木洩れ日に泳ぐ魚 (文春文庫 お 42-3)

著者 :
  • 文藝春秋
3.22
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本棚登録 : 12552
感想 : 1050
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167729035

作品紹介・あらすじ

舞台は、アパートの一室。別々の道を歩むことが決まった男女が最後の夜を徹し語り合う。初夏の風、木々の匂い、大きな柱時計、そしてあの男の後ろ姿-共有した過去の風景に少しずつ違和感が混じり始める。濃密な心理戦の果て、朝の光とともに訪れる真実とは。不思議な胸騒ぎと解放感が満ちる傑作長編。

感想・レビュー・書評

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  • 図書館本が読み終わり
    借りに行くのも億劫で
    やっと家にあった積本に手を出しました笑


    久々の恩田さん作品です



    舞台はアパートの一室
    男女が交互に語っていきます


    最初はイマイチ話をつかめず
    雲を掴む感じで読むのに苦労しましたが
    全貌がわかると進んでいきました


    ただアパートの一室で話が終わってしまうからか
    展開が少ないというか
    物足りなさを感じてしまいました。


    結局二人の記憶だけが頼りで
    そこから謎を解いていくので
    真実なのか??と思ってしまうところもありました。


    恩田さんの描く空気感は好きなんですが
    最終的にビビッと来るものと
    そうでないものとあります


    どちらかというと解説の鴻上尚史さんの
    映画の宣伝について話されていたのが
    共感しかありませんでした!笑


    さっと読める一冊です(^^)

  • ん~
    自分の読解力が足りなかったかな…
    特に響かなかった…

    文脈とかは綺麗だと思ったが…

    自分は最近、どちらかと言うと
    【ホッコリしてて、生きる事がテーマ】の小説が好きで…
    生きるがテーマの方が、複雑な気がする

    ミステリ、サスペンス系は他人にどんな話だったと聞かれると…【人が殺されて、誰が犯人だって話】と要約してしまう(俺の性格に問題が…)

    ※結局話変わるけど俺が何を言いたいかって言うと…【コンビニで おでんを買うときは買うもの決めてから並んでね!】って事!!

    • 土瓶さん
      私も響かなかったな。

      卵2つ。焼き豆腐。しらたき。ちくわ。
      汁は多め。たれはみそを2つにからし1つでお願いします。
      だいたいいつも...
      私も響かなかったな。

      卵2つ。焼き豆腐。しらたき。ちくわ。
      汁は多め。たれはみそを2つにからし1つでお願いします。
      だいたいいつもこれです( ゚∀゚)アハハ
      2023/02/08
    • あゆみりんさん
      はじめまして、こんばんは。
      おでんといったら、大根です。
      大根2個、たまご、ちくわ、ウインナー巻き。
      からし、ひとつ。
      5個がちょうどよきっ...
      はじめまして、こんばんは。
      おでんといったら、大根です。
      大根2個、たまご、ちくわ、ウインナー巻き。
      からし、ひとつ。
      5個がちょうどよきっ。
      2023/02/09
    • toto神さん
      全部 レジ前で たのみながらメニュー決めてる人いると
      流石に【長いな…】って思いますよね(笑)
      全部 レジ前で たのみながらメニュー決めてる人いると
      流石に【長いな…】って思いますよね(笑)
      2023/02/10
  • 引っ越し作業が終わったカップルの、
    別れ際の最後の夜。たった一夜の2人だけの会話劇。
    男は「彼女が彼を殺した」と疑っている。
    女は「彼が彼を殺した」と疑っている。
    これはミステリなのか?
    交互に語りの視点が変わる。

    GWに近所を散歩していたら
    普通の民家の前の椅子の上に「無人古書店」があった。
    マスキングテープに値段を書いて貼り付けている。
    2冊買った(1冊100円でした)。
    勇気があれば、私もやりたい。
    因みに買ったのは、恩田睦と有川浩の文庫本。
    有川浩は既にアップした。

    カップル2人。何(いず)れかが、犯人か?
    と思いきや
    お話は二転三転してゆく
    語りが替わる毎に
    新しい視点が出現する。
    もはや、2人の何れも犯人とは思えない。

    恩田睦を選んだのに理由はない(と思う)。
    恩田睦の作品はこれで三作目。
    25年前に「六番目の小夜子」
    昨年に「蜜蜂と雷鳴」
    そうして今回ミステリ仕立ての会話劇。
    毎回テーマ・作風を変えるのが
    彼女の作風なのか

    ミステリから
    ドロドロの恋愛劇へ
    やがて家族小説へ
    それから‥‥

    結局恩田睦は、拘り系、エンタメ系の根暗女史と見た。
    何故なら、私がそうだから。
    「木漏れ日に泳ぐ魚」の景色をどう見るか
    が鍵だな

    ミステリ部分は会話劇なので
    大きな物的証拠は出てこない
    推測で成り立っているので
    不満も聞こえる
    私は有力な状況証拠が
    本人たちに自覚がないのを根拠として
    案外彼女の推理、真実に近いと思う

    それにしても、
    これをどうしても恋愛劇と見ることの出来ない
    ミステリとしてでしか見れない
    私は、つまらん男だな、と思う

    • kuma0504さん
      さてさてさん、おはようございます。
      今朝はちょっと時間があるのでご挨拶させてください。
      私も、最近よく出会う通勤電車友という感じです。
      読書...
      さてさてさん、おはようございます。
      今朝はちょっと時間があるのでご挨拶させてください。
      私も、最近よく出会う通勤電車友という感じです。
      読書量と感想文を飽きずに書く力に感心しています(褒めてます)。
      お互い今日も、暑いかもしれませんが、頑張りましょう。
      2020/05/27
    • さてさてさん
      kuma0504さん、おはようございます。
      お褒めに預かりありがとうございました!

      この作品、夜の濃密さ故に朝がとても相応しい作品だと思い...
      kuma0504さん、おはようございます。
      お褒めに預かりありがとうございました!

      この作品、夜の濃密さ故に朝がとても相応しい作品だと思います。

      今後ともよろしくお願いします!
      2020/05/28
    • kuma0504さん
      さてさてさん、おはようございます。
      私も、締め切り守れずに何度も徹夜したことがありますが、朝が来ると、
      なんかすっきりして、
      なんであんなに...
      さてさてさん、おはようございます。
      私も、締め切り守れずに何度も徹夜したことがありますが、朝が来ると、
      なんかすっきりして、
      なんであんなに悩んでいたんだろうと思ったことが何度もあります(笑)
      これからもよろしくお願いします。
      2020/05/28
  • 「夜のピクニック」は24時間、数名の登場人物に光を当てて80kmを移動するお話。一方でこちらはさらに短い12時間ほどの間、男女二人が引っ越し前の何もない部屋で過ごした時間を描いたものでした。そのため「夜のピクニック」以上に、非常に密度が濃く、また、細かい情景描写によって蒸しっとして煙草の煙で淀んだ部屋の様子までもヒシヒシと伝わってくることもあって読んでいるこちらまでとても息苦しくなりました。

    作中では、登場人物の男女二人がこれまでの事ごとを、ああだ、こうだと語り続けます。章ごとに一人称が入れ替わっていきますが、それぞれの心の動きの細かい描写によって二人の心の内がくどいほどに伝わってきました。ただならぬショッキングな前提から始まりますが、二人だけの濃厚な会話が延々と続き、色々なことがどんどんわかってきます。そして、ふとしたことからそれまで全く埋もれていた記憶が次々に呼び出されることとなり、前夜にそれぞれが見ていた景色が全く別物に変わって朝を迎えることになりました。

    破壊力の大きな事実を何故か上回る二人の勝手なああだ、こうだによる推測・憶測に基づく何ら根拠のない真実がもたらす想定外のある意味残酷な結末。一方で、二人以外の周囲の人や景色は何も変わる事なく、太陽もいつも通り顔を出す。変わったのはあくまで彼ら二人と、彼らに付き合って一晩を共にした我々読者の心持ちだけ。これぞ恩田ワールドの真骨頂という作品だったように思いました。

  • これも次男の本棚から摘んできた1冊。

    1年前、トレッキングにガイドを付けて歩いた二人。
    その日以来互いに懐疑心を抱きながら口封じされるのではと恐怖心も芽生えながら最後の晩餐の日を迎える。あ、同棲してたカップルの別れの夜の話かって読んでたのですが、気になったのは山登りのほうでした。
    S山地ってどこ、東北東って、日本最大級のブナ林でほぼ確定、白神山地だww 
    私にとっての謎解きは終わりました。で、どこ登ったんだろう?200名山の白神岳に違いない。もう妄想が止まらない。山頂には長谷川恒男が地元の子供たちと登山記念に建てた標柱があるし、なんといってもブナの原生林。保水力のあるブナの木は山を守っているところが大好きで沢山の動物が暮らせる森を作ってる。もし、木に生まれ変わるならブナがいいって思ってるくらい。大きなブナの木みつけると抱きしめてパワーをもらってます。

    で、二人の心理戦はマインスイーパーしてるみたいでした。同棲してるカップルだと思ってたのに、ルームシェア? 複雑な過去が見え隠れ、ユーミンの真珠のピアスの話題。
    作者は、きっとこの曲からインスピレーション得て書いたに違いない。
    歌詞に倣ってピアスを彼のカバンに忍ばせる彼女。
    彼女が去ったあと、いつか彼が見つけたとき何を思いだすのだろう?きっと見つけなかったことにするんじゃないかな。
    結末を暗示させるかのようなピアスの行方。
    読了して脳内にエンド曲が流れる勿論ユーミン
    ♪ブローケンハート 最後の夜明け〜

    どこまで気づいて旅行の計画したのだろう。あの男に会いに行くってちょっとした好奇心だったのにふたりが求めていたものは、あくまでもドラマの予感や可能性であって、ドラマそのものではなかった訳だけど。偶然にもガイドがあの男にあたるとは、できの悪そうなドラマ展開に目をパチクリ。
    S山地の謎は解けたとゆうのに火曜サスペンス劇場の展開。
    事故死で片付いてるのに、これ以上関わりたくないけど、だってコミュ症で陰キャだしって身構えていました。
    記憶が甦ってくるとか凄い、すり合わせていくうちに答えはすべて彼女がだしてる。彼は狡くて保身的で何も答えない。
    人の不幸は蜜の味って感覚で覗きみてると彼女サイコパスかって気がしてひけるのだけど、ガイドの死に至る大胆な仮説に満足げ、こんなときドーパミンとかでてる気がするのです。
    あと、自然を見て感じる幸福感はセロトニン。癒されるって感じる感覚。ついでに、人のつながりに幸福感を感じるのがオキシトシン。この3つの幸せホルモンで脳を包んでくれる文章は最高にハッピーわけなのですが・・

    恩田陸さんの文章、ときおりハッとさせられるような流麗な表現に惑わされちゃうのだけど『木漏れ日に泳ぐ魚』なんてタイトルにもビビッてくるけどなんか切ない。肩から力が抜けていくような脱力感。
    でも納得したんだから後悔はないと思う。
    『夜のハイキング』では異母兄弟だったけど本作では双子からのまさかの展開。危ない関係じゃないってわかったら冷めちゃってるし。詰んでしまいました。
    同棲を許した彼の母親のほうは二人の関係について知ってたはずなんだけど、成行き任せだったのかな。

  • こちらも再読。
    恩田陸さんの作品はなんだか不穏な空気や不思議な空気が漂うのが好き。

    結末は知っていても、ドキッとしたり言い回しにおおっとなったりできる作品。なんだか短編を膨らませて書いてくださった感じの読みやすい一冊の1
    つでした。

  • 別離を決意した男と女。
    共に暮らしたアパートを、翌朝にはそれぞれ出ていく。
    女は女友達の家へ。
    男は新しい彼女が待つ家へ。
    引っ越し作業も終わり、共に過ごす最後の一夜の物語。
    猜疑心が渦巻く中、男と女の駆け引きが繰り広げられる。
    "あの男"を手に掛けたのはこの人ではないのか、と。

    恩田陸さんだから、単純な男女の別離にはならないだろう、とは思っていたけれど、案の定見事に複雑な絡まり方。
    話の展開も二転三転四転五転…。
    このままこの二人はどうなることやら、と気をもんだ。
    どちらも一歩も引こうとしないから、読んでいて息苦しいったらない。
    あーあ、男と女って面倒くさい。

    夜はとかく感傷的になりやすい、と言う。
    別離する予定の相手とは真夜中に話し合わない方が賢明だ。
    絶望の夜が明ければ、誰にも等しく朝が来る。
    木漏れ日がこんなにも眩しく思えた朝は今までなかったことだろう。

  • 木漏れ日に泳ぐ魚 恩田陸さん

    1.恩田陸さん
    蜜蜂と遠雷の恩田陸さん。
    そのイメージで読み進めようとしたら、
    全く違う世界に入り込んでしまいました。。。
    ------------
    2.テンポそしてテーマ。
    蜜蜂と遠雷は、最初から最後までテンポがある世界でした。一方で、木漏れ日に泳ぐ魚は、静かすぎる世界です。
    ------------
    続いて、小説のテーマです。蜜蜂と遠雷は、最初からタネ明かしがありました。
    読者として、ある程度の想像をめぐらしながら、進むことができました。
    一方で、この木漏れ日に泳ぐ魚の小説のテーマは、相当のページまで進んでようやく分かるという具合です。
    難解なんです、、、
    ------------
    3.読み終えて
    「木漏れ日に泳ぐ魚」。
    衝撃な物語でした。
    ①最小人数の登場人物。
    ②最短時間の時間設定。

    この二つの要素で、物語が組みあげられていたことが衝撃でした。

    さらに、起承転結です。箇条書きしてみました。
    ここまで、読者の想定の外側に「転」と「結」をもっていく小説って、、、

    希少価値の高い小説、物語でした。

    #恩田 陸さん ありがとうございました。

  • 面白かった。
    設定の所々にちょっと無理があるよなぁと思ったし、結局は事件の真相も主人公の想像に過ぎない所など不満点もあるけれど、ぐいぐい読まされて一気読みでした。

  • 謎が謎を呼び、最後まで読まねば悶々とした気持ちが晴れぬと読み進めた。
    最初の方、真珠のピアスのくだりでは、別れの前夜歌詞の解釈を語り合うなんて、女性側なら(心で思うなら)ともかく、男が・・と。なんか合わないと読むのを挫折しそうになった(一般的な男女の別れ話だと思った)。けれどその先は話が一転する。
    一枚の写真、父の死にまつわる憶測、千明の出生の秘密と、一夜語り続けるわけですが、それらは一部分妄想劇ではないかと思うところもあった。二人が父親をあやめたいと思う理由がそこまであったのか(あるのか)。
    千明と千浩の恋愛感情もよくわからない。「燃え上がることを禁止された恋愛感情はいつまでもくすぶり続ける」その部分はわかる気もするが、この場合、障害が解けたら喜びになるのではないか・・。
    ストーリー的には入り込めない部分もあったが、千明の心情(訴え感)が強く響いてきた。そこが一番心に残った。ユーミンは好きでよく聞きますが、もう片方のピアスはどうしたか、など考えたこともなかった。

  • 共に暮らした部屋の最後の一夜を過ごす男女の会話で描かれた心理劇に圧倒された。
    疑心暗鬼、溢れる感情、弱さも狡さも卑怯さも描かれている。目まぐるしく変化する心。
    交互に語られる男と女の感情の違いがおもしろい。ふたりの感情が夏の夜のようにねっとりまとわりつく。
    次々明らかにされていく過去。
    え?えー?えーー?が続くが、最後は夏の夜明けの爽やかさで終わる。
    すごいです!

  • 自分達は離れて育った二卵性双生児だと信じていた男女、千浩と千明。別々に暮らすことを決めた二人が、アパートでの最後の夜に、語り明かす様子を描いた話。

    子どもの頃の微かな記憶、1年前に二人で行った山歩きで、ガイドをお願いした相手は千浩の本当の父親。ところが、山歩きの休憩中に父親は事故死してしまう。
    千浩と千明、それぞれが密かに相手が殺したのではないかと思い、真実を知ろうとする。
    話している途中、子どもの頃の記憶が急によみがえり、そこからまた推測も踏まえて、自分達の過去を探っていく。
    なんとも不思議なストーリー展開で、どんどん読み進んだが、モヤモヤが残る終わり方だった。

  • 荷物を引き払った後のがらんとした部屋で、最後の夜を迎えている男と女。訳ありの二人の間にはある事件が影を落としていることが明らかになっていく。

    この小説では男(ヒロ)と女(アキ)の心情が交互に描かれる。おもしろいのは、どこをクローズアップするのかによっていろいろな読み方ができることだ。男と女の別れに注目すれば恋愛小説として読めるし、二人に起こった事件に注目すればミステリとしても読める。
    私はヒロとアキ、異なる視点で同じシチュエーションが語られるという点に注目し、「男女の考え方の違い」について興味深く読んだ。

    ネタバレにならないよう内容に触れずに感想を書くのは難しい小説である。こういう小説は、性別年齢がバラバラの人たちで集まって読書会をすると自分では思いもかけない視点で読む人もいて面白いだろうなあと思う。

  • 舞台はアパートの一室。別々の道を歩むことを決めた男女が、引っ越し前夜、最後の夜を徹して語り合う。
    男女が関わるひとつの死亡事故、そして複雑な過去。
    濃密な心理戦の果て、朝の光とともに訪れる真実とは。

    たった一晩の物語なのに、近い過去から遠い過去まで行ったり来たりして、しかも展開が二転三転して、濃いミステリ小説だった。
    時々頭のなかで相関図を整理しながら読まないとややこしくなるかも知れない。
    ミステリの感想はうっかりネタバレしたらまずいからあんまり詳しく書かないけど。笑

    恩田陸さんのミステリってたまに伏線を回収しないまま終わることがあるけれど、この小説はすっきり終わる。

    禁じられるから強く求めてしまう、という心理って実際ある、と頷いた。駄目と言われるとどうして欲しくなるんだろう。
    それが“駄目”じゃなくなったら興味を失う、という人間のおかしな心理。
    その関係にこだわるのは、愛情なのか執着なのか。目が開けてそれが分かったあと、果たしてどうするのか。

    お互いを疑いながらの関係は、どれだけ騙し騙し過ごしたとしても長くは続けられない、苦しすぎて。
    そんなことを、改めて思った。

  • 2人の男女が1年前の父の死をきっかけに、過去の記憶を遡って話をしているだけなのに、なぜかちゃんとミステリーになってて、面白かった。
    次々に明らかになっていく過去に驚きつつも、根拠がないから想像なのがちょっと残念。
    でも女性の方の心理の変化がリアルだった。

  • 今夜を最後に、二人で暮らしていた部屋を出て、別れようとしている男女がすごす、最後の夜。
    お互いの何もかもを知っていたはずの二人が、口に出せずにいた、目の前の相手が殺人を犯したのではないかという大きな疑惑。
    今夜まで積み重ねてきた日々の、かすかな違和感の数々が交互に語られ、目を逸らしてきた真実があらわになってゆく。


    読み終えてみればそれだけの話なのに、ひとつひとつのエピソードに、男と女の恋愛におけるずるさ、人間心理の無意識の駆け引き、子供と大人の視線が複雑に練り込まれて、ねっとりと濃かった。

  • 敢えてミステリーではないと書いておきます。
    あるアパートの一室を舞台に、翌朝には別々の道を進むことが決まっている男女の最後の夜の話。
    二人にはある気掛かりがあって、それだけは最後に明らかにしておきたいらしい。
    それが何かと言うと、登山中に起きた山岳ガイドの死。互いに相手がガイドを殺したのではないかと疑っている。
    この心理戦が繰り広げられる中で、様々な新事実が明らかになる…。

    と思いきや、明らかになるのは『事実』ではない。互いの曖昧な記憶を繋ぎ合わせて行き着いた『結論』でしかない。
    しかもその、『事実』とも『真実』ともわからない『結論』を元に新たな一歩を踏み出すという、置いてきぼり感。

    私は恩田作品を少ししか読んでいないので、もしかしたら恩田作品を読み込んだ方々からすれば、『これが恩田作品じゃないか』『だから恩田作品は面白いのじゃないか』ということかも知れない。そう言われればそれまでなのだけど。

    しかしこの『いったい誰から聞いたのか、どこから聞いたのか、今となってはあやふや』な情報から端を発したこの事件は、その元々の設定すら『事実』かどうか分からないのに、事件の真相に行き着こうとするのは無理があるし、ましてや二人が苦しみ抜いた恋愛感情というものも、そもそも『真実』なのか怪しい。

    正直男女二人ともキャラクターが好きになれなかったので二人がどの道を選ぼうが途中からどうでも良くなったのだが、とりあえず結末は知りたいと思って読み進めた。

    身を捩るほどに苦しみつつ互いに執着していたその拠り所が虚構だった(或いはだったかもしれない)という『結論』に行き着いただけでこれほどアッサリと瓦解するというその瞬間はなかなか興味深かった。
    その『結論』は『事実』でなくとも良いのだ。自分がそう気付いただけで、百年の恋も醒める瞬間が訪れる。

    • chuckさん
      レビュー共感しました
      恩田陸は5, 6冊読みましたが、この本は正直微妙でした…
      でも何故か書店で推されてるんですよね…
      あくまで私感で...
      レビュー共感しました
      恩田陸は5, 6冊読みましたが、この本は正直微妙でした…
      でも何故か書店で推されてるんですよね…
      あくまで私感ですが「光の帝国」「蜂蜜と遠雷」「ドミノ」あたりが幅広い層が楽しめる作品かなと思います〜
      2019/07/13
    • fuku ※たまにレビューします さん
      コメントありがとうございます。
      「ドミノ」はだいぶ前に読みました。面白かったのを覚えてます。
      オススメ作品、メモさせていただきます。
      コメントありがとうございます。
      「ドミノ」はだいぶ前に読みました。面白かったのを覚えてます。
      オススメ作品、メモさせていただきます。
      2019/07/13
  • 翌朝お別れする男女2人のお話。

    朝までに殺人を告白させる⁉︎
    あの男とは⁉︎
    え?2人は背徳な...


    お二人の想像話が大半で、真実はよく分かりません。
    あたしには刺さりませんでした。

  • 恩田さんの本はいつも緊張感をもって挑まないといけない。今回、男性目線で物語を追っていったら、恩田さんに思いっきり張り手され、土俵際まで押され、最後には力いっぱいにはたき込みで完敗。序盤から不穏な男女が描かれていて、どんどん引き込まれる。その後、許されない兄弟愛に変化し、その両者のピンと張った糸のような心の動きが痛々しい。最後には両者が従兄妹同士だったと分かり、女性が一気に冷めていく。女性が燃え上がるような、激しく相手を求め続ける「恋」を表現した、一方で女性としての強さも強烈なメッセージとして伝わった。

  •  アパートの一室で最後の一晩を過ごす二人の男女の物語。
     話していく中で、ある男の死の真相と二人の出生の秘密が明かされていった。男性のヒロはどこか臆病で感情に振り回されているが、女性のアキは何でも冷静に分析し真実や自分の感情に向き合っているのが対比になっており、構図が分かりやすかった。
     お互いに疑心暗鬼になり感情をそのままぶつけ傷付け合ったりしたが、最後にはダルい疲れからお互いに達観した心情になったのが印象的だった。また、それが外の様子と連動しており、夜明け前が一番暗かったのに日が昇り簡単な同じ感想を抱くことで雰囲気が一気に和らいだところが好きだった。最終的に、全てを記念写真のように笑って思い出にするヒロと、未練をきっぱりと捨てることができたアキの着地点にも納得感があった。
     「木漏れ日を泳ぐ魚」とは人とは、木漏れ日のように相手のことは穴開きでしか知りえず、全部は見たり知ったりすることができない中、感情という魚が泳いでいるのが微かに見ることしかできないということを現しているのかなと思った。
     ただ、二人の出生の秘密を現す夢の話や最後に登場した写真立ては、それまで特にそういう要素はなかったのに唐突に出てきており、ご都合主義を少し感じてしまったのが残念だった。

  • 記録

  • 登場人物2人の一晩の物語。
    静かに流れる時間。
    人間の奥深いところまで丁寧に描かれている。
    恩田氏らしい物語でした。

  • 男女2人のたった一晩のお話。
    すべてアパートの一室での二人の会話と回想、想像…で物語が進行していきます。
    短い章で区切られていて、一人称が交互になっているので、
    同じ場面をそれぞれの立場から語るという不思議な感じ。
    なので、お芝居を見ているような感じなのかな。
    独特の世界に吸い込まれました。

    内容は、冒頭にあるように、
    一枚の写真の物語であり二人の別離の物語であり、ある男の死をめぐる謎の物語でもあります。
    お互いの気持ちを探り合いながら、
    男の死の謎を解くための回想・推測をしながら、
    それに伴い二人の関係性も明らかになっていくというお話。
    二転三転する展開に翻弄されつつ(それも推測で事実かどうかは最後までわからないけど)、最後にたどり着いた二人の朝は、
    暗いアパートから外に出て、木漏れ日の光を浴びるイメージと重なって、希望が見えました。
    タイトルの付け方が素敵だな♪

  • 構成としては好き。

    ある一夜を巡る、双子の男女。
    でも、既に一緒に住んでいた部屋は片付けられていて、二人はお互いに「相手が殺人を犯した」ということを切り出そうとしている。
    そのことに怖さもあるのだけど、それが本当であれば、二人を繋ぎ続ける枷にもなるという、かなり危険な悦びを匂わせる。

    面白いなあと思うのは、交互の視点で話は展開しているはずなのに、少しずつ場の重力がアキ側にシフトしていく所だ。
    一方でヒロは、どんどん真実からもアキからも置いていかれてしまう。
    ま、アキから逃げようとしながら、アキの気持ちの端っこも掴んでおきたい、なんて考えているのだから、全然構わないけどね。

    結局のところ、二人の父親がどういう末路を辿ったのかは、アキの推測でしかない。
    それを言うなら、その夜の思考は全て、裏付けがきちんと為されたものでもない。
    けれど、思考し、整理されることで、アキに物語の重みがかかる反面、彼女は夜から軽くなってゆく。
    それでいいんじゃないかな、と素直に思わされる。

  • 奇妙な題名の通りの作品。
    直接登場するのは兄と妹という双子の男女二人だけで、その二人の視点が章ごとに入れ替わる、たった一晩の出来事を綴ったユニークな傑作長編。
    この二人の関係も、何やら裏がありそうで、さらに殺人か事故かという事件も絡むようで、題名と相俟ってミステリアスに物語は進み、読者もその謎に引きずられながら頁を捲ってしまう。

  • 1組の男女が別居する前日に語り合いながら過去の出来事を清算?思考?していく話。

    さすが恩田さん。
    この本の好きな文章。(省略あり)

    「記念品は自分の存在をアピールしてそれぞれの世界にお互いの痕跡を残し少しずつその領域を広げていく。そうして、お互いが特別な存在になる。」

  • 家族、恋愛、ミステリー

    女性と男性の数時間の会話や心情が綴られている。
    章毎に女性側、男性側と変わり
    ある事件に対する心理戦が繰り広げられる。
    続きが気になる面白い作品。

    終わり方があっさりで、
    今までフィクションは清々しさや、優しさ、愛情などを求めていたが、こういう終わり方も良いのじゃないかと思わされた。
    人間のよくある冷たい部分がおもしろい。

  • 引っ越し前夜アパートの一室で
    カップルとの間で繰り広げられる事件の真相。
    殺したのは、どちらか。

    後半に掛けてゾクゾクさせられるのは、
    やはり、ミステリーの醍醐味じゃないでしょうか。
    禁断や禁止されるとその魔力に引き込まれて
    手が出てしまう。恋愛要素もあり、面白かった。
    ただ全体的(特に後半)に展開が緩やかだったかなと思います。

  • 静かに、じりじりと真相が明らかに。
    「引っ越し前夜のアパートの一室」という限られたシーンの中で、事件の真相が主人公の男女それぞれの視点で語られています。
    舞台や映画の方が、この作品の持ち味であるなんともいえない不穏な空気感が伝わるのかなぁ、とも思ったり。

    • しんべいさん
      映像化されたら見てみたい!
      映像化されたら見てみたい!
      2019/03/24
    • しんべいさん
      高校生のころ恩田陸けっこう読んでました。
      高校生のころ恩田陸けっこう読んでました。
      2019/03/24
  • 恩田陸さんの本はもれなく面白い!と言うのが自己評価なのだけど…こちらはまぁ(^^;
    一年一緒に暮らした2人。
    明日になれば別れる男女の一夜の物語。
    愛ってなんだ。
    幾つもの出会いのなかで、何故この人なのだろう。
    数えきれない人々の中において、お互いを選んでしまう奇跡。
    なのに愛してはいけない人をわざわざ選択してしまう不思議。人はそれを運命とよぶのだな。
    人も死ぬミステリーだけど、なんら解決せずに終わるけど(笑)結局、愛ってなんだ!って話し。

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著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

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