- Amazon.co.jp ・本 (345ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167745011
感想・レビュー・書評
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一週間の調査の後、対象者の死の可否を決める死神のお話。
短編集形式の全6篇。
面白かったです!
基本的に人間に興味は無く、何故か音楽(ここではミュージック)を愛する死神。
人間界では千葉と名乗り大体若い青年として現れる。
読んでいて思ったことは、「興味がないこと」、「執着がないこと」は最強だと言うこと。
天然なKYはどこまでも無敵なのである。
千葉は一週間対象者を調査するだけなので、人間のことはどうでもいい。
しかしながら疑問に思ったこと(人間界の当たり前や一般常識、人間の心情の構造など)は何でも訊いてくるので、その掛け合いが伊坂幸太郎独特のユーモアに溢れた感じで、クスッと笑いを誘うと同時に人間の愚かさを浮き彫りにする。
【人間というのはどうしてこうもつまらないことに差異を見出して、優越感を覚えようとするのだ。こんな幼い頃からそうなのだから救いようがない。】
【人間というのは、実に疑り深い。自分だけ馬鹿を見ることを非常に恐れていて、そのくせ騙されやすく、ほとほと救いようがない、と私はいつも思う】
の文にも良く表れている。
伊坂さんの作品はまだ少ししか読んだことがないので、これからもっと読んでいけたらと思いました詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
音楽、青空、川、渋滞。日常の当たり前の風景の持つ価値を再考せねばと思い至らせてくれる作品。人と死神の軽快な会話、十人十色の人生もといただの時間、死を扱いながらその印象は柔らかく暖かい。視界は明るく、心は軽くなる。
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映画や舞台、ラジオドラマなど多くメディア化されたということで購入。
人間の死をテーマにした話ではあるが、最後の方では、なぜか温かい気持ちになりました。特に最終章でのエピソードでは、今までのことが別の話ではありますが、少しずつ繋がっていて、面白かったです。
そもそも主人公が死神というところが変化球でした。伊坂作品は、変化球のものが多くあり、そのせいか物語を引き立たせてくれるので、好きな作家の一人です。
読みやすさや初めて伊坂作品を読む方には、もってこいかと思います。 -
今年の読み納めは伊坂作品になった。偶然?いや必然かな。今まで食わず嫌いで手に取らなかったが、数冊読了し、面白さに嵌まった。本作は「恋愛で死神」と「死神対老女」のつながりだけでなく、短編ならではの刈り取れる伏線が心地良く、氏ならではの価値観や倫理観のパンチが飛んでくる。受け止めるのも避けるのも打ち返すのも自分次第...。
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<2013年6月11日 再読>
珍しく旦那が小説を借りてきていたので拝借した。
こないだ「旅猫リポート」を薦めたらとてもよかったらしく、たまには小説もいいなと思ったらしい。
以前、この本を読んだ後に映画化されて、金城武と小西真奈美の印象はあったんだけど、真ん中4編はほとんど覚えてなかった。
千葉がおかしくも愛らしい。死神なのに。
「ミュージック」を偏愛しているくせに、なかなか博愛的な面を持っていたり。
噛み合わない会話も、教訓めいた言い回しも、なんだかキュート。
連作短編の話がさりげなくつながってたり、仙台の落書き男は「重力ピエロ」だよねーってところとか、伊坂さんの作品は細かいところがおもしろいよなぁと思う。 -
伊坂幸太郎の短編集。
6つの短編すべてで死神の千葉がストーリーテラーとして登場し、そこで出会うさまざまな人間たちと物語を展開していく。
千葉を含む死神は、上からの指示に従って「死」の対象となった人間を7日間調査し、その候補が「可」か「見送り」かを決めている。勿論、「可」の場合は候補者は突発的な事故/事件で死ぬ。
死神たちは基本的に仕事にやる気はなくて、ほとんどの候補者は「可」となる。作中の描写を見る限り、そもそも「見送り」とする明確な基準すらないように見える。
また死神の世界にも様々な「部署」があり、これが非常に縦割りで硬直的である。これは官僚や大企業のセクショナリズムを感じさせる。
私たち人間からすれば、自分の「死」がこんなにも適当に決められているというのは恐ろしいことだが、彼らは「神」なのだからどうしようもない。
作中、千葉は幾度となく「人間は自分が死ぬことを棚上げしている」と言う。
確かに、私たちは死を免れ得ない絶対的なものとしながらも、普段はそれを意識することなく生きている。今の生活が続くことを前提に思考して行動している。
死神たちからすればそれが可笑しなことに見えるのだろう。数十年後には全員が死んでいるにも関わらず、些細な確執や利益に拘っているのが滑稽に映るのだ。
本書の解説で沼野氏が「異化効果」を紹介している。これは、「非日常的な視点からものを見ることによって、普通のものを見慣れない、奇妙なものにしてしまうという手法」とのことだが、本書における千葉の視点は正しくこの異化効果をもたらしている。
千葉というある種の異物の目線を通すことで、ふだん我々が意識していない「死」、その対照としての「生」「人生」というものを再考することができる。
本作を読んでそんなことを感じた。
10年以上前に本作を読んだ時はそんなことを思わなかったが、今回こうした思いになったのは自分の思考が深まったからなのか、死に近づいたからなのか。
とはいえ、本書はそんなに教訓めかしいものではない。
個性豊かな魅力あるキャラクターたちがシニカルとユーモアに富んだ世界を繰り広げるいつもの伊坂ワールドである。
特に、千葉の冷静な人間たちへの突っ込みが面白い。
「『渋滞』というものが、『ミュージック』とは対極の、人間の発明した最も不要で、醜いものだと確信している。なぜこれをなくさないのか、不思議でならない。」
これを味わうことができるだけでも、十分に本書は魅力的だと思う。 -
音楽だいっっっっっっすきの私が、音楽好きな死神の小説と聞いてすぐに買った本。
期待値が高すぎたせいか、ドンピシャ!!て感じじゃなかったんだけど、素っ気ない死神なのに暖かいお話ばかりで面白かった(˶' ᵕ ' ˶) -
短編が六つ。少しだけ繋がりがあったり。
死神の設定が面白くて、「死神」という言葉から感じる怖さや、調査して死を判定する物語なのに、不思議と暗い感じは全く無かった。
死神は人間のことはあまり知らないのだけど、妙に人間くさかったりもして。人間界で最も忌み嫌うものが「渋滞」で、逆に好きなのが「ミュージック」。なんか可愛い。
・人が生きているうちの大半は、人生じゃなくて、ただの時間、だ
・幸せか不幸かなんてね、死ぬまで分からないんだってさ(中略)一喜一憂してても仕方がない。棺桶の釘を打たれるまで、何が起こるかなんて分からないよ