- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167192457
感想・レビュー・書評
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藤沢周平の初期作品集。時代小説であるが、英雄は登場せず、市井に生きる名も無き人々の姿が描かれる。表題は直木賞受賞作品。
後年の藤沢作品に見られる爽快な読後感はなく、全体的に重いトーン。主人公は、抗えない運命に翻弄され、また、様々な業を背負って生きていく。登場する女性は、軒並み不幸になる、、、
このころの作者は、肺結核を病み、仕事を変え、妻に先立たれている。小説は作者の人生を反映するものなのだなぁ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
黒い繩
暗殺の年輪
ただ一撃
溟い海(くらいうみ)
囮
武士の非情な掟の世界を、端正な文体と緻密な構成で描いた直木賞受賞作と他4編。 -
文章は創造的でよいけど、内容は結構平明
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表題作が直木賞受賞作。
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情念と女性がテーマの短編集。
情景描写と心理描写が精緻に描かれている。
一つ一つの短編を読み終えると、その^ どこか物憂げな展開に、心の一部に穴を開けられたような感じさえした。 -
祖父に借り、初の藤沢周平。
素晴らしかった。
短編で読みやすく、
一つ一つの話の主役に
それぞれの熱いものがある。
個人的には前二つが好き。
とても切ない。
体験したことのない時代に
生きていた人間を実感できる。 -
海坂藩ものの第一作「暗殺の年輪」には、「蝉しぐれ」などの後の作品のプロトタイプを思わせるものがあるが、全体に”暗い情念”が横溢した短編集。「ただ一撃」が好物。
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直木賞受賞の表題作をはじめ、5つの短篇を収録。「暗殺の年輪」も悪くはないが、やはり篇中の白眉は「ただ一撃」だろう。武骨で巨漢の猪十郎の存在感も十分だし、なによりこれに対する、隠居の身の範兵衛が兵法者として復活してゆく姿と、一瞬の立ち合いは読みごたえがある。物語の主軸を支えるのはこの二人だが、実は真に藤沢周平らしさが出ているのは刈谷家の嫁、三緒の造形だ。つつましく、いじらしく、聡明でもあり、さらには感情も溢れるほどに豊かだ。剣豪小説のように見えながら、彼女の存在こそが作品にふくらみと陰翳とを与えているのだ。
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いずれの短編も、面白い。出てくる人物の魅力と、ストーリー展開に、魅了される1冊。藤沢周平、また読みたい。