センセイの鞄 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167631031

感想・レビュー・書評

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  • →20代後半の感想。この作家さんのお話は初めて読みましたがとても自然で綺麗な文章なので穏やかな気持ちで読むことが出来ました。
    最初、この二人が恋愛に発展するの?って信じられず読み進めましたが、少しづつお互い独占欲が出てきて距離が少しづつ近くなって、、ねたバレになるのであまり書けませんがラスト泣いてしまいました。ひさしぶりにいい恋愛小説にめぐり合い、大満足です。
    2015/06/04 再読←30代半ばの感想
    何年ぶりかに再読して、また泣いた。
    肴がたまらなく美味しそうでやたらと出てくる湯豆腐が食べたくなる。再読だから内容も知っているわけでときどきぶわぶわと涙が滲んだりした。また何年かしたら読んで泣くわよ。
    2016/01/16再読 また泣く
    途中また豆腐を食べた
    再読2016/05/14 またじわり

  • 心地いい人たちとの交流が 優しくてほっとする

  • 前半の空気感が一番好きだった。実際にセンセイと結ばれてしまうと、少し複雑な気持ちになってしまった。
    夢物語であって欲しかったのかもしれない。センセイもツキコさんもヒトなんだから、一度気持ちが溢れてしまったら、こうならないはずがないのに。

    『お正月』の林檎を食べるところと『梅雨の雷』の最後の部分、読んでると泣きそうになる。

  • とても穏やかで暖かくて
    センセイの言葉は魔法みたいで素敵。
    一瞬にして心を奪われた。
    私も恋がしたい。
    ただ穏やかに、緩やかに。
    この小説をよんで恋がしたくなった。

  • 人との距離感、ユーモア、思いやり、そういう目に見えないものがしっくり来る相手に出会えることはそう多くなくて、歳が離れ過ぎているってことは、その貴重な相手を手離す理由にはならなかったんだな。

    センセイを心から愛したツキコさんの人生に、再び満ち足りた時が訪れることを願ってやみません。

  • 幸せとは、こんな日々がいつまでも続けばいいと思うことで、でも現実はそう上手くはいかないから、幸せに寂しさはつきものなのです。


    その寂しささえも愛おしい小説でした。何度も読みたい。

  • 永遠に好きな一冊。なにがどうとかわからず、いい。

  • 2001年に出版された本。川上弘美さんの、いちばん有名な小説ですね。
    実は川上弘美さんは、2005年に出版された「古道具 中野商店」という小説を、衝動買いして読んだことがあります。
    そのとき、その本は、まあ正直に言うとあまり面白いと思わなかったんです。
    でもそれは、「お、これは中央線の中野駅、あの町の話かな?」と僕が思い込んで買ったからなんではないかと思われます。
    よーく考えたら、そう誤解するのは、誤解する僕の方がカナリ日本語的にオカシイんです。うっかりでした。

    で、この「センセイの鞄」は、面白かったですね。
    面白いんですけどね。でもちょっとどこかしら、うーん、恥ずかしい部分もあるんですけどね(笑)。
    でも、エンターテイメントとして、オモシロイことは、厳然たる事実だと思います。

    30代らしき、独身OLのツキコさん。ツキコさんの高校時代の国語の先生、60代らしい、松本先生。
    このふたりの、ぎこちなくゆるやかな恋愛小説なんですね。
    まあ、いわゆる歳の差恋愛物語、とでも言いますか。

    文体は、ツキコさんの一人称で貫かれていて、ツキコさんは松本先生のことをひたすらに「センセイ」と呼びます。
    60代のセンセイは、別段ダンディでスポーティな年寄りな訳ではなくて。
    実に堅い、真面目な、退職した元教師。
    ツキコさんも、派手でもなければ、お金持ちでもない。どうやら、そんなにやりがいのある仕事をしている訳でもなさそう。
    たまたま同じ駅、同じ町に住んでいて。同じイッパイ飲み屋の常連だった、という出会い。
    そして、ボソボソしゃべりながら、互いに手酌で飲む。そんな関係なんですね。
    雑に言うと、そこからだんだん、接近して、最後は結ばれて。というお話。
    これがまあ、面白い。

    一人称が上手く合っています。
    センセイが、今は普段、何しているのか。ツキコの仕事内容は。
    いろんな情報を大胆に省いて、ツキコの心情と、センセイとの関係だけでぐりぐり、押して行っちゃう。
    そこのある種の心理サスペンス。面白いですね。

    それから、ふたりのキャラクターですね。
    センセイと呼ばれる男性。60代。
    これがある種のアンチヒーローっていうか。つまり必殺シリーズ中村主水さんよろしく、左程、颯爽としていない。
    いわゆるハリウッドの、ナイスダンディ熟年男、ではないんですね。
    真面目に堅く生きてきて、独特のユーモアがある(らしい)。独特の愛嬌がある(らしい)。地味ながら魅力がある(らしい)。
    というような難しいことが、ツキコの一人称だから、客観的証拠や証明、比較ということも無しに、読める。
    まあ多分、僕も含めて男性読者は、どこかでセンセイという男性キャラクターに自分を重ねて読んでしまうでしょうから(本能として)、
    ヘタに「カッコよくて、出来る、だから好き」というパターンよりも「ぱっとしないけど、独特の味わいがあって、好き」みたいな方が、読み易いんですね(笑)。

    ある年齢以上の男性読者からすれば、「30歳下のオトナの女性にモテル」という、あり得ないけど、フィクションの世界だったらあったらいいなー、という、ヒーローですからね(笑)。
    そういうコトもあって、大変にこの小説は売れた。これまで川上弘美さんの文学的小説なんて絶対に買わなかった男性層が、買ってくれた。褒めまくった。
    …と、その辺のことが、巻末の解説に書かれていて、それが結構、笑えました。
    うーん、大人男性読者たちよ、可愛いものだなあ、と(笑)。
    でも、僕もそっち側なんで、気持ちが分かっちゃう(笑)。

    ツキコさん。まあ、公平に考えて、このキャラクターが、いちばんの魅力なんでしょうね。
    つまりは、都会的に地味に単身であること。でも別段、ナニモノでもない、ただの労働者であること。
    それが、いわゆる昭和日本的な「女性の役割」を適当にバランスよくこなして見せている訳でもなくて。
    一方で、「男性と同じように仕事」とか「輝く成功する女たち」的な消費生活モデルケースみたいな価値観にも全く寄り添っていなくて。
    そういう、神無き、主義なき、家族なき、社会性もなし。ないない尽くしの中で、人間関係と恋愛至上主義というのが、テレビ/メディアの喧伝的な「宗教」だったりする訳なんですが。
    なんだけど、それについてまで、ツキコさんは、持ってない。ここンところは微妙で、「拒否してる」訳じゃないんですけどね。
    でも、結局、この物語は、恋愛相手と結ばれる幸福の話なので、そういう意味では王道展開なんです。
    つまり。

    少なくともデブでもブスでもない、女主人公。
    社会的にも恋愛的に派手ではなくて。むしろ「男運がない」「恋愛下手」みたいな立場(だと、本人が自分のことを評価している)。
    そして、もうあたしは恋愛なんか無しで生きるのかも、とか思っていると、ひょんなことから意外な出会い。
    だんだん惹かれていくんだけど、彼には複雑な過去があって、もどかしくそれについては何故か語らず(まあでも別に隠さないと殺される、みたいな話でないんだけど)。
    終盤でそれがやっと語られ明かされて、色々複雑になるけれど。
    くんずほずれつ、最終的には。ホントーの愛、っていうのを手に入れて終わる。

    と、こう書いちゃうと、身も蓋もない。まあ、王道路線なんです。
    でもそれは別に何にも悪いことでもなくて(まあ、良いことでも無いですが)。
    それでもって面白いかどうか。僕はこの小説は、まあ、面白かったです。

    書いたように、主人公のツキコさんの、なんとも淡々とした、都会的な独居感。それも、居酒屋で独り飲んじゃうみたいな。
    でもだからと言って、それが自分の主義であるとかなんだとかって、肩ひじ張る訳でもなくって、なんともぽつんと、肩から力は抜けている。
    そんな佇まいが創造されていることが、いちばん、ある種、味わいなんだろうな、と思います。21世紀日本(東京)的な、文系30代おんな主人公というか。
    その主人公が、独り、である。ということはつまり、「独りではない状況」に、そこはかとない欺瞞なり偽善なり不満なり、とにかく疲労疲弊を漠然と感じているからなんですね。
     そういう、人間関係とか社会とのかかわりからの、湿ったため息のような、逃避パターン、というのが、なかなか素敵に「バブル崩壊/失われた20年時代」にふさわしいブンガクなんだろうなあ、と思います。
    バブリーな恋愛よりも、おじいさんとの癒しの方が、しっくりくるんだな、みたいな。

    そこでもって、社会的な関わりで言うと、素敵なまでに「非オトナ的な関係」の、センセイ。
    つまり、「高校時代の教師と教え子関係」なんていうのは、音信不通が10年も続けば、アカの他人も同然ですからね。
    なんだけど、そこが味噌なのは、だから読者としてはちょっとホットする。だって、「同級生」とかと同じで、誰でも持てる関係ですからね。身近。

    「M87星雲からやって来た、圧倒的なまでに美男で金髪でスポーツ万能でお金持ちな白人男性と、バッタリ出会って、恋に落ちました」という設定では、もはや感情移入できません、という読者でも、「ふーん、まあそりゃ、私も中高時代の先生、っていうヒトはそりゃいるけどねえ」と思って読める訳です。
     (でも、M87星雲から来た理想の男性との恋愛を描いて、それでオモシロイのであれば、それの方がちょっとワクワクしちゃう小説世界だな、と、書いてて今、思ってしまったけど…)



     …というようなこと以外で言いますと。
     食べ物の描写が多い。居酒屋的な。あと無論、酒の描写が多い。コレがなかなか、旨そうです。その辺が、文章的になんだか生き生きしていて、そんなことへの歓びというか、生きている感じっていうか。そういうのが、確実にセンセイとツキコさんの世界の基調になっていますね。そこンとこ、僕は好きです。居酒屋系の食べ物好きの人にはたまらないでしょうねえ。食べ物、ということで言うと、池波正太郎さんと同レベル、というと褒めすぎですけど。でも、魅力ありました。

     と、まあ、面白かったんですけど。
     なんだけど…まあ、正直反芻して考えてみると。
     「くらもちふさこさんの、漫画で良いのではないだろうか」
     と、思ってしまった…。
     ただ、これ、何も悪く言うつもりは無いんです。面白かったし。後半サクサク、止まらなかったし。
     その上、くらもちふさこさんの(中でも出来の良い方の)漫画は、ハッキリ言って、下手な小説なんかより、よっぽど物語表現として、素敵でスバラシイ、ですからね。

     うーん。まあその辺、所詮、男性読者のために書かれてるとも思わないので、まあ、こちらの勝手な受け止め方ですが(笑)。

     何だか、よーく考えると、ものすごく久々に、純度の高い恋愛小説を読んだ気がします。ちょっと類似本を思い出せない…25年以上前の、「ノルウェイの森」とか…そういうの…。
     ジャンルの定義はとてもムツカシイし、どうでも良いんですけど、「恋愛小説」って難しいんですね。ある年代以上の読者は、かつ男性は?女性も?…きっと、グッとハードル高くなるんでしょうねえ。
     よっぽど、「とりあえず、ヒトが死にますミステリー」とかっていう方が、少なくとも分量的には、マーケット的には、充実している気もしますね…。あ、でも、ハーレクインっていう巨大なマーケットもあるか…。読んだことないけど…。

  • ある人のことを思い出す

    ゆっくりした時間も
    センセイの余裕さも
    月子さんの大人気なさも

    全部、全部、重なる

    好きになる愛おしさ
    年をとる素敵さと切なさ

    この本に優しくふんわり入ってる

    特に、最後の章、
    センセイの鞄は
    ものすごく、ものすごくいい

  • 年齢的には大人の恋なんだろうけど初々しい二人の掛け合いが微笑ましい。
    居酒屋での自然な交流、いい感じです。会話のなかにもユーモアがあって楽しく読み進められます。
    のどかな雰囲気が基調だけど、時々ドキドキします。雰囲気を楽しむ本ですね。
    最後はあぁ、やっぱりこんな結末だよね、としんみり。
    自分もジジイになったとき、こんなかわいい淑女になつかれないかな。

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著者プロフィール

作家。
1958年東京生まれ。1994年「神様」で第1回パスカル短編文学新人賞を受賞しデビュー。この文学賞に応募したパソコン通信仲間に誘われ俳句をつくり始める。句集に『機嫌のいい犬』。小説「蛇を踏む」(芥川賞)『神様』(紫式部文学賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞)『溺レる』(伊藤整文学賞、女流文学賞)『センセイの鞄』(谷崎潤一郎賞)『真鶴』(芸術選奨文部科学大臣賞)『水声』(読売文学賞)『大きな鳥にさらわれないよう』(泉鏡花賞)などのほか著書多数。2019年紫綬褒章を受章。

「2020年 『わたしの好きな季語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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