てのひらの闇 (文春文庫 ふ 16-2)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167614027

感想・レビュー・書評

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  • 今の時代には合わない部分とか現実味とか言い出したらキリが無いけど、
    おっさんのロマンが詰まっているハードボイルド。

  • 久しぶりの読み直し。
    ダメダメなのに妙に強くて腹のすわりかたが半端なくてかっこいいおじさんに、やっぱり今回もぐっと来ました。

  • 藤原伊織の作品を読むと、ひとつの目的に向かって、一心腐乱に貯金をしていた頃の自分を思い出す。月~金9時5時で派遣の仕事をしながら、夕方から3時間のバイトと週末のバイトをかけもって、とにかく稼いで貯めることしか頭になかった自分。冷静になってみると、余りにもさばさばと味気のない日々を送っていたものだと思います。どの職場でも積極的に交流をはかろうとしていなかった私に、何かと声をかけてくれて、いつしか一緒にご飯を食べたりするようになっていた先輩がいて、彼女が「藤原伊織、面白いよ」と教えてくれたのでした。

    休みを極限まですり減らして、本を読む余裕すらなくしかけていた時、その一言ですっと気が静まって、読みだした初めての藤原作品(たしかそれは「ひまわりの祝祭」だったと記憶)は、こわばっていた心を揺り動かしてくれました。大がかりな仕掛けのマジックを目の前で見るような感動。現実的ではない世界、だけれどそこには、自分と変わらない寂しさや揺れる心をもった人々が生きている、そんな親近感ももてる。

    『てのひらの闇』は、早期退職制度に従って、間もなく会社を去ろうとしている一人の男が主人公。サラリーマン生活にはまったく未練はなさそうな堀江が、最後までこだわり続けるのは、今時はやらない仁義。会社に拾ってもらうきっかけとなった会長の自殺に疑問を覚え、ただその謎を解明するために動き出す…

    遠い昔に決別したはずの自分の生い立ちと向き合わざるを得ないような状況に追い込まれ、謎の解決とともに、自分の境遇をしっかりと受け止めなおして、本当の意味での‘自分の人生’を歩み始める。ストーリー自体は切なく哀しいものだけれど、物語の終わりには、止まっていた時計が再び時を刻みだしそうな期待感というか、高揚感が感じられる。

  • 極道の息子でいまは紆余曲折を経て飲料会社の広告部の課長堀江。ある日勤務先の会長に呼ばれて託されたのは、手持ちの映像を社のCMとして流したいという依頼。しかし堀江が考えられる限りの不備を指摘した後、あっさり引き下がり、その後会長は自死してしまう。会長の自殺の理由を求めて、奔走する堀江。いつものことながら彼の周りには部下の大原やバーのナミなど、若く美しく気が強く雄々しい、けれど堀江に魅了されてしまう女性たちがいて(「テロリストのパラソル」なら塔子)。極道のころに鍛えた剣道でヤクザたちものしてしまい、会社も辞めるつもりだから自分一身のことなんか知ったことじゃない、ある意味無敵。超能力まではいかないけど、無敵過ぎる主人公はいささかなあ、と思いつつも、次々と明るみにでてくる事実、疾走感、ストーリーにぐいぐいと読まされた一冊。作者は、義とか侠気とか誇りといったものを描きたかったのかな、と思った。主人公しかり石崎しかり柿島しかり坂崎しかり。

  • 任侠のかっこ良さとミステリが融合した作品だった。
    人間の高潔さとは何か、少し理解出来た気がする。

    加賀美母娘にはびっくりした。
    確かに父のように接してくるとは言ってたけども本当に義父のつもりだったのか……!と思った。
    そしてどれだけモテるんだ会長。

    おもしろかった。

  • 昔読んだ本

  • 夫の友人からお借りしました。
    事件があって謎があって、それを追う展開なのですが、どんな方向性なのかが途中まで全然読めなくて、ワクワクが2割増しでした。。

    主人公はくたびれた中年男性。アウトローっぽい雰囲気でいざとなると超強い。剣道の達人です。
    こんなお決まりの人物像なのに、ニセモノっぽくなくてカッコイイんです。
    他にも、主人公を影で見守る暴力団組長が登場したり、そもそも事件のキーマンである大企業の会長さんは経営手腕はイマイチだけど男気のある人物だったりで、とにかくいかにも、な人ばっかりが登場するんですけど、その世界観に馴染み不自然さがありません。
    上質なハードボイルド小説っていいね、カッコイイ!と素直に思える作品でした。

  • なんていうか、出てくる人間たちがカッコイイ小説。
    大原に惚れる。

  • ー そうだ。考えるのはさきでいい。二十年、サラリーマンをやってきた。いつだって、考えるのがさきだった。考えなければ、生きていけなかった。そうでないときは、身体が動いていた。息つく暇がなかったのだ。疲労のすこしずつ溜まっていく生活が、この環状線みたいにずっとつづいた。沼の底の泥みたいに知らないうちに溜まっていった。それがこの国の企業社会だった。最後に一度くらい、例外があってもいいだろう。この奇妙な状況ではじめて、そのことに気づいたのだった。 ー

    訳ありサラリーマンが巻き込まれるハードボイルド!
    藤原伊織の作品はどれも面白い。
    今回もハラハラしたなぁ〜。

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著者プロフィール

1948年大阪府生まれ。東京大学仏文科卒。85年「ダックスフントのワープ」ですばる文学賞を受賞。95年「テロリストのパラソル」で江戸川乱歩賞、同作品で翌年直木賞を受賞。洗練されたハードボイルドの書き手として多くの読者を惹きつけた。2007年5月17日逝去。

「2023年 『ダナエ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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