テキサス・ナイトランナーズ (文春文庫 ラ 7-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (390ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167527976

感想・レビュー・書評

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  • 「ハップ&レナードシリーズ」で好きになった、ジョー・R・ランズデールの作品。しかし、もしもこっちの方を先に読んでいたら、ランズデールを好きにならなかったかもしれない。「ハップ&レナード」シリーズよりも荒削りというのもあるが、翻訳も……いえ、わたしは原作を読むほどの力量はないけれど、言葉とか言い回しのセンスが作品と合っていないような。


    ストーリーは悪くないが、16、7歳の少年たちの悪行非行三昧が気持ち悪く、腹立たしい。読みながら、ふと、神戸のサカキバラ事件や、足立区の女子高生監禁事件を思い出した。少年事件の最悪かつ今でも取りざたされる有名な事件だけど、この作品の少年たちも、自ら暗黒に君臨する神を作り出し、自分を超人だとみなし、刑事責任を負わされる18歳までは好き放題やろうという考えを抱いている。読んでいて、吐き気がするほどだ。


    レイプの被害者・ベッキーとその夫・モンティ。モンティは非暴力主義におおいに感銘を受けている人物で、平たくいえば、アタマでモノを考えるインテリタイプ。その思想はすばらしいが、身近の大切な人物が暴力を受けた場合はどうなるのか? 結局、自分の小心さを隠す建前なのではないか? ……ということを、モンティ自身も、ベッキーも考える。これは、自分の周りにも転がっている問題じゃなかろうか。


    それにしても、表紙カバーの写真が不気味で怖い。この作品にこの写真を選んだセンスはすばらしい。

  • 面白かった。

  • ノワールの萌芽を文体から感じることはできるが、狂気に蝕まれた少年たちの殺戮を描くことに終始し、意味あり気な構成をとりながらも、雰囲気重視の空虚なプロットのため、後味の悪いホラー映画に影響を受けた作品という感想しかない。解説を書いている馳星周が如何にも好みそうなダークな暴力に満ちてはいるが、狂っていくまでの過程が説明されず、当然のこと登場人物らの造形が浅いため、無残な破滅へと至る終幕であっても、そこから得られるカタルシスは薄い。作中でも触れているが、恐らくサム・ペキンパーの「わらの犬」へのオマージュなのだろう。

  • 積読消化。ネット通販で買ったのだがなぜこれを選んだのか思い出せない。ノワールものだと思っていたがホラー要素が強い。タランティーノの映画であるどうでもいい下品でえげつない会話とシーンを思わせる部分が面白い。アクが強さと自分の頭の中で膨れっぱなしだった疑問点を飼い慣らして読み終えた。勢い重視であまり考えてはいけない作品だ。

  • ノワール小説。読んだ日に悪夢をみて、読んでからしばらく、暴力とは何か、断絶とは何か、人間相互の理解とは何か…など考えてた。犯罪系の小説を読むといつもそのあたりのことで考え込みます。 

  • ランズデール初期の作品なので粗い。だが、粗いゆえに力強い。その力強さをディーン・R・クーンツは「むきだしの力」と評する。むきだしの狂気、疾走する狂気。狂気はその行き着く先に美しさへと昇華する。またも、やられた。

  • 札付きの不良少年クライドにレイプされた高校教師のベッキー。夫モンティは妻と共に友人が所有するキャビンで静養することを決める。ベッキーは忌まわしい記憶に苛まれ、次々におぞましい夢を見ていた。自分を襲ったクライドが独房で首を吊る夢を見た翌朝、彼が本当に首を吊って死んだ事を知る。血まみれになって吊るされた女の夢を見たベッキーは、自分が殺される未来を見たと思い込みんで絶望する。精神的に不安定になっていくベッキーとモンティは少しずつすれ違っていく。その頃、クライドの仲間ブライアンの脳中では、クライドの声が繰り返す。「あの女を殺せ レイプして心臓をナイフで抉り出せ」……。ブライアン達を乗せ、66年型黒のコルベットは狂気を孕み、タイヤ痕を血と脳漿で染めながら疾駆する。

    奥付によるとこの本、初版は'02年の3月になっている。帯には「パルプ・ノワール2002」。ランズデールの作品なら、ハップ&レナードのヤクザな中年コンビの物語を3冊ほど読んでいるし、どちらかと言えば好きな作家だが、当世流行のノワールは興味ないからなぁ……と思っていた。んが、「ホラー小説大全」によるとこの「テキサス・ナイトランナーズ」、著者が15年ほど前に書いたホラーらしい。んでは買って読んでみなければ、ということで、「パルプ・ノワール」の文字は黙殺して購入。

    ブライアン達を暴力に駆り立てる邪悪な意志、物語は紛れもなくホラーの文法で描かれており、作品自体、本来はホラー小説に括られるべきものだろう。しかし、とにかく荒削りな物語と文章が独特の迫力ある疾走感を生み、粗暴極まりないイメージの塊を読み手に叩きつけてくる。ページをめくるにつれ、ホラーだとかノワールだとか、そんなことは些末な事だと思えてくる……。
    ……いかん、巻末の馳星周のクサい解説に影響を受けてしまったやも。しかし、作品を読めば案外これが合っているのかも知れないとも思う。
    下品で、乱暴で、とにかく突っ走ってて、ブッ飛んでて、少し怖くて、面白かった作品。

  • ノワールではなくホラー。
    どこが面白いのか全く分からずじまい。
    ノワール馳氏が解説を書いてはいる。
    確かにとち狂った小説には間違いはないが。
    虫唾が走るだけで得るものは何もない。

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