- Amazon.co.jp ・本 (399ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167908263
感想・レビュー・書評
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「敵が少しでも強いとみれば、謀略を駆使し時に仕物も辞さず、それでもなお強大な場合は恥も外聞もなく降伏し、また隙を見て裏切る」戦国時代きっての梟雄、宇喜多直家とその関係者を描いた連作短編。「宇喜多の捨て嫁」「無想の抜刀術」「貝あわせ」「ぐひんの鼻」「松之丞の一太刀」「五逆の鼓」の6篇収録。
本書で直家は、「秦の始皇帝や三国魏の曹操孟徳ら、乱世の英傑が遣った」という、敵の殺気に反応して無意識に攻撃する「無想の抜刀術」の使い手、そして、「無想の抜刀術」で母親を殺めた際に母親から受けた肩口の傷が癒えず、血膿を出し続け、腐臭を発し続ける(業病「尻はす」を患う)病み人として描かれている。
「涅槃」を読んだ直後に読んだので、直家の人となりがより明確にイメージできた。本書と「涅槃」の直家像、そんなに大きくズレてなかった(猜疑心の塊のような浦上宗景の下で生き残るため、梟雄にならざるを得なかった、というのが基本線)。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
高校生直木賞他受賞との事で読んでみたが、裏切りと策謀で名を馳せた宇喜多家の内容であり凄まじい残虐な話しが多い。構成も年代が行ったり来たりで分かりづらいのに、女子高生が多い中での受賞は不思議な気がした。解説で受賞理由を見ると何度か読み直すことで内容の深みが分かるそう。非道・残虐すぎて再読は暫く先になりそう。
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高校生直木賞受賞作。他の候補作を措いて、この作品が高校生に評価されたことに興味を持った。
戦国の梟雄と言われた宇喜多直家。そんな男の真実を、彼と彼の一族たちの視点を用い、描き出した連作短編。
自分の娘さえ謀略の手駒とし、彼女たちを捨て嫁と言わしめた表題作。
次の作品では一転、不幸な才能ゆえ苦難な彼の幼少期が描かれる。
他の短編でも、謀略暗殺を駆使し、隙を見てはまた裏切る、そんな繰り返しの彼の人生を、時系列を前後しながら、綴られる。
時代の拘束の中で、梟雄とならざるを得なかった彼の哀しい運命が焙り出された。
ドロドロとした戦国の世界が描かれているが、読後また読み返したくなる歴史小説。 -
宇喜多直家という人物が数名の視点から語られており、大変面白く読めました。
信用し裏切りまた信用する、の繰り返しで
何かを守る為には何かを犠牲しなければならない、
戦国の世の慣わしの厳しさを実感しました。
素敵な本に出会えてとてもよかったです。 -
よくできた歴史小説だった。宇喜多直家を絡めた短編の集まりかと思いきや、6話目で話が引き締まり全てが連なっていく。また、新しい書き手が現れて快哉!
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これは傑作だ。何といっても章立ての構成が秀逸。最初に「捨て嫁」で一撃の後に、「無想の抜刀術」で生まれついての業の深さを感じさせ、最後の「五逆の鼓」は江見河原が琵琶法師に見える、まさに平家物語。戦国時代が舞台の歴史小説にも関わらず、権謀術数が中心で合戦話が皆無、しかし人物がよく見通せるつくり。圧巻、脱帽。
高村薫や東野圭吾が推したのに直木賞を逃し、非常に残念だが後世に残る作品だと思う。 -
これが、予想外の面白さ!でした。
この本は、全国の高校生たちが集まって、
直近の直木賞候補作品の中から1作を選ぶ
{高校生直木賞}に選ばれた本です。
「高校生直木賞」なんて言うのがあることさえ知らなかったけれど、
高校生が、この本を選んだとということに、
なんだかうれしさがこみ上げてきました。
戦国時代の大名・宇喜多直家の生涯が
様々な人の視点から描かれている。
自分の娘たちの嫁ぎ先を攻め滅ぼすこともいとわず、
悪徳非道の男であるはずの直家だが、
読み進めていくうちに、様々な思いがよぎる。
ラストのシーンが切ない。
面白い本を読んで、本を閉じた時、
すごい満足感というか、感動というか・・・
胸にあふれるものがあるのだけど、
それを、どんなふうに表現したらいいかがわからない。
これを、ボキャブラリーが足りない、というのでしょうね・・・-
横入りすみませン。いやいや充分すぎるほど感動が伝わってきます。この作品の続編も(宇喜多の楽土)読んだと思いますが心にしみる作品だと思います。...横入りすみませン。いやいや充分すぎるほど感動が伝わってきます。この作品の続編も(宇喜多の楽土)読んだと思いますが心にしみる作品だと思います。時代物が多い作者ですが現代物も読んでみたいと思うのは欲張りなんでしょうかね。「敵は宮本武蔵」もオススメです!2018/09/01
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