- 文藝春秋 (2000年11月10日発売)
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感想 : 158件
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784167602031
AIがまとめたこの本の要点
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みんなの感想まとめ
人間の内面に潜む悩みや葛藤を描いた短編集で、特に「ジェイソン」の物語が印象的です。主人公が自らの酩酊後の姿を知ることで、自己認識の欠如や他者との関係の微妙さに気づく様子は、読者に深い共感を呼び起こしま...
感想・レビュー・書評
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桐野夏生さんの短編はどれも面白かった。その中でも(ジェイソン)と(錆びる心)が、特に良い。ジェイソンの主人公がとうとう酩酊後の我が姿を知る事になる。酒が無くても常軌を逸した行動を批判され、自分だけが知らされていない呼び名が普通に通じている事がある。「スピーカーさん」なんて言われている事も知らず交友関係が広く情報通を自慢気に話されるとつい傷付けずに助言する方法はないものかと思ったことがある。そう言う自分にも、
気付けない事実があるのでは?怖いなと思った。
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「OUT」以来の久しぶりの桐野夏生さん。
短編6篇の登場人物がそれぞれ心の内で悩んだり怒ったり決意したり、その決意が鈍ったり…その辺にいる人間らしくて、各々の話にどっぷりハマりこんで読めた。
特にジェイソンが気に入った。ジェイソンに変貌した自分を知るにつれ落ち込む主人公。ラスト、妻さえいてくれたらと開き直ったのに、やっぱりジェイソンは妻に対してもジェイソンだった。けど、お酒の失敗でなくても時に誰かのジェイソンに誰でもなり得てしまうんではないだろうか?私だけが知らないだけで…。 -
短編集なのでさくっと読める。
そこまで印象に残るものはなかったかな… -
短編集なので、いいところで終わる。まだまた続きがあるんじゃないか とか、何か起こってほしいとか。未消化だぁ。面白いけど。
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テーマが微妙に不揃いな6本の短編集。どの話も先が超気になり読書速度を加速させる掴みは完璧、結末はキツい尻切れトンボが多めで★4寄りの★3。表題作が一番印象的だったかな。
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先日『ナニカアル』で初めて読んだ作家さんの初の短編。
『グロテスク』や『東京島』で名前は知っていたが、それまで読んでいなかった。
『グロテスク』を図書館で見つけて借りたまま読んでいなかったんだけど、一時帰国時にこちらをみつけて購入し、『グロテスク』が結構面白かったのでつづけて読了。
まず、文章がとても読みやすい。
抵抗なくぐいぐいと本の世界に引き込まれ、没頭することができた。
本作は六篇の短編からなっている。
どの作品にも共通するのは自己と他者との意識・認識の乖離かな、と思う。
そして、主人公はみんなとても自己中心的だ。
もう、後戻りができないようなところまできて、墜ちる。
人の自己中な所、思い込み、思い上がり、妄想、欲望、恨み妬み・・・そんなものたちが、桐野さんによってかなりアンプリチュードされて描かれていると思う。・・・ぞっ。
読んでいて、今村夏子さんの作品のような居心地の悪さを感じたが、今村さんが柔らかな文体で書くのに対し、桐野さんはもう少しシャープな感じ。
個人的には"虫卵の配列"と"羊歯の庭"が好きかな。
"月下の楽園"は羊歯の庭に少し似ている気がする・・・荒廃した庭に惹かれるようになったきっかけの部分が凄く気味悪いけど・・・。
"ネオン"は個人的には微妙でした。
"ジェイソン"は主人公の心理描写が凄くよかったけど、最後のパンチが弱い気がした。
登場人物に教職が多いが、何か桐野さんの経歴などと関係あるのだろうか。 -
サクッと読める短編集。
一番おもしろかったのはジェイソン。
アルコールの破壊力は侮れないと思いました。
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6つの短編集。
消化不良な話もある気がするけど
おもしろかったし、読みやすかった
人間の裏側をちょっと覗き見たって感じ
"錆びる心"は、1番印象に残った
主観で見よることが
自分の世界やし正義で正解なんやろうけど
見方を変えたらちょっとズレとることもあるんやろうなって思った -
後味の悪い話が多い。
でも読んでしまう。 -
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虫卵の配列
羊歯の庭
ジェイソン
月下の楽園
ネオン
錆びる心
「現状を変えたい」とか「こんな生活はイヤだ」とか思って
現状を変えるべく何かことを起こしたら、必ず誰かに影響を及ぼす。
自分の思うように、思った通りに、事態は推移していかない。そういう中で
立ち現れる、その人それぞれの姿、本性、実力?
イチオシは「虫卵の配列」。静かな狂気と思い込みの脆さ。
表題作「錆びる心」も良かったです。 -
桐野夏生は好きな作家のtop3に入るけど、人間のおどろおどろしい感情を描くのが得意な彼女だからさっぱりとしたら短編小説は合わないのかもしれない。
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6の短編集。
初っ端から驚きの話でした。
これは相手が知り合いだからなのか
普通だったからなのか。
どれもこれも、普通に始まっているのに
妙な方向へねじ曲がって着地するので
不思議になってしまいます。 -
6つのお話、ミステリーというのだろうけど、怪しげな世界観があり、ファンタジー(大人向け?)という感じもする。
表題となっている『錆びる心』。自分が去ることで、相手に「自分を植え付けたかった」というところ。共感しすぎて、息が詰まりそうだった。 -
桐野作品に出てくる登場人物は、安易な感情移入を許さない癖の強さを感じます。6つの短編も語り手の常識や行動の方向は私と異なっていて、予測できない分、おもしろかったです。
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これを読んで好きな小説家が増えた。『柔らかな頬』のときも感銘を受けたが今回もそうだった。日常の中でふっと訪れる狂気。それは何も特別ではなく、他者の眼差しで冷ややかに見つめる自分自身も同じ狂気に染まっていた、といった安住のなさがある。こと「安住のなさ」にはいくつか在り方があるのだが桐野夏生の場合のこれは好きだ。別の在り方としては真実で四方八方を追い詰めるやり方だがそもそも真実とは?といった果てのない疑問を残すのだが、『錆びる心』の場合は「何を信じるのか」から出発するので問題の回答権を自身が掌握することができる。答えることのできる問題。そのようなものに挑戦できるのがこの著者の書く小説の真骨頂なのだと感じた。
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ジェイソン好き
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現実にありそうな世にも奇妙な物語。
初めての桐野夏生の本だったが、するすると読ませる巧みな文章を書く作家だと思った。
感情の描写も巧く、震えるほど共感した部分が所々あった。
様々な人生を垣間見れておもしろかった。
桐野夏生の長編にも挑戦してみたい。
虫卵の配列 ★4
羊歯の庭 ★4.5
ジェイソン ★3.5
月下の楽園 ★3.5
ネオン ★3
錆びる心 ★3.5 -
桐野夏生さんの短編小説集。
はじめ把握していないまま読み始めたのだが、収録作は作者デビュー翌年の1994年から1997年で、大ブレイクする『OUT』(1998年)より前の、初期の作品群だ。
これらは多彩で、どれも面白く読める豊かな短編小説である。なるほど、松本清張の作品のように、それぞれに心理的な劇の物語時間が推進されていて、それが確かな人間観察に基づいているからこそ、リアルな感触を持ち、読者の心を引きずり込んでいくのだろう。
ただし、結末は
「あれ? これで終わり?」
と驚かせるような、少々肩すかしを食わせるようなものが多く、一般的な多くの読者をいくらか失望させるのではないだろうか。
古典的な「完結感」を演出せずに、突然パタッと止まるかのような終結をしばしば導き出す現代音楽を私はよく聴いているので、「終わり方」に関しては何でもありと考えているから、「それもOKかな」ととらえる。しかしたいていの読者はやはり落胆するのではないか、という終わり方が幾つかあった。大衆向けのエンターテイメント小説としては、それはうまくないと思われる。
本書はあくまで作家初期の作品集なので、後年の短編は円熟によって形式的にも「よくまとまった」作品になっていくのかもしれない。
だがこれをマイナス要素としても、作者の人間理解の鋭さが端々に現れるこれらの小説の魅力は代えがたいものがある。
特に巻末の表題作は、結婚生活にウンザリした主婦の心理を鋭くとらえ、家出からさすらい歩く新たな生の歩みが、場面転換に応じてラプソディックに綴られてゆくが、全く違う場所に到達したかのような最後のところで上手く冒頭の場面の状況と結びついていて、印象深い作品となっている。
本書全体にわたる、多彩な心理世界を描出するこの手腕が、後年さらに円熟してどのような短編集を生んでゆくのか、興味をそそられた。
著者プロフィール
桐野夏生の作品
