溺レる (文春文庫 か 21-2)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167631024

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  • とても官能的。
    男女間の張りつめた緊張感、距離感に読んでいてゾクゾクする短編集。
    大人の男女の、時にしっとりと、時にねっとりとした色気に私まで溺レそうだ。
    特に『さやさや』『溺レる』『百年』が良く、読了後も余韻がずっと残る。

    男と女が静かに淡々と情を交わす。
    アイシテルのに、二人でいるのに、何故だかさびしい。
    思いきってアイヨクにオボレてみると、いいのかもしれない。
    こういう川上さんも好き。

  • ちょうどいい、は難しい。ちょうどいい具合に、ちょうどいい加減で、ちょうどいい頃合に。でも、いつも、少し多かったり、少し少なかったり、気を抜いていると、多過ぎたり少な過ぎたりして、行き着くところまで行ってしまう。あるいは、いつまでもたどり着けなくなってしまう。
    愛しているからおよんでみたけれど、およべばもっと繋がれるはずだったけれど、むしろもっと寂しくなる。およべばおよぶほど、一人になる気がする。それなのに、ちょうどいい、は難しい。
    そんな物語が螺旋のように繰り返されていた。

  • つまらない女と、つまらない男による、短編8つ。「つまらない日常」なのに、どこに連れていかれるのかわからない怖さがありました。

  • 女流文学賞、伊藤整賞W受賞。短編集。どれも男と女の話。『さやさや』『溺レる』がお気に入り。この人はもの喰ってる描写がいいなぁ。実に旨そうで実に巧妙に取り入れてある。

  • 川上弘美の怖さを見た。

    言葉の重ね方、
    会話の重ね方、
    酒と食事の重ね方が、
    川上弘美の魅力と思っていたのは、
    まだまだ少ない経験で得た、
    彼女のいち断面であったか。

    男と女の情念の、
    強く、淡く、もろく、
    果てしない粘りつき方が、
    とても恐ろしい。
    川上弘美が粘りつくと言うと、
    ひどく粘りついて見える。

    そこにある情念が、
    とてもとても粘っこい。
    あわあわとしているのに、
    さらさらとしているのに、
    やたらと絡みついて、怖い。

  • 今まで読んだ川上さんの作品の中で一番好きかも。
    恐ろしい恋愛が描かれた短編集。
    「百年」とか死ぬ気も失せる怖さ。
    基本川上さんの描く恋愛って怖いけど「百年」は突出した怖さでした。
    心中に失敗して自分だけ死んでしまった女の側から描かれてた作品。

  • 愛欲 非現実 心中

  • 一番最後の短編、500年以上も生き永らえている二人の話が一番好き。

    川上弘美の創り出す世界はどこか生と死の境界があいまいなものが多い。ついでにいうと人間かそうでないかということまで曖昧模糊としている登場人物も多い。
    そして舞台も日本であるのかそうでないのかあいまいで日本らしい場所のような気はするが、はっきり日本の地名が出て来るものもありそれでもここがどこかというのがはっきりしない印象がある。
    さまざまなものの境界が曖昧なので自己と他者の境界もあいまいかというとそうではない。主人公は他者との境界さえも曖昧にしたいとどこか望んでいるようである。自分が掴みきれていないふわふわとした自己はだが決して他者と相入れる事はなくやんわり拒絶されていたり、孤立している。
    曖昧な世界の中にある、自身はこの世界と同じように曖昧だと思っている自己ははたして曖昧ではないと私は感じる。他者の認識と自己の認識のズレは川上さんのテーマの一つではないかと密かに思っている。

  • 年増のわたしと更に年上の男性との関係。すっかり大人のふたりなのにどこか子供っぽいやりとりで、読み終わるとなんだか心があったかい。蝦蛄を食べたくなった

  • 退廃的な生活。ダメな女。道を間違った男。変な人たち。こどものようなおとな。意味のない日々。
    自分はなにをがんばっているんだろう?自分もこうなりたい、ほんとうは。ひとには言えないけど。

著者プロフィール

作家。
1958年東京生まれ。1994年「神様」で第1回パスカル短編文学新人賞を受賞しデビュー。この文学賞に応募したパソコン通信仲間に誘われ俳句をつくり始める。句集に『機嫌のいい犬』。小説「蛇を踏む」(芥川賞)『神様』(紫式部文学賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞)『溺レる』(伊藤整文学賞、女流文学賞)『センセイの鞄』(谷崎潤一郎賞)『真鶴』(芸術選奨文部科学大臣賞)『水声』(読売文学賞)『大きな鳥にさらわれないよう』(泉鏡花賞)などのほか著書多数。2019年紫綬褒章を受章。

「2020年 『わたしの好きな季語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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