手紙 (文春文庫 ひ 13-6)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • / ISBN・EAN: 9784167110116

感想・レビュー・書評

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  • やっぱり法に反することはしてはいけないなと思える本でした。
    加害者本人だけでなく、加害者家族も被害者家族もみんな報われない人生を歩むことになると、
    分からせてくれた本でした。

    自分が刑に服するだけで済む話ではなく、
    加害者家族の人生を狂わせ、差別されることを余儀なくされる今後の人生を歩ませる苦しみ、
    被害者家族の心に闇を落とし恨んでいく苦しみ。
    その苦しみを全て理解してこその「刑に服する」だと思いました。

    犯罪の抑止力や見せしめの為にも、
    加害者家族への差別はなくならない。
    だけど加害者家族の辛さや世間の理不尽さもよく理解できる。

    答えの出ない難しい問いですが、
    こういった社会問題を考えることで
    大切な人を守る為にどうすべきか、自分の判断は間違っていないのかを決める指標になると思えました。

  • 重罪による加害者の家族の辛さや苦しみや、実際に身近で同様の事件が起こった場合、差別・逆差別含めこの様な現実になるのではないかと、考えさせられる深い内容でした。
    日常でも人を殺める報道がありますが、加害者の残された家族の事をここまで深く考える事がなかった為、改めて犯罪の重みを知らされました。
    また由美子さんの人間性の素晴らしさには涙腺が緩くなりました。

  • 最後たくさん泣いた。

  • 犯罪者の家族の生き様を様々な視点から体感させられる。なにかしらの差別をしているであろう現代人にはハッとさせられる内容だった。途中に出てくる社長は一般論で諭してくるが、合理的に生きられない主人公の選択は共感できるものだった。


  • 東野圭吾さんの、
    感情の揺れや心の動きについての描写が
    かなり細かくリアルなため
    読み進めるのに体力と精神力両方使った。
    そして、読了後は放心状態に。
    読んでいる最中が1番重く苦しく、
    ドッと疲れていたような気がする。

    お花畑な要素が無い。
    遺族にしても兄貴にしても直貴にしても…
    「現実はそんなに甘くねーよ」が文章になっている。
    自分に酔った言動にはハッキリとその後
    地の文で追い打ちをかけている。
    東野圭吾さん、流石だな…。

    最初は、兄貴のせいで人生狂った直貴を
    心底可哀想に思ったし
    寺尾が言っていたように兄貴を恨めしく思った。
    直貴が色んなことを諦めたり
    ひねくれた性格になっていったのも
    確実に兄貴のせいだし
    兄貴からの手紙を作中の直貴と同じように
    少しずつ疎ましく思い始めていた。
    それに、由美子がお節介を焼くのも
    ウザったいと思っていた。
    が、由美子が社長に手紙を書いて
    直貴が「差別は当然」「ここから始めればいい」と
    社長から語られるシーンでは
    由美子、やるじゃん…!と。
    由美子が代わりに兄貴に手紙を書いていた事実には
    うるっときてしまった。
    最初は由美子ストーカーっぽくて怖かったのに…。

    シーン毎に直貴に沿った感情を持ちながら読んだ。
    直貴からの兄貴への最後の手紙では
    「直貴よく言った!やっと言った!」と思ったけれど
    だからといって本音を兄貴に伝えたところで
    どうにもならない現実…。一生背負うんだなあ…。

    ラストシーンまで秀逸。
    ハッピーエンドで終わる訳ない!という感じ。
    「声が出ない。どうしても出ない。」
    良い歌うたってチャンチャン♪で
    終わりそうな所を終わらせない。
    読み終わって、流石に放心してしまった。
    作中には無かったけど、例え兄貴が死んだとしても
    直貴達の苦悩や痛みは終わらないんだろうな…。

  • う~ん。現在読みうるに堪えない小説である、というのが正直な感想。

    まず、差別者達の行動に妥当性がない。犯罪者の身内というだけでここまで差別されることは今では無いだろう。会社の身辺調査は思想や信条、身内について深掘りすることを禁止されたし、ご近所付き合いもここまでの排他性は無くなっている。
    この小説の出版は2003年であり、当時は個と組織を分ける思想が根付いていなかったということもあっての描写だと思うが、現代の感覚で読むにはだいぶ辛いものがある。といっても、2003年当時もここまでひどい差別は無かったと思うが。
    そもそも舞台設定をミスっている気がしてならない。明確な時代設定を設けた田舎が舞台であれば、周囲の人間が犯罪者の身内の素性を探ろうとし、排他的意識を持つことにもいくらか妥当性が生まれるだろう。もちろん現実は、田舎であっても露骨に差別することはないと思うが、少なくとも、田舎という閉鎖的な空間を設定上持ち出すならば、一般的感覚との齟齬は生まれないはずだ。しかしながら、この小説の舞台は東京都心である。であればなおさら妥当性が薄い。

    それに、もし舞台設定のちぐはぐさがクリアされたとしても、話の本筋が面白くない。
    ストーリーは非常に平坦であり読みやすいが、それゆえに登場人物の心情の深掘りや物語の起伏がなく、ただかわいそうな話が繰り返され、マイナス方向に平坦な道が続いているだけ、といった印象である。
    何より登場人物の気持ちと行動が全く掴み切れない。基本的に、由美子と寺尾以外のキャラに関しては、出してはそのたび退場させる使い捨て形式だが、各キャラの心情やバックボーンの描写が薄いため感情移入できず、それがゆえに首を傾げざるを得ない行動ばかりをとる。
    その極めつけが新星電機の社長である平野だ。いきなり出てきて主人公に厳しい言葉を浴びせるが、主人公がそれを好意的に解釈したから話が成り立っているだけであり、平野自身は特に中身のあることを言っておらず、登場タイミングの謎さも相まって言動が終始不可解だ。彼の話を聞いても「なるほど、その通りだ」と共感することは難しいのではないだろうか。

    全体的に、話を動かすためにキャラを無理やり配置した感が拭えない。もう少しキャラクターの葛藤を細やかに描き、話に立体感を与えてほしかった。

  • 両親を亡くした剛志は、弟の大学進学費用が欲しく、引っ越し屋の仕事で訪れたことがある老婦人宅に侵入し、強盗殺人事件を起こしてしまう。強盗殺人犯の弟として差別にあう直貴。幸せを掴もうとするときに避けては通れない兄の存在。獄中から届く手紙。いつか罪は償えるのだろうか。

    親がいないだけで差別される時代がありました。直貴とほぼ同じ経験をしてきているので読むのが辛かったです。当時、自分の力だけではどうしようもできないことがあることを知り、学びました。直貴と剛志の救いは、二人の心がしっかり繋がっていることだと思います。



  • 最後の緒方さんへの
    剛志さんからのお手紙を読んで
    それは何も特別な内容でも無かったけれど
    そこに書かれた真理に
    これまでの彼の綴り続けた手紙が裏打ちする
    彼の心の底からの”祈り”が
    痛いほど苦しいほど心に響いて
    緊張の糸が解けたように
    涙が止まらなくなった

    声がでるような苦しい涙が流れた
    読みおわった今でも胸が苦しい

    本の中で、罪や、償いや、悔いや、
    自己満足や、甘え、
    そして社会的な差別や、死、
    といったワードが目立つ

    大なり小なり誰かを傷つけた罪を
    それか傷つけられた過去を
    皆んな背負っているんじゃないかと思う

    誠意をもって謝れば償いきれるわけじゃない
    だけどだからといって謝らずにいては想いが何も伝わらない、伝えればいいというわけじゃない
    だけどその時、その時に、自分にとって考え抜いて苦渋の最善の誠意を尽くすことが大切なんだと思わされる

    由美子はとても美しかったと思う
    よくある言葉でいうなら優しくて、芯がある、逃げない、強さを持ってる、だけど、もしかしたらそこには由美子の自分が過去に負った傷を直貴をどうにかして見捨てずに助け続けることで無意識に癒やしていたのかもしれない
    朝美もとても魅力的な女性だった
    本質的な部分は由美子と変わらないようにも思う、だけど彼女の両親への反抗と直貴への愛が時折熱を帯びて自己満足に映ってしまったのはどうしても変えられないこれまでの境遇や環境の違いなんだろう
    運命の、生涯を共にできる相手は、単に魅力的で愛しているからじゃ通じない、どこまで深く解り合えるかなんだろうと思う、理解と共感は近しいようで時に酷く遠いから

    直貴は、とても賢い
    次第に社会に対して諦観し始めるけれど
    社長の言葉や由美子の存在によって
    自分で努力を続ける
    そういえば通信大学のきっかけをくれた
    倉田さんも今思えば大事な大事な糸の1本だったんだろうな
    そうした糸を知らず知らずのうちに手繰り寄せていて、多くのものを失っても、なお夢のような平凡な幸せを手に入れられた直貴の姿に安堵する





    ———-

    1年前に出会って好きになった人
    出会ったことがなかったような
    孤独を感じさせて私を傷つけた人が
    好きだと記していたこの本
    どんな思いで好きだといっていたんだろう

    家族の愛なのか、罪の償いなのか、
    それとも懺悔なのか、
    今は知りようがないけれど
    この本を好きだという彼の
    微かな私には嘘のように思えた純真さや優しさと
    傷つけられてしまう残虐性の共存の矛盾を
    とても受け入れられなかった
    私は朝美のような方法でしか愛せなかったように思う

    どうして離れたのか
    理由を伝えなかったのは
    本音は嫌われたくなかっただけのようにも思うし
    変わらずのままにいてそして1人でいてと願う
    恨みのような気もする

    私も終わりにしたい、今さら
    もう縁を切れたのかもしれないけど

    どうか由美子のような存在に出会って
    愛されてほしいと祈る

    とてもしょうもないような事だけど
    人生大きな小さなこんな人間関係の繰り返しでそれが重要な大部分を占めるのかもしれない

    こんなふうに優しく想ってるの
    私だけなんだろうけど、これも自己満足

  • 加害者の家族、という視点はこれまであまりなかったのではないだろうか?
    どこまでも追ってくる悲しい事実、考えさせられた。

  • 自分の現実にはない出来事。
    でも、この現実を受け入れなければいけない人がいるのも事実。
    なにかコメントしても、その現実を知っている人にあまりに失礼な気がして。

    なんでだろう。
    愛があるのに。

    • 9nanokaさん
      深いです…
      感動したとか言っちゃわないところがさすがkomoroさんだと思いました。
      深いです…
      感動したとか言っちゃわないところがさすがkomoroさんだと思いました。
      2016/03/22
  • 被害者や遺族も苦しいけど、
    加害者もその家族も悩まされているという
    心境を表しているのに感嘆しました。
    自分のために強盗殺人を犯した兄を持つ弟の話。
    学校、音楽活動、結婚、就職、人生のいろいろな場面で、
    犯罪者の家族ということが主人公を苦しめます。
    重くて、考えさせられる内容でした。
    どれが正しくて、
    間違ってるかなんて誰にも分からないし、決められない。
    でもどの人も、必死に、真摯に、
    自分が良かれと思った方向に精いっぱい
    向かっていたように思いました。
    終わりの方で、
    事件現場に赴いた直貴に対する遺族の言葉には
    非常に感動しました。

  • 一気に読みました。
    犯罪を犯した加害者の家族の話。

     日々、多くの殺人事件が起きる現実社会において、自分は関係ないと思い暮らしています。でもその事件の数だけ、被害者が居て加害者がいる。同じくその家族も。

     マスコミ的に事件の内容や動機、推理をすることは可能ですが、当事者の家族を題材に書かれることはあまりない。

     刑務所に入り、閉鎖された空間で過ごす加害者よりも、社会の中でむき出しにされ、虐げられながらも生きなければならない加害者の家族の苦悩を描いています。

    家族に罪は無いと思いながらも、関わりたくないと言う感情も良く分かる。

    普段の趣とは大きく視点を変えた、静かな苦悩の物語でした。
    「さまよう刃」の対極にあるかと思いましたが、そう単純ではないですね。

  • 東野圭吾の世界に私を飛び込ませてくれた作品。
    本を読んで涙を流したのは初めてで、それ程自分が中に入り込めた。

  • 厳しい環境で、どのように生きていくかを考えさせれる一冊です。
    私は、この本に出てくる人のような境遇ではないけれど
    ここに出てくる弟や、弟の妻はとてもとても強い人間だと
    思います。

    でも精一杯がんばれば、くもの糸を1本1本増やすように、
    応援してくれる人が増えていくということを教えられました。

  • 初めて読んだ、東野圭吾の作品。一度も飽きる事なく、読めました。最後は何だか感動。とても深い内容だった。

  • 重かった。ずっしり重かった。
    弟の苦しみとか葛藤とか心の変化がとても丁寧に描かれていて、秀逸だと思う。
    多分、あと何回か読む。

  • 非常に重かった。
    読んだ後心臓がぎゅっとなった。
    内容はどれも大事なことばかりで新しい見方などにも気がつけたけど、また読み直そうとは思わない、というかもう一度読み直すのはまた10年後とかのほうが楽しめそう。

  • どこまでいっても家族は家族なのかもしれないと感じた。

  • 犯罪加害者の弟を描いた作品。
    加害者家族が受けるであろう差別に対して不当だと感じていたが、この作品ではそれを含めてが加害者当人の罪の重さであるとしていた。
    その上で殺人は被害者だけでなく、被害者の家族など人との繋がりを断つという面からも絶対に犯してはいけないこと、直貴の社会的な死は本当の死とは違い今ある他者との繋がりの糸を少しずつ増やしていくしかない。理不尽であってもそうするしかないのだと思ったし、その道を模索しながら進んで行こうとする直貴は立派だと思った。
    兄の手紙の数々や終章では心が握られるような感覚になるなど、感情を動かされる作品だった。

  • 放置されていた文庫本を見つけて読む。
    流石の東野圭吾で、さらさらーっと、読み進められる。
    内容を全く知らんかったので、第一章から、
    わわわ、なんや。とビックリ。

    そこからの直貴を取り巻く、苦悩の連続。
    むむむと思いつつも、現実に身近であったら、
    自分はどんな反応なんだろう。
    少なくても、由美子や倉田のように、積極的に関わってあげられないだろうなぁ…
    イマジンは、絵空事だと断定しちゃうのは、寂しすぎると思いつつも、でも、自分自身が、その世界をちゃんと理解して行動できんの?ってなったら、ほら、できないよね…となる。

    いろんな理想と現実の、矛盾が溢れる内容だ。

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著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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