最後の息子 (文春文庫 よ 19-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167665012

感想・レビュー・書評

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  • 「春、バーニーズで」と違い、こちらの作品は閻魔ちゃんのキャラクターが好きという理由から時折読みたくなる一冊。

    あと、物語や登場人物に繋がりは無いのだが、この作品の“ぼく"と「パレード」に登場する杉本亮介がどうしても重なって見えるんだよなぁ。

    それは、寿司屋の一人息子が誰もいない大学の大教室で"金沢の公務員"の息子をつかまえ、先輩の彼女とワンナイトしてしまい、親への顔向けができすわ、死んでしまった地元の友人に対しての浮かばれない思いなど様々な感情が入り混じって泣いてしまう彼。
    K公園の安全な場所を一晩中歩いて自分を許し、母親に元彼女で浮気相手の女を紹介し、閻魔ちゃんに母親が会いたがってるから来てと電話して、家に戻ってこれまで撮り溜めた映像を見返すぼく。
    この2人が重なって見えるのは私だけかな?

    どちらも一言では言い表せない、入り組んだ複雑な感情を表現してて、この物語の後に続く「春、バーニーズで」もそうした複雑な感情をすごく上手に描いた作品だと思うんだよね。

  • 文章と相性が良いのか読みやすい。
    "苦しみにも二通りあって、それは認めてもらえない者と、認めなければならない者とが、それぞれ一つずつ持っているのだろうと思う"

  • 「最後の息子」「破片」「Water」の三篇。
    先日(と言っても昨年8月)に読んで良かった『春、バーニーズで』がこの本の後日譚だと知り手にしました。
    勿論、吉田さんの方が先達ですが、最近嵌まっている桜木紫乃さんと同じ香りがします。片や長崎、片や釧路。場所は違うけれど、場末の夜の繁華街。背徳感のある愛憎劇。最後の短編「Water」なんて、水泳部で競い合う高校生の爽やかな青春物語なのだけど、そんな話でさえどこか夜の酒場や背徳の香りが漂うのですから。
    「破片」は良く判らなかったけれど、ショートムービーを繋ぎ合わせるようにしてストーリーを紡いで行く(しかも今はやりのLGBTネタ)構成力。そして、こういう世界が苦手な私を読み入らせてしまう文章力。凄いな、吉田さん。これがデビュー作でしたか。


  • Water
    破片
    最後の息子の順に好き

  • 最後の息子
    ビデオフィルムを通して進んでいく話の構成がおもしろかった。

    破片
    長崎弁もネックになり読むペースがなかなかあがらなかった。

    Water
    運動部だった自分と重ね懐かしい気持ちになった。
    バスの運転手が凌雲にかけた言葉が印象に残ってる。
    「十年後に戻りたくなる場所に今居る」

    人生最高の時。
    最高記録を破るために、これからも生きてゆく。

  • 3つの短編集から織り成す物語。


    最後の息子
    破片
    water


    どれもよく分からないけど読み終わった後にほんの少しジーンと心が温かくなる。


    どれも本当に些細で然り気無い愛が感じられる。


    私的にはwaterのバスの運転手の台詞に青春真っ只中だった頃を思い出した。


    戻りたくなる場所(過去)がある事は幸せな事なんだろうなぁ~。


    【坊主、今から十年後にお前が戻りたくなる場所は、きっとこのバスの中ぞ!ようく見回した覚えておけ。坊主たちは今、将来戻りたくなる場所におるとぞ】

  • 「最後の息子」「破片」「Water」の3編収録。
    「最後の息子」はデビュー作にて1997年文学界新人賞受賞。新宿でオカマの「閻魔」ちゃんと同棲して、時々はガールフレンドとも会いながら、気楽なモラトリアムの日々を過ごす「ぼく」の話。

    面白いのだが、何を言いたいのか、どう捉えていいのか難しい。
    長崎の高校水泳部を描いた青春小説「Water」がわかりやすかった。

  • WaterがThe青春小説。
    爽やか

  • 最後の息子・破片・waterの短編3作。軽く読める。
    waterは、長崎出身で水泳をやっていたという吉田修一の体験から生まれたのかなと思う。
    しかし彼の作品にはどうしてこうも男性好きの男の人が登場するのだろうか?

  • 詳細をあまり多く語らないため、終始ふわーんとした印象。それが良いという人もいるのだろうけど自分には合わなかったみたい。全ての話に共通してゲイが出てくる。

    『破片』
    男臭さ、海臭さ、人間臭さがギュッと詰まってる作品。実際にこのような地で暮らしたことがあるのかというくらい、如実に風景を思わせる巧みな描写。

    『Water』
    3作品の中で最もストーリー性があり好みだった。思春期特有の性のこと、家庭のことに思い悩みながらも水泳というスポーツに全力を注ぐ男の子たちの姿を描いているだけなのになぜこんなに胸が熱くなるのだろう。
    いつか4人が大会の日の小競り合いを笑って話ながら酒を飲む姿まで想像できて、やはり思春期に何かに一生懸命打ち込んだ仲間というのはいいものだなあと改めて感じた。

    「坊主!今から10年後にお前が戻りたくなる場所はきっとこのバスの中ぞ!ようく見回して覚えておけ。坊主たちは今、将来戻りたくなる場所におるとぞ」

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著者プロフィール

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。

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