まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫 み 36-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (351ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167761011

感想・レビュー・書評

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  • 最初に読んだ時と私の状況がだいぶ変わってることもあって、新しい気持ちで読み直した。
    三浦しをんさんの作品って、おもしろくて軽く読める。初読だと筋書きを追うことに夢中になってしまうけれど、ものすごくグサッと刺さる言葉が多くあるから、再読が必要かも。
    子供が親を選びなおすことはできないけれど、与えられなかったものを望んだ形でだれかに与えることはできる。
    ポップなノリだけどずっしり重い。ワイルドシティまほろは町田市なのかもしれないけど、全国どこにでもありそうなシティなのがいい。

  • 多田を取り巻くさまざまな人間模様が描かれており、人それぞれ幸せのかたちは違うことをこの本を通して気づけた。

    この本に登場する人物たちは、幻の町「まほろ市」にいる若干おかしな人たちなだけなのに、私の住む街にもそんな人たちはいるのだと錯覚してしまう。

    著者が書く他の作品にも触れてみたいと率直に感じた。

    - 「だれかに必要とされるってことは、だれかの希望になるってことだ」P.105

    - 「美しい肺を煙で汚したまえ、少年よ。それが生きるということだ」P.132

    - 「愛情というのは与えるものではなく、愛したいと感じる気持ちを、相手からもらうこと」P.196

    - 「不幸だけど満足ってことはあっても、後悔しながら幸福だということはないと思う」P.288

  • 「不幸だけど満足ってことはあっても、後悔しながら幸福だということはないと思う。」が心に残ってる言葉。ゆるーい感じに見えて内容は過激というか、人の良い部分も悪い部分もそのまま見える感じ。読んで良かった!ドラマと映画も見たい

  • 本は基本的に一度読み手放すのですが、お気に入りとして保管し2回以上読んだ作品です。

  • 町田が舞台ということで読みました。
    土地勘のある人は様々なシーンで情景が浮かんでくると思います。

  • 楽しい。

  • 何かを喪失し、また何かが欠落している人間たちの物語。
    その心の欠けた部分や過去の苦しみを多くの者は直視しようとせず、かと言って捨て切ることもできぬまま日々暮らして行く。そんな心の「欠け」を主人公の多田が、行天が、浮き彫りにしてゆく。

    この物語の素晴らしいところは浮き彫りになった心の「欠け」に対し、主人公が救済になり切れていないところにあると思う。

    親からの愛情を感じられない小学生に対して自らが望む形の愛を両親から受けることは今後も無いだろうと言うシーンがある。ここからは何でも屋を営む多田であっても人々の心まで動かすことは出来ない、という皮肉めいたメッセージを感じる。

    そして自らが抱える心の闇や行天を傷つけた忌まわしい過去に対しても、何でも屋・多田はどこまでも無力だ。

    それでも、多田は生きていく。
    生まれ育ったまほろ市で。
    毎日依頼をこなしながら。

  • 「探偵bar」が公開になり、即続編が決まったとき、某評論家の方が、
    「続編にするならこっち(=まほろ)のほうがいい」みたいなことが書いてあって、確かに龍平も瑛太も間違いないし(「アヒルと鴨の~」ではたいへんに驚いたのが記憶に新しい」、そういえば三浦しをんて読んだことないし・・・くらいに思っていたら、この度2012年本屋大賞を受賞されたり、もっというと昨年大いに楽しませてもらった「モテキ」監督大根さんが来年これをドラマにするという。これはもう今読まなくていつ読む?!みたいなタイミングで、とうとう初三浦しをんである。いまさら・・・と思われるのかもしれないが、わたしには今来ました。
    実のところつい最近まで三崎亜記と勘違いしていた。
    このタイミングでさらに知って驚いたのだが、三崎亜記て男性なんだ!!
    余談だが三崎亜記は通り過ぎてるな。となり町戦争。

    ともあれ昨晩読了したこの作品。
    折りしも本屋大賞を受賞した時だったので、著者ご本人の動く映像をワイドショーでタイムリーに拝見したが、年代も一緒だし、ちょっとおもろーな人だなという印象が先に入ってしまったのだが(趣味:妄想て言ってた。(笑)

    文章が、例えて言うならのどごしのいいお蕎麦を食べたような、
    するするっと読めるのに、構成や登場人物それぞれに深い味わいがあり、
    なるほどこれはおもしろいと思いました。
    とりわけこの作品がそうなのか。
    そういえばこれ、なにげに直木賞も獲ってたんだ。

    本当にうまいと思う作品て、ほんとにするするっと読める。
    この作品がそれをまた教えてくれたと思う。

    行ったことはもちろんない、モデルになった駅前の風景の描写とか、
    その街の空気みたいなものまで、文章だけで伝わってくるし、
    確かにこの主人公は瑛太と龍平がぴったりくる。てかきた。
    ドラマの兼ね合いもあるけど、これは続編も読まねば。

    • onionさん
      この度はお気に入りありがとうございます♪

      ひさしぶりに自分の感想を読み返したら、
      お恥ずかしいことに松田龍平さんが
      隆平さんになっていて(...
      この度はお気に入りありがとうございます♪

      ひさしぶりに自分の感想を読み返したら、
      お恥ずかしいことに松田龍平さんが
      隆平さんになっていて(苦笑)
      せっかくなのでこのタイミングで訂正しました。

      1月からドラマも始まり、原作にはないオリジナルもたくさんあり、改めて「まほろ~」を楽しんでいる今日この頃です。

      もともと映画鑑賞(とりわけ邦画)が好きで、
      そこから原作読みがおもしろく、高校生以来の「本の虫」と化しておりますが、近年ブクログの発達で、こちらでたくさんのご縁があり知らない作家さんや作品、それを読んでいらっしゃるたくさんの感想に出会うことができ、さらに視野が広がっています。
      リアルでない分、かかわり方がいささか乱暴なときもございますが、また時々こうしてお目にかかれるのを励みに、楽しみにいたしております。
      今後ともよろしくお願いいたします。です。

      2013/02/15
  • 三浦しをんさんの、文体の豊富さにいつも脱帽です。しばらく積読でしたがやっと一気に読了。面白かった。自分の心、感情が自分にもよくわからない、気づけないとは本当にそう。
    気付きたくない、見たくない、隠したいでは前には進めない。それに向き合って、進むでも戻るでもいいが、停滞するのがきっと良くないのだとは思う。行天、多田の傷はきっとこの先癒えていく…と信じたい。

  • 舟を編むで感動し、次なる三浦しをん作品として読み始めましたが、さくさくっと軽快な文章であっという間に読め終えました。

    便利屋を営む多田と、そこに転がり込んだ同級生行天が、まほろ市で起きる事件に次々と巻き込まれていくという作品。

    読了後すぐに映画も観ました。
    小説の空気感が、俳優、風景と上手くリンクしていて映画がより楽しめました。

    映画化される小説多いですが、これは映画と合わせて読みたい一冊です。

  • 「幸福は再生する」。2人の全く性格が違う主人公によって織り成される物語は、この言葉によって終わりを迎える。親に愛されていないと思っている子供、明日をも知れぬ環境で生きる女性、血が繋がっていないと知りながらも家族として生きる事を選ぶ男性。全ての人へ送られる、最後の言葉。もちろん、主人公自身へも。色々と騒動に巻き込まれる姿を描きながら、人の内面に潜む闇を浮かび上がらせ、最後は希望を持って終わらせる内容は、読後に爽やかな感動をもたらしてくれる。

  • 2022/07/16 読了。
    感想は某所のブログで書いたものの再掲です!

    ・ありがとうございます、三浦しをんさん。という気持ちだ。 コレの前に『1984』を読んで、カサカサになったところに「三浦しをんの愛がほしいなあ……」と思って読み、まさに欲しかったものを与えてくれました。三浦しをんの描く愛ってなんでこんなに良いんだ……


    ・まほろ市が東京南西部の郊外にあり、神奈川へ突き出すようなかたち。そして、一応東京都なのに「横浜中央交通、略してヨコチュー」が市内のバス線を一社独占している、という、インターネットでもだいぶ擦られている「神奈川じゃないよ東京だよ」の主張……

    ・「M市」とせずにまぼろしとかまほろばとかを連想させるような「まほろ市」とするところの重要さというか、意味をなんとなく理解できたような、雰囲気だけ感じます。


    ・便利屋を営んでいる主人公の多田と、多田の高校時代のクラスメートだったがけど当時は全く交流がなかった行天が偶然再会し、行くところがない行天は多田のとこに転がり込む。(不本意だが)行天の加わった多田便利軒はもうさまざまなやっかいごとに絡まれたりするのだ。

    ・たのしい。たのしいぜこの話。そして多田と行天の、友人と言うにはお互いのことを知らず、知り合いというには頭の中にスペースを取りすぎているなんとも言えない関係がたまらん。

    ・ふたりとも三十代半ばのバツイチで、今更自分の過去についてつまびらかに話すこともしない。だから我々も多田と行天の過去の話は彼らが語ってくれないとわからないし、多田のおそらくド地雷なんだろうなという依頼に行天が首を突っ込みまくるから、多田がめちゃくちゃブチギレたりする。怖いよ。


    ・行天がだいぶ良いキャラクターで…… 自分の身をな~んにも顧みないというか、ほんとに危ないよ!?ってことにもホイホイ首突っ込む。そんで多田がなんとかする。行天なんかお腹刺されちゃったしね。そんなあ。

    ・後半でそれは本当にやめな~~?!!?!?ってことをしようとしていて、やめろーー!!って思ってたら多田が「やめろ!!!」って言ってくれたのでニッコリしました。


    ・行天の右の小指は、高校時代の事故で切断されてしまったのがくっついていて、付け根にぐるりと白い傷痕がある。その事故の原因は多田にあったのだ。

    ・終盤、多田がずっと抱えている元奥さんと死んでしまった子どもとの話を行天にするんだけど、自分のことを絶対に許せない多田に、多田の原罪みたいな自分の小指を触らせながら「すべてを元通りにはできなくても、修復することはできる」って言う行天がたまらなくて……

    ・でもそうして言葉を使って気持ちを伝えてもどうにもならないものはどうにもならないし、そのあと多田は「なんでもっと早く言わなかったのか」と思いながら行天に朝になったら出ていってくれと言う。たまらん。たまらん。

    ・行天がいなくなったあと、多田は自分のわだかまりをひとりでなんとか、なんとかするんだな。自分が恐れていたことに気づき、最初に行天と会った場所で行天のことを見つける。そこで、行天のこと探してたってことも自分がこわがってたものがなんだったかを伝えたかったけど、口から出たのが「帰るぞ、行天」なの良すぎる。愛じゃん(また言ってる)。

    ・たまらねえよ~~~!!ワアン 

    ・いやしかし、行天のことまた拾ったあと、車内でたばこ吸ってる行天見ながら「(手の)甲のかさぶたはずいぶん小さくなって、その下に花の色に似た皮膚が薄く張っている。なにかを約束する印のように、小指の根本は白い線で結ばれている」って言うのはあまりにちょっと…… あまりに過ぎませんか(なに?)
    ・あとあの終わり方だったら多田の求める幸福が行天みたいな感じじゃないですか!ヤダ! こういうことしか言えない。


    ・行天、Aセクだかノンセクだかどっちかかなと思うけど、恋愛や性愛に興味を示さない人、『愛なき世界』の本村さんもそんな感じだったな。『愛なき世界』読んだとき、三浦しをんはこういう人も書いてくれるのか…… と思ったんだけど、まほろでもうやってたんだね!


    ・三浦しをんの愛って…… 本当に良いなと…… 愛の話が本当に好きで、三浦しをんの描く愛はいっとう刺さる。今まで読んだことある三浦しをんの長編、全部まっすぐに愛の話だと思うなと。

    ・『ののはな通信』はそれこそ恋愛を主軸とした、ののとはなの人生の支柱になるような愛の話だし、『風が強く吹いている』は「走ること」を通じて愛を与えあった走くんと灰二さんの話だな。 『月魚』は瀬名垣くんと真志喜くんの間にあった愛の上に何層にも積み重なった罪悪感とか執着心とか時の流れとかをきれいにほどいていく話、『舟を編む』は辞書づくりを通じて多くの人に愛を与えようとする人たちの話かな……  『愛なき世界』はタイトルとは裏腹に研究対象に注ぐ愛、恋い慕う相手への愛、大切な友人への愛、家族の中の愛など本当にたくさんの愛にあふれた話だった。

    ・そして、『まほろ駅前多田便利軒』はどうしたって愛の中心にはいられない多田と行天が頑張って愛の輪郭をなぞろうとするような話だと思った。輪郭にふれることくらいしかできないから、空虚感はのこったまま。そういう話……


    ・出先で読み始めて、「これは良い」となり、その足で続編2冊を買ったので、本当にタノシミ! これは映画とかドラマも見てみたいかも。

  • 多田と行天の距離感が絶妙。 淡々としているようにみえて優しさと繊細さが垣間見え、読んでいて不思議な心地良さ。 誰しも心の内に冷たい部分を抱えていて、 すべてが元通りは無理でも、幸福は形を変えて再生する。 出会いと再生の物語。 面白かった。とても好き。

  • 「愛情は与えるものではなく、愛したいと感じる気持ちを相手からもらうこと」に言葉を失う。そして想いに託す。あのとき知っていれば、と。
    最後に「幸福は再生する」と結ばれる。「求める人たちのところへ何度でも、訪れる」と。

    何が何かわからない。過去が解決したわけでもない。哀しみが無くなったわけでもない。過去は過去として、未来を考えなかったわけでもない。幸せを望まなかったわけでもない。過去に蓋をすることも、清算することも、何もできなかった。きっと、これからも。
    でも、過去を忘れることができなくても、自分が変われなくても、なんとなくだけど、感じる気持ちを相手からもらえればそれで満足じゃないかと思えてくる。それだけで。
    そして、いつか、「幸福は再生する」と言ってみたい、と。

    まだ誰かを愛するチャンスはある。与えられなかったものを、今度はちゃんと望んだ形で、新しく誰かに与えることができる。そのチャンスは残されてる、かも。

  • 自分の不可侵としている領域に、やすやすと入ってくる人っていますよね。たいていはその人の価値観で荒らされるので早々にご退出願うのですが、ときどきスッと真実だけ置いて帰る人がいます。静謐に保っていた水面にちょっとだけ波紋を起こしていくような。余計なことしないでと思う反面そうかも知れないと認めざるを得ない一石。波紋が収まった時の水面はもう以前とは違っていて、人はそうやって変わっていくのかもしんない。そんな多田と行天の一年。こういうかけがえのない関係っていいなあ。

  • まほろの世界観が好きで、しばらく経つとまた読み返してしまう。多田も行天も影の部分を持っていながらどこか暖かい。

  • とても良かった。
    会話が自然で、文章も読みやすくしっかりしているので、ストーリーに集中できる。
    人物もそれぞれに味がある。そして何だか、時々ぎゅっと胸がつまる。

  • 便利屋の多田と高校時代の同級生である行天の話

    行天は便利屋の雑用仕事を手伝うのですが、彼の奇行によって話が面白おかしくなっていきます。
    そんな行天に困りながらも多田は彼と仕事を続けていきます。
    多田はあまり客の事情に介入すべきではないと思っていて、ただ与えられた仕事を淡々と仕事をこなしていくスタイルなのですが、行天がそういったことにどんどん首を突っ込んでいくのでストーリーが展開していきます。

    多田や行天以外にも個性的な登場人物が多くて楽しめると思います。
    ストーリー面は、話がどんどん拡張していくというわけではなく、短い話が多い感じなのでそんなに印象に残らなかったです。

  • 映画は観てなかったけど、映画の通り
    行天は松田龍平さんで再現できた。
    傷を負った人間は心が本当に優しいよなぁって感じた。
    多田も行天も、いつも自分じゃなく他人を気にしてて素敵だと思った。なんかいいなぁ。

  • 映画を見て多田と行天が好きになりこちらを読みました。
    映画とほとんど変わらない内容でした。
    普段は2人とも仲良いってわけでもなく、でも何かあれば助け合ってつかず離れずな距離感のある友情?がなんかいいなぁと思いました。

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著者プロフィール

1976年東京生まれ。2000年『格闘する者に○』で、デビュー。06年『まほろ駅前多田便利軒』で「直木賞」、12年『舟を編む』で「本屋大賞」、15年『あの家に暮らす四人の女』で「織田作之助賞」、18年『ののはな通信』で「島清恋愛文学賞」19年に「河合隼雄物語賞」、同年『愛なき世界』で「日本植物学会賞特別賞」を受賞する。その他小説に、『風が強く吹いている』『光』『神去なあなあ日常』『きみはポラリス』、エッセイ集に『乙女なげやり』『のっけから失礼します』『好きになってしまいました。』等がある。

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