた田舎が舞台であれば、周囲の人間が犯罪者の身内の素性を探ろうとし、排他的意識を持つことにもいくらか妥当性が生まれるだろう。もちろん現実は、田舎であっても露骨に差別することはないと思うが、少なくとも、田舎という閉鎖的な空間を設定上持ち出すならば、一般的感覚との齟齬は生まれないはずだ。しかしながら、この小説の舞台は東京都心である。であればなおさら妥当性が薄い。
それに、もし舞台設定のちぐはぐさがクリアされたとしても、話の本筋が面白くない。
ストーリーは非常に平坦であり読みやすいが、それゆえに登場人物の心情の深掘りや物語の起伏がなく、ただかわいそうな話が繰り返され、マイナス方向に平坦な道が続いているだけ、といった印象である。
何より登場人物の気持ちと行動が全く掴み切れない。基本的に、由美子と寺尾以外のキャラに関しては、出してはそのたび退場させる使い捨て形式だが、各キャラの心情やバックボーンの描写が薄いため感情移入できず、それがゆえに首を傾げざるを得ない行動ばかりをとる。
その極めつけが新星電機の社長である平野だ。いきなり出てきて主人公に厳しい言葉を浴びせるが、主人公がそれを好意的に解釈したから話が成り立っているだけであり、平野自身は特に中身のあることを言っておらず、登場タイミングの謎さも相まって言動が終始不可解だ。彼の話を聞いても「なるほど、その通りだ」と共感することは難しいのではないだろうか。
全体的に、話を動かすためにキャラを無理やり配置した感が拭えない。もう少しキャラクターの葛藤を細やかに描き、話に立体感を与えてほしかった。 -
両親を亡くした剛志は、弟の大学進学費用が欲しく、引っ越し屋の仕事で訪れたことがある老婦人宅に侵入し、強盗殺人事件を起こしてしまう。強盗殺人犯の弟として差別にあう直貴。幸せを掴もうとするときに避けては通れない兄の存在。獄中から届く手紙。いつか罪は償えるのだろうか。
親がいないだけで差別される時代がありました。直貴とほぼ同じ経験をしてきているので読むのが辛かったです。当時、自分の力だけではどうしようもできないことがあることを知り、学びました。直貴と剛志の救いは、二人の心がしっかり繋がっていることだと思います。 -
加害者の家族、という視点はこれまであまりなかったのではないだろうか?
どこまでも追ってくる悲しい事実、考えさせられた。 -
自分の現実にはない出来事。
でも、この現実を受け入れなければいけない人がいるのも事実。
なにかコメントしても、その現実を知っている人にあまりに失礼な気がして。
なんでだろう。
愛があるのに。-
2016/03/22
-
-
被害者や遺族も苦しいけど、
加害者もその家族も悩まされているという
心境を表しているのに感嘆しました。
自分のために強盗殺人を犯した兄を持つ弟の話。
学校、音楽活動、結婚、就職、人生のいろいろな場面で、
犯罪者の家族ということが主人公を苦しめます。
重くて、考えさせられる内容でした。
どれが正しくて、
間違ってるかなんて誰にも分からないし、決められない。
でもどの人も、必死に、真摯に、
自分が良かれと思った方向に精いっぱい
向かっていたように思いました。
終わりの方で、
事件現場に赴いた直貴に対する遺族の言葉には
非常に感動しました。 -
一気に読みました。
犯罪を犯した加害者の家族の話。
日々、多くの殺人事件が起きる現実社会において、自分は関係ないと思い暮らしています。でもその事件の数だけ、被害者が居て加害者がいる。同じくその家族も。
マスコミ的に事件の内容や動機、推理をすることは可能ですが、当事者の家族を題材に書かれることはあまりない。
刑務所に入り、閉鎖された空間で過ごす加害者よりも、社会の中でむき出しにされ、虐げられながらも生きなければならない加害者の家族の苦悩を描いています。
家族に罪は無いと思いながらも、関わりたくないと言う感情も良く分かる。
普段の趣とは大きく視点を変えた、静かな苦悩の物語でした。
「さまよう刃」の対極にあるかと思いましたが、そう単純ではないですね。 -
東野圭吾の世界に私を飛び込ませてくれた作品。
本を読んで涙を流したのは初めてで、それ程自分が中に入り込めた。 -
厳しい環境で、どのように生きていくかを考えさせれる一冊です。
私は、この本に出てくる人のような境遇ではないけれど
ここに出てくる弟や、弟の妻はとてもとても強い人間だと
思います。
でも精一杯がんばれば、くもの糸を1本1本増やすように、
応援してくれる人が増えていくということを教えられました。 -
初めて読んだ、東野圭吾の作品。一度も飽きる事なく、読めました。最後は何だか感動。とても深い内容だった。
-
重かった。ずっしり重かった。
弟の苦しみとか葛藤とか心の変化がとても丁寧に描かれていて、秀逸だと思う。
多分、あと何回か読む。 -
非常に重かった。
読んだ後心臓がぎゅっとなった。
内容はどれも大事なことばかりで新しい見方などにも気がつけたけど、また読み直そうとは思わない、というかもう一度読み直すのはまた10年後とかのほうが楽しめそう。 -
どこまでいっても家族は家族なのかもしれないと感じた。
-
放置されていた文庫本を見つけて読む。
流石の東野圭吾で、さらさらーっと、読み進められる。
内容を全く知らんかったので、第一章から、
わわわ、なんや。とビックリ。
そこからの直貴を取り巻く、苦悩の連続。
むむむと思いつつも、現実に身近であったら、
自分はどんな反応なんだろう。
少なくても、由美子や倉田のように、積極的に関わってあげられないだろうなぁ…
イマジンは、絵空事だと断定しちゃうのは、寂しすぎると思いつつも、でも、自分自身が、その世界をちゃんと理解して行動できんの?ってなったら、ほら、できないよね…となる。
いろんな理想と現実の、矛盾が溢れる内容だ。